英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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今までは選択肢はほぼ一択しかなかった……だが、原作が進んだことにより選択肢は2つに増えた。 それはつまり……どちらにするべきか!?


12話 実技テスト II

 

 

5月26日ーー

 

レトが初めての旧校舎探索を行なった日より3日……この日は2度目の実技テストが行われており、VII組の10名は先月同様、士官学院のグラウンドにサラ教官と共に集合し、金属音をグラウンド内に響かせていた。

 

「ーー結べ……蜻蛉切!」

 

鋭い一閃が戦術殻の胴体に直撃し、大きな金属音を響かせながら後退させる。

 

今回の実技テストは2チームに分けて行われることとなり。 最初はリィン、ガイウス、アリサ、ラウラの4人のチーム。 そして次は……残りの6人全員で行われる事になった。

 

人数的に見れば有利に見えるが、問題があるとすれば……ユーシスとマキアスがいる事だ。

 

「うわあ!?」

 

「くっ……」

 

「っ…………」

 

結果、先ほどと同じ戦術殻なのに、こうして苦戦を強いられていた。

 

「私達の時よりも苦戦しているわね……」

 

「ああ……エリオットもエマも、レトやフィーの隙を狙って援護しようとしているんだろうけど……」

 

リィン達4人の場合は完璧な連携で戦術殻を倒せたのだ。 しかし、それは戦術リンクがちゃんと機能していたからである。

 

今回、戦術リンクが機能していないのは明白。 当初は6人全員でリンクを試みていたが……たとえリンクを繋いでいなくても彼ら2人の仲は悪く、ロクな連携は取れていなかった。

 

「うわっ!?」

 

「きゃああぁぁ!?」

 

戦術殻は目に当たる部分にエネルギーを充填すると……レーザーが発射され、後方にいたエリオットとエマが衝撃で吹き飛ばされてしまう。

 

「この……伸びろ……!」

 

「……ほいっと」

 

自分に注意を向けさせるためにレトは中距離から棒を伸ばし、戦術殻の片腕を弾き。 フィーは飛び出して跳躍、棒を足場にし回転しながらさらに上に飛び上がり……回転と落下速度を加えて双銃剣を交差して胴体を斬りつけた。

 

「大丈夫?」

 

「う、うん……大丈夫だよ。 けど……」

 

レトは2人の前に近寄り、声をかける。 エリオットは問題ないと言うが、視線は横に向けられる。

 

その視線の先には……実技テストだというのに今だにいがみ合っているユーシスとマキアスだった。

 

「何故リンクを途切れさせた!」

 

「貴様が勝手に切ったのだろう!」

 

「それは君の方だろう!?」

 

戦闘中だというのに、リンクが途切れた事を切っ掛けに大喧嘩が繰り広げられている。 内容は罪の擦りつけ合い……レトは2人を戦力外にしてバッサリ切り捨て、とにかく早く決着をつけようとする。

 

「エマは僕とフィーの補助を! エリオットはアーツで攻めてくれ!」

 

「は、はい!」

 

「わかったよ!」

 

「フィーは戦術リンクで撹乱。 アーツによる援護が来たら一気にきめるよ!」

 

「ラジャ」

 

これ以上長引かせれば実技テストの結果が酷い事になる。 巻き添え喰らうのが御免なレトは残りの3人に指示を出し、フィーとともに駆け出した。

 

エリオットとエマはほぼ同時にアークスを駆動、レトとフィーは戦術殻の周囲を駆け回り……時折接近しては一撃離脱で時間を稼ぐ。 純粋なスピードではフィーが上回るが、瞬発力ではレトが上回っていた。

 

「レトも速いね」

 

「フィーこそ!」

 

戦術リンクがあるからこそ、高速戦闘下でも言葉を交わす事ができる。

 

「レトさん、行きます! ラ・フォルテ!」

 

「ダークマター!」

 

戦術殻を中心にしてエマの火のアーツが発動、駆け回っていたレトとフィーの攻撃力が上がり……エリオットの空のアーツにより戦術殻の動きを止めた。

 

「やっ!」

 

アーツの終了と共に地面を蹴り上げて一瞬で戦術殻の目の前に接近し……擦れ違い側に二閃。 そして後ろにレトが回り込み、槍を振り回して力を集め……

 

「おおおぉー………っりゃあ!!」

 

石突きで戦術殻を叩き、大きく吹き飛ばした。 言い争っているユーシスとマキアスに向かって……

 

「ユーシス、マキアス!」

 

『!?』

 

名を呼ばれ、2人はレトの方を向くが……眼前に迫って来た戦術殻を見てギョッとした顔をする。

 

