魔王降臨 暴虐の双角竜   作:丸いの

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3. 冒険者の常識

「はっはっは、そりゃ本当に化け物だ!!」

 

 無精髭を生やし、ヒョロリとした男が目の前でパンパンと手を叩き、何が可笑しいのか馬鹿笑いしている。喧騒溢れる定食屋の中でも、今俺らは一際目立っている。隣のカップルなんぞちょっぴし引いているではないか。それを見ながら俺はどうしてこうなった、と心の中で悪態をついた。

 

 

 

 俺はニーガ統括との会見を終わらせた後、イトと適度なスキンシップ、もとい模擬戦をした。訓練所の一角を貸し切りにして、木剣をもって相棒に挑んだ。結果は上々、本気モードではないイトは何度かのぶつかり合いの後に負けを認めてくれた。しかし実戦ではこんなに甘くはない。特にあの"竜"には既存の戦い方は通用しないだろう。俺が大地に立っているとするならば、奴は聳える霊峰の上から俺を見下す、もはや馬鹿げた程の戦力差であろう。

基本的に冒険者達は魔物に対して真正面から戦いを仕掛ける事が多い。多対一や巨龍種相手など極端な場合を除くとだが。

 何故かは単純。オーク鬼やゴブリン等は勿論、龍種ですら大きいとは言えどもあんな要塞みたいな大きさでは無い。下手に小細工を仕掛けるよりもその方が効率が良いのだから。

 

 しかもそれに拍車をかける物が存在する。騎士道だか王道だか知らないが、そんな最近になって冒険者達に根付いた固定観念だ。使える物は何でも使え、裏回りなんぞ基本中の基本、といった俺とイトの戦い方とは違い、ただひたすらに正面からの戦いを好むのだ。有名どころのパーティーなんかは揃いも揃ってそれを信条としている。

 

 確かにご立派で堂々とした物だ。しかしそれは冒険者の命を無駄にゴリゴリと削っていく考えにしか思えない。少なくとも俺には。結果が揃えばそれで良いんだ。たとえ卑怯だとか外道だとか言われても、だ。王道で挑んで失敗した人間が、外道で挑んで成功する人間をとやかく言うのは筋違いだ。

 

 俺はそんな事を模擬戦が終わった後、イトに向かって述べていた。イトも同感なのか、コクリコクリと話の節々で頷いてくれた。しかしその一人と一匹の対話に耳を傾けていた輩が存在した。柱の影からひょっこり現れ、小振りの剣を腰に据えた、ヒョロリとしたエルフみたいな体型の男。いきなり近付いてきたと思ったら――

 

「兄ちゃん、話が解るなぁ!!」

 

 ご覧の有様だ。話は聞かせて貰った、とばかりに色々話しかけきた。話の中で確かに共感できる物が有った。俺同様の信条を持った冒険者など殆ど会った事が無いのですぐ打ち解けてしまった。声はデカいけれども。そしてあれよあれよという間に気付いたら街の定食屋で討論会がスタートしていたのである。

 

 

 

「ああ、あんな竜見たことが無いよ。あれを見て正面からぶつかろうなんて野郎には金貨3枚くれてやるさ」

「そりゃトンだ猪突猛進野郎だ!!」

 

 ガッハッハ。この男、笑いが止まっていない。この街である程度の帰還は冒険者として活動していたためか、その顔くらいは見覚えはある。まだしかし互いに名前も知らないのに、話が進む進む。むしろ今までこう意気投合をしなかったことが不思議なくらいだ。やってきた焼肉定食が腹の中に消えるのにはまだしばらく時間が掛かりそうな勢いである。

 

「今更だが名前を聞いていいか? 俺はネイス・ウェイン。ランクAの下っ端あたりで燻ってる龍操士だ」

「ランクAかい、流石だな。んじゃ、俺の名前はハンス・ルベルド。ランクBの、一応は剣士だ。騎士道なんざ糞食らえだがな!!」

 

