英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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44話 光の剣匠

未だに霧が立ち込める夜……レト達はアルゼイド流の練武場に再び訪れていた。 ここに来た目的は……リィンとヴィクターとの手合わせである。

 

「ワクワク……光の剣匠と勝負かー。 でもリィンって、そんなに強かったっけー?」

 

「相手は達人……さすがに厳しいか」

 

「………………」

 

「リィン、考え直すがよい……! 父上も戯れはおやめください!」

 

ラウラ達の心配は当然の事。 リィンと光の剣匠と謳われるヴィクターの手合わせでは勝負にすらならない。

 

(今思えば、ハーメルの時は指導剣だったんだよね……あの時、手合わせだったら小数秒も持たないかも……いや、無理)

 

当時の出来事を思い出し、疑問形から確信に変わり、レトは心の中で嘆息した。 そう考え込んでいると、ラウラに肩を叩かれる。

 

「レト! そなたから言ってはくれないか!?」

 

「……ここがリィンにとっての分岐点……選択をするのはリィン、止めに入るのも相談する事も許されない」

 

「くっ……」

 

「分かってくれ、ラウラ。 リィンは路頭に迷う自分を荒療治したいんだ。 ここで横槍を入れるのは返ってリィンに失礼だ」

 

ラウラを説得する。 そして、舞台に上がった両者は得物を抜く。 リィンは太刀を、ヴィクターはアルゼイド流の大剣を右手で軽々と。

 

(ガランシャール……2年前も思ってたけど、やっぱりどこかで見たような)

 

ヴィクターが持つアルゼイド家に伝わる宝剣を見て、レトは少しデジャヴを覚える。 その間にも、2人の仕合いが始まろうとしていた。

 

「ーー八葉一刀流初伝、リィン・シュヴァルツァー、参ります」

 

「アルゼイド流、筆頭伝承者、ヴィクター・S・アルゼイド、参る」

 

互いに流派と名を名乗り、2人から剣気が放たれると……

 

「ーー始め!」

 

立会いのクラウスが右手を振り上げ……同時にリィンが先手で飛び出した。

 

「はあっ!」

 

全力で振られる太刀。 それをヴィクターは見切り、観察しながら軽くいなしていく。 リィンの本気の太刀はことごとくあしらわれ、弾かれてしまう。 そして……

 

「はあっ!」

 

「ぐあっ!?」

 

反撃に転じたヴィクターの神速の剣が振り抜かれ……リィンはたった一刀で斬り伏せられてしまった。

 

「うっわー……」

 

「……だから言ったのだ……」

 

「み、見えませんでした……」

 

「……リィンが弱いわけじゃない」

 

「実力差があり過ぎるからね。 それにワザと致命傷は外して、 まだ終わらないよ」

 

リィンは荒い息をしているに対し、ヴィクターは未だに自然体だ。 そしてヴィクターは倒れているリィンに声をかける。

 

「ーー何をしている。 未だ勝負は付いていない。 疾く立ち上がるがよい」

 

「父上……!?」

 

既に決着は付いても可笑しくはないぎ、ヴィクターはまだ続け、リィンはフラフラになりながらも立ち上がる。

 

「………………」

 

「そなたの力……それが限界でないのは分かっている。 この期に及んで“畏れる”ならば強引に引きずり出すまでのこと……」

 

兎でも全力で向かう獅子のごとく……ヴィクターは大剣を振り上げる。

 

「さあ、見せてみるがよいーー」

 

「……!」

 

「っ……」

 

神速で振り下ろされた大剣。 衝撃が地面に鋭く放たれる中……ヴィクターの目の前にいたリィンが消えていた。

 

「……!」

 

「うわっ!?」

 

「どこに……!」

 

「……右」

 

「ーー甘い」

 

レトの言う通りヴィクターの右手にリィンがおり、抜刀の構えを取っていた。 しかし、その雰囲気はまるで別人だった。

 

一瞬で距離を詰めて放たれた抜刀をヴィクターは大剣で防ぎ、続け襲いかかる太刀を紙一重で避ける。 そして軽く大剣を振ってリィンに距離を取らせ……そこでラウラ達はリィンの姿を認識した。

