英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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38話 幻獣

 

クロスベルに戻ったレト達は補給を終えた後ガイドブックと睨み合いながら歩き回り、北にあるマインツ山道に出ていた。

 

「ふう……帝都よりは小さいとはいえ、見知らぬ土地は迷うな」

 

「んと……この山道を道なりに進んで行けばマインツに着くみたいだね。 そろそろ日も暮れそうだし、急いだ方がいいね」

 

そう言いながらレトは懐からクローバーの形をした銀耀石(アルジェム)を取り出した。

 

「ウルグラを呼ぶのか?」

 

「ここから鉱山町までそれなりに時間がかかるからね。 時刻表を見るに導力バスも数分前に出発しちゃったし……ね!」

 

銀耀石を放り投げ、僅かに弧を描いてレトの背後に落下し……槍の一振りで石を砕いた。 するとレトの背に四葉を模した陣が現れ……中からウルグラが現れた。

 

そして慣れたようにレトとラウラは背に跨り、ルーシェは頭の上に乗る。

 

「ウルグラ、久しぶりだがよろしくお願いする」

 

「グルル」

 

「それじゃあ……レッツ、ゴー」

 

「にゃーにゃにゃー」

 

スロットを回し、ウルグラは四肢を踏みしめて駆け出した。 レトとラウラはしばらくの間、景色を眺めながら山道を道なりに進んで行く。

 

「こうしてラウラとウルグラに乗るのは久しぶりだね」

 

「うん。 旅は足で歩くかウルグラに乗るかの2つだけで、野宿は当たり前だったな。 そのおかげで心身ともに強くなれたが……」

 

「最初は酷かったよねー。 まあ、慣れればなんとかなんとかなったけど」

 

昔話を交えながら山道を登り、トンネルを抜けて直ぐに喧騒が聞こえてきた。

 

「なんだろう?」

 

「町はまだ先のはずだが……」

 

それに加えて喧騒の中には慌ただしさも感じられた。 レト達はウルグラを降り、ウルグラを崖下に向かわせると徒歩で進んだ。

 

すると山道を逸れた場所に人が集まっており、マインツ方面から何人もの鉱夫が走って来てきた。 不審に思ったレトはツルハシを担いで騒ぎの中心に向かって行く1人の鉱夫を呼び止めた。

 

「あの、何かあったのですか?」

 

「どうやら旧鉱山の入り口がいきなり崩落したみたいでな。 崩落前に鉱山の中に特務支援課の人達が入って行ったから今から撤去に向かうんだ」

 

「そうですか……ありがとうございます」

 

礼を言い、ラウラの元に戻る。

 

「どうやら、これが彼女が言っていた面白いものらしいね」

 

「…………(スン)、微かにだが風に流されて火薬の匂いがする。 フィーの使っている火薬と似ているな」

 

「後はどうやって中に入るかだけど……」

 

瓦礫で道は塞がっている事はもちろんだが、恐らくマインツ中の鉱夫総出で撤去に当たって通れたとしても……いきなり学生2人を中に入れてはもらえないだろう。

 

「さて、どうしたものか……」

 

「ーーなんだ、こんな所でデートか?」

 

『!!』

 

どうしようか頭を悩ませていると……いつの間にか2人の背後に赤毛の男性が立っていた。

 

(気配を感じられなかった……!)

 

「い、いえ、僕達はクロスベルで偶然出会った女の子にこの場所を勧められて来ただけで……」

 

「へえ、そうなのか」

 

クロスベルではないが決して嘘は言ってなく、男性はニヤニヤとしながらも納得してくれた。

 

「それでこの騒ぎはなんなんだ?」

 

「なんでも旧鉱山の中に特務支援課という方々が閉じ込められたそうで、今瓦礫の撤去作業をしているそうです」

 

「! なるほど……こりゃお迎えに行ったほうが良さそうだな」

 

男性は1人納得すると旧鉱山の方に向かい、レト達も後に続いて行く。 男性は鉱夫達や町長と面識があるらしく、ちょうど今撤去が終わり開通した旧鉱山に入る模様だ。

 