 ガッハッハ。また笑う。そんなに笑っていて、腹筋とかは大丈夫なのだろうか。

 

「ハンスさん、か。東部の出身で?」

「さんなんぞ要らん。よく解ったな。確かに出身はあの無駄に名前がカッコいい連中が集まった区域だ。ここの言葉に慣れると地元の方言や訛りが妙にむず痒く感じる。で、お前さんは?」

「俺は南部の湖水地方さ。相棒もそっから連れてきたんだ。本当、西部の空気はカラッとし過ぎだ。共々時々体に堪えるよ」

「なるほど、あのご立派な森緑龍は南部系か。ここいらでは殆どお目に掛かれないからさっきは非常に目に付いたぜ?まあ慣れないと辛いのは解る。しかしワインが旨いっつーのはかなりのアドヴァンデージだと思うがな?」

「ああ、違いない」

 

 この地方の特産のワインは渋みや甘味、辛さが絶妙なバランスで飲む人の舌を魅了する。現地贔屓ではなく、ここに勝るワインはそう無いだろう。その甲斐あって需要は国内に留まらず、隣国にすら渡る。そんな訳でワインは主要産業の一つとなっているのだ。しかし、あの"竜"の存在が恐らくそれに待ったをかけるだろう。

 

「今回の一件、長引くとかなりこの街のワイン業者にはキツイ物になるだろうな。そのうち王都のワイン中毒者な貴族が喚きだすぜ?」

「確かにな。砂漠は隊商にとっては王都へ通じる有用な道のり、しかも途中休憩ポイントとしてのゴゾ村は民が隣村に避難中だ」

「それにしても"双角の竜"か……先にいた火炎龍なら腕利きの冒険者で何とかなったろうに、こればっかりは辛いな」

「"未確認の"って言うオプションも漏れなく付いてくるよ。一応俺がその何とかしようとした冒険者なんだよな。腕利きなんかじゃ無いけどさ」

 

 きちんとした確認が取れない今、この"竜"の話はギルドは全体に向けて喋ってはいない。偶然にも今は砂漠方面への仕事は舞い込んでいないようで、話を知る冒険者は殆ど居ないのだろう。それに全体に知り渡ってでもしたら、すぐさま、「俺が」「いや、俺が」「いやいや、俺が」「じゃあ俺が」といったように腕に自信のある皆様方が実態を詳しく知らないままこぞって名乗り出るに違いない。

 

「しかし手早い撤退、か」

「ははは……そこは勘弁してくれ。俺だって命は惜しいんだ」

「いやいや、むしろかなり評価できるぜ?ギルドや村に情報を伝えるといった最重要な事柄をすぐさまやっている。見敵必殺しか頭に無い連中には逆立ちしても出来ない行動だからな」

 

 威勢よく笑うだけかと思っていた彼は、今度は一点して真面目な顔でそう言ってくる。このアップダウンの激しい感じが、彼の特徴なのだろう。

 

「まあ一人で挑むのが完全に無理な状況だったからな……現実的にも、加えて精神的にもさ」

「そんなもんさ、気に病む話じゃねェよ。そう言えば今朝方ギルドの酒場で酔いつぶれてた時に砂漠の偵察依頼に行った連中が居たな。今考えてみると"竜"関連なんだろうかねェ」

 

 それは多分ゴンゾのメンバーだろう。砂漠までは馬を飛ばして凡そ五時間余り。そして今はもう正午過ぎだ。早朝に出て行ったという事は、もう既に"竜"と遭遇してもおかしくは無い。

 

「統括の話じゃゴンゾのパーティーだそうだ。依頼は偵察のみと言っていたが……果たして我慢出来ているかな?」

「ゴンゾ……ゴンゾ……あー思い出した、バインバインのネーちゃん引き連れたあのガキか。いやー、難しいだろうな。なんたって連中は俺らとは対極にいるようなモンだろーからな」

 