「うわああっ!?」

 

「チッ!」

 

マキアスは慌てながらほぼ反射的にショットガンの引き金を引いた。 ショットガンなので狙いは付けなくとも当たるもの……銃口から放射状に弾丸が発射され、飛来する戦術殻の勢いを少しだけ停止させ……

 

「せいっ!!」

 

その隙を狙い、ユーシスの剣が戦術殻を一閃して斬り裂いた。 戦術殻は自身の重みで地面に衝突し、そのまま動かなくなってしまった。

 

「ーーそこまで!」

 

そこで実技テストの終了をサラ教官が告げ、エリオットとエマが疲れたように杖を支えにする。 レトは一息で呼吸を整えながら槍を納めた。

 

「……お疲れ」

 

「お疲れ様。 なんだか精神的に疲れたかも……」

 

「同感」

 

戦闘内容を振り返ったサラ教官は、レトに負担をかけすぎている戦い方を見ていつになく厳しい声音で評価を下す。

 

「……分かってたけど、ちょっと酷すぎるわねぇ。 ま、レトはこんな状況でもよく頑張ったと思うわよ? それなりに色は付けといてあげるわ」

 

「あ、あはは……ありがとうございます」

 

「さて、そっちの男子2名は精々反省しなさい。 いくら最後にレトが持たせたとはいえ……結局はこの体たらくは君達の責任よ」

 

「…………くっ…………」

 

「………………(ギリッ)」

 

反論できず、悔しそうな視線を向けるマキアスと無言で歯ぎしりをするユーシス。 だが、自分達に非があるのは明白……2人は互いに喧嘩していた時の激情をサラ教官に向ける事はなかった。

 

「ーー実技テストは以上。 続けて今週末に行う特別実習の発表をするわよ」

 

2度目となる特別実習。 前回を振り返るとどんな班分けになるか少々不安になるも……資料が配られていく。 そして……

 

「これは……」

 

「……南無」

 

 

【5月特別実習】

 

A班:リィン、エマ、マキアス、ユーシス、フィー

(実習地:公都バリアハート)

 

B班:レト、アリサ、ラウラ、エリオット、ガイウス

(実習地:旧都セントアーク)

 

 

バリアハートは東部にあるクロイツェン州の州都。 セントアークは南部にあるサザーランド州の州都。 共通する特徴としてどちらも貴族の街ということだ。 そういう意味では釣り合いが取れているのだが……

 

「ーー冗談じゃない!」

 

根本的に問題があった。 それを主張するようにマキアスが声を上げる。

 

「サラ教官、いい加減にしてください! 何か僕達に恨みでもあるんですか!?」

 

「……茶番だな。 こんな班分けは認めない。 再検討をしてもらおうか」

 

ユーシスとしてもマキアスと一緒の班分けなど許したくもなく、こういう時だけは意見が一致していた。

 

「うーん、あたし的にはベストなんだけどなー。 特に君は故郷って事だからA班からは外せないのよね〜」

 

「っ……」

 

「だったら僕を外せばいいでしょう! セントアークも気は進まないが誰かさんの故郷より遥かにマシだ! 翡翠の公都……貴族主義に凝り固まった連中の巣窟っていう話じゃないですか!?」

 

怒りに任せて言いたいことを言い、サラ教官は慣れたように気にせず応対する。

 

「確かにそう言えるかもね」

 

「だったら……!」

 

「ーーだからこそ君もA班に入れてるんじゃない」

 

嫌ってるからこそ、その本質を見させる。 サラ教官の言いたい事はレトにも理解できた。 どんな組織でも、所属していれば嫌いな相手の1人や2人簡単に現れる。

 

しかし、嫌いの一言で問題を起こせば組織に迷惑がかかる……そんな子どもみたいな言い訳を組織が、大人が許すはずがない。 指で喉を搔き切る動作で決着が着くだけだ。

 

「ま、あたしは軍人じゃないし、命令が絶対だなんて言わない。 ただ、VII組の担任として君達を適切に導く使命はある。 それに異議があるなら、いいわ」

 

そこで言葉を切り、腕を組みながら満面の笑みで……

 

「ーー2人がかりでもいいから、力ずくで言う事を聞かせてみる?」

 

堂々と挑発して煽った。

 

「……っ……!」

 

「…………面白い」

 

悩んだゆえ、2人は一瞬だけ目を合わせて頷くと……サラ教官の前に出た。 やはりこういう時だけは意見が一致する2人だった。

 

「おい、2人とも……」

 

「や、止めようよ……!」

 

「…………はあ…………」

 