 

「……!」

 

「わわっ……!?」

 

「……これは……」

 

「こ、これが……リィンが恐れていた……」

 

(異能……)

 

銀髪に灼眼となり、異質な焔を放つリィン。 その双眸は狂気を持ちながらヴィクターを睨みつける。

 

「そうだ、それでよい。 “その力”はそなたの奥底に眠るもの。 それを認めぬ限り、そなたは足踏みをするだけだ」

 

「オオオオオオッ!!!」

 

抑えきれぬ力に流されるように咆哮し、リィンは様々な激情を太刀に込めて振り抜く。

 

一見デタラメに太刀を振っているように見えるが、その太刀筋にはしっかり八葉の色が見え。 玄妙さは無いが鋭さと気迫は今までと段違いだ。

 

しかし、解放されたリィン異能でもヴィクターには届かず……

 

「ーーそろそろ終わりにしよう」

 

大剣を振り払おうとするように構え、気によって刀身が輝きながら伸び……

 

「絶技・洸凰剣!!」

 

一瞬でいくつもの太刀筋を描きながら振るい、その軌跡の集中点にいたリィンを斬り裂いた。 そしてヴィクターは結果を見るまでなく大剣を振り払いながら背を向けた。

 

「ぐうっ……!」

 

そのまさしく絶技にリィンは大きなダメージを負ってしまい、焔が収まり元に戻りながら膝をついてしまった。

 

「リィン……!」

 

「……リィンさん!」

 

勝負は決し、慌ててラウラ達はリィンに駆け寄った。

 

「うっわー……とんでもない勝負だね」」

 

「ああ……だがやっと分かった気がする。 リィンが子爵閣下に手合わせを願った理由が」

 

「リィンさん、大丈夫ですか!?」

 

「父上……やりすぎです!」

 

「……大丈夫……ちゃんと手加減してくれた」

 

大きな怪我がないか見るエマにリィンは問題ないと答え、顔を上げてヴィクターの方を見る。

 

「……参りました。 光の剣匠の絶技、しかと確かめさせて頂きました」

 

「フフ……どうやら分かったようだな」

 

ヴィクターはリィンの前まで寄ると、膝を付いているリィンと顔を合わせるように自身も膝をついた。

 

「ーー力は所詮、力。 使いこなさなければ意味はなく、ただ空しいだけのもの。 だが……在るものを否定するのもまた“欺瞞”でしかない」

 

「はい……天然自然……師の教えがようやく胸に落ちた心地です。 ですが……これで一層、迷ってしまうような気もします」

 

「リィン……」

 

「……それでよい」

 

リィンの答えに頷きながらヴィクターは手を差し伸べる。

 

「まずは立ち上がり……畏れと共に踏み出すがよい。 迷ってこそ“人”……立ち止まるより遥かにいいだろう」

 

「……はい」

 

リィンは差し伸べられた手を取り、立ち上がった。 今のリィンはとても吹っ切れた顔をしている。

 

これで丸く収まると思っていると、そこでレトは気付いた。 ヴィクターのその手には……まだガランシャールが握られている事に。

 

「さて……」

 

その疑問に答えるように彼はレトの方を向き……

 

「レト……いやレミスルト殿下、次は貴公との手合わせを願おうか」

 

レトの本名を言い……皇族として接しながら、手合わせを申し出てきた。 しかしその唐突な願いにレトは驚愕する。

 

「……いや、僕は既に子爵閣下並みの……って、これは今関係ないか……」

 

「レトさん?」

 

「と、とにかく! 僕は子爵閣下と手合わせする理由がありません! 100歩譲って以前の僕はリィンに近かったですけど、同様に道を見出す事が出来てます!」

 

本当は光の剣匠以上だが、そんなことは今は関係ないだろう。

 

「それは一眼見た時に分かっている」

 

「…………! この先は、剣で語れと?」

 

「ああ、私も剣でしか語れない時もある。 フフ、リィンが今日まで足踏みをしていたのなら……そなたは2年前から、いやそれ以前から背を向け逃げ続けていた。 己の存在に」

