12月19日——
ケルディック解放から翌日、カレイジャスは再び帝国東部の空を飛んでいた。
そして今日もオリヴァルトからの要請があり、レト達はユミルにある旅館、《鳳翼館》から依頼があったのでレト達は旅館を訪れていた。
「こんにちは、バギンスさん」
「おお、若! もしや依頼の件で来てくださったのですか?」
「ええ、まずは話を聞かせてもらおうと思って」
「最近、ここの露天風呂で不審なコトが起こるってー?」
「はい、それも夜な夜な……実に様々な現象が。 どこからともなく、奇妙な音が聞こえたり……壁に映った導力灯の影が動いたり……空に向かって“白い影”が飛んでいくのを見たという報告もあります」
「それはまた……」
「マ、マサカのそっち系!?」
(うーん、どこかで聞いたような状況だなぁ……)
覚えがあるようで思い出せずに頭を捻るレト。 その間にもリィンはこの件を引き受ける事にし、問題を解決するため他のVII組メンバーを旅館に呼び、事情を説明した上で、夜の露天風呂を男女で交代しつつ見張る事になった。
最初にレト達、男子が温泉に入り。 一応、警戒しつつも露天風呂に浸かり堪能していた。
「ふぅ、やっぱり露天風呂は落ち着くな」
「ああ、本当に最高の気分だ」
「でも、調査といいつつこんな贅沢していいのかな?」
「フフ、まあたまにならいいのではないか?」
「ああ、むしろこのくらいは当然だろう」
「うーーーーん……」
ほぼ調査の事など忘れかける中、露天風呂に入る前からレトだけが渋い顔して唸っていた。
「レト、さっきからどうしたの?」
「いい加減喧しいぞ」
「いやね、リベールにいた時同じような事があったんだよ」
「リベールで? もしかしてエルモ村の温泉か?」
「うん。 そこで今みたいに調査といいつつ湯に浸かっていて……そしたら何と……」
「ちょっと、皆くつろぎすぎー!」
と、その時、突然ミリアムが露天風呂に入ってきた。 湯着を着ているとはいえ、多少の恥じらいを待って欲しかったが……どうやら交代の時間のようで、レト達は露天風呂を後にした。
「それにしても本当に何も起きないね」
「取り越し苦労だったのか?」
風呂から上がり、着替えを済ませたその時……大きな水飛沫の音と共にアリサの悲鳴が届いてきた。
「今のは!?」
「まさか……!」
「ちょ、リィンにレト!?」
悲鳴を聞きつけレトとリィンがいち早く露天風呂に飛び込んだ。 するとそこには……湯着を着た女性陣の前に、数匹の白い毛のヒツジンがいた。
「皆、大丈夫か! ここは俺達に任せて……」
「あ、しまった……」
後悔しても後の祭り。 側から見れば、レトとリィンは女性が入っている露天風呂に堂々と入って来た絵面となった……
少しの間時が氷り、レトとリィン、女性陣の間にユミルの冷たい風が流れた。
「きゃあああ!!」
「リ、リィンさん!?」
「レト、そこに直れ!!」
「覚悟してもらう」
「ちょ、それより魔獣が……!」
魔獣よりも素肌を見られる事の方が重大のようで、女子達は目くじらを立てて男子2人を睨みつける。 その間に、ヒツジンの群れが柵を飛び越え。 露天風呂から逃走した。
「ひいふう……6匹か。 お仕置きは後——今は魔獣を追いかけるわよ!」
兎にも角にも先にヒツジンを追いかけ……後から追いついて来た女性陣とユミルの入り口にたどり着いた。
「逃げたのはこの先みたい」
「坂の下か……となるとボードで追った方が早そうだ」
「あ、だったらボクもガーちゃんと一緒に追いかけるー!」
「それなら僕も先行する。 木を伝って行けば雪道も関係ないし」
「あの数だ。 二手に分かれた方がいいだろう」
「そうだね。 その方が効率が良さそうだし」
そうと決まり、リィンはボードに、ミリアムはアガートラムに乗り。 レトは跳躍して木から木へ飛び移ってヒツジンを追いかけだした。