自分の我儘のためにこんな事をしでかす2人にレトは溜息しか出なかった。 だが今更止められる訳でもない。

 

「フフ、そこまで言われたら男の子なら引き下がれないか。 そういうのは嫌いじゃないわーー」

 

語尾の口調を強めながらサラ教官は右手に導力銃、左手に片手剣を取り出して腕を交差させて前に突き出し、生徒達に見えるように見せた。 赤紫色で装飾された凶悪な武装と、サラの殺る気に満ち溢れた笑みを見て、レトとラウラ、フィー以外は思わず気圧された様子で一歩下がる。

 

「……あーあ」

 

「ーー隙がないな。 父上といい勝負が出来そうだ」

 

「いい勝負は、ね……」

 

かの光の剣匠といい勝負ができれば万々歳だが、レトはサラ教官を見つめる。

 

(これだけじゃわからないけど……執行者クラスはありそうかも……)

 

「……くっ……!」

 

「………………」

 

射てしまった矢は戻らない。 2人はサラ教官の気迫に怯むも……ともそれぞれの得物を構え、サラ教官に挑もうとする。が、ここでサラから更なる注文が飛び出す。

 

「ふふ、乗ってきたわね。ーーリィン、レト。 ついでに君達も入りなさい! まとめて相手してあげるわ!」

 

「え……」

 

「りょ、了解です!」

 

「えええええっ!?」

 

突然の指定に驚きつつも前に出るリィン。 レトは一瞬唖然となるが、リィンが行ってしまった以上、自分も出ないわけにはいかない。

 

だが、そんな感情の中に少しだけ……男子としての強者への挑戦する気持ち、それがレトの中に出ていた。

 

(自分の成長を再確認できる……いい機会かもしれない!)

 

リィンは太刀を、レトは槍を抜き、リィンとレトは戦術リンクを繋いだ。 それを確認すると……サラ教官の目つきが鋭くなり、全身から赤紫色のオーラが噴出する。

 

「ごくっ……」

 

「……何という気当たりだ」

 

「……………………」

 

(……? レト……?)

 

その気当たりで、サラ教官の実力の高さにラウラが感嘆の声を漏らす。 レトは冷静に、他の3人も関係なくサラ教官だけを見据える。 その事に、リンクを繋いでいたリィンが不審に思った。

 

「それじゃあ実技テストの補習と行きましょうか。 トールズ士官学院・戦術教官、サラ・バレスタインーー参る!!」

 

次の瞬間、ユーシスがサラ教官に向かって走り出し、マキアスが銃の引き金をサラ教官に向けて撃ったの当時に……リィンとレトはその場から退避するように横に飛んだ。 すると……

 

「うわああああ!!」

 

「せい!」

 

「ぐあっ!!」

 

少し横に移動してショットガンの射撃を避け、導力銃から雷撃を纏った弾丸がマキアスを襲った。

 

その銃撃でユーシスの足はタタラを踏み……一瞬で距離を詰めたサラ教官の剣でユーシスの剣が手から弾かれ、続いての一刀で斬り伏せられ……2人は一瞬で制圧させられてしまった。

 

「もとより……!」

 

それ以上の言葉は踏み込みと同時に止まり、瞬発力を発揮してレトの姿がかき消え……刃が衝突する音がすると、サラ教官がレトの突きを受け止めていた。

 

「やるわね! さすがは片翼を担うだけのことはあるわ!」

 

「それほどでも……!」

 

刃を引いて石突きを振り、サラ教官はバク転して避け……上空で逆さになりがら銃口をレトに向けた。

 

「おおおっ!!」

 

放たれる銃撃と共にレトは槍を上で掲げ、高速で手の中で回転させる。 それにより槍は盾となり、銃撃を全て弾いて防いだ。

 

「嘘っ!?」

 

「す、凄いですね……」

 

「見事だ」

 

「ヒュー」

 

観戦していたアリサは驚愕し、エマとガイウスはレトの槍さばきに賞賛し、フィーは本当にやるものだと関心して口笛を鳴らす。

 

「はあっ!!」

 

リィンも負けてはいられず、着地した所を狙い太刀を振り下ろす。 サラ教官はそれは避けられず、剣で受け止め銃を突き出した。

 

「っ……」

 

「はっ!」

 

リィンがバックステップで回避すると同時にレトが間髪入れず接近して槍を振るう。

 

サラ教官は槍を受け止め、突き出していた銃の狙いを定め……雷撃を纏った銃撃を放った。

 

「くっ……!」

 

マキアスを沈めた戦技、それを1度見ていたお陰でリィンはギリギリで回避することができたが……

 