 

「………………」

 

「だが……」

 

「え……」

 

「今は寄り道をしながらも面と向き合っている。 我が娘がそなたに感化されたように、またそなたもラウラに感化され高めあった……これもまた、武の道の一端だろう」

 

「父上……はい、その通りだと思います」

 

ヴィクターの言葉に同意しながらラウラも頷く。 ここまで言われたらレトも無下にする訳には行かず……

 

「…………分かりました。 不詳ながらこのレミスルト、光の剣匠殿の手合わせをお受けいたします」

 

その答えにヴィクターは無言で頷き、舞台の上に今度はレトとヴィクターが対面した。

 

「今度はレトとかー。 あのリベールの異変で活躍したって聞いたけど、どこまで強いのかなー?」

 

「……ミ、ミリアムちゃん」

 

「しかし、これは見物だな」

 

「ああ。 いつも隠しているようでバラしているが、レトの実力は飛び抜けている。 もしかしたら……」

 

「うん。 もしかしたら父上に一泡吹かせられるかもしれない」

 

(……前にリィンと戦ったとしても疲労は期待しない方がいいとして、決着は一瞬……刹那の交差で決める!)

 

ラウラ達が見守る中、レトは心の中で戦法を決めると同時に左手を突き出し……

 

「ーー出でよ、ケルンバイター!」

 

『!?』

 

一度は目にした事あるのリィン達はあまり驚かなかったが、初めて見るミリアムは興奮したように驚愕する。

 

「なになに!? 何もない所から剣が出てきたよ! しかもカッコイイー! 金ピカだー!」

 

「何度見ても不思議な剣だ……」

 

「詳しくは知らないが、とてつもない斬れ味を誇る剣だと聞いている。 あれを出すということは、レトは本気だ」

 

(外の理の……一体レトさんは……)

 

「ーー我が名はレミスルト・ライゼ・アルノール。 相手には礼を以って対します」

 

「ヴィクター・S・アルゼイド。 よろしくお願いする」

 

両者、礼をしながら名乗り、構えを取ると静かに剣気を放ちながら睨み合う。 レトは右手を前に、剣を持つ左手を後ろに下げ。 ヴィクターは両手でガランシャールを持ち青眼に構える。

 

『……………………』

 

(なんて気あたりだ……)

 

(肌がビリビリするよ〜……)

 

(恐らく、決着は刹那の間……一瞬たりとも目が離せない)

 

(ゴクリ……)

 

レトは放たれる剣気によって次にくる太刀筋を読む。 静かに、しかし刻一刻と2人が睨み合う時間が過ぎて行くと……

 

「ーーッ!」

 

「セアアアアッ!!」

 

ヴィクターが先手を取った。 しかしレトは尋常ではない速度で接近してくるヴィクターを目で、気配で捉えており。 ガランシャールがレトに振り下ろされようとした刹那……

 

「フッ!!」

 

身体を捻って剣で剛剣を受け流しながら一瞬で横に跳び……1秒も待たぬ間に7連撃を繰り出した。 峰とはいえ、7回も喰らわせたので地面を大きく引きずって後退させた。 言うまでもなく、勝負あり。

 

「ーー刹那刃」

 

「……後から言うんだ……」

 

決め台詞みたいな事を後で呟くレトにミリアムは思わずツッコム。 それに対し、7回の剣を受けたヴィクターは笑みを浮かべていた。

 

「フフ……以前とは比べ物にならない剣だ。 洗練された……美しい作法の剣でありながら、独自に昇華している。 よき師と巡り会えたようだな?」

 

「あはは、あの人が師かどうかは判断が難しいですし……これが答えと言えるのか分かりません。 けど、どうしたいかは決まってます」

 

ヴィクターはダメージを感じさせずにスクッと立ち上がった。 手加減したとはいえ、クラウス同様にやはりこの人も余裕そうだ。

 

「フフ……ようやく己が進むべき剣の道が見えたか。 そなたなら空位に至るやもしれん。 いや、既にその輪郭も見えているな?」

 

「いえ、剣の道に果てなし……修めることは出来ず、道を進む過程で結果が出るに過ぎません。 理であれ、修羅であれ、空位であれ……僕にとっては通過点に過ぎません」

 

「達人が行き着く先を通過点とは……それを聞いて私も安心した。 私にもまだ先はあるのだな」

 

「ええ、もちろんです」

 

時折意味のわからない言葉を使われ、聞いていたリィン達は困惑した顔をする。

 

(何を言っているかよくわからないですね……)

 

(安心しろ、私も部分的にしかわからぬ)

 

(やはり、レトは俺達と次元が違うな)

 

(……っていうか、元々この仕合いって何するための仕合いだったのー?)