その時、山道から何かが駆けてくる音が聞こえ。 大きな影が男性に近寄った。

 

「ウォン」

 

「うおっ!? ツァ、ツァイト!?」

 

突然、男性のとなりにひょっこりと大型の狼……クロスベルであったツァイトが現れた。

 

「君は……」

 

「にゃー」

 

なぜここにいるのか疑問に思うが、その前にレトの肩からルーシェが飛び降り。 ツァイトの背に乗ってしまった。

 

「おい、ツァイト!」

 

「ちょっとルーシェ!」

 

そしてツァイトがルーシェを乗せたまま旧鉱山の中に入ってしまい。 ランディとレト、ラウラは追いかけるように旧鉱山の中に入った。

 

中は使い終わった鉱山にしては明るく、その明かりもキノコや苔が薄紫色に光ることで照らしていた。

 

(……この感じ……上位属性が働いている)

 

「ーーおい。 お前らは待っていろ。 この先は子どもには危険だ」

 

「心配は無用だ。 これでも剣の道を進む身、己の身は守れる」

 

「こう見えても士官学院の生徒なんです。 それなりに実戦経験は積んでいますので」

 

「……そうか。 だが無理はするなよ」

 

と、そこで男性は名前を言ってない事を思い出し、3人は自己紹介をした。

 

そしてレトとラウラは赤毛の男性……ランディと共にツァイトを追いかけるが……ツァイトはまるで道案内をするように走っているようだった。 しばらくして開けた空間に出ると……規則的に振動を放つような音が聞こえて来た。

 

「この音は……」

 

「…………! あれは!」

 

視線の先には竜の姿を形取る異形の魔獣、フェアリードレイク。 その前には苦悶の表情を浮かべて蹲っている4人の人物。

 

どうやら首筋の部位を振動させて未知の力場をまとい、相手から力を奪っているようだ。

 

「! まさか……幻獣!?」

 

「あいつら……!」

 

「ウオオオンッ!!」

 

「シャーーーッ!!」

 

その時、2匹の獣が一斉に吠え……フェアリードレイクの力を奪う振動を妨害した。 それと同時にランディがスタンハルバードを構えながら走り出し……

 

「喰らいなっ!」

 

跳躍と同時にフェアリードレイクの顔面を殴りつけた。 それにより完全に振動を止める事が出来た。

 

「あ……!」

 

「ランディ先輩……!?」

 

「き、来てくれたの……!」

 

ランディの登場に4人が驚き、ツァイトも向かうとレト達も次いでフェアリードレイクの前に出た。

 

「ウォン!」

 

「にゃ」

 

「ツァイトも!」

 

「アハハ! すごいタイミングじゃない!」

 

「って、ツァイトに乗っている猫は……?」

 

「それに君達は……」

 

「助太刀する!」

 

「今は目の前の魔獣が優先です!」

 

「まずはこのデカブツを撃破するぞ!」

 

色々と聞きたい事はあったが、先に7人と2匹は目の前の敵と対面する。

 

「アルゼイドが剣……とくと見るがよい!」

 

「天と女神の加護を……いざ参る!」

 

ラウラは大剣を、レトは槍を構え戦術リンクを繋ぐ。 5人は戦術リンクを見た事がないのか、少し驚くもすぐに気を引き締め直した。

 

フェアリードレイクはレトに接近し、前足の爪を立てて振り下ろした。

 

「よっと……!」

 

「やっ、せい!」

 

爪をヒラリと躱し、その隙に懐に入ったロイドがトンファーを振るって足を殴りつける。

 

「そこ!」

 

「やあっ!」

 

「せいせい……やっ!」

 

エリィとノエルの銃撃が着実にダメージを与え、ワジが軽いフットワークによって放たれるジャブを食らわせる。

 

すると、鬱陶しく思ったのか、フェアリードレイクは大きく息を吸い込み……毒霧を吐いた。

 

「マジか!?」

 

「吸わない方が良さそうだね」

 

「ーーはああああっ!!」

 