「それにしても……何でヒツジンは覗きをするんだろう?」
以前にリベールでも似たような事を経験したレトは、魔獣の生態について不思議に思いながらも森林の中を逃走するヒツジンを見下ろした。
「フッ!」
枝を蹴り一気に急降下、鉤爪ロープを取り出すと先頭を走っていたヒツジンを捕まえて支点とし……ロープを回して残りのヒツジンを搦め捕った。
「いっちょ上がりっと……」
ロープはゴムで出来ており、弾性があって力強くでは切れにくいがヒツジンには一応爪がある。 思いっきり引っ張って走り出し、森を抜けてユミルの麓付近に投げ飛ばした。
ちょうどそこにはリィンとミリアムもおり、残りのヒツジンも捕まえていた。
「よっ……リィン達も残りの半分を捕まえたんだね」
「そっちもやるねー! さっすが、レト!」
「さて、もう逃げ場ない。 悪いが、人里に現れた魔獣を放置しておく訳にもいかない……観念してもらうぞ!」
と、ちょうどそこへアリサ達も遅れてやって来た。
「大丈夫、リィン?」
「待たせたな、レト」
「それが先ほどの魔獣ですか……」
「またこの羊もどきか……」
「ふむ、今回は白一色のようだな」
白い毛が雪景色と同化し、保護色の効果を発揮しているのだろう。 この地域ならではのヒツジン……その時、いきなり辺りに地鳴りが起き、6匹のヒツジンが振動で飛び跳ねる。
「こ、この振動は——」
「来るよ!」
激震しながら現れたのは2匹の巨大なヒツジン……ヒツジン・ザ・ボスだった。
「わわわっ……すっごいや!」
「群れの仲間のようだな」
「覗き魔獣といえど、気を抜くなよ!」
「行くぞ、皆。 気合いを入れてくぞ!!」
『応!!』
レト達は一斉に飛び出し、ヒツジン軍団と交戦を開始した。 数では劣るが練度では圧倒的にこちらが有利、次第に押して行き……数分後に制圧した。
「ふう……こんなものかな」
「所詮は魔獣。 まあ、覗きなど低俗な事をしでかしたコイツらは野獣だろうがな」
「な、なんか上手いこと言ったね……」
「ちょっと面白いかも」
その会話が聴こえていたのか、1匹のヒツジン・ザ・ボスが怒りを露わにし、力を溜め出し始め……
——ヒツジン
「なっ!?」
「ええぇ!!」
力を解放するように高く飛び上がり、それに向かって4匹のヒツジン・ザ・ボスと、12匹のヒツジンが合わさり……
——完成! キング・オブ・ヒツジン!!
ヒツジン一族の最終究極奥義により今、ヒツジンの王、キング・オブ・ヒツジンが誕生した!
「また合体したよ」
「く、くっ付いているだけなのですが……」
「お、大きいね……」
5匹のヒツジン・ザ・ボスが両手両足と胴体を作り、片方の手に5匹ずつヒツジンが手の指のようにくっついている。 残りの2匹は胴体のヒツジン・ザ・ボスの頭の上に針葉樹の葉を被せ、頭のように見立てながら自身を目に見立てた。
一見すればお伽話に出てくる
「……流石に厳しそう……」
「フン、見てくれを大きくした所で所詮は木偶だ」
「しかし、確実に苦戦を強いられるだろう」
「…………だったら、やるしかない」
あの巨体相手に無謀だと判断したリィンは突然、太刀を納めた。 そして右手を握りながら目の前に上げる。
「リィン?」
「も、もしかして……」
「ああ、彼で行く。 レトも準備はいいな?」
「もちろん! 流石に驚いたけどね!」
意図が読めたレトも続いて槍を納め、左手を握りながら胸に当て……
「来い——灰の騎神《ヴァリマール》!」
「出でよ——緋の騎神《テスタ=ロッサ》!」
『——応ッ!』
握りしめた拳を開きながら同時に天にかざし、2機の騎神を呼んだ。 するとすぐに飛行音が聞こえ……灰と緋の騎神がユミルの地に降り立った。
