修羅の願うは英雄譚   作:鎌鼬

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剣客と幼女

 

 

一輝とヴァーミリオンとの模擬戦が決まったが、開始まで時間があるという事なので俺は火乃香を連れて寮に向かう事にした。ルームメイトに挨拶をしておきたいからだ。今の時期に寮にいるという事は在学生という事になる。俺が去年にやらかした事は知っているはずなのに、それを知った上で同室を許可したルームメイトに興味が湧いたということもある。

 

 

その時にヴァーミリオンから一輝を倒したら次は俺の番だと言われたが、そんな未来は訪れないだろう。確かにランクだけで見ればAランクのヴァーミリオンにFランクの一輝は敵わない。しかし、それはランクだけの話なのだ。実際に戦ってランクの高い方が勝つと決まっているわけじゃない。それに一輝の強さを知っている俺から言わせて貰えば、ヴァーミリオンは負けると思っている。

 

 

「ししょー、ルームメイトって誰です?」

 

「分からんが心当たりは数人程ある」

 

 

ほとんどの在学生は俺に対して良くない感情を持っているのでルームメイトになる事を許可するとは思えない。しかし数人程それを許可するような存在には心当たりがある。一輝を含めた破軍の中でマトモな人間だと認めた内の1人だろう。もっとも、マトモな奴は片手で数えられる程しか居なかったので誰か予想するのは難しいことでは無いのだが。

 

 

「っと、着いたな」

 

 

考え方をしていると部屋の前に着いた。念のために理事長から渡された鍵に書かれている番号と部屋の番号とを見比べるが一致していて、ここが俺の部屋だと証明していた。ノックをすると中から返事があり、扉が内側に開く。

 

 

「ーーーえっと、久しぶりだね。新城君」

 

「やっぱりお前だったのか……綾辻(あやつじ)

 

 

出迎えてくれたのは片目を黒い前髪で隠した少女、綾辻絢瀬(あやつじあやせ)。俺が去年にやらかした事件の最中で、俺がマトモだと認めた数少ない人間の1人だ。

 

 

「いや、今は3年だから敬語を使った方がいいですかね?綾辻先輩」

 

「う〜ん、新城君に敬語を使われるとなんだかゾワゾワするから普通に話してくれない?」

 

「酷い言い草だなぁおい」

 

「あ、でも分かるです。ししょーが敬語を使うと似合わなくて似合わなくて吐き気がしたです」

 

「火乃香、お兄ちゃんはその言葉に泣きたくなったよ……」

 

「こんなところで立ち話もなんだから入って入って」

 

 

火乃香からの容赦ない口撃に視界を滲ませながら部屋の中に入る。3人で生活するためにかこの部屋は去年俺が使っていた部屋よりも広く作られていて、二段ベッド以外にもソファーの上に敷布団と掛け布団が置かれている。ソファーを寝床として使えという事だろう。

 

 

荷物を入れていたバックを部屋の隅に置き、ソファーに腰掛ける。火乃香も同じように背負い鞄を部屋の隅に置いて自然な流れで俺の膝の上に乗っかってきた。

 

 

「理事長から聞いてたけど妹さんだっけ?」

 

「あぁ、ほら火乃香、挨拶」

 

「新城火乃香、8歳です。よろしくです」

 

「ふふっ、ありがとう。ボクは綾辻絢瀬です」

 

 

火乃香の自己紹介混じりの挨拶に綾辻は微笑みながら自己紹介で返して手を差し出した。火乃香はそれに応じて手を握り返す。綾辻の見た目はかなり良く、美少女と評価出来る風貌だ。そんな彼女が火乃香と握手している姿ははっきり言ってかなり微笑ましい光景である。

 

 

寧音との邂逅に備えて少しでも癒されたい俺からすれば、その光景はかなりありがたかった。

 

 

「でもどうして俺との同室を許したんだ?去年の俺のやらかした事を知らないとは言わせないぞ?」

 

「打算ありき……って言ったら怒るかな?ボクの目標を新城君は知ってるでしょ?」

 

「道場を取り戻すだったな?」

 

 