迫り来る毒霧を警戒する中、レトは槍を構えて前に飛び出し……槍を手の中で回転させ毒霧を霧散させた。

 

「ラウラ!」

 

「任せるがよい!」

 

毒霧が晴れると同時にラウラがレトの肩を使って大きく跳躍して接近し、振り下ろされた大剣はフェアリードレイクの腹部を切り裂いた。

 

「す、すごい連携……」

 

「ヒュウ! やっぱお二人さんはカップルじゃねえの?」

 

「だから違うと言っている!!」

 

「そ、そんな剣幕顔なのに、真っ赤にしていても……」

 

「フフ、どうやら秘密は……2人の戦術オーブメントにありそうだね」

 

「あ、あははー……」

 

鋭い指摘にレトは誤魔化すように笑う。 と、そこでフェアリードレイクは翼を羽ばたかせて軽く飛び上がり、勢いをつけて落下。 地面を大きく揺らす。

 

「きゃああ!!」

 

「ぐっ……!」

 

「この……デカブツが!」

 

ランディが揺れる地面を蹴って跳躍し、ハルバードを振り上げた時……フェアリードレイクは翼を広げ、全方位に例の力を奪う振動を放った。

 

「ま、また……!」

 

「力が……抜けていく……」

 

「フウ…………」

 

さらに、追い討ちをかけるように翼から閃光が走る。 その閃光は光弾のようで、一斉に飛来して来た。

 

「これは……!」

 

「マズイ!!」

 

「フッ……せいっ!!」

 

危険だと判断するも回避するすべはなく、光弾が眼前に迫った時……レトが気功で喝を入れ、槍を回転させて光弾を弾き返す。

 

「ッ…………いつまで耐えればいいのか……!」

 

「ーーグルル……」

 

「フーーッ!!」

 

その時、後方にいたツァイトとルーシェが牙を剥き出しにして身構え……

 

『ウオオオオンッ!!/シャアアアアッ!!』

 

同時に吠え、フェアリードレイクを威嚇した。 その咆哮はかなりの振動を放っており、フェアリードレイクの振動と光弾による攻撃を止める事が出来た。

 

そして……どこからともなく砲撃が飛来し、フェアリードレイクを後退させる。

 

「今のは!?」

 

「砲撃の音……!?」

 

(これは……ウルグラの援護か!)

 

「ッ………ウルグラ!!」

 

一瞬迷いがあったが、レトは左手を掲げて叫び……どこからとも無く銀色の大剣が飛来、レトの手に収まった。

 

大剣を肩に担ぎ、姿勢を低くする。

 

「ーー力を解放、終わるまで……止まらないよ!」

 

右手に力を込めながら地面に振り下ろし、地面に強い衝撃波が送られてヒビが走り、土煙が立ち込める。

 

「な、なんなの……!?」

 

「彼の雰囲気が……」

 

「一気に力が増した……レトが持つ大剣の奥義か!」

 

突然のレトの行動に驚く中、土煙の中から緋と蒼が混じったオーラを放つレトが現れ、その相貌は獰猛な獅子のような眼をしてフェアリードレイクを射抜く。

 

レトは大剣を左側の下段に構えながら柄を両手で強く握りしめ、両足で強く地を踏みしめる。 そして大剣を背に回すように身体を捻り上げ、大剣にオーラが収束し……

 

「ひとつ」

 

左下段からの切り上げ。 大剣がフェアリードレイクを切り裂くと同時に衝撃が放たれる。 続けて右下段に構え、再びオーラが収束。

 

「ふたつ」

 

同じように右下段から切り上げられて切り裂くと同時に衝撃波。 そしてレトは大剣を振り下ろし大剣を斜めに地面に突き刺した。

 

「はあああっ!!」

 

そのまま時計回りに回転し、大剣を地面に引き摺る。 大剣が地面を切り裂く事に火花が、次いで炎が飛び散り……

 

「みっつ……グラビティクロスッ!!!」

 

地面から解き放つように大剣を横に薙ぎ払い、フェアリードレイクを横一線に斬り裂いた。

 

