Veronica Ⅱ   作:つな*

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Veronicaの強襲

中身が入江のスクアーロが隠し部屋の研究室に籠ること一週間が経った。

幹部の者にはモスカという兵器の機密情報を奪う長期任務、ボンゴレの方には負傷して寝込んでいると言って紛らわせていた。

たまに執務室から出てきて、太陽だけ浴びるとまた中に籠っていく彼をヴェロニカは見守っている。

久々に研究だけに集中出来るなんて、と本人は目の下に隈を作りながら喜んでいた。

見た目がスクアーロなだけあって、研究員の作業着はとても似合っていない。

ヴェロニカは今もまだボンゴレの者達を欺いている最中なので、下手に部下を動かせず執務室で過ごしている。

九代目奇襲作戦を幹部に伝えた翌日、どこからともなくチェルベッロが現れて、ボンゴレリングの継承者云々を伝えに来ていた。

取り合えず、ボンゴレリングを掛けて沢田綱吉と殺し合いする方向で進めているので、チェルベッロ達も何も言わずについてきている。

幹部の者にも一応チェルベッロの存在は説明し、彼女たちには争奪戦が始まる時までは存在を控えてもらう。

 

近くにいられても何の得にもならないし

確か、元の世界で過去に飛ばされたときに黒曜編からヴァリアー編まで大体一か月くらい間が空いてたから、丁度今から一週間前に六道骸と対峙しているハズだ

ならば少しだけ早めに行くか?長くここにいるのもリスクが高いし

私が目覚めたことを九代目に悟られる前に、無力化しないといけない

いや別に九代目を殺したいわけじゃないけれど…

ただ一応凍らされた恨みというか…少しだけ仕返し程度でダメージ与えられれば文句はない

にしてもこれ確か争奪戦で、雨の守護者対決の時スクアーロが鮫に喰われるハズだけど…入江に言っといた方がいいのかな

晴、雷、嵐、雨、霧、雲、大空の順で対決があった気が…今の入江がスクアーロじゃないから実力にどれくらい誤差が出てるのか分からないんだよね

当の本人は研究室に引き籠ってるし、邪魔するのも気が引ける…

あー取り合えず早く入江がゴーラモスカを完成させなきゃ何も始まらん

 

ヴェロニカはこの数週間を何もせずに過ごすつもりはなかった。

空いてる時間は殆ど誰も使わない訓練所に籠っている。

8年前からここは使用禁止となっていたようで、誰も入らなかったようだ。

監視カメラも音声マイクも全て切ると、昔のようにそこで修行をしていた。

修行とかザンザスらしくないので、幹部の者には言っていない。

というより幹部は幹部でボンゴレから渡される任務で忙しい。

ヴェロニカは両手で剣を振り回し、乱雑に炎を薄く張っていく。

部屋全体を覆う糸状の炎に、大量の炎を通しだすと一斉に爆発した。

腕が訛るといけないので、定期的に技の精度を確かめながら修行していった。

 

そして経つこと2週間…

ヴェロニカが目覚めて3週間目に入ったところで、目の下に大量の隈を携えた入江が研究所から這いずってきた。

 

「ヴェロニカちゃん…出来たよぉ」

 

入江は、本来数名で製作するモノを一人でやっていたので不眠不休で作り続けていた。

 

「お疲れ、明日九代目を奇襲するからそれまで眠ってていいぞ」

「分かった……」

 

入江は気絶するように眠り出す。

そして翌日、ヴァリアー隊員にはザンザスが復活したことを伝えた。

伝えてた同時刻、スクアーロ、マーモンだけでボンゴレへの奇襲作戦、ハーフリング強奪、沢田綱吉以外のボス候補の暗殺を実行した。

数刻経つと、執務室にスクアーロとマーモンが入ってきて抱えていた白い布を巻かれた長物を地面に落とした。

 

「う"ぉぉい、ボスさんよぉ"…リング搔っ攫って来たぜぇ"」

「ボス…九代目を連れてきたよ」

 

ヴェロニカは布を剥いで、九代目本人であることを確認し、入江の開発したゴーラモスカの中に放り込んだ。

既にボンゴレには偽物の九代目を置いており、リングがなくなっていることに気付いた沢田家光はザンザスが起きたことを知るだろう。

ザンザスは九代目から奪い取ったハーフボンゴレリングを手にし、幹部の者達に渡した。

そして先日、ボンゴレリングをバジルが所持しているという情報があったので一応偽物だとは分かっているが、ルッスーリアにはバジルを襲撃してもらいにいく。

それからリングが偽物だと分かり、日本へ行くことになった。

幹部と小部隊の者達はここから全て別行動となっている。

ヴェロニカは九代目の持っているジェット機を使い、幹部含め6人と一機で日本へ飛び立った。

 

数時間後、日本へ着くとレヴィがマーモンと共にハーフボンゴレリングを探しに向かった。

数十分後にレヴィから連絡が来て、沢田綱吉一行が集まっている場所へ向かう。

ここまでは原作通りだと思いながら幹部の者達と行動していた。

唯一違いがあるとしたら、バジルを襲い沢田綱吉と対峙したのはルッスーリアであることだ。

沢田綱吉は数日前襲撃してきたルッスーリアを見て困惑している。

ベルが沢田綱吉達を殺そうとした時、沢田家光達が乱入してきた。

 

「ボンゴレ後継者候補、沢田綱吉」

 

家光はザンザスに視線を向ける。

 

「同じく、後継者候補ザンザス」

 

ヴェロニカはスクアーロの方を見やると、彼は冷静に沢田綱吉を見下ろしていた。

微塵も表情を変えないスクアーロに8年という月日を感じさせられる。

そう考え事をしていると、家光の宣言は終盤へ差し掛かっていた。

 

「ツナファミリー対ヴァリアーの決闘だ!」

 

家光が高々と宣言し終えた直後、チェルベッロが乱入する。

そして九代目直属のチェルベッロ機関だ何やらと喋り始めた。

沢田家光も口を出すが、チェルベッロは論破し、そのままジャッジを務めることとなった。

 

「それでは明晩11時、お待ちしております」

 

それだけ言うと、チェルベッロは森の中に消えて行き、ヴェロニカはボンゴレの所有しているホテルに戻るため、その場を去った。

翌日の夜、ザンザス以外全員が会場に向かうが、途中でスクアーロが帰ってきた。

 

「晴の決戦だったから戻ってきた……君は何で来なかったんだい?」

 

ヴェロニカは椅子に座りながら入江の問いに答える。

 

「負け試合を見に行くつもりはない…それに私にとってボンゴレリング争奪戦は二度目だ……勝敗は知っている」

「え、ああ…そっか…ん?じゃあ僕の勝負の行方も知っているのかい?」

「スクアーロなら知っているが、入江が憑依している時点で結果は変わる」

「そりゃそうだけど、スクアーロはどうなったんだい」

「山本に負けて鮫に喰われた」

「鮫に?」

「山本を最初から全力で殺しに行かないからだ…」

「……でも中学校で何で鮫が?」

「ああ…雨の守護者対決では鮫が用意されてた」

「うわぁ、気を付けよ」

「…雨と雲以外行く気ないから」

「え、僕の来るの?」

「8年の間お前がどれだけ強くなったのか見たい」

「いや…まぁ…8年前よりは強くなってる自信はあるけど…」

 

入江は恥ずかしがりながら苦笑する。

 

「にしても綱吉君、若かったなぁ」

「まぁ約40年も変わればな…」

「それもそうか……」

「そういえば元の世界へ帰る糸口は見つかったか?」

「…時間がある時に調べはしたけど…成果は見られなかったよ」

「そうか…」

「元の世界でも時間は過ぎてるのかなぁ…そしたら僕死んでそうだよ…」

「ヴァリアーが心配だな…それと父が」

「暴走してそうだよね、ザンザス親バカだし」

「……妙な気分だ…今はザンザスなのに……父を思うとこの体は一体誰なのか…そう思ってしまう」

「まぁ同一人物だけど、君の父親ではないから…違和感あるよね」

「このまま私がザンザスになっている限り、この世界に私は存在することはないし、ザンザスが父親になることもないだろう」

「ああ、そうか……そうだよね……」

「父の過去を遡って体験しているような感覚だな」

「僕としては、ヴァリアーのイメージが少し変わったかなぁ」

「イメージ?」

「直ぐに暴力で訴えかける人ばかりだと思っていたから…割と話せば分かる人もいるんだなとか…上下関係とかとっても厳しいなぁとか」

「ああ、ルッスーリアに至ってはオカマと死体愛好家な所を除けば普通の常識人だからなぁ」

「その二つが果てしなく残念だけどね」

「マーモンは常識人じゃない?」

「ああ、まぁ…あの守銭奴なとこは呆れるけど」

 

入江と話していると、そろそろルッスーリアが負けて帰ってくる頃だと思い会話を切り上げる。

その数分後、ボロボロのルッスーリアを担ぎ上げるゴーラモスカと他のメンバーが帰ってきた。

 

「つーかスクアーロ何で帰ったんだよ」

「用事あったんだよ…明日は行くぞぉ"」

 

ベルの問いにスクアーロが答える。

そして他の幹部たちは自室に戻っていく。

ルッスーリアはゴーラモスカに運ばれ、治療室へ向かっていった。

ヴェロニカも自室に戻ると、ふと思い出した。

あ、家光……イタリアに行かせなきゃ

明日雷の対決行って、それとなくイタリアに帰らせねば

明日の予定を考えながらその日は眠りについた。

 

翌日、ただ夜になるのを待つだけでは暇で、本を読んでいるとベルが部屋に入ってくる。

 

「ねぇボス、ポーカーしようぜ」

 

ベルはカードを分けて、ヴェロニカに差し出す。

丁度暇だったので、気まぐれにそのカードを取りポーカーを始める。

 

「今度は負けねーから」

 

数分後…

 

「フルハウス」

「フォアカード」

 

数十分後…

 

「フォアカード」

「ストレートフラッシュ」

 

一時間後…

 

「ストレートフラッシュ!」

「ロイヤルストレートフラッシュ」

 

 

ヴェロニカは哀れに机に突っ伏すベルを見やる。

私も、ザンザスの幸運には少し引いてる。

何引いても揃うんだもん…

 

「何なのマジで…」

 

ベルが打ちひしがれている時、スクアーロが入ってきた。

 

「う"ぉぉい、ボス…ってカードゲームしてんのか?」

「ッチ、何の用だカス鮫」

「今夜の対決行くのかぁ"?」

「あ?ボスが行くわけねーじゃん」

「少し家光に用があるからな…最後の方で顔は出す」

「は?マジ?今日嵐の対決してくんねーかな、シシッ」

「了解、つーかカードゲーム混ぜろよ、夜まで暇なんだよ」

 

スクアーロもカードゲームに入ってくる。

それからまた数十分やり始めるが、どうやってもヴェロニカが一人勝ちする結果となった。

 

「待て、ボス相手にポーカーはダメだぁ"…大富豪しようぜぇ"」

「大富豪?何それ」

「ルール教えてやるよぉ"」

 

大富豪…懐かしい名前出すなぁ…

スクアーロがルールを教えるのを見ながら前世でやった記憶を掘り起こしていた。

そして始まる大富豪…人数は若干足りない者の、出だしは順調に始まっていく。

ヴェロニカの手札には(エース)(デュース)(キング)が偏って何枚も入っており、いかにも大富豪のカードのみだった。

スクアーロの手札が一向に減らず、貧民はスクアーロだと思っていた。

すると、スクアーロの番でスクアーロは口角を上げ、手札から四枚取り出した。

 

「う"ぉぉぉい!革命だぁ"!」

 

(ナイン)を四枚出し、階級を逆転させた。

ベルもこれには驚き、ポーカーフェイスを突き通すも手札を掴む指が若干ピクリと動く。

そしてヴェロニカは自身の手札を見る。

 

「………」

「ぅ"ぉぉおい、ボス!手も足も出ねぇかあ"ぁぁああ!」

 

ヴェロニカを煽りまくるスクアーロ。

いやはや入江よ…スクアーロに成りきるの上手くなったじゃないか……

そんなことを考えているヴェロニカは無言でスクアーロを見やり、また手札を見る。

そして心の中で合掌した。

ヴェロニカは手札を全て投げ、呟く。

 

「革命」

「「え」」

 

そこには(エース)が四枚。

これにはベルもスクアーロも素っ頓狂な声を出した。

そしてヴェロニカの手にはカードが残っていなかった。

自身が勝利したついでにスクアーロをどん底に突き落としたのだ。

ベルがにんまり笑い、スクアーロは手札を見て絶望した顔をしている。

決着は数分で着いた。

 

「シシッ、大貧民隊長」

「るせぇぞぉ"」

 

一通り暇を潰した後、食事を取るとレヴィは先に会場へ向かっていった。

二時間後、マーモンがレインウェアを配りヴェロニカ以外はホテルを出た。

ヴェロニカも一緒について行こうかと思ったが、それだとレヴィが調子づいてランボを真っ先に殺しそうなので、後々行くことにする。

ヴェロニカが雨が少し弱くなっていた頃にホテルを出て、並盛に向かうと丁度沢田綱吉がランボを助ける場面だった。

ヴェロニカは挨拶代わりに沢田綱吉に向かって弱めの一発を放つ。

それで、ヴァリアーの者達もヴェロニカの存在に気付く。

飛ばされた沢田綱吉は、よろめきながらも立ち上がりザンザスを見据えた。

 

「何だその目は…まさかお前、本気で俺を倒して後継者にでもなれると思っているのか?」

 

多分こんなこと言ってたような気がする。

ヴェロニカの言葉に沢田綱吉が返す。

 

「そんなこと思ってないよ!俺はただこの戦いで仲間をだれ一人失いたくないんだ!」

 

甘ちゃんめ……そんな思考ばっかしてるからパパに嫌われんのよ

私だって沢田綱吉の性格は嫌いじゃないけど、その高すぎる理想は嫌いだ…

まぁ主人公だからこその台詞でもあるんだろうけどね

 

ヴェロニカが銃口を向けると、チェルベッロが入ってきた。

 

「お待ちくださいザンザス様!ここで手を上げればリング争奪戦の意味が…手をお収め下さい!」

 

そのチェルベッロに向かって容赦なく発砲する。

あ、加減間違えた…

体を貫く威力で放ってしまい、チェルベッロは心臓に当たり即死する。

 

「俺はキレちゃいねぇ…むしろ楽しくなってきたぞ」

 

歪な笑みを見せると、幹部たちが反応する。

ボスの笑みは久しぶりだとか、8年ぶりだとか…

ヴェロニカはチェルベッロに進めろと命令する。

 

「は、勝負の結果をお伝えします。今回の守護者の対決は沢田氏の妨害によりレヴィ・ア・タンの勝利とし、雷のリング…並びに大空のリングはヴァリアー側のものとなります」

「え…」

「アホ牛だけではなく、十代目のリングまでっ」

「話が違う!失格ではないはずだ!沢田殿はフィールド内に入っていなかった!」

 

バジルの批判を家光が止め、チェルベッロが沢田綱吉から大空のリングを没収する。

そしてザンザスの方へ行き、大空のリングを譲渡する。

ヴェロニカはハーフボンゴレリングを合わせて、指に嵌める。

 

「他のリングなどどうでもいい…これで俺の命令でボンゴレの名のもとお前たちを殺すことも出来る」

「そ、そんなっ」

「だがあの老いぼれが一度は後継者に選んだお前をただ消したのではつまらなくなった…お前を葬るのはリング争奪戦で本当の絶望を味わわせてからだ………あの老いぼれのようにな」

 

その言葉に反応したのはリボーンと家光だった。

 

「ザンザス貴様、九代目に何をした!」

「それを調べるのがお前の仕事だろ、門外顧問」

 

前に出そうになる家光をリボーンが止める。

 

「喜べ偽物共、お前らにはチャンスをやったんだ。残りのバトルも全て行え…万が一お前らが勝ち越すようなことがあればボンゴレリングもボスの地位も全てくれてやる……だが負けたらお前の大切なものを全て消す」

 

ヴェロニカはチェルベッロに進めろと命令する。

 

「では明晩のリング争奪戦のカードを発表します…明日の対戦は嵐の守護者の対決です」

 

その言葉にベルがにんまり笑い、レヴィがヴェロニカの元に来る。

 

「ボス、雷のリングだ…納めてくれ」

「いらねぇ…レヴィ、次に醜態を晒してみろ」

「死にます…」

 

この頃のパパって凄く性格悪かったから、こんくらい冷酷じゃなきゃな、うん

何かスクアーロがこっち見てるけど…あれ?引いてるの?

この後ヴァリアーは並盛中を去っていく。

ホテルに着くと各自自室に戻っていく中スクアーロだけこちらに向かって来た。

部屋に入ると、スクアーロは水をグラスに入れて差し出してくる。

 

「……あの言葉本当かい」

「なに」

「負ければ全員殺す…って…」

「殺す気はない……が沢田綱吉次第だ」

「え…」

「あいつが零地点突破を習得出来なきゃ殺すつもりだ」

「そんなっ………いや、うん、君に従うよ」

「リング争奪戦が終われば直ぐに未来に飛ばされるんだぞ……足手纏いが増えるくらいなら殺した方がマシだ」

「そう…だね……」

「それに逆境を乗り越えるのが奴等だ…心配せずともボロカスに痛めつければ直感で会得するだろ」

「それ全然心配出来ないよ!」

 

真面目な空気が紛散し、入江はおやすみとだけ言うと出て行った。

その日はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 




沢田綱吉フルボッコフラグが乱立しちゃってる(笑)

入江:殺しに否定的意ではあるが、拒否感はない。
ヴェロニカ:忘れがちだがヴァリアーのボスなので足手纏いや裏切り、敵には慈悲も同情もない。ザンザスと沢田綱吉の中間よりも少しザンザス寄りの思考。



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