綾辻の実家は道場を経営していて、そこそこの門下生がいたらしい。しかし、ある日やって来た道場破りに綾辻の父親が負けた事でその道場を奪われた。その道場を取り戻す事が自分の目標なんだと満月の下で話す綾辻の姿を昨日の事のように思い出せる。

 

 

「悔しいけど今のボクじゃあ、あいつには勝てない……だから」

 

 

そう言って綾辻は床に座って頭を下げた。

 

 

「お願いします、ボクを強くしてください。ボクが出来ることなら何でもしますから」

 

「何でも、ねぇ……」

 

 

綾辻のような美少女に何でもすると言われれば心が揺らいでしまうのは男として当然の事だと思う。しかし、強くするという事が俺の判断を惑わせていた。

 

 

綾辻は剣術家で、父親から教えられた剣術を修めている。俺が綾辻を強くしようと思えば、彼女の教えられた剣術は影も形も残らなくなってしまうだろう。それではたとえ彼女の目標を達成する事が出来ても、彼女の今後に繋がらない。道場を取り戻せた事に満足して、父親から教えられた剣を捨ててしまった事に絶望して剣を捨てるかもしれない。

 

 

それではダメだ。折角俺が認めた数少ないマトモな奴かそんな事で終わって良いはずがない。

 

 

「俺が鍛えるとなると綾辻の修めてる剣術は影も形もなくなる事になるだろうな」

 

「……ッ!!」

 

「だけど、()()()()()()()()()。だから、綾辻の剣をそのままで強くする。それで良いか?」

 

「え?……そんな事出来るの?」

 

「出来る出来ないじゃない、やるんだよ。そうしないと道場は取り返せないと思って臨め。それで良いなら、俺は綾辻の力になる」

 

「ーーーお願いします!!」

 

 

自分の振るっている剣のままでいられることが嬉しいのか、綾辻は目元に涙を浮かべながら再び頭を下げた。聞いた話では綾辻の父親は道場破りにやられた怪我が原因で意識不明らしい。唯一と言っても良い父親との繋がり、それを奪いたくなかった。

 

 

「んじゃあ、明日からで……客か?」

 

 

これからの予定を考えていると扉をノックする音が聞こえて来た。このまま扉を開けられたら俺が綾辻に土下座をさせているようにしか見えないので頭を上げさせ、俺が対応に出る事にする。

 

 

「はいはーーーい゛ぃ゛!?」

 

「ーーーヤッホー」

 

 

扉を開けた先にいたのは着物を役に立たない程に着崩した幼女。普通ならば何で幼女がここにいるのかと疑問に思うのだが、俺はそんな事は考えずに全力で逃げることを選んだ。

 

 

扉を叩きつけるように閉めてその隙に部屋の窓から外に飛び出す。着地するのと同時に校舎の中に逃げ込もうとしてーーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「もう、酷いじゃないか。うちの顔を見ただけで全力で逃げるなんてさ」

 

「こういうことをされるって分かってるから逃げてるんだよ……!!」

 

 

カランコロンと小気味の良い下駄の音を響かせながら現れたのはさっきの幼女ーーー西京寧音だった。本音を言えば今すぐにでも逃げたいのだが、彼女の能力である〝重力〟に捕らえられてそれも叶いそうにない。体感的には50倍から100倍の重力だろうか。逃げようと思えば逃げられなくも無いのだが、その場合周囲への被害が出てしまうのでそれは出来なかった。

 

 

「まぁまぁカッカしないでさ。ところで、すぐそこに保健室があるんだけど……ヤってかない?」

 

「止めろ……止めろぉ……!!俺の好みは幼女じゃないんだ……!!ツルペタよりも我儘ボディの方が良いんだ……!!だから止めろよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

必死になって抵抗するものの重力の枷から逃げる事は出来ず、俺は寧音に保健室まで引きずられる事になった。

 

 

 






ルームメイトは片目ボクっ子剣術家という贅沢属性持ちの絢瀬ちゃんに決定!!属性が多すぎる?大丈夫大丈夫、キチガイ属性には敵わないから(遠い目

俺が作者の書くロリ夜叉だ!!ただの超肉食系合法ロリとかいう。被害に遭うのは修羅ヌイだけだから問題無いな!!(現実逃避


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