「はぁ……気が重い」
「大丈夫です?飴いるです?」
「くれ、なんかしてないとストレスが溜まってしょうがない」
月影さんに〝連盟〟脱退のために力を貸してくれと頼まれ、王馬と共にそれを了承した翌日。〝連盟〟脱退のために月影さんが建設した暁学園の一員となった事は別に良い。転校扱いになるのか少し不安だったが、今はまだ表立っていないので破軍の学生のままで良いと言われて安心した。〝連盟〟を脱退するために、国内における〝連盟〟脱退意欲を高める必要があるのは分かった。新興勢力の暁学園が〝七星剣武祭〟を優勝するという手段も納得した。
問題があるのは他の暁学園の生徒だ。
月影さんから渡された資料によれば俺たち以外の暁学園の生徒はほとんどが〝
結果として、マトモな奴が誰もいない。
それに……〝
現在は月影さんに暁学園のメンツとの顔合わせと今後の予定について話し合うと言われているのでこの場に来ているが、本音を言わせて貰えば帰りたくてしょうがない。火乃香からもらった飴を苛立ち混じりで噛み砕いていると扉が開き、ピンク色のゴスロリ衣装を着込んで眼帯で片目を隠した少女とメイド服の少女、それとやたらと厚着をしている少女が入って来た。資料にあったので彼女たちの名前は分かっている。
事前に月影さんから知らせられているのか3人は俺と火乃香の存在に驚く事なく席に座り、風祭と多々良は値踏みするような視線をくれている。
「……なんだ?」
直ぐにでも眼球を抉り出したくなるがそれを堪えながら訊ねると、代表してか風祭が口を開く。
「いや何、総理が態々直々に招いた人材だ。それなりの手練れだと期待していたのだが……ガッカリしたぞ。〝風の剣帝〟は無論、そこの童とも比べ物にならん程に強者としての気という物を感じないでは無いか。失望の1つや2つはして当然だと思うが?」
妙な言い回しをするなと思ったが、資料には厨二病を患っていると書かれていた事を思い出して納得する。要するに月影さんが呼んだ俺に勝手に期待して、王馬どころか火乃香よりも弱く見えると。それを聞いてこちらがガッカリだ。一目見て強者だと分かるような強者など
反応するのも面倒になって来たのでそのまま無視しようとすると、多々良が突然立ち上がってチェンソー型の〝
「何のつもりだ?」
「……ハッ、武器を向けられても獲物を抜こうとしないとはとんだ甘ちゃんだな。ポッと出が歓迎されると思ってるのか?」
「成る程、つまり俺は弱いからさっさと消えろと、そう言いたいんだな?」
「それかこの場でアタイに切り刻まれるか、好きな方を選びな」
安い挑発だと思った。恐らくこれが多々良なりの測定なのだろう。乗らなければ冷静な判断が出来る、乗ってきたとしても多々良の異能で問題にならない。この物差し自体を否定するつもりは無いのだが、これが〝
気怠げに眼球だけを動かして多々良の目を見つめ、一瞬だけ内側で暴れ狂う赫怒と殺意を多々良だけに向けて解放する。向けられていない者からすれば微風が吹いた程度すら感じられない。しかし王馬は俺が何かをやった事に気がついて目を俺に向ける。
そして多々良の反応が変わった。
「ヒーーーァ……ッ!?」
勝気だった顔を一瞬で青くさせてその場に崩れ落ちる。全身を異常なまでに震えさせ、俺から少しでも距離を取ろうと無様に床を這いずっている。しかも失禁したようで乾いていた床は濡れていた。風祭とコルデーは何が起きたのか分からずに困惑しているようだが、〝
気当たりという技がある。気合いで相手を萎縮させる技だ。俺がしたことはそれに近い……しかし、使ったのは気合いでは無くて赫怒と殺意。多々良のような裏の世界の住人はそういうものに関しては敏感になる様に育てられている。その感受性を持って俺の赫怒と殺意をモロに浴びた結果、彼女は俺に殺される自分自身の姿を幻視した筈だ。
そして多々良は怯え、失禁し、無様に逃げようとしている。いい気味だと、その姿を嘲笑う。
「相変わらず趣味が悪いな」
「言ってくれるなぁ……!!俺はただ、強気の女性が涙目になるのに興奮を覚えるだけの健全な男の子なのに!!」
「性癖歪み過ぎじゃねぇかです」
歪んでいる自覚はあるのだが、可愛いと思うのだから仕方がない。一番好きなのは笑顔なのだが、涙目というもの捨てがたいのだ。
「ししょー、ここはどうにかしておくんでししょーはそれをどうにかしやがれです」
「同感だな。流石にこんな状態で話し合いに参加させるわけにはいくまい」
「遊びが過ぎたな」
「ヒィッ!!た、助けてーーー!!」
やり過ぎた事に反省し、だけどやった事には後悔せずに多々良の首根っこを掴んで引きずりながら部屋から出る。そして近くにいた職員に事情を話し、女性用の服を用意してもらう。それを多々良に着させれば終わりなのだが……用意された服は何故かフリル付きのドレスだった。
「クッソ……何でアタイがこんな目に……!!」
「〝
ここまで少女趣味全開の服を着慣れていないのか、多々良は恥ずかしそうにしながらブツブツと文句を言っている。時間が経って怯えからは立ち直ったらしいが、俺の事を警戒しているのか距離は空いている。多々良が仮に〝
それとあの職員の趣味の悪さに関しては諦めるしかない。どこからどう見ても三十代後半の女性だったのにこんな服を常備しているとかキチガイ以外の何者でも無いから。
多々良の着替えを終えて部屋に戻ればさっきまでいなかった筈のメンバーがすでに揃っていた。トップレスにエプロンを身につけただけのサラ・ブラッドリリー、少女と見間違う様な顔つきの少年
そして紫乃宮と平賀を見た瞬間に思ったーーーこいつらは
多々良の一件でストレスが発散出来ていなかったら反射的に殺していたに違いない。〝
多々良ちゃんを虐めて涙目にしたかった、それだけだったのだよ。
厨二お嬢の言葉がどうして良いのか分からない……このままではセリフを減らすくらいしか対処法が思いつかない。だれか助けて
感想がログインユーザーのみになっていたので非ログインユーザーでもオッケーに直しました。感想下さいネ!!