「ーーはい、お終い」

 

自身が紫電を纏い、一瞬でリィンの背後に回ると後頭部に銃を押し当てられる。

 

「ま、参りました」

 

リィンは太刀を手放し、冷や汗を流しなかまら両手を上げて降伏した。

 

「さて、後は……」

 

「ーーシルバーソーン!」

 

「うわっ!?」

 

「っ!」

 

棒を伸ばして石突きでリィンを軽く吹き飛ばし、上空からいくつもの銀の刃が降り注ぎ、サラ教官を囲い……陣を描き衝撃を放った。 サラ教官は冷静に避け、軽く息をついてレトを見据える。

 

「ふう……さすが、アーツもかなりの使い手ね」

 

「それほどでも!」

 

サラ教官は段々とギアを上げながら飛び出し、斬撃と銃撃のコンビネーションによる攻撃をレトは受け、躱し。 段々とパターンを身体に覚え込ませて反撃の隙を狙おうとするが……

 

「ほらどうしたの! まだまだ上げて行くわよ!!」

 

それ以上にサラ教官が攻めるスピードを上げ、レトは視線を巡らせて槍をさばき、防ぐのに手一杯だった。

 

「さあ、飛ばして行くわよ!」

 

すると、サラ教官に落雷が落ちたように身体中に紫電が走り……一瞬でレトの眼前に現れ、剣を振り抜いた。

 

咄嗟に棒で防ぐが……あまりの威力に弾き飛ばされてしまった。

 

「うわあ……」

 

「雷神功……サラ、ほぼ本気になってる」

 

「レトも着いて行っているからな。 痺れを切らしたのだろう」

 

エリオットは思わず声を上げ、フィーの言葉にガイウスが憶測で理由を答える。

 

レトは体勢を整えて両足を地面に落とし、土煙を上げながら制動をかけて停止した。 ユーシスとマキアスが倒れた以上、すでに戦う理由などないが……レトは自分の限界を確かめたかった。

 

(なんとかここまで喰い下がってきたけど……これ以上は限界かなぁ? でも、諦めたくないし……)

 

突破口がないか、視線を巡らせると……正面右側にユーシスの手から弾かれてしまった剣が地面に刺さっていた。

 

(…………よし、やってみよう)

 

少し悩んだ末、あることを決意した。

 

「もう手詰まりかしら!?」

 

サラ教官はレトが考え込んでいるのを声をかけて辞めさせ、地面を踏みしめて駆け出す。 するとレトは、槍の棒を持って肩に担ぎ。 その場で振りかぶって……

 

「いっ……けええええっ!!」

 

思いっきり槍を投擲した。 その常識外れの行動にこの場にいた全員が驚くが、サラ教官は冷静に飛来してきた槍を避けた。

 

「っと! 得物を手放すなんて何を考えてーー」

 

「砕破剣!!」

 

次の瞬間、サラ教官に向かって刃が迫ってきた。 受け止めようとするが……接触と同時にその尋常ではない重さが片腕を伝い。 咄嗟に受け流してその場から飛び退くと……刃が地面を砕いた。

 

「何が……」

 

サラ教官はレトを見据えると……彼の手には剣が握られていた。 だが、問題はレトが左手に持つ剣であり……

 

「き、貴様……俺の剣を!」

 

「ごめんユーシス、ちょっと借りるよ!」

 

レトが使っていたそれはユーシスの騎士剣だった。 どんな人でも、自分の武器を勝手に使われるのにはいい思いをしない……

 

「レトって、剣も使えたの?」

 

「うん。 槍も腕は確かだが……才能に関すればレトは槍を握れば一流、剣を握れば……達人になれる程の才覚を持っているのだ」

 

「それは……」

 

フィーの呟きに、ラウラが答える。 その話が本当なら、リィン達はなぜレトは日頃剣を使わないのか疑問に思ったが……その疑問は目の前の光景によって辞めさせられた。

 

「はあああああっ!!」

 

「ーー疾ッ!!」

 

「え!? ちょ、ちょっと、本気になり過ぎよ!」

 

レトは本気で放たれた鳴神による銃撃を全て紙一重で、最低限の動きで躱し。 そして一回の跳躍で距離を詰め、剣を振り下ろす。サラ教官はバックステップで避け、直ぐに地面を蹴って距離を詰め……剣を振るうも、レトの剣速が早く、2度剣を弾く。

 

お互い距離を置き、サラ教官は警戒し剣と銃を構え、レトはクルッと剣を回して左肩に担いだ。

 

「っ……やっぱり剣技においてはレトの方が部があるわね。 羨ましいったらありゃしない……!」

 