そして、フェアリードレイクは断末魔とともに光り出し……風を巻き起こして塵のように霧散して行った。

 

「き、消えた……」

 

「……今はいったい……」

 

「ふう、どうやらタダの魔獣じゃなかったみてぇだな。 ま、何とか倒せて良かったぜ」

 

彼らが会話している間にレトはツァイトに近寄り、背に乗っていたルーシェを抱きかかえた。

 

「よっと……もうルーシェ、勝手にどこかに行かないでよね」

 

「にゃー」

 

「グルル……」

 

「ふむ、初対面にしてはお互いに警戒してないな。 犬と猫は仲が悪いと聞いていたが……」

 

「この子達は賢いからね。 喧嘩する意味もなくと分かってるんだよ」

 

「ーーそれでひょっこりコイツが現れて、ここまで連れてきてくれてなぁ。 まあ、オマケもあるんだが」

 

そこで、ランディ達がツァイトとレト達の方を向いた。

 

「えっと、あなた達は?」

 

「あ、はい。 初めまして、レト・イルビスと言います。 この子はルーシェ」

 

「にゃー」

 

「ラウラ・S・アルゼイド。 どうか良しなに」

 

「ご丁寧にどうも。 俺はロイド・バニンクス。 自分達はクロスベル警察・特務支援課に所属している」

 

「私はエリィ・マクダエル。 さっきは危ない所を助けてもらって感謝するわ」

 

「ノエル・シーカーです。でもあまり危険な事はしないでくださいね」

 

「ワジ・ヘミスフィア。 2人ともかなり強いけど、彼女はアルゼイド流で、君は……天月流かな?」

 

「! よくご存知で、マイナーな流派と思っていたのでが……」

 

全員自己紹介をし、レトはここに来た経緯を説明した。

 

「僕達はマインツに面白いものが見られると聞いて来てみて、その矢先にこの騒動に巻き込まれたというか……突っ込んだというか」

 

「この猫がツァイトに乗ってここまで来てよ。 飼い主とガールフレンドも追いかけてな。 腕も確かだったからなし崩しかもしんねえが」

 

「ええい、たがら私はレトとその…………違うと言っている!」

 

そのラウラの以上な反応に、2人の女性は少なからず気付いた。

 

「あはは……それで君達は観光人みたいだけど、どこから来たのかな?」

 

「あ、はい。 夏季休暇を利用して帝国から来ました。 クロスベルに戻ったら帰国する予定です」

 

「へ、へえ……帝国から……」

 

帝国と聞くと、エリィは少し遠い目をした。 レト達は首を傾げるが、ロイド達は同情していた。

 

「エリィさん、どうかなされたか?」

 

「気にしなくていいよ。 ちょっと帝国人のイメージが緩和したみたいだから」

 

「?」

 

よくわからないが、どうやら帝国人絡みで何かあったらしい。

 

「それと君、確か戦う前に“天と女神の加護”と言ったね。 あれは東方の信仰対象たる天……その言い回しだね」

 

「あ、はい。 よくご存知ですね。 槍の流派が東方なもので、その影響もあって」

 

「なるほど……じゃあ、その大剣は? かなりの腕前だったけど」

 

「そういえば、どこからともなく飛んで来たけど……もしかして、あの時援護してくれた人が渡してくれたのかしら?」

 

「え、ええっとー……」

 

一気に責め立てられるように聞かれ、どうしたものかと考え込む。 ウルグラの存在を知られるわけにはいかず、若干しどろもどろになってしまうが……そこでラウラに脇を小突かれ、レトは1度咳払いをして気を取り直した。

 

「コホン。 僕は槍や大剣の他に剣と銃を使い分けているのです。 一通りの武器なら人並みくらいには使いこなせるので」

 

「……へえ、それはすごい」

 

当然ワジは誤魔化されている事に気付いたが、察したのかそれ以上追求してこなかった。

 

と、そこで遅れながら鉱員達が到着し。 旧鉱山の異様な有様に驚きながらもロイド達の身の無事に安心した。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

