Veronica Ⅱ   作:つな*

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Veronicaの不和

ヴェロニカです。

この世界に飛ばされて早一か月とちょっと経った。

少し前にベルとカードゲームで遊んでやったのを機に、ベルが懐いてきた。

どれだけ人