修羅の願うは英雄譚   作:鎌鼬

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狂犬再会

 

 

「あー遊んだ遊んだ。久しぶりにマトモなプールで泳いだ気がする」

 

「10分以上も潜水してるのが泳ぐって言うのかな?」

 

 

プールで遊び倒して、施設から出た時には夕方になっていた。今の時間で学園まで戻れば遅い時間になってしまうのは簡単に予想出来た。それにナナの腹が空腹を訴えて鳴いていたので近くにあったファミレスに入る事にする。休日で、しかも夕方となれば客は大勢入っていたのだがどうにかテーブル席を確保する事が出来た。

 

 

「ご注文お決まりですか?」

 

「ドリンバーが四つと、メニューの食べ物系を上から下まで全部2つずつ」

 

「ドリンバーが四つとメニューの食べ物が全て2つずつですね?……厨房が死んでしまうので加減して頂けないでしょうか?」

 

「却下で。他に何か頼むのあるか?」

 

「じゃあボクは鮭の定食」

 

「私はハンバーグ定食でお願いするです」

 

「うぅ……!!」

 

「ナナ、落ち着け。頼んだから時期に来るよ……あぁ、早いものから持ってきて。じゃないとこいつが最悪暴れ出すから」

 

「畏まりました。恨みます」

 

 

ウェイトレスの背後を見送って数秒後に厨房の方から断末魔のような悲鳴が聞こえたのだが、あれは嬉しさから来るものだと信じたい。淀爺の治療により健康体になったナナだが、燃費の悪さだけはどうしようも無かった。と、言うよりもこれは治療でどうにかなる様な物ではないらしい。

 

 

ナナの肉体は複数の人間を混ぜ合わせて作られているので性能は頗る高いのだが、その代償として燃費がどうしても悪くなってしまうとの事だった。性能を下げれば燃費も良くなるらしいのだが、そうしてしまえば万が一の時……〝解放軍(リベリオン)〟に襲われた時に自衛が難しくなってしまう。それならば食費は必要経費だと割り切った方がいい。

 

 

火乃香がドリンバーで定番であるジュースのブレンドを作り始め、ナナもそれを見て真似をし出す。本当ならば行儀が悪いと怒らなければならないのだが、火乃香が年相応の行動をしているのは俺としても喜ばしい事なので放置しておく事にする。

 

 

だけど自己責任だ。例えゲテモノが出来上がったとしても、俺は手を出さないけど。

 

 

「ねぇねぇ、火乃香ちゃんがジョッキを使い始めてるけど大丈夫なのかな?あ、コーヒーで良かった?」

 

「サンキュー。どんな物が出来上がっても自己責任だからノータッチで」

 

「助けた方がいい気がするけどなぁ……あ、スープに手を伸ばし始めた」

 

 

これ以上見続けると食欲が無くなりそうなので目を逸らし、デジカメを取り出して操作する。

 

 

中に入っているのは今日のプールで遊んでいる光景。火乃香とナナがボールを使ってダイナミックバレーボールをしているところや、綾辻が流れるプールを浮き輪に乗りながら漂っているところ、そして俺と綾辻がカップル扱いされて乗せられたウォータースライダーの写真などが入っている。

 

 

写真を見ながら、やはり揺れる胸は素晴らしいものだと改めて認識する。

 

 

「今日のプールで撮ってた写真?意外だね。新城君は写真とか興味無いと思ってたけど」

 

「楽しかった思い出ってのは忘れないんだけどさ、どうしてもまだ見える形で残しておきたかったんだよ。親が写真嫌い……って言うよりも興味が無かったせいでアルバムとか無いからな」

 

 

オヤジの方だけではなくて漣の方も写真には興味が無かったらしく、〝解放軍(リベリオン)〟に襲撃された漣の実家にも写真は一枚も残っていなかったのだ。幸いな事にオヤジの顔も、実親の顔も両方とも分かっているので大丈夫なのだが、やっぱり目に見える形に残しておきたいと思って何かあるとこうして写真に撮る様にしているのだ。

 

 

そのおかげでウォータースライダーに乗った時に俺が後ろから抱き締める様に密着した事で顔が真っ赤になっている綾辻の姿もしっかりと残っている。

 

 

一枚ずつ写真を確認し、手振れが酷い物や全く関係ない物を削除して整理する。問題を起こした利用者がポージングを決めたままの監視員に連行されている写真は消そうか迷ったが、面白かったので残しておく事にした。

 

 

そして写真のデータを携帯に移し、寧音にメールで一件ずつ送りつける。数秒後には解読出来ない言語で書かれたメールが返って来るのですかさず削除する。

 

 

「ししょーししょー、見やがれです。火乃香ブレンドジュースの完成です」

 

「あー!!あー!!」

 

「ナナちゃんのは兎も角、火乃香ちゃんの禍々し過ぎやしない!?」

 

 

ナナの持ってきたブレンドジュースは成功したのか綺麗な見た目をしている。しかし火乃香のブレンドジュースはどういう調合をすればそうなるのか分からないが、何故だか玉虫色になりながら光を放っている上に刺激臭がこちらにまで漂っている。しかもそのブレンドジュースがジョッキ二つ分ある。

 

 

「俺は飲まんぞ?」

 

「やらねぇです。これは二つとも私の分です」

 

「火乃香ちゃん、悪い事は言わないからそれ捨てた方がいいよ!!」

 

「止めないで下さい。これは私がやった事だから自己責任なんです……!!」

 

「あー……う?」

 

「ナナは気にしなくていいから、それを飲んでなさい」

 

「うー!!」

 

 

渡したストローを使って成功したブレンドジュースを美味しそうに飲んでいるナナの姿に癒されながら、冒涜的な色合いをしたブレンドジュースに向かい合っている火乃香を見る。ジョッキに口を付けようとしているが、臭いがキツイのか顔をしかめてジョッキを離すと言う行動を何度も繰り返している。綾辻は止めようとしているのだがどうして良いのか分からずにアタフタしていた。

 

 

それでも自分が飲むと言い出さない辺り、綾辻もあの冒涜的なブレンドジュースは飲みたくないらしい。

 

 

「ふぅーーーいざ……!!」

 

 

覚悟を決めたのか、火乃香が真剣な表情になりながらジョッキに口を付けるーーーその瞬間、

 

 

「あぁ?もしかして不知火か?」

 

 

聞き覚えのあるざらついた声で俺の名前が呼ばれた。

 

 

 






プールでの出来事は作者のHPがもたないから書けないの!!妄想してね!!

ファミレスのドリンバー、子供の頃はそこでジュースを混ぜて怒られてたけど、最近のファミレスじゃあ美味しいブレンドジュースの作り方とかカードが貼ってあるのを見て時代の流れを感じた。


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