 対極、か。勝てば良いんだ、という共通認識を持つ俺たちに対して、ゴンゾ達は全く逆の見解を持っている。いや、むしろそれが冒険者の"普通"だ。

 

「なんで敢えてゴンゾのメンバーに託したのか……俺にはさっぱり解らないよ」

「まったく同感だ。どーせ下手にちょっかいでも出して手痛い反撃食らってんじゃねーかね?」

「……あの"竜"に反撃を受けても、それで帰還出来たらほぼ満点だ。最悪なのは情報を持ち帰らずに、そのまま砂漠で息絶える事だな」

 

 言ってて自分が同じような境遇だったのを思い出し、今更ながらに寒気が走る。俺はこうやって五体満足で飯を食ってるが、それはちょっかいなんぞ出さずにすぐに逃げてきたからだ。下手に手を出して、本当にあの化け物から逃げ切れるのか?もやもやとした考えが頭の中で燻る。

 

「まあ、何とかなるんじゃねーか?諦めて逃げるにしても、たしか腕の良い魔道師が居ただろ?下手に攻撃に魔法を使わず、ひたすら閃光やら煙幕とかをぶっ放し続けてりゃその内逃げられるさ」

「いや……随分と好戦的な連中だから最初に大魔法をバカスカ撃ち込んでいる可能性がある。下手にあの"竜"を怒らせてみろ。連中、全員揃って帰ってこない可能性も否めないよ」

 

 俺がそう言うと、ハンスは「ふんっ」と鼻で笑った。

 

「妙に心配してるじゃねーか。まあ仮にそうなったとしても、連中そがの程度の人材だったって事だけだぜ?」

 

 確かにその通りだ。結構残酷に聞こえるが、依頼主が余程貶めようとして無い限り、生きて帰ってこない方が悪い。今回はちゃんと"偵察"とあったのだから、依頼主のニーガ統括には非は無い。敢えて言うならば、バトルジャンキーって事を把握してたんなら別のパーティーに斡旋すれば良かったのに、という事くらいか。

 

「まあ中途半端なランクの俺が言うのもアレだがよ、戦う前からある程度の戦力把握が出来ない奴はザルだ。腕が立つにしても、これが出来ない奴はずーと雑魚のままなんだよ」

「ははは……つまり戦力把握してから、その敵に合った戦い方を編み出すような冒険者はパーフェクトと言った所か」

「ああ、違いねぇ。まあそんな完璧者なんぞ最近はいねーさ」

 

 そう言うと、ハンスはジョッキに並々と入ったビールを煽った。グッグッ、と喉を鳴らす音が聞こえる。ジョッキに付着した水滴、勢い良く飲むハンス。それは妙に板につく光景だ。

 

「かーっ、ワインも捨て難いが、冷やしたビールも堪んねえな!!」

「真昼間からか。東部の方はビール産業が盛んなんだっけ?」

「おうよ!! やっぱりビールは東部地方産に限るな。まず麦が違うんだよ」

 

 そうしてあっという間にジョッキは空になり、ハンスは泡の付いた口を手で拭った。本当、見ていて気分が良くなるほどの板についた飲みっぷりだ。どうも俺も喉が渇いてきたようだ。昼間だが、別に少しくらい良いだろう。手を挙げてウェイターを呼ぼうとして……ハンスの後ろに居る、変に爽やかな笑顔を浮かべた女の人を見つけてしまった。

 

「至福の所悪いが……ギルドの方でなんかやらかしたのか?ツケを溜めてるとか、受付の人とアレな関係持っちゃったりとか……」

「へ?いきなり何を……」

「ちょーっとすいませんねー?やっぱここに居たー」

 

 後ろに居た女の人、もとい受付嬢がズズイと前に出てきた。皆の憧れ受付嬢。見た目は可憐だけど実態は冒険者相手にヒラヒラと隙を見せずに舞う狸と言った所か。さまざまな漢達が突撃し、ことごとく撃墜されたとか。名前の通り受付を根城とする狸が、何故こんな時間に受付を離れて定食屋にまで出向いているのか。俺には心当たりは無い。

