修羅の願うは英雄譚   作:鎌鼬

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新たな季節・2

 

 

「はーい、新入生の皆さん!!入学おめでとーーーって言いたいんだけど、なんで新城君は初日からジャージ姿なのかな?」

 

「合法ロリに制服ボロボロにされてひん剥かれそうになったから」

 

 

2度目の一年生を始めるに当たって担任となった顔色の悪い若い女性教師、折木有里(おれきゆうり)が1人だけジャージを着ている俺の姿を見て質問されたので素直に答える。朝一の運動の時に制服を着たまま寧音を相手にして動いていたのだが、その時に寧音に襲われそうになり、抵抗した結果、制服が服としての役割を果たせなくなるほどにボロボロになってしまったのだ。新しい制服の申請はしているが発送の関係で半日ほど掛かるらしく、それまではジャージで過ごせと理事長からも許可を貰っている。一応罰として紅葉おろしを学園の外壁一周分を実行したのだが、寧音は傷一つつかないで逆に恍惚とした顔になっていた。

 

 

そして質問に答えた時に合法ロリというワードに反応して一部の男子生徒が席から立ち上がり、女子生徒から絶対零度の目線を向けられて半分ほど着席した。

 

 

残り半分は絶対零度の目線にも負けずにいた猛者なのだが、一部の女子生徒が対抗意識からか制服の上着を脱いで胸を強調するポーズを自然に行う事で正気に戻して座らせていた。

 

 

「……私が1年1組の皆さんの担任をさせていただく、折木有里です。ユリちゃんって呼んでね!!」

 

「お、さっきのこと無かったことにしたぞユリちゃん」

 

「不知火……止めるんだ……!!さっきの芸風は彼女には早過ぎる……!!」

 

 

確かにさっきのは理事長や寧音ならさらりと流し、月影さんなら苦笑いで済ませそうなのだが折木先生はまだそんな対応が出来るほどに教師歴が長く無いので無かった事にしたのだろう。

 

 

寧ろ、そんな状態でよく教師をやろうと思ったと感心する。

 

 

一輝の様に数合打ち合っただけで相手の剣術全てを見通せる様な観察眼は持ってはいないが、それでも目には自信がある。そんな俺の目からして、彼女の状態は奇跡の様な物に見えた。〝七星剣武祭〟の代表を決める選抜戦の説明を流し聞きしながら話す折木先生の身体を観る。彼女は身体中を病魔に侵されていた。全身の至る所に何かしらの病気を患っている。しかもタチの悪い事にそのどれもが重症ではあるが致命的ではない。こうして教壇に立って話しているだけで絶え間ない苦痛を味わっているはずなのに、折木先生は顔色を悪くしながらも笑顔で振る舞っていた。常人ならば発狂してしまう苦痛の中で、彼女は笑っている。何が彼女をそこまでさせているのかは分からないが、その意志力の強さには感服するしか無い。

 

 

俺が片思いしていなければ、口説いていたかもしれないなとあり得たかもしれない未来を想像して思わず笑ってしまう。

 

 

「じゃあみんな、これからの1年、頑張ろぉ!!はーいみんなで一緒に……えいえい、オブファーーーッ!!

 

 

……そんな未来を想像していたのがいけなかったのか、折木先生が突然吐血し、目の前にいた俺はその血を頭から被る事になってしまった。これは片思いしているのに他の女性を口説こうかと考えてしまった罰なのだろうか。寧音とヤった時にはこんなことは無かったのだが、やっぱりあいつは論外らしい。これからは他の女性に目移りしない様にしないと。

 

 

「「「ゆ、ユリちゃぁぁぁぁあん!?」」」

 

「あー大丈夫大丈夫、みんな落ち着いて。折木先生ってものすごい病弱で良く吐血するから」

 

「せ、先生の日課は1日1リットルの吐血だから……」

 

「嫌な日課もあったもんだな」

 

 

ジャージの袖で顔を拭って視界を確保して席から立ち上がり、口の端から血を流している折木先生に肩を貸す。

 

 

「ちょっとこれの処理のついでに先生を保健室に運んでくるから、後片付け任せても良いか?」

 

「うん、僕がやっておくよ」

 

 

同じクラスになっていた一輝がそう申し出てくれたので任せる事にして、ダウン寸前のボクサーのようになっている折木先生を連れて教室から出る。

 

 

「ありがとう、それとゴメンね新城君……折角のおめでたい日に頭から血を被せたりして……」

 

「ジャージのクリーニング代は先生持ちでお願いします」

 

「ゴフーーーッ」

 

「吐血すりゃあ許されると思うなよ……ッ!!」

 

 

クリーニング代のワードを聞いた瞬間に折木先生は再び吐血して今度は俺のズボンが真っ赤に染まる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……始業式から災難だった」

 

 

折木先生を保健室に運び、途中で見つけたシャワー室で服ごと血を洗い流す。まだ赤いシミがジャージの彼方此方に残っているが、それでもさっきまでの全身真っ赤っかよりは良いだろう。クリーニング代の要求は本当なら本人にしたいところだが、あの様子だとその話を持ちかける度に吐血しかねない。理事長に彼女の給料から天引きしてもらえないか相談することを心に誓う。

 

 

能力である炎で手早く服を乾かしながら午後からの予定を考える。折木先生から今日はこれで帰って良いと言われたのでこれを教室に残っている生徒たちに伝えた後はフリーになるのだ。先ずすることは理事長に預けていた火乃香の回収、次に頼んでおいた制服の受け取り。残った時間は綾辻の特訓に回すか。

 

 

綾辻との特訓はひたすら俺との模擬戦をするだけだ。訓練場が確保出来ればそちらでやるのだが今日は難しそうだから空いている場所でやる事になるだろう。綾辻が力尽きるまで続け、しばらく休憩をしてから再開する。綾辻はキチンとした師匠がいるからかすでに土台は出来上がっていた。だから後は経験を積んで習い修めた物を自分の物として磨く事だけだ。その為には模擬戦が手っ取り早い。本当だったら能力有りで()()()()をさせた方が早いのだが、流石にそれが出来るほどに精神が成熟していないので断念した。それを綾辻は文句一つ言わずに素直に従ってくれている。オヤジから教わったやり方とは全く異なったやり方だが、日に日に綾辻が成長しているのを感じられる。

 

 

今日はどこまで強くなるのか、明日はどれだけ強くなれるのか、綾辻の成長を楽しみにしながら教室に辿り着くと、その目の前には1組の生徒たちが廊下に出て教室を覗き込んでいた。

 

 

何事かと思いながら人混みを断りを入れながら掻き分けて教室を除くとーーーそこには銀髪の小柄な少女にキスされている一輝の姿があった。

 

 

 






ユリちゃんを原作で見て、wikiを見てからどうしても逆十字にしか見えないの。だって患っている病氣の方が少ないとか書いてあったし……他人を羨まなかったらセージはこうなっていたかもしれないと考えて、それってソフ◯ップじゃんと勝手に納得した。

裏で着々と進む絢瀬ちゃん改造計画。原作だと一輝が構えの指摘してるんだけどラストサムライと言われてた綾辻パッパがそんな事に気付かないはずが無いんじゃないかと考えて綾辻パッパの手により構えはすでに矯正済み。こうでもしないとロリ夜叉が発情するからネ!!


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