もしも、下宿初日に佐倉双葉と出会ったら   作:菓子子

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日記5 6/9-6/24

6/9

 

 双葉と秋葉原へ行った。平日で、さらには夕方過ぎなのにも関わらず、人通りは絶えない。離れないよう手を繋いで歩いていると、あまりにもの人に酔ったのか双葉が目を回していた。らいじょうぶらいじょうぶと呂律の回らない舌で応答を続ける双葉に危険を感じた俺は、傍にあった喫茶店へと入ることにした。おかえりなさいませ、ご主人様といきなりメイド服に身を包んだ女性に言われた時は、ひょっとして俺は今異世界転移、いや転生をしてどこぞの王室の方と入れ替わってしまったのかと肝を冷やした。結局ここがメイド喫茶だという事は、双葉の指摘で悟ることができたのだけれど、入って直ぐに店を変える訳にもいかず、そこで冷たいものと軽めの夕食を頼むことにした。どちらもあまりに慣れない環境だったので会話が続かず、食事にも集中できなかった。……今度はちゃんと調べてから入るようにしよう。そんな感じで、初めての双葉との……ううん、なんだろう。ナニカは失敗に終わってしまった。

 

6/11

 

今日は喜多川の歓迎会があった。ひとしきり鍋を食べた後、竜司と喜多川で銭湯へ行く事になった。その時に竜司から理想の女性像についての話題が振られたけれど、あまりにも湯が熱すぎてなあなあになってしまった。全然関係ないけれど、竜司と杏はお似合いだと思う。喜多川は……うん。

 

6/13

 

 新島に色々とバレた。マズい。あの凄まじい尾行能力による努力が遂に実ってしまった。祐介を招き入れておいて、その二日後に怪盗団存続の危機に立たされているという事実には閉口するしかない。が、危機に瀕しているというのなら、やはりその場での最善を尽くすしかない。一二三との対局で培われた状況判断力が、役に立てばいいのだけれど。

 

6/16

 

 今日も今日とて情報収集をした。新島もどうやら個別に動いているらしく、ヤバそうな人たちに絡まれ……もとい話しているのを見かけた。大胆というか、猪突猛進というか、とにかく彼女にはそのような気概があるようだ。それの仲立ちをした後、彼女が一応お礼を言ってくれた。ということは、やはり彼女もいい人なのだろう。最近なんだか良くお礼を言われる気がする。

 

6/19

 

 記憶の糸ピックが届いていた。こんなもの、頼んでいたっけ?

 

6/20

 

 新島氏暴走。侵入開始。

 

6/23

 

 連日の攻略でベッドに突っ伏していると、双葉が訪ねてきた。どうやら最近来ない事を憂いていたらしい。その時は本当に眠たかったのでちょっとおざなりな対応をしてしまった。疲れている理由も割と適当だったかもしれないし。再来週、いや、できれば来週中にまとまった時間を作りたい。盟約ノートも、結局全然できていないし……作ったからには、最後までやり遂げないと。

 

 

6/24

 

 攻略完了。すぐさまテスト勉強に移行する。それと明日、できれば盟約ノートその二『同世代のカルチャーを知る』をどうにかして埋めよう。問題は誰を誘うかだけれど、ああ、一度、一二三に会わせてみるのも良いかもしれない。

 


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