 

「あははー。私がこんな細マッチョ無精髭と関係持つわけ無いでしょー」

 

 そんな彼女は、こちらの内心を見透かすかのように真意を感じさせない口調で言い放った。

 

「げぇっ!?なんでお前がここに居るんだ!?あとネイスや、俺もこんなチビ狸は興味無いね」

 

 おお、ハンスは見た目に騙されない派か。ここでも気が合うとはな。

 

「ツケの件は、まあ今は置いといて。それよりもハンスさん!! 統括からお呼びが掛かってますよー」

「統括? 何でまた……ん……あぁ、まあそうか。そーゆー事か」

 

 ポンと手を叩き、何処か納得した様子のハンスが食器を置いて立ち上がった。何だろう? やっぱり何かやらかしたのか?

 と言うか統括か。いつもはあんまり動かないイメージがあったんだが、今日は随分と忙しいんだな。しかしこのタイミングで統括が話を伺うなんて……まさか"竜"関連か?

 

「さてネイスよ、俺はちょっと外せない用事が入ったんだが……面白そうだからお前も付いて来いよ」

 

 今まで普通に会話をしていた相手が、この件の関係者である事に驚きが隠せない。だが今はそんな事には構っていられない。"竜"関連ならば興味がある。何たって俺は一応第一発見者なのだから。ここで断る理由など欠片も存在しない。

 

「ならば遠慮無くご一緒させて貰うよ。確かに面白い事になりそうだからな」

 

 そう言うと、ハンスはニヤリと意味深な笑顔を浮かべた。まるで「どういう件か解っているんだろう」と言わんばかりにだ。確かにこれは面白い事を聞けそうだ。なので俺はその笑顔に対してニタリ、と笑い返した。

 

「んー、ネイスさんも事情はご存じなんですよね? ならば別に良いでしょー。ささ、付いて来て下さいな」

 

 受付嬢は踵を返した。混雑した中を器用にヒョイヒョイと出口に向かっていく。何とも言い難い、まるで中身の解らない宝箱を前にしたかのような感覚が胸の中に沸き起こった。

 

 

* * *

 

 

 双角の竜が出没した砂漠の北部、ゴツゴツとした岩場を小さな二つの黒い影が駆けていた。彼らは後ろを振り返らず、ただ一心不乱に前を目指す。照りつける太陽や、吹き付ける熱風にも屈せずにひたすら前へ前へと進んでゆく。

 

「ギィ!!ギィ!!」

 

 前からの風で片方が纏っていた黒いフードが捲れ、ゴブリン特有の茶色い顔と尖った耳が露わになる。しかし彼はそれにも構わずひたすらに走り続けている。入り組んだ岩場を縫うようにして彼らは前へ前へ、彼らの集落を目指していた。

 

「ギギギ!!」

 

 片方がもう一方に何かを合図した。そして両者は走りから一変して岩壁を背にして蹲った。その瞬間、二匹の頭上を大きな岩塊が通り過ぎ、前の岩壁にぶつかり、爆散した。一瞬で通り過ぎたソレは、もし彼らが走り続けていたら彼らをペーストのように押しつぶしただろう。

 それを確認した二匹はまた前に駆けだす。だたひたすら、後ろから迫りくる"捕食者"から逃げ切るために。入り組んだ岩によって目視することの出来ない、彼らを追いかける"捕食者"の気配が刻々と近付いてくる。発達した"四本"の脚で邪魔な岩を砕きながら強引に走り進む音、それが絶え間なく彼らの尖った耳を刺激し続けていた。耳障りな音と共に響く振動は、既に彼らの唯でさえ少ない理性を根こそぎ奪い去っていた。彼らは気付いていない。この逃げるという行動が、集落へ破滅を導いている事には。

 

「ギギィ!!」

 

