Veronica Ⅱ   作:つな*

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Veronicaの凍結

「ヴァリアー現ボスであるザンザス、ボンゴレ9代目へのクーデター画策により貴様に拘束命令が下された」

「抵抗すれば発砲も許可されている、大人しく連行されろ!」

 

 

『さようなら…ザンザス様』

 

 

オッタビオの通話が切れると共に、ボンゴレの精鋭が取り押さえようとしてくる。

ヴェロニカはすかさず銃で広範囲に渡り炎を出し、目くらましする。

 

「おいカス鮫、お前は他の奴等と連絡を取れ」

「り、了解!」

 

入江も混乱しているが、ヴェロニカの声で我に返り走りだす。

屋敷の中で広場が一番戦闘に向いていると考え、直ぐにそこへ向かいだす。

追手を振り切り、広場へ着くとスクアーロに切り替えた入江が携帯を取り出す。

 

「レヴィは任務中だ、ベルとマーモン、ルッスーリアにかけろ!」

「分かった」

 

急いで、電話を掛けると数秒でルッスーリアが電話に出た。

 

『は~い、どうしたのスクちゃん』

「今すぐ本部に戻れ!」

『え?』

「オッタビオに嵌められ―――」

 

スクアーロの言葉は途中で爆発音によって掻き消された。

 

「くっそ、取り合えず本部に――――」

 

瞬間、入江の携帯に銃弾が当たる。

機械の壊れる音と共に剣を構える。

前方にはボンゴレ本部の精鋭が突入してきて、ヴェロニカがそれを捌いていた。

殺せばそれこそクーデターのそれと変わらないと思っているのか、全員気絶させている。

数十分に渡り、ようやく鎮圧させたヴェロニカに入江は汗を拭う。

 

「どうすんだ、これ」

「どうするもこうするも……上手く嵌めやがってくれたな……オッタビオ」

 

ヴェロニカの言葉に驚く入江は建物の入り口の影から出てくる人物に警戒を表す。

 

「流石ですザンザス様…いつからお気づきに?」

「御託はいらねぇ……てめーをカッ消す」

 

「それはさせないよ、ザンザス」

 

オッタビオの後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

ヴェロニカも入江も目を見開く。

 

「九…代目………」

 

写真でしか見たことがなかった九代目を直で見た入江は身震いする。

ヴェロニカも目を細め、銃を構えオッタビオと九代目の足元に撃ち込む。

すると、爆発とともに煙が立ち上がり目くらましになっている隙にヴェロニカは入江の襟を掴み窓の外に投げ飛ばした。

急な行動に驚いた入江は何も出来ず、そのまま窓の外に投げ飛ばされる。

重力に従い落ちる直前、ヴェロニカの方を見た。

 

 

「生きろ」

 

 

 

その言葉と共に入江はそのまま森の方へ落ちていく。

そして煙が消え、九代目とオッタビオがようやく視界に入る。

オッタビオはスクアーロがいないことと、窓が割れていることから外へ連絡させるために逃がしたと気付き、援軍を呼ばれては面倒だと思いスクアーロを追いかけようと窓へ寄ろうとした瞬間銃弾が飛んできた。

鼻先スレスレを銃弾が通り抜け、オッタビオの頬に冷や汗が伝う。

 

「行かせねぇよ」

 

オッタビオは自身と九代目の二人を相手にする気かと正気を疑った。

 

「ザンザス……一体いつ真実を知ったんだ…」

 

九代目が悲しそうに問いかけてくる。

ヴェロニカは内心首を傾げる。

真実……真実……?何のことだ。

ん?これは誤解が解けるのでは?

 

「ザンザス様、あなたが半年前にご自身の出生をお知りになったことは分かっているのです…」

 

真実って素性のことか。

 

「そして、いきなり力に貧欲になり、私を遠ざけ、九代目を避け……ずっとこの機を狙っていたのですね…」

 

色々私のやってきたことが裏目になって出ているような…

やっぱりオッタビオ殺してから弁解しよ。

コイツいるだけで調子狂うわ。

ヴェロニカが銃でオッタビオを狙い撃とうとすると、目の前に炎が現れる。

なんなくそれを避け、オッタビオに向かって数発撃ち込む。

が、やはり九代目が邪魔をして、オッタビオは窓からスクアーロを追って行ってしまう。

舌打ちをして、九代目に向き合う。

一応、弁解しよう。

ヴェロニカが口を開こうとすると、九代目が杖をこちらに向けてきた。

 

「言葉で語り合うつもりもないか………ならば…致し方ない…」

 

おいおいおい、今!弁解しようと、口開いてただろ!

九代目の炎が襲い掛かってきた。

 

「ふざけんじゃねぇ!」

 

本心からの声だった。

 

オッタビオなんぞの言葉を信じやがって。

これは誰の気持ちだろうか………

なんだろう…この怒りは……

ああ、これは憤怒の………パパの怒りだ

ダメだ、抑えきれない

怒りがどんどんと溢れてくる

止められない

パパの中の怒りが暴れ出して――――…

 

目の前の九代目は攻撃を緩めることはなく、ザンザスに放ってくる。

九代目の攻撃を躱したり調和しては怒りに任せて撃ち込んでいった。

怒りに飲まれ、ただ目の前の男を殺そうと体が動く。

 

どうして どうして どうして

 

止まらない―――…

 

どんどん戦場は苛烈を極め、九代目の杖に灯る炎が変化した。

ヴェロニカはそれを見て直感的に零地点突破だと分かった。

瞬時に炎を放つのを止め、剣を腰から引き抜く。

九代目もいきなり武器を変えたザンザスを警戒するも零地点突破・初代エディションを行使した。

氷がヴェロニカに襲ってくるが、それを体内に炎を纏い身体能力を強化したヴェロニカは避けだす。

理性が少しばかり欠けていたため、炎のコントロールが出来ず腕の数か所に火傷を負う。

痛みを無視して、剣を振り下ろして氷を砕く。

冷却された死ぬ気の炎の強度を知っている九代目はそれを見て驚愕する。

炎を使わず生身で戦っているように見えるので、生身で強固な氷を砕いたようにしか思えないのだ。

ヴェロニカは痛みで集中力が切れ始め、体内コントロールに支障が出始める。

足元に散らばる氷の破片を九代目に蹴り飛ばす。

九代目もそれを避けきれずに、腕と腹部を負傷する。

コントロールが鈍ったことで肺の近くを火傷し、吐血するヴェロニカに九代目が眉を顰める。

 

「ザンザス…私はお前を本当の息子だと思っている……」

 

ああ  聞きたくない

私の中の怒りが  憤りが

 

「あ…」

 

今まで固く閉められていた蓋が抜けたような感覚がした。

瞬間、体の奥底から怒りの感情が沸いてくる。

 

ダメだ ダメだ ダメだ ダメだ

 

脳内で最大限の警報が鳴り響く

 

ごぽり ごぽり 

 

嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ

 

 

「あああぁぁぁあああああああ」

 

 

ヴェロニカの感情が炎となって大量に溢れ出す。

手に握る剣先から溢れる膨大な光球に九代目が目を見開く。

 

「ザンザス!」

 

 

私は 私は 私は 私は――――――――…

 

❝ヴェロニカ❞

 

 

 

ヴェロニカの意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

入江side

 

 

『生きろ』

 

僕には一瞬だけ、ヴェロニカちゃんの本当の姿が重なったように見えた。

窓から投げ出された僕はそのまま地面に着地し、その場を離れた。

森を駆けていると、後ろから足音がして直ぐに警戒する。

 

「オッタビオ…」

「あなたはここで殺されてもらいます」

「黙れこの裏切り者が」

 

今この場で戦うのはいいが、ハッキリ言って今の僕でオッタビオに敵うかが分からなかった。

今まで散々ヴェロニカちゃんに鍛えられてきただろう、信じろ。

自分を信じるんだ。

 

「てめぇ何で嵌めやがった…」

「何で……ですか………」

 

オッタビオの雰囲気が変わり、オッタビオが銃口を入江に向ける。

 

「あなたが彼に出会いさえしなければ……こうはなりませんでしたよ」

「あ"?」

「あなたも彼も、ここで葬り去って…私が理想のヴァリアーにしてみせますよ」

「何だと?」

「彼が幼い頃から仕えていたというのに…その恩を忘れて薄汚い銀色なんぞに…私の理想はこうではないんだ、何の為にザンザスに仕えてやったと思ってるんだ!」

「ふざけんじゃねぇ!」

「っ」

「ザンザスはてめぇの玩具じゃねぇんだぞ!オッタビオ!」

「黙れ!」

 

オッタビオが銃の引き金を引き、銃弾が入江に放たれるが、剣で弾き入江も切りかかる。

一体どれほど時間が経ったのか分からないが、入江にとって一秒が一分に感じられた。

強い相手と一対一で戦うのは初めてだった。

今まではヴェロニカちゃんが考えて、自分がちゃんと倒せるであろう相手を選んで任務を与えていたから。

だがここにはヴェロニカちゃんはいない。

縋ることも出来ない。

 

今、ここには、僕しかいないんだ

一人で、こいつを倒さなきゃいけないんだ

倒してヴェロニカちゃんのところに行かないと

 

スクアーロの踏み込みに間に合わずオッタビオの頬に剣先がめり込むが一重で躱される。

そしてオッタビオの狙撃が入江の肩に当たり、血が飛び散った。

 

「その程度か、二代目剣帝…」

 

額に汗が伝う入江は、汗を拭うこともせずオッタビオから視線を外さず剣を振る。

痛い 戦え 痛い 戦え 戦え

 

「消えろ!スペルビ・スクアーロ!」

 

オッタビオの声と共に、走りだした。

銃声が二つ聞こえるが、入江はそのまま走りオッタビオの腕目掛けて剣を振るった。

オッタビオの腕が宙に飛び、持っていた銃が草むらに落ちる。

同時に入江の腹部、足に一発ずつ銃弾が入った。

 

「がぁぁぁぁああああああ」

 

オッタビオの悲鳴をあげたその時、入江は無意識に足を動かし、血が出るのも構わずに左手の剣をオッタビオの首目掛けて突き刺した。

悲鳴は止み、オッタビオは糸が切れたように重力に従って崩れ落ちる。

入江は本部の屋敷に振り向き、歩き出す。

だが数歩歩き出すだけで、直ぐに倒れ込む。

 

そしてやっと痛覚が戻ってきたかのように、銃弾が当たった場所が痛みだす。

 

「ぅぅ……痛い……」

 

痛みで口調が入江になるが、この場には誰もおらずそのままゆっくり仰向けになる。

痛みに耐えながらシャツを破り、撃たれた箇所を止血する。

途中、遠くで爆音が聞こえた。

 

「ヴェロニカちゃん………」

 

一瞬意識が遠のいたが、なんとか堪えて立ち上がる。

すると茂みから足音がし、そこに視線を向ける。

 

まずい、今ボンゴレの者に見つかればっ…

 

「スクちゃん!?」

 

その声に一瞬体の力が抜けそうになった。

視界に入ってきたルッスーリアがオッタビオの死体と血まみれのスクアーロを見て駆けつける。

 

「ルッスーリアか…」

「ちょ、何があったのよん!」

「オッタビオがヴァリアーを嵌めやがった……ボスがっ…クーデターを画策してることになって…ごほっ」

「なっ」

「今九代目と戦ってるハズだぁ"……向かわねぇと……」

「分かったわ…スクちゃんはここで休んでなさい」

「あ"あ?」

「今の貴方が言っても足手まといよん」

 

ルッスーリアの言葉に詰まり、そのまま木に背中を預け座らされる。

 

「今、ベルもマーモンもレヴィも向かって来てるわ」

「そうかぁ"…」

「あたしは先にボスの元へ行くわ、あなたは動けるようになってから来なさい」

「お"う」

 

ルッスーリアが本部の方へ走っていくのを見て、入江は気が抜けたように息を吐く。

幹部が来てくれれば間に合う、と思ってしまった。

一度弛緩してしまった緊張感に、意識が遠のく。

 

ああ、ダメだ…血を失い過ぎた……

 

意識を失う寸前、入江の目には太陽が見えた。

 

 

大きい 大きい

  橙色の 禍々しい

 

    太陽が

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、そこは病室だった。

状況が分からず、ぼーっとしていると扉が開いた。

そこには看護師が入ってきて、目が合うと誰かに連絡を取り出した。

数分後に沢田家光が入ってきた。

綱吉君の父親……

ミルフィオーレに潜伏中、ボンゴレ狩りをしていた時に優先順位が高かった人物だと記憶していた。

 

「ようやく目が覚めたか…スクアーロ」

「沢田家光…」

「今回のお前たちの騒動は隠蔽されることになった」

 

本命を切り出す家光に入江は眉を顰める。

ここで、弁解をしたところで画策していた証拠もなければ無実だと言う証拠もなかった。

しかも、こちらはオッタビオを殺している。

唯一の証言者を殺しているので、口止めに殺したのではと言われるのが関の山だ。

全ての行動が裏目に出ている今で、無実を証明するのは難しいと判断した。

 

「ボスはどこだ…」

「ザンザスは眠っている……永らくは目を覚まさないだろう」

 

沢田家光の言葉に入江は目を見開く。

 

凍らされて…しまったのか?

 

ヴェロニカちゃんが?

 

「どういうことだ…」

「ヴァリアーは表面上存続させるが、事実上凍結だ……」

「おい」

「九代目も重症を負わされた…ヴァリアーが解体されなかっただけ有難く思え」

「聞けよ」

「それと、今後のヴァリアーは九代目の指揮下に置くことになった」

「聞けっていってんだろうが!」

 

入江の言葉を無視する家光に怒鳴った。

 

「ボスはどこにいる…」

「教えるわけにはいかない」

 

家光はそれだけ言うと、病室を出ていった。

義手が外されている左腕を右手で掴む。

 

そんな……ヴェロニカちゃん……

 

僕は……これからどうすれば………

 

 

❝生きろ❞

 

 

入江は拳を強く握りしめた。

 

 

 

「8年………生きて……みせるよ……」

 

 

 

この時の僕は涙を堪える為にただただ歯を食いしばるしかできなかった。

 

 

 




原作通りザンザスは凍らされるけど、原因が違います。
ザンザス(ヴェロニカ)自体クーデターする気はなかったけどオッタビオに嵌められた。

ヴァリアーの面々が良い子だと思ってる?
そんなわけないよ!すっげー外道だからあいつら。
人の不幸は蜜の味の奴等だから!同情一切しちゃダメだよ!(笑)


※ここからオッタビオに関して説明

オッタビオはまず野心家で、ヴァリアーの副隊長であり、ザンザスに幼少期(ザンザスがボンゴレに来た時)から仕えてた人です。
そしてゆりかご時にザンザスを裏切り、計画を九代目に密告。
その後ボンゴレ内部で立場を確立し出世していき、8年後ザンザスが復活した際に、軍の開発したゴーラモスカでザンザスを抹殺しようと企てるも敢え無く失敗しザンザスによって殺害された。
この時ザンザスは8年前のオッタビオの裏切りを知っている。
因みにベルから凄く嫌われている。

※ここから自己解釈↓
ザンザスの補佐を任命された時、本人は本気で喜んでいたので、この時は本当にザンザスの為に働こうと思っていた。(当時ザンザス様呼び)
後々ザンザスはボンゴレボスになる人だと思っていたが、クーデター計画を聞いて失敗する可能性が高いと判断した為、ザンザスを切り捨てた。
ここらでオッタビオの冷酷さと野心さが出てますね。
密告したことで安全に立場を守り抜いたオッタビオは、ヴァリアーのボスを目指した。(ザンザスの前にスクアーロが時期ボスになる可能性もあったのでヴァリアーのボスに関しては血筋は関係なし)
多分ザンザスの補佐になった時も心のどこかで気付かないうちにザンザスについて行けば将来地位が安定するからとか思ってた(?)


そんな性格の彼がザンザス(ヴェロニカ)がボスであることにどう思ったのか。
まずスクアーロ(入江)といきなり距離が近くなったザンザス(ヴェロニカ)を不思議に思うがザンザスが剣を使うことから無理やり納得する。
でも段々と自分が遠ざけられていることに感づき始め、不安を抱く。
元々ザンザスの隣で時期ボスの副隊長という地位で酔い痴れていた男なので、その立場が危うくなったと思った。(ヴェロニカは入江にこれ以上心労を与えない為に副隊長にするつもりはなかった)
だがオッタビオは野心家特有のプライドの高さ故、副隊長から一幹部に下りるのが我慢ならず、偶然(ここに関しては考えるのも面倒なので本文でも曖昧に記述)知ってしまったザンザスの秘密(血が繋がっていないこと)でザンザス抹殺計画を企てた。
だってどんだけヴァリアーが強くても、ザンザスがボンゴレを継げないと分かっちゃぁねぇ……
ザンザスの性格を熟知している彼だからこそザンザスがクーデターを企てるであろう可能性が高いと考え、九代目に偽造報告し信頼を得ようとした。
まぁ本文では入江にぬっ殺されましたけど。
多分オッタビオは無意識下でヴァリアーボス(地位の高い場所)になりたかったけど、ザンザスに勝てるわけないと知って補佐の地位に甘んじていたんだと思うんです。
だからせめて幼少期から仕えているのだからとザンザスに教育という名の恩を売って自身の地位を確立させる、又は自身が理想とする組織へ誘導させようと考えていた。
だから段々と自身から離れていくザンザスが恐ろしく、寂しく、不安だったんでしょうね。
結論から言えば全部オッタビオの考えすぎ+ヴェロニカがザンザスの拗らせた後の性格しか知らなかったが故の不幸な行き違いだった。


まぁ自己解釈としてはこれくらいです。
正直、原作通り冷凍させたかっただけなんです。
オッタビオの自己解釈なんて冷凍される結果に持っていく為の後付けだよ(笑)
真剣に考えないでくれると有難いです。

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