 

(は、はは……まあレトも自分の道を選べて良かったよ)

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

翌日、8月29日ーー

 

朝早くにヴィクターとクラウスに見送られながら子爵邸を出たレト達、階段を降りてまず目にしたのは……霧の晴れた青空の広がるレグラムと、鏡のように景色を写すエベル湖の絶景を目の当たりにした。

 

「へー、すごい光景だねー!」

 

「本当に……湖面がまるで鏡みたいです」

 

「この景色も久しぶりに見るね。 ローエングリン城と神殿もよく見える」

 

「これが……霧の晴れたレグラムか」

 

「フフ、私にとってはどちらも馴染み深い光景だな」

 

ミリアム達がレグラムの景色を見惚れていると、唐突にリィンが謝罪してきた。

 

「ーー皆。 昨日は騒がせて済まなかった」

 

「……リィンさん……」

 

「ーー全くだ。 だが、そなたにとって必要なことだったのだろう?」

 

「……ああ。 以前の俺は、師匠の教えに気付ける段階にはなかった。 だけど……子爵閣下が手合わせを通じて俺に気付かせてくれたんだ」

 

「そうか……ならばよい。 そなたも足掻きながら前に進もうとしているのだな」

 

「フフ、いい風の導きがあったようだな」

 

「ーーけどリィン、あの力は……“混ざっている”って事でいいのかな?」

 

唐突に聞かされたレトの言葉に、リィン達は首を傾げる。

 

「え……」

 

「混ざっている……?」

 

「んー、言葉で説明できる内容じゃないんだけどねー。 簡単に言えば……過程も無しに結果が出る能力……って事かな?」

 

「い、意味分かんないだけど……」

 

「しかし、言おうとしていることはわかる。 あの力は口では説明し難い」

 

「……それはそうと、何故レトさんがそんな事を知っているんですか?」

 

エマはいつになく真剣な表情でレトに問い詰める。

 

「実際に混ざっている人を見たことあるから。 その人はリィンを比べ物にならないけど……」

 

「?」

 

「まあ結局、これだけ言ってもその力についてはよく知らないんだ。 期待させたら謝るよ」

 

「……いや、それだけでも十分だ。 なんだか少しスッキリ気分だ。 これで俺も、自分を認めてようやく前に進むことができる」

 

「リィン……」

 

A班は気持ちを新たにし、レト達は特別実習を行うため遊撃士協会を訪れた。 中で待っていたトヴァルは妙に機嫌が良かった。

 

「いや〜、聞いたぞ。 何でも光の剣匠とやり合ったんだってな?」

 

「はは……胸を貸してもらっただけです。 実際、勝負には全くなりませんでしたよ」

 

「いやいや、やり合おうと思っただけでも大したもんだ。 サラも化物じみた強さだが子爵はその上を行くからなぁ。 さすが八葉一刀流の初伝を貰っているだけはあるな?」

 

「く、詳しいですね……」

 

「僕の場合はなし崩しにですけど……」

 

「お前さんはとうとう、と言ったところだろ。 最初に会った時はガチでやり合って決着付かなかったんだし。 執行者に誘われているだけはあるじゃねぇか」

 

「……不本意ですけど」

 

「ほえー、さすが遊撃士、情報通だねー」

 

「ま、それはともかく……2日目の課題を渡しとくか」

 

昨日と同じようにトヴァルから課題が入った封筒を受け取った。 課題は昨日と同じエベル街道の魔獣討伐と七耀教会のシスターからの依頼の2つだけだった。

 