 やっと見えてきた天然の中身がくり抜かれた巨岩を用いた集落の入り口。大きな岩壁に小さなトンネルの付いたソレは、外敵の侵入を防ぐ強固な門として岩地に聳えている。目視出来る範囲に入った事で彼らは最後の踏ん張りと走るスピードを速める。しかしそこで"捕食者"の走る音が急に止む。

 

 片方は先ほどと同じようにして壁に張り付き、もう片方はそれに気付かず、見えてきた集落に向かってひたすら走り続けた。状況を把握した一匹は、頭の上を岩が通り過ぎるのを待とうとした。しかしその瞬間、彼は黄色の瞳に驚愕を浮かべ、目をこれでもかと言う程までに見開いた。

 

岩は飛んできていない。しかし別の、巨大な影が飛び掛かってきている光景が目に映った。

 

「ギィィィ!!」

 

 開かれた大顎、黒光りする爪、黄色と青の縞模様の巨大な影、すべてを把握した所で彼の小さな体は押し潰された。グシャリという音が、その後に続く大きな着地音によって打ち消される。

 

 走り続けたもう一方は仲間の最期にも後ろを振り返らずに、やっと入り口に辿り付いた。

何かを噛み砕く音が彼の耳を刺激する。体中を震えが走る中、暗いトンネルの中で足掻き続け、やっとの事で集落の中にまで入った。

 

「ギギギ……」

 

 そこに待ち受けていたのは、外からいきなり聞こえてきた"捕食者"の音に怯える同族の姿。ちゃんとした出入り口は彼の後ろのトンネルのみだ。彼らは音と共に入ってきた一族の一人を見つめた。

 

"お前、変なの連れてきた!!"

 

 ギィィギィィと全員は彼に向けて非難を浴びせた。泣きわめく子供を抱えた雌のゴブリンは刺すような目つきで彼を睨み付ける。しかしその膠着は一瞬にして止む事になる。岩の向こうから、ドンと地面に何かを押し付ける音が二回響いた後に、そのちっぼけな体ごと吹き飛ばされるような爆音が響き渡ったのだから。

 

 トンネルの向こうから爆音によって飛ばされた砂が入り口から一気に舞い上がる。殆どが耳を塞いでなく、彼らの多くが一瞬の内に鼓膜を破壊された。赤ん坊、雌、雄、老体、多くのゴブリンが尖った耳の奥から血を流す中で、逃げてきた彼は後ろの岩壁を茫然と見つめていた。そこには大きなヒビが走っていた。外敵からの脅威を守ってくれる筈の大岩にだ。

 

 ブルブルと彼は震える。頭の中を巡るのは、自分を追ってきた"四本脚の捕食者"が岩壁を突き破って入ってくるイメージだけ。そしてそれは直後に事実となった。

 

 ヒビの入った分厚い岩壁は、大爪の生えた"捕食者"の強靭な前足によって一撃で粉砕された。弾け飛んだ礫が集落の中に降り注ぐ。そしてぶち抜かれた大穴を起点にして、集落を覆う巨岩が崩れ始めた。巨大な岩盤が老いた仲間の上に落ち、悲鳴が上がる。子供を抱いた雌のゴブリンの逃げ惑う声がする。突然の集落の崩壊の中で、彼はただ前を見た。

 

 大穴の向こうから見据える、緑色の目。開かれた大顎に並んだ鋭い牙。それが彼の最期に見た光景であった。

 

 

 

 僅か二時間後、砂漠を通る上で慢性的な問題となっていたゴブリンの群れは、強大な"捕食者"によって拠点ごと殲滅された。肉片と巣の残骸が踏み砕かれ、大きな爪痕の残る足跡は赤黒い色を残す。粗方満足するまでの食事を終えた"捕食者"は、ゆっくりとした歩調で血やボロキレが散乱し、瓦礫と化したゴブリンの集落を後にした。

 ズシリ、ズシリと足音を立てながら、彼は熱風の吹く荒れた大地を徘徊し続ける。ただ食物を探す為に。


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