もしも、下宿初日に佐倉双葉と出会ったら   作:菓子子

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日記3 5/15-5/23

5/15

 

夕方:東郷一二三と出会った。

   理知的に見える容姿から垣間見える、あの何かが漲った闘争心は、やはり紛いもなく第一線で活躍している棋士のそれだった。本当に興味半分で来てしまった自分が恥ずかしい……。どこの馬の骨か分からない(使い方を間違えているかもしれない)不審者を、あろうことか弟子にしてくれるという神対応は、穏やかな懐の広さを感じると共に、少なくとも俺からは『孤高の天才』などというレッテルを張られている訳をうかがい知る事は出来なかった。

   それよりだ。双葉がBD代をばっくれようとしている。「おおっ!乙!」なんて言って威勢よく俺を迎えに来て(扉は開かなかった)くれたところまでは良かったのだけれど、どういうことか一斉代金の話を口にしない。あえて聞くのも野暮だとは思って、結局その日はうやむやになってしまった。もしこのまま知らぬふりを決め込むというのなら、俺も俺なりに何か痛快な仕返しを考えないといけない。鴨志田の時の6000円を、まさかこんな所で使ってしまうとは。

夜:竜司と杏が、斑目の個展に行ったことについての報告を受けた。杏が、喜多川の絵のモデルになるらしい。確かに昨日彼がそんな事を言っていた気がするけれど、どうしてまたそんな事を受けてしまったのだろう。この事をモルガナに知られてしまうとまた発狂しかねないので、その視線を気にしながらこの日記を書いている。明日喜多川の自宅でその理由を教えてくれるらしい。もしかしてもう明日する気なんだろうか。随分と気の早い話だ。

 

5/16

 

昼:生徒会長が、怪盗の事を色々嗅ぎまわっているらしい。恐らく校長とかからの差し金だろう。名前は新島真と言うらしい。

 

夜:色々な事が起きすぎて、ここに全て書き記しているとキリがない。なので、一番心残りだったことを正直に白状しておく。杏がフルヌードにはならなかった。

 

5/20

 

昼:中間試験のテスト結果が張り出されていた。厳しい。竜司と傷を舐め合うのもやぶさかではなかったけれど、杏の英語の結果の良さに白けてしまった。なんだか勝手に裏切られた感じだ。もっと頑張らなければならない。新島は噂の通り、総合でトップに躍り出ていた。すごい。

 

夜:少し用があって、また喜多川&斑目宅に足を運んだ。杏はやはり、脱がなかった。

それよりも最近、なんだかつけられている気がする。恐らく、彼女の所為で自意識過剰になっているのだろう。しかし気を付けなければ。

 

5/23

 

夜:任務完了。

 


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