「あら……さほど多くないんですね」

 

「この手配された魔獣はいささか気になるが……」

 

「ああ、午後からは別の課題を追加で振ろうと思っている。 レグラム滞在は今日までらしいからせいぜい手伝ってもらうつもりさ。 それじゃあ、よろしく頼んだぜ」

 

「承知しました」

 

「では、始めるとするか」

 

「これならすぐに終わりそうだね」

 

「それじゃあ、今日もはりきって行こー!」

 

2日目の実習を開始。 昨日と打って変わって日が差し込み明るくなったエベル街道、今日は少し暑くなりながらも迷わず進んでいく。

 

しばらくして街道の外れで例の手配魔獣を発見したが……機械質な身体をし、機関銃やらを装着した二足歩行の魔獣だった。

 

「……あ、あれは……!?」

 

「報告された手配魔獣なのか?」

 

「あの魔獣はドレックノール要塞で見た……」

 

「人形兵器……なんであんなものがここに」

 

「なぜこんなものがここにいるのか分からぬが……このまま放っておくわけにはいくまい」

 

「ああ……慎重にしかけよう」

 

人形兵器……ファランクスJ9は両側の機関銃をレト達に向け、乱射してきた。

 

「ガーちゃん!」

 

すかさずミリアムがアガートラムに障壁を展開させて防がせる。

 

「参る!」

 

戦術リンクを組み、左右から接近する。 敵の接近をセンサーで感知したファランクスJ9は背中の装置からミサイルを発射した。 それを目視したレトは……銃剣を変形させて銃を構え、分け身で2人に増えた。

 

『比翼・(つばくろ)!』

 

二段撃ちで銃弾を連射して撃ち、全てのミサイルを撃ち落とした。

 

「今だよ!」

 

「よし!」

 

リィン、ラウラ、ガイウスが接近して手応えが今までと違く、普段より武器から伝わる振動で手が痺れてしまう。

 

「ッ……」

 

「固い……!」

 

「! しまっーー」

 

「ガーちゃん!」

 

手が痺れてしまった隙に機関銃がリィン達に向けられたが、ミリアムがアガートラムを向かわせて防いだが……次に銃口を背後にいたエマとミリアムに向けた。 アガートラムは攻撃して離れているため、今度は防ぐこと出来なかった。

 

「くっ……」

 

「ーー扶翼・鶴!」

 

乱射し飛んできた銃弾を、レトが撃った銃弾で弾き返した。

 

「今だよ!」

 

「ルミナスレイ!」

 

エマの放った光線が銃口に直撃して逸らされ、リィンとガイウスが一気に距離を詰め……

 

「せいやっ!」

 

「はあっ!」

 

ファランクスJ9の手足を斬り裂き、胴体を貫いて討伐……いや、破壊した。

 

「ふう……妙な感じだけど、倒したのか?」

 

「破壊したって言った方が正しいよ」

 

「確かに……手応えそのような感じだったな」

 

「……機械仕掛けの魔獣、人形兵器だったか……なぜこんなものがレグラムの街道に……?」

 

「ミリアムは何か知ってる?」

 

レトは壊れたファランクスJ9に近寄りながらミリアムに聞いてみた。

 

「んー、ガーちゃんとは関係ないと思うよ。 その子は金属で出来てるみたいだし」

 

「……確かに、アガートラム君や実技テストの戦術殻とは質感が違いましたよね。 あちらは同じ無機物でも温かみのある印象でしたし……」

 

(戦術殻……結社と何か関連があるのかな?)

 

「……何しているんだ、レト?」

 

「ちょっと中身を調べようとねっ……と」

 

ファランクスJ9の外殻を剥しながら中身を漁るレト、すると1つのクオーツを中から取り出した。

 

「よし。 このクオーツを解析すれば何か分かるかもしれないね」

 

「ともかく、アガートラムとは関係なさそうだ。 一度、トヴァルさんに報告した方がいいかもしれない」

 

「うん。 そうだな、彼なら何か分かるかもしれん。 一旦町に戻るとしよう」

 

この場にいても何もわからないため、この件を報告しに来た道を引き返した。

 


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