旧鉱山から脱出した後、ロイド達は入り口を爆破したと思われる人物がいないか周辺を探し回っている中……レトとラウラは今一度、ここに来た経緯を詳しく説明、事情聴取を受けていた。

 

「なるほど、その赤毛の女の子に言われてマインツに来たのね」

 

「はい。 面白いものが見られると言ったので」

 

場所は星見の塔であってクロスベル市内ではないのだが、それ以外は嘘偽り無く話した。

 

「んー、証言から察するに、もしかしてカジノで会ったあの子じゃないかな?」

 

「……ええ、私もそう思うわ……それで、その子の名前とか聞いているかしら?」

 

「自己紹介はしてないんですが、自分の事をシャーリィって名前で呼んでいたので」

 

「何っ!?」

 

レトがシャーリィの名を口にすると、近くにいたランディが一気に詰め寄って来た。

 

「それ、本当か?」

 

「は、はい。 かなり血気盛んな子でしたけど……」

 

「ふむ……そういえば、彼女の髪とランディ殿の髪色はよく似ているな」

 

「あ……」

 

「そう言われれば……」

 

「……チッ……来てんのかよ、あの馬鹿どもは……」

 

「……彼女は……赤い星座、なのですね?」

 

「なっ!?」

 

「ラウラ!?」

 

ランディとシャーリィの共通点に驚く中、唐突にラウラが赤い星座の名を言ってしまった。

 

「赤い星座?」

 

「それって確か、大陸最強と言われる二大傭兵団の一つの名前だね」

 

「どうして赤い星座を知っている?」

 

当然、ランディは険しい目をしてラウラを睨みつける。 ラウラは怯まず首を横に振った。

 

「いやなに、西風の旅団に所属している人物から耳にした事があってな。 話に来ていてた特徴と一致していたゆえ、そのような憶測に至った」

 

「何でも自分に似た猫のような子って言ってたよね? 言われてみれば一致しているかも」

 

「……ああ、西風の妖精か」

 

ランディはフィーを知っていたようで、猫のような2人を思い出しながら一応納得した。

 

そして、途中で話がかなり逸れてしまったがこれで事情聴取は終わりになり。 ロイド達は乗って来た車で一足先にクロスベルに戻って行った。

 

残されたレト達はトンネル前まで歩き、人気がない事を確認した後にウルグラを呼び出した。

 

「ありがとね、ウルグラ。 さっきは助かったよ」

 

「グルル……」

 

レトは尾の先端に大剣を付けながらウルグラにお礼を言う。 それから2人と1匹はウルグラに騎乗し、来た道を戻ってクロスベルに帰った。 そして……

 

「う〜んっ! この龍老炒飯美味しい!」

 

「うん。 この小籠包も中々美味だ」

 

東通りにある東方風の飲食店、龍老飲店でレト達は食事を取っていた。

 

「やっぱり僕は帝国の料理より東方料理の方が好きだなー。 量が多い割にリーズナブルな値段だし」

 

「とても皇族の発言とは思えないな。 まあ、美味であることには同意するが」

 

「ハグハグ……」

 

食事を取ることで連戦と移動で消耗した体力を回復し、ふとレトは箸を止めた。

 

「さて、後は帰国するだけだけど……」

 

「先ほど、陛下からお呼びがかかって来たのだな?」

 

「そうなんだよねえ……」

 

店に入る前、レトのアークスにとある通信が届いて来た。 その通信内容は……帰国後、すぐに帝都のバルフレイム宮に出頭しろとの御達しだった。

 

「大方、この前の帝都での件だと思うんだけどねー。 もしくはあの噂の件か」

 

「しかし、皇族がもう1人いるなど……普通なら荒唐無稽な噂だと受け流すはずだ」

 

「にゃ〜?」

 

「はむ…………ほにもはふにも(とにもかくにも)(ゴックン)、帰ってみないと分からないわけだ」

 

「行儀が悪いぞ、まったく……」

 

炒飯を口に含みながら喋るレトに、ラウラは呆れながら嘆息した。

 

その後、レトとラウラは大陸横断鉄道で帝国に帰国したのだった。

 


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