「教官こそ……でも、サラ教官なら、全開でも……!」

 

レトは左肩に担いでいた剣を手の中で回し、刀身を水平にし顔の高さで構え……赤と青が混じったようなオーラを放つ。

 

「!!」

 

「こ、これは……」

 

「なんて気当たりだ……!」

 

レトの発する気当たりにリィン達は気圧され、そしてオーラが収まると……

 

「ぐっ!」

 

一瞬でサラ教官の前に出て一閃、どこまでも響くような甲高い音を立ててサラ教官は衝撃を殺すために自分で後ろに飛ぶが……すでにレトが回り込んでいた。

 

「はあっ!」

 

怒涛の剣戟を繰り出し、リィン達から見てサラ教官からは防ぐための火花しか出ていない。

 

「このっ……手加減しなさい、よ!」

 

牽制として銃を撃ち、続けて剣を振るうが、レトは跳躍して上に飛び上がるようして消え……次の瞬間、サラ教官の前と後ろに剣を正面に構えた2人のレトが現れた。

 

「えええええっ!?」

 

「レ、レトが……2人に!?」

 

「分け身の戦技(クラフト)……!」

 

「だから手加減をーー」

 

それ以上言葉を言う事はできず、2人のレトによる隙間ない連携を防ぐのに集中する。 レトの剣により常に剣を弾く音が響き、まるで1人で戦術リンクを使っているかのようにサラ教官を追い詰める。 が、そこでレトは気付いた……

 

(あれ? これ僕が勝ったらダメだよね……?)

 

このまま勝ってしまったらユーシスとマキアスの関係は修復されないままになってしまう。 つまり、次にレトの起こす行動は……

 

「ーーコフッ!」

 

「え……」

 

何かを吐き出すように息を吐き、2人同時に倒れ伏しててしまった。 片方は幻のように消え……その行動にリィン達はもちろん、サラ教官も唖然とした。

 

「スミマセン、ジビョウデス。 コウサンシマス」

 

「……あ、そう……」

 

うつ伏せのままで顔を横に向け、カタコトで答え。 サラ教官は自分の意を汲み取ってくれた事がわかり……武器を下ろしてくれた。だが、観戦していた人達には微妙に空気が流れていた。

 

「この結末は……」

 

「え、えーっと、その……す、凄かったですね……!」

 

「エマ、無理して褒めなくてよい」

 

「まあ、レトがああしたのも分からなくもないけど……」

 

「なんか釈然としないね……」

 

「レト、ナイスリアクション」

 

「お、おうさぁ……」

 

彼らはそれぞれ疑問を持つが……フィーは近寄って膝を曲げ、レトと視線を合わせてグッと親指を立てる。 少し困惑しながらもレトも親指を立てて返した。

 

もしかしたら勝てたかもしれないが、レトは一応良しとし。 ユーシスとマキアスは納得がいかないものの……すぐにやられた手前、レトを責める事はなかった。

 

「あ……ユーシス、勝手に剣を使ってゴメンね」

 

「……次はない」

 

「あはは、肝に命じておくよ」

 

あれ程のものを見せられた影響か、一言だけ忠告を言いユーシスは剣を受け取り鞘に納めた。

 

「でも、やるなら血も欲しかったわね〜」

 

「ち、血って、サラ教官……」

 

「教官は僕に何を求めているんですか……」

 

そこへ……フィーがどこからともなく取り出したトマトジュースを差し出した。 レトはそれを受け取って一気に喉に流し込み……

 

「ゴフッ!?」

 

空気が気道に入って咳き込んでしまい、本気でトマトジュースを吐いてしまった。 先ほどまでの気迫が嘘のような変わりっぷりにラウラは苦笑する。

 

「あー、もうそれいいから」

 

「血が必要と言ったのあなたですよね!?」

 

「まあ何はともあれ……結果的にあたしの勝ちね。 A班・B班共に週末は頑張ってきなさい。 お土産、期待してるから」

 

語尾にハートマークでも付いていそうな愉しげな口調で、サラ教官は実技テストの終了を告げて立ち去っていく。

 

最後がグダグダしていたが、実習先と班わけは変わらず。 リィンは溜息をつき、同情するように口元が少し赤いレトが彼の肩を叩いたのだった。

 

 




やっぱり閃の軌跡IIIが出たのならセントアークしかありませんよね(笑)。

それにしても、レトの実力は高すぎましたかね? ちょっとやり過ぎちゃったかも……

この先の話はほぼオリジナル……ここで作者の腕の違いがはっきりと分かりますね。 慎重に書かないと……

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