レトとリィンはそれぞれの騎神に走り寄って転移して騎乗し。 ヴァリマールは太刀を、テスタ=ロッサは槍を抜いてキング・オブ・ヒツジンと向かい合った。
『やれやれ、こんなの相手に騎神を使うなんて……前代未聞ね』
『仕方ないだろ。 あんなに大きくなると切り崩すのも大変なんだから』
『ま、たまにはいいんじゃないかな。 こんな事があっても』
『ナァー!』
キング・オブ・ヒツジンが接近、腕を振り上げて拳を繰り出して来た。 見た目に反して重い一撃、防御するもテスタ=ロッサは後ろへ弾かれてしまう。
『うわっと……凄い力だね』
『これが団結による絆の力か……だが、俺達だって!』
『うん、そうだね!』
2機の騎神は飛び出し、太刀と槍を振るう。 しかし、刃は羊毛によって防がれる。 いや、防がれると言うより羊毛だけ斬り裂き肉に届いていないだけだ。
キング・オブ・ヒツジンは両手を前に出し、ヴァリマールの肩を掴むと物凄い力で押さえ込んだ。
『っ……なんて握力だ!』
「……あっ! あれって!」
「ヒツジンが!」
手の平であるヒツジン・ザ・ボスと指となっているヒツジンが力を合わせることにより強い力を発揮していた。
「1匹だけじゃない……何匹ものヒツジンの力なんだ!」
『とにかく離れろ!』
槍を振り下ろし、両腕を落とそうとすると……肩と腕の付け根が取れ、空振りになった。
『えっ……!』
『そ、そうか……実際の腕じゃないから取れて当然なのか!』
「くっ付いているだけだからねー」
ヴァリマールは肩に残っていた両腕を振り払う。 腕は一度バラけてから身体にくっ付き、再びキング・オブ・ヒツジンとなる。
そして、キング・オブ・ヒツジンはその巨体を揺らし、突撃してきた。 迫ってくるヒツジンにレトは防御の構えを取る。
『ぐうっ……!』
必殺☆ヒツジン圧殺拳——キング・オブ・ヒツジンは勢いのままアッパーを繰り出してテスタ=ロッサを殴り上げ、飛び上がってテスタ=ロッサを飛び越え……上から押し潰し地面に叩きつけた。
『うわあああっ!!』
『レト!! 離れろ!』
無明ヒツジン五段突き——助け出そうとするヴァリマールに迫る拳、太刀を構えて防御し、衝突すると……指となっている5匹のヒツジンが蹴りを繰り出し、大きく太刀が弾かれてしまった。
『くうっ……!』
『リィン!』
「危ない!」
拳を繰り出した後、左脚の蹴りを出してきた。 無理な体勢での蹴りだが、蹴り事態左足のヒツジンの独断……キング・オブ・ヒツジンとしての左脚とヒツジン・ザ・ボスの両脚が直撃しようとした瞬間……
「——守って、クレセントシェル!」
後方から飛んで来たエマからの援護。 月の光の力を有した障壁が2機の騎神を覆い、キング・オブ・ヒツジンの攻撃を防いだ。
『燃え盛れ……! 参ノ型・業炎撃!!』
防いだ瞬間を狙い、リィンは弾かれて上段に構えた太刀の刀身に炎が纏われ……振り降ろすと同時に火柱を上げた。
それによりキング・オブ・ヒツジンが纏っていた雪の鎧が溶け、雪が水とり羊毛を濡らし、この極寒の地の気温と風で毛がカチカチに凍りついてしまった。
ここぞと機とばかり2人は駆け出すが……
『なっ!?』
『硬っ!?』
動きは鈍くなったが逆に防御力が増してしまい、剣と太刀が弾かれてしまった。
『やあっ!』
レトは槍を腹に突き刺すが氷の毛に防がれる。 反撃され、槍を手放し避けるしかなかった。 しかし、それでは終わらず、リィンが太刀を地面に突き刺して手放し……
『はあああ——破甲拳!』
強烈な掌底が槍の石突きに直撃。 押し出され、氷の毛を砕いた。
「やった!」
「今だ! 行くぞレト!」
『了解!』
レトが上空に飛ばされる槍を回収し、剣を抜く中……機を狙いラウラがアークスをテスタ=ロッサに向ける。
「そこだ、アクアマター!」
『行け!』
