修羅の願うは英雄譚   作:鎌鼬

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ガンジー怒りの解脱・2

 

 

「やべぇ……やべぇよ……語彙力が死んでるけどそれしか言えない」

 

「同感だわ……タイトル見た限りだとクソ映画臭がプンプンしてたのにあんな名作とか卑怯っしょ……」

 

 

〝ガンジー怒りの解脱〜許す事は強さの証と言ったな?あれは嘘だ〜〟を破軍学園の近くにあったショッピングモールの映画館で見た感想がそれだった。一階のフードコートで軽食を頼みながら、寧音と一緒に顔を手で覆い隠しているのは〝ガンジー怒りの解脱〜許す事は強さの証と言ったな?あれは嘘だ〜〟が予想を良い意味で裏切る良作だったからだ。

 

 

「当時インドがイギリスの領地だった事は知ってたけどまさかそれを活かしてくるとは」

 

「非暴力を説いて戦うことの無意味さを謳っていたガンジー。それなのにイギリスから目をつけられたことでガンジーを除いて村の人間が虐殺されて、その教えを捨てて1人イギリスに立ち向かうって」

 

「ラブロマンスあり、コメディあり、それでいてアクション映画の質を落としていないのは見事だって言うしかない」

 

「最後のイギリスのロンドンで行われたガンジーVSブッタのクライマックスは涙無しには語れねーよ」

 

「これは他の映画も観るしか無いな。地雷臭がプンプンするのが山ほどあるけど……!!」

 

 

現在上映されている映画の案内のビラを取り出す。〝ガンジー怒りの解脱〟以外にも上映されているのは映画館の規模が小さいからなのか3つだけ。〝私は妹に恋をした※R15〟とか、〝男たちの失楽園※R15〟とか。唯一まともそうに見えるのは〝砂漠の王女カルナ〟というアニメ映画なのだが、カルナと思われる色白で白髪の人物が〝固有霊装(デバイス)〟と思われる馬鹿デカイ槍を持っているのは何故なのだろう。そして〝求められたのであれば応えよう〟などという男らしいセリフを口走っている。もしかするとこの映画は〝私は妹に恋をした※R15〟と〝男たちの失楽園※R15〟を超えるクソ映画なのかもしれない。

 

 

「よくまぁこんな色物作品ばっかりを集めたもんだな」

 

「ここの経営者の趣味じゃないか?正気を疑うような趣味してるけどな」

 

「うーん……取り敢えず保留にして、時間もあるし買い物しない?」

 

「賛成、破軍来るのに最低限の荷物で来たから私服が少なくてな。俺は困らんけど火乃香には女の子らしい格好してほしいし」

 

 

漣として育てている火乃香だが、だからと言って女として生きる事を諦めさせている訳ではない。無表情で適当なですます口調が目立っているが可愛い物やお洒落に興味を持っている事は理解している。寧音とデートなので理事長に任せて置いてきてしまったので、お土産として何か買って帰りたい。

 

 

「そういや不知火、今日のうちの格好はどうよ?」

 

 

そう語る寧音の格好はいつもの和服姿では無く肩を出すタイプのシャツにホットパンツという洋服を着こなして、床に着きそうな程に伸ばされていた艶のある黒髪はポニーテールで纏められていた。西京寧音という〝伐刀者(ブレイザー)〟はKOKの現役選手であり、()()()()()()()()()()()()()()()()3位であることから知名度が非常に高い。だからこうして人前で見せる姿とは違う格好をしなければまともに街を出歩く事も出来ないのだ。もしもこの場でいつも通りの和服で来ていたら、サインを求める人の群れが出来上がっているに違いない。

 

 

「新鮮だけど違和感があるな。俺の中でのお前のイメージってどうしても和服ロリだからな。今の格好も似合ってる事は似合ってるけど」

 

「そういう不知火の格好は変わらねえな。それしか服無いの?」

 

「服にはデザインじゃなくて機能性を求めるタチだからな。あと、誰かさんのせいで俺の私服が絶滅しかけてるってのもあるけど」

 

「誰のせい?」

 

「殴りてぇ……!!」

 

 

俺の格好はカーゴパンツに黒地のシャツ、その上から赤いコートを羽織るだけの物だ。機能性を求めているので丈夫で長く使えるような物だが見る者によってはつまらないと評価されるようなシンプルな格好。本当ならばもう少しあったのだが、目の前にいるロリータが性的に襲うために物理的に襲いかかって来てそのせいでお亡くなりになってしまっている。

 

 

「まぁまぁ、今日のお金はうちが出すからさ」

 

「よし、言質は取った。それならトゥワレに行こうか」

 

「待て……待て……!!トゥワレって言ったら超一流のブランドじゃねーか!!そんなところで買い物したらうちの財布が亡くなるんだけど!?」

 

「ん?気の所為かな?〝夜叉姫〟ともあろうロリータが一度言ったことを覆すような発言をしてるように聞こえたのだけど……」

 

「……今度ゼッテー媚薬ガン盛りして襲ってやる」

 

「止めろ……止めろよ……!!」

 

 

揚げ足を取っただけで貞操の危機が訪れた。一応大体の薬物に対する耐性は持っているのだが、それでも使用量を遥かに超えた量だと効き目が薄いとは言え効果が出てしまう。過去に一度、使用量の10倍の媚薬を使われた状態で寧音に襲われて三日三晩致してしまった事がある。こいつの事だから絶対にその時の量を超える媚薬を使うに決まっている。

 

 

しばらくは口にする物には気をつけるようにしなくては。

 

 

「はぁ、しゃーねーな。見た目一桁のうちが不知火に奢ってやんよ」

 

「言葉にすると凄い光景だな」

 

「ところでさ、うちと不知火って側から見たらどんな関係に見られてると思う?」

 

「どこからどう見ても兄妹だろうな」

 

「兄妹、兄妹かぁ……どうやったら恋人として見られるんだろうな?」

 

「身長伸ばせよ」

 

「なんでうちってこんなにちっせーんだろう……」

 

 

ずーんという効果音が着きそうな程に寧音はくらい雰囲気を漂わせながら落ち込んだ。身長のことで落ち込むと何を言っても無駄で、元に戻るまでが長く事はこれまでの付き合いで分かっているので何も言わずに寧音の手を引いてトゥワレに向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、買った買った」

 

「おかげでうちの財布がお亡くなりになったけどな……」

 

 

宣言通りにトゥワレで俺と火乃香の服を買い漁った事で寧音の財布は見事にダイエットに成功していた。生憎と服に関するセンスは無いので店員と相談しながらの買い物になってしまったが、それでも良い買い物が出来たと思う。それに寧音だってしっかりと自分の服を買っていた。ただ、時折ランジェリーコーナーへと姿を消していたのは……うん、考えないようにしよう。

 

 

「そろそろ良い時間だな。映画観に行くか」

 

「よっしゃ、〝男たちの失楽園※R15〟観ようぜ」

 

「よりによってそれをチョイスするのかよ……!!」

 

 

どこからどう見ても嫌がらせだ。自分から言いだした事なのにどうやら根に持っているらしい。映画を観ないという選択肢は存在せず、他の2作も地雷臭がプンプンする物しか存在しない。

 

 

どうやったらこの危機的状況を脱する事が出来るのか頭を回転させているとーーー銃声と悲鳴が響き渡った。

 

 

 





映画に関する情報があまりにも少ないので、某剣士戦のようにカットするしか出来ないという悲しみ。どんな内容だったのかは各自で想像してくれ。


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