「ーーーそれでは暁学園定例会を始める。なお、定例会などと言っているがこれが初めてだったりする」
「いらん情報はいいから早よ進めろよ。多々良が羞恥心で死にそうになってるぞ」
「誰のせいだと思ってやがる!!」
月影さんが壇上に立ち、第一回暁学園定例会が始まった。とは言っても報告と軽い打ち合わせだけで終わるらしいが。それよりも多々良が顔を真っ赤にしてるのが気になってしょうがない。初めは防寒着を着込んでいたので顔は分からなかったが、フリル付きのドレスに着替える際に防寒着を剥ぎ取られたことで目付きの悪いものの整った素顔が曝け出されている。〝
「まず始めに、悲しい事に暁学園で裏切り者が出る未来を見た」
「俺の事だと思った奴、直ぐに土下座して腹切れ。介錯はしねぇから」
「はーい」
「済まなかった」
「火乃香ァ!!王馬ァ!!」
月影さんの口から裏切り者という言葉が出た瞬間に視線が俺に集まったので反論したら真っ先に火乃香は俺の膝から降りて土下座を、王馬は土下座はしなかったがその場で謝罪をした。俺の性格が分かっているとはいえ躊躇いのない行動に一瞬だけ見逃そうかと思ったが甘やかしては駄目だと心を鬼にし、火乃香にはデコピンを、王馬には貫手を叩き込む。
火乃香は額を抑えながら態とらしくグワァッと言って転げまわり、王馬は呻き声を一切あげずに机に突っ伏して痛みで悶絶している。王馬の身体はとある修行のせいで常人の数十倍の骨密度と筋密度になっていて、まともな攻撃ではダメージを与えることは出来ない。しかし、
「容赦無いですねぇ。御友人では無かったのですか?」
「容赦無しなら今頃王馬は血反吐を吐いて死んでるぞ?やって欲しいか?」
平賀がおかしいのか笑いを堪えるように言ってくるが、これでも手加減をしているのだ。内臓に直接衝撃を通せるということは、言い換えれば衝撃を操作しているのと同じ。広がる衝撃を一点に集中させれば極論指一本でも心臓に穴を開けて殺す事が出来る。流石に俺だって仲間内で後遺症が残るようなことはしない。逆に言えば後遺症が残らない程度ならば好き勝手やるけど。
「で、誰がいつどこで裏切るんだ?」
「破軍に潜入を命じた〝
「成る程、それが俺がわざわざこのタイミングで勧誘された理由の1つか」
月影さんの指示により今回のメンバーは7校に1人ずつ配置され、そこから自力で〝七星剣武祭〟の出場権を勝ち取れと言われている。有栖院は破軍でそうする予定だったのだろうが、月影さんはそいつが裏切る未来を見てしまった。なので代わりに縁があり、破軍に籍を置いている俺の事を勧誘したのだろう。初めから俺の事を誘えば良いのにと考えるが、こんな一大事を計画しても根は善良な月影さんのことだからそうする事を躊躇ったに違いない。それでも最終的には誘われたのだが。
「裏切りの理由は?」
「そこまでは分からないが……恐らく学園生活の中で親しい者が出来てしまったのだろうな。彼らを裏切る事を躊躇った結果、私たちを裏切る事を選んだと思う。彼を育てた〝隻腕の剣聖〟はそれを認めようとしないが万が一の為に彼は計画から外す事にした。勿論その事は彼には伝えていない」
「裏切らなければそれで良し、裏切ったらそこまでってことね」
個人的には有栖院がどちらを選んでくれても構わない。裏切らなければ〝
だがそれも、あくまで有栖院が裏切ればの話でしか無いのだが。
「有栖院君の裏切りの可能性により、計画の一部を変更する事にした。各校が〝七星剣武祭〟への出場者を決めた後の7月に行われる合同合宿、その最終日に破軍学園に襲撃して帰って来た代表者たちと戦ってもらうつもりだったが、前倒しにして帰宅途中の代表者たちを狙う事にする。別に学園そのものを襲わなくても暁学園の実力を見せつけられればそれで良いからね」
それに関しては同感だ。それに学園そのものを襲うとなれば代表以外の生徒や職員も出てくる事になる。負けるなど欠片も想像していないが、無駄な被害が出ないのならばそれに越した事は無い。
「そして襲撃のメンバーだが、最低限の人員で行う事にする。破軍に新理事長として就任した新宮寺黒乃と臨時教師として雇われた
「げ、あのロリータが破軍にいるのかよ……転校してぇ」
「ふぅ……あの〝夜叉姫〟と知り合いなのか?」
「ガキの頃にオヤジのツテで
「そして襲撃のメンバーだが、黒鉄王馬君と新城不知火君の2人に言ってもらう事にする」
「やっぱりかよぉ……!!」
「ししょー、元気出しやがれです」
「うん……ありがとう……お兄ちゃん頑張るからもう少しそうやってて」
嫌な予感は的中し、俺と王馬が襲撃のメンバーに決まってしまった。もしも彼女と戦う事になった時に確実に対抗できるのは俺と王馬くらいだと思っているのでその決定には文句は無いのだが、感情的な部分が中々納得してくれない。机の上に頭を抱えて突っ伏し、火乃香に頭を撫でて慰められているが回復するのにしばらく時間が掛かりそうだ。
「まぁそこで勝手にダメージを受けている不知火君は放っておいてだ。他の皆には予想外の事態が起きた時のために周囲で待機してもらう事になる」
「ーーーあのぉ、少し宜しいでしょうか?」
態とらしく手を上げながら発言権を求めたのは平賀。仮面で顔を隠しているので表情は分からないが、気配から良くないタイプの人間だと嫌という程に分かってしまう。人の道を外れた外道、それしかこいつを形容できる言葉を思いつかない。
「なんだね?平賀君」
「王馬君の実力は分かっているので文句は無いのですがそちらの彼……新城君は本当に強いのですか?」
〝
「あぁ、実力に関しては心配は要らない。〝
「ほぅ!!貴方があの〝緋色〟ですか!!」
「こっちを見るなよ
〝緋色〟とは、俺が〝
〝
能力と人格が合わさって最低なのが紫乃宮だとすれば、平賀は性根の悪さだけで邪悪だ。例え〝
俺が〝緋色〟だと分かって平賀とは違う
こいつらと関わりを持つ事と、そう遠く無い未来に寧音と出会う事で確実にストレスが溜まると確信し、溜息を吐くことしか出来なかった。
ここの不知火のあだ名は修羅ヌイに決定!!
リベリオン潰しているから顔は正体は不明でも有名になっている修羅ヌイ。同盟と連合に1人ずつ
修羅ヌイが割りかし人脈チートしてるなぁと思うけど、実際は新城おじさんの方が人脈チートなんだよ。月影総理に南郷じーちゃん、それに漣……チートやチート!!