ラウラから導力が送られ、テスタ=ロッサがアーツを発動。 強烈な水の激流が巻き起こりキング・オブ・ヒツジンを襲った。
『やるよ、リィン!』
『わかった!』
レトの合図で2機の騎神が飛び出し、キング・オブ・ヒツジンを左右から挟み込んだ。
『せいっ、やっ、おりゃ!』
『はっ、ふっ、はあっ!』
お互いが交互に攻撃を繰り出し、キング・オブ・ヒツジンを押しながら前進して行き、最後に大きく吹き飛ばした。
『おおおおおおっ……!』
『はあああああっ……!』
左側にレト、右側にリィンが立ち。 一気に
『緋王——一文字斬り!!』
刹那の間に一閃。 互いの得物を薙ぎ払い、巨大な斬撃を飛ばした。 斬撃は一瞬でキング・オブ・ヒツジンを追い越し……横一文字が胴体に刻まれた。
そして、それによりキング・オブ・ヒツジンの合体が解けてバラバラになり、数十匹のヒツジンが地面に力無く落ちて行く。
『さあ、これに懲りたら元いた場所に帰るんだ!』
『次に現れたら容赦しないからね!』
そう言いながらレトはトドメとばかり、脅しのように剣を一振り、ヒツジン達に向かって風を起こした。 それにより文字通り尻尾をグルグルに巻き、ヒツジン達はその場から逃げて行った。
(シェラさんのようには行かないか……)
「ふう、決着がついたみたいですね」
「これで一件落着か」
「ああ、これだけ痛い目にあえばもうユミルには来ないだろう」
「やれやれだな。 まさか魔獣が覗きとは」
「なにはともあれ、皆お疲れサマー!」
せめてもの情けで逃したヒツジンの背を見送り、この事件は解決した。 そして一同は鳳翼館に戻り、事の次第を報告した。
「なるほど、今回の一件の正体は魔獣でしたか……」
「うーん、何だか気付けなかった自分が恥ずかしいわね」
「はい……」
「まあ、夜の暗さと雪のせいですし、仕方ないと思います」
「だね、そんなに気にしなくてもいいと思う」
落ち込む2人に、アリサとフィーがフォローする。
「しかしヒツジンの一種か……これまでにも、同じようなことはあったのか?」
「まあ、たまに迷い込んで来ることはあるんだが……続けて現れるなんてこと、今までなかったと思う」
「確かに、1匹や2匹が迷い込むのは分かるけど……あんなに大勢で来るなんて」
「幻獣にしてもそうだが……帝国で一体何が起こっているんだ?」
「……内戦の影響かもしれません。 そのせいで少なからず魔獣にも影響を及ぼしているの可能性があります」
「なるほど……考えられる話だな」
「結局、この事件が起きたのも必然だったのかもしれんな」
「うん。 僕達の手で収められてよかったよ」
「いずれにせよ、事件はこれで解決だ。 後はそれぞれ休んで明日に備えて——」
何はともあれ、リィンがその場を収めようとした時……リィンとレトが女性陣から飛んでくる不穏な空気を感じ取った。
「ん?」
「……って、どうかしたか?」
「フフ、やれやれ……」
「レト、よもや忘れたとは言わせぬぞ」
「だとしたら……思い出してもらわないとね」
ほぼ有耶無耶になりかけていたが、どうやらヒツジンを追いかける前の露天風呂突入の件についてレトとリィンは糾弾された。
「あ……」
「思い出してもらった方がいいの?」
「フィー、茶化さない! それとこれとは話は別よ!」
「あはは、2人とも災難だねー」
◆ ◆ ◆
色々と関係がこじれそうになりもしたが……何とか落ち着きカレイジャスに戻ったレト達。 すると、帰還するや否や一同はいきなりトワに呼ばれ、何があったかと思いつつブリッジに向かった。
ブリッジに入ると、艦長席に座るトワと一緒にジョルジュとアルフィンもその場にいた。
「たっだいまー」
「お帰り、リィン君達!」
「ふふっ、お帰りなさい。 兄様、皆様」
「いいタイミングで戻って来たね」
いいタイミングとは何か……それについてリィンは聞こうとすると、正面右手に大型のスクリーンモニターが降りている事に気がついた。
「誰かから通信でも届いたのですか?」
「えへへ、うん。 実はさっきビックリする人から通信が入ったの。 ちょうど今の時間にかけ直すって言ってね」
「なるほど……それで俺達をここに」
トワが驚愕する人物……その人物について聞こうとした時、タイミングよくその人物から通信が入ってきた。 トワが頷くと通信が繋がり……
『——ハロー。 聞こえてるかな?』
「あ……!」
「まさか……」
スクリーンモニターに映し出されたのはライダースーツを着ている男装の麗人……アンゼリカ・ログナーだった。
「アンゼリカ先輩……!?」
「確かにこれは驚くね」
『やあ、仔猫ちゃん達。 学院祭以来だが、元気にしてたかい?』
再開とお互いの無事を喜び合う。
『アルフィン殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう。 サラ教官も久しぶりですね』
「ふふっ、お久しぶりです。 お元気そうで何よりですわ」
「あんたも相変わらずみたいね」
「はは……でも本当に安心したよ。 後夜祭の後、ルーレに戻ってから全然連絡がつかなかったからね」
『フフ、済まなかった。 家の事もあって少々、立て込んでいたものでね』
「それは……当然そうでしょうね」
「四大名門の一角……《ログナー公爵家》だっけ」
ログナー家もカイエン家やアルバレア家同様に貴族連合に属している。 その意に沿わないであろうアンゼリカが立て込んでいるとなると……アンゼリカ曰く“親子喧嘩”一歩手前らしい。
「親子喧嘩……かなり壮大だねぇ」
「……大丈夫なのですか?」
『協力者がいるから心配してくれなくてもいい。 それより、今回は無事を報告するために連絡した訳じゃない……アリサ君に伝えておきたいことがあるんだ。 君の母上の居場所についてなんだが』
本題とばかりにその情報を伝えると、アリサは驚愕し目を見開く。
「イリーナ会長の……!」
「は、本当ですか……!? 母様は……母は無事なんですか!?」
『ああ、少々面倒な場所に軟禁されてしまっていてね。 なんとか助け出せないか策を講じているところさ。 まあ、それも私に任せて——』
次の瞬間……通信越しに、どこかで銃撃戦が始まった音が聞こえて来た。
「この音は……」
「……銃声だね」
「かなり近いで起きているね」
『……やれやれ、親父殿め。 もう嗅ぎ付けたのか』
「ア、アンゼリカさん……!」
『すまない、また連絡する! 声が聞けてよかった……こちらは気にしないでくれ!』
「アン……!」
「ア、アンちゃん、待っ——」
ジョルジュとトワが止める間も無く……アンゼリカは通信を切った。 ブリッジに再び静寂が戻っていく……
「……今のって」
「襲撃を受けていたようだけど……」
「ナァ」
「……何か危ない事に巻き込まれているのでは……?」
どうやら父であるログナー公爵にその身を狙われているようだ。 味方がいるとはいえ追われている身、劣勢を強いられているに違いない。
「味方がいるようだが、厳しい状況にあるみたいだな」
「アンゼリカさん……」
「そ、それに母様も軟禁されているなんて……」
「……さすがに心配だな」
「先輩は気にするなと言っていたが……」
「うん……さすがに見過ごせないよね」
「皆……」
「……ありがとう」
VII組の次に向かうのは《黒銀の鋼都》ルーレに決まった。 目的はアンゼリカの身の安全の確認とアリサの母、イリーナ・ラインフォルトの救出。 一同はルーレへ侵入するため、策を講じ始めた。
キング・オブ・ヒツジン……前ゼリフは某戦隊物の炎の神のやつ風に聞こえる。
見た目は天元を突破する作品の最初の方に出てきた何十連合体する毛むくじゃら……だと思う。