Veronica Ⅱ   作:つな*

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Veronicaの謀反

この世界に飛ばされ、5か月が経とうとした頃

 

「ザンザス様」

「何だ」

「最近、ヴァリアーの内情を変えておられるようですが、何をお考えなのですか」

「お前には関係ねぇ」

「ですが」

 

 

単にヴァリアーという組織を強化したいだけである。

元の世界のヴァリアーに近づけようと、情勢を少しずつ変えている。

この半年で、格段に内情が良くなっていることは誰の目にも明らかだった。

そしてそれを違和感の抱かぬように持っていくことが難しかったが、誰も首を傾げていなかったので安心していた矢先だった。

オッタビオがザンザスという人物に違和感は持っていないが、探っているようにも思える。

暫くオッタビオと距離を取り、スクアーロとよく一緒にいたせいか、思うところがあったのだろう。

 

「ザンザス様、九代目との食事会が7時に入ってますが、いつ頃本部をお出になりますか」

「………断れ」

「ですが」

「あ"?」

「分かりました」

 

それだけ言うとオッタビオは失礼しますと頭を下げ、部屋を出ていく。

すまんオッタビオ、少しきつく当たり過ぎた。

だが今度の大規模な殲滅任務で入江が第二部隊の部隊長だから、今のうちに出来るだけ鍛えなきゃいけないんだ。

九代目にも、この大規模任務が終わったら会いに行こう。

一応親子だからね、表面上は。

そろそろ入江が戻ってくるはずだけどな…

 

「う"お"ぃ、ボス!任務終わったぜぇ」

「黙れカス鮫」

 

いつものようにスクアーロを貶すと、スクアーロは扉を閉めて報告書を片手にザンザスの元に歩いてくる。

机に報告書を置くなり、深いため息を吐き入江が出てくる。

 

「はぁ…今回も遠出で疲れたよ」

「明後日の任務までお前は休みだ」

「え?あ!明後日って言ったら僕が部隊長の任務じゃないか!」

「そろそろ大きな任務の経験が必要な時期だろう」

「今でも胃が痛いのに……ヴェロニカちゃんが僕の胃を狙って来てる…」

「胃薬は経費で落としてやる、それより行くぞ」

「ええ、僕帰っていたばっかだよ?」

「体力は有り余ってるだろ」

 

唸る入江を無視して、椅子から立ち上がり剣を片手に部屋を出る。

入江もヴェロニカに付いていく。

訓練所は今もなお使用している。

隊員にはちらほらここの存在を知る者もいるが、人払いをしているので早々誰かが来ることはないだろう。

幹部の者達も、ザンザスが剣を慣らす為にスクアーロと打ち合っていると思い込んでいるようなので放置している。

訓練所に入りいつものように、監視カメラ、音量マイクを切る。

目の前の入江も準備運動を始めている。

 

「始めるぞ」

「分かった!」

 

顔を何回か叩き、入江は剣を構え、ヴェロニカに突進してくる。

何度か剣が交差し、服のあちこちが破れるが二人の足が休まることはない。

高く響く金属音が数回、数十回と重なるごとに口からは息が漏れ出す。

入江の攻撃を流し、胴体を蹴ってくるヴェロニカに入江も避けようとする。

だが避けきれず数発入り、壁に激突するが再び立ち上がりヴェロニカに向かってくる。

数時間ほど経つと、やがて金属音は聞こえなくなり、そこには荒い呼吸を繰り替えす入江が床に寝転んでいた。

 

「はぁ…はぁ……もう無理……」

 

ヴェロニカは寝転ぶ入江を眺めながら剣を仕舞い込んだ。

そして、いつものように体内に炎を通す練習に移行した。

ヴェロニカが目を瞑り、集中し出す。

入江もそれを感じ取り、荒い呼吸を落ち着かせ、あるものを取り出しヴェロニカを見ていた。

目を開けたヴェロニカがいきなり壁に向かって走りだし、足で壁を垂直に走り始めた。

10mといったところで天井に手が付き、重力に従って落ち始め、地面になんなく着地する。

 

「ふぅ…」

「おおお、すごいよヴェロニカちゃん!本当に体内での炎をコントロールするだなんて」

「だがまだ集中力を乱すと自身に火傷を負うな」

「だけどこれは凄いことだよ…だって体内での炎はレーダーにも感知出来ないんだよ!」

 

隣で科学者としての顔が出ている入江の取り出したものは、炎を感知するレーダーだった。

体内で炎を流し身体能力を上げているヴェロニカが壁を垂直に走っている間、レーダーには何の反応もなかった。

つまり、他人から見るとヴェロニカは素の筋肉だけで壁を垂直に走ったようにしか見えないのだ。

だが体内で炎を循環させるにあたってデメリットはある。

まず一つめに、一歩間違えれば自身にダメージを負うということ。

二つ目に、体内を強化させるだけであって体外、つまりは皮膚などはそのままである。

なので、体内に炎を循環させたまま壁を思い切り殴ると、壁にクレーターが出来ると同時に皮膚まで裂けて血まみれになるのだ。

この二つがあまりにもデメリット過ぎる上に、普通に体外に炎を纏ってやり合った方がいいので死に技と化した。

この技はハッキリ言って、九代目や沢田綱吉の零地点突破の相手でしか発揮されない。

いつ沢田綱吉や九代目が敵に回るか分かったものじゃないし。

いや敵に回すつもりはないんだけれど。

長期間の訓練をした結果、一応実践で使えるくらいにはなったが、別に急いで身に付ける必要はなかったような気がした。

でもまあ早く身に付けて損はないか、と無理やり納得することにする。

 

入江もようやく実力がスクアーロに及ばないまでも、レヴィよりは強くなっていた。

これならあと半年以内でスクアーロに追いつくだろう。

あくまでこの時代の、と付け加えるが。

任務自体にはまだ拒否感はあるも、難なくこなすことが出来るようになっていた。

そしてヴェロニカは執務室に隠し部屋を作らせ、そこに研究室を作った。

勿論入江の為でる。

ここで入江は偶に籠って、元の世界に戻れるような装置を研究をしている。

ここは幹部の誰にも教えてないので、入江とヴェロニカが気を休める場所にもなっていた。

パソコンやら機材やらを真剣に見つめるスクアーロは不気味であったが、女口調のザンザスの方が気持ち悪いと思った。

 

そして最近気になることがある。

オッタビオの存在である。

彼の行動を見れば何故ザンザスを裏切ったのかが分からなかった。

ならば、どこかで彼が裏切ろうと考えた事柄があるハズだ。

心当たりは、クーデターしかない。

だが中身がヴェロニカである以上クーデターは起こす気はない。

じゃあオッタビオは信用していいのではないか。

そう言われればNoだ。

オッタビオは信じてはならない気がした。

何故かは分からないが、ザンザスの勘がそう告げているのだ。

誰も信じるな、と。

まぁスクアーロっていうか入江は信頼している、何せ同じ世界の人だから。

だけどヴァリアーの面々は一応信用はするが、信頼するかは迷うところである。

容易に裏切り、人の不幸を笑い、人の死を願う人たちだ。

ザンザスを裏切ることはないと思っているが、人間性を考えれば完全に信頼するのはダメな気がする。

それにこの時間軸じゃそれほど長い間一緒にいたわけじゃないから、安易に信頼するのは愚策だ。

だが私も世界は違えど一応ヴァリアーのボスである。

見る目くらいはあると思いたい。

こいつらは時間経過で様子を見るのが最適だろう。

 

「入江」

「何だい」

「最近、オッタビオとよく話しているが、何か感じたことはあるか?」

「え?」

「思ったことを言えばいい」

「え……えーと……ないかな…マフィアにしては丁寧な口調をしていると思うよ」

「そうか」

「どうしたんだい…いきなり」

「いや、杞憂であればいいんだが…」

 

 

オッタビオ、その名前を聞くだけで何故か心がざわつくのだ。

 

 

 

オッタビオside

 

「ザンザス様」

「何だ」

「最近、ヴァリアーの内情を変えておられるようですが、何をお考えなのですか」

「お前には関係ねぇ」

「ですが」

 

 

まただ、またあなた様は何も教えては下さらないのですね。

何故ですか…

心のうちに抱える不満を押し殺して、私は今日のザンザス様のスケジュールを伝える。

 

「ザンザス様、九代目との食事会が7時に入ってますが、いつ頃本部をお出になりますか」

「………断れ」

「ですが」

「あ"?」

「………分かりました」

 

最近、よく九代目との食事会をキャンセルなされることが多くなった。

また後程九代目にもお知らせしなければ…

私はザンザス様の執務室を出ると、九代目の側近であるコヨーテに電話を掛けようとした時、後ろからスクアーロの声が聞こえてきた。

 

「う"お"ぃ、ボス!任務終わったぜぇ」

「黙れカス鮫」

 

そのあとに扉の閉まる音が聞こえた。

 

ギシッ…ミシ……

 

手にしていた携帯が不穏な音を立てていた。

手を開くと、少しだけ罅の入った携帯が現れる。

 

ザンザス様はお変わりになられた。

あの銀色が入ってきてから。

ザンザス様、ザンザス様…

九代目のように私からも離れていくおつもりですか

何故ですか 

幼い頃からお傍で仕えていたのは私ではありませんか

ザンザス様…

 

あなたというお方はなんと罪深い

 

私の求めた理想とは裏腹に、私から離れて行った…

 

もう…私には……

あなたに仕えていたいと

 

 

思えないのです。

 

prrrrr…

 

『オッタビオか、何だ』

 

ザンザス様

 

 

「至急お知らせしなければいけないことが――…」

 

 

今のあなたは私の理想とするヴァリアーには要らない

 

 

 

 

 

九代目side

 

私の息子ザンザスは血の繋がった息子ではない。

だが事実を教えるにはあの子とは距離が離れすぎてしまった。

いつかは教えなければいけないことは分かっている…

ある日、あの子が剣を作るよう頼んできた。

私は意外に思うが、ザンザスの頼み事を無下にも出来ず、その道の職人に作らせた。

何か心変わりでもあったのだろうかと、ザンザスの顔を見に行くことにした。

久々に見る息子の顔は少しだけ言葉遣いが悪いも変わったところはなかった。

世話話をしようかと思うが、直ぐに仕事の話を持ってきて、結局ザンザスとの普通の会話すらまともにできずに本部に帰ることになった。

その後も何回か食事会を設けたが、あの子が来たことはなかった。

ヴァリアーのボスになったばかりで多忙を極めていることは分かっていた。

だがたまに流れてくる噂を聞いていると、顔を見たくなった。

銃を持ちながらも最近では剣をも学び始めたとオッタビオの報告にはあり、その腕前を見たくなった。

あの子は半年ほど前に急に力に貪欲になったのが気がかりでオッタビオにも気にかけてくれと頼んだ。

ああ、じわじわと離れるこの距離に、私は何も出来ずにいた。

 

私はいつあの子に真実を教えるのだろうか。

先延ばしにすることで、あの子の苦しむ思いが増やすだけだと言うのに

 

今夜の食事会でザンザスに真実を教えようと心に決めた。

 

そんな矢先だった。

部屋に急いだ様子でコヨーテが入ってきた。

 

「九代目」

「どうした」

 

「オッタビオからの密告です……ザンザスが――――――…」

 

 

 

 

ヴェロニカside

 

 

翌日、朝起きて着替えを済まし、部屋を出ると人の気配が全くなかった。

 

「…?」

 

どこに言っても人の気配はなく、おかしいと思ったヴェロニカはスクアーロの部屋に急ぐ。

 

「おいカス鮫!」

 

声を出しながら部屋のドアを蹴り飛ばすと、スクアーロが驚きながら起きてきた。

 

「なっ、どうし…」

「屋敷に人の気配がない」

「は…?」

「誰もいない…おかしいだろ、全員が任務で出払っているハズがない」

 

ヴェロニカの言葉に入江も真剣な面持ちになり、直ぐに義手を付け剣を括りつける。

入江と一緒に部屋を出ると、ヴェロニカは周りを警戒しながら屋敷を回る。

誰もいない屋敷の異変に、ヴェロニカは直感する。

すると携帯を取り出し、オッタビオに電話を掛けた。

 

『はい、どうされましたかザンザス様』

「おいてめぇ今どこにいる」

『本部におられますが、何か御用でもありましたか?』

「どこのだ」

『どこの、とは…』

「どこの本部だって聞いてんだよ」

 

数秒の静寂がそこにはあった。

 

『ボンゴレ本部ですよ、ザンザス様』

「何故そこにいる」

『やはりあなた様は(さと)いお人だ』

 

その言葉と同時に、四方から数十の足音がした。

横にいたスクアーロに切り替えた入江も音に気付き、腰を落とし周りを警戒している。

 

「オッタビオ…てめぇ………」

『どうして私の元を離れたのですか……………』

 

 

黒いスーツを着た男たちが何人も視界に入ってきた。

 

「ヴァリアー現ボスであるザンザス、ボンゴレ9代目へのクーデター画策により貴様に拘束命令が下された」

「抵抗すれば発砲も許可されている、大人しく連行されろ!」

 

 

『さようなら、ザンザス様』

 

 

 

 

 

 

 

 




オッタビオの死亡フラグ!

オッタビオの裏切った理由の詳細は次の後書きに記載してます。

ヴェロニカの執務室に入江専用の研究所が出来ました。
パソコンに向かって科学的なことをしているスクアーロ…………誰おま(笑)
あとこれはふと気になった二人の寝相↓

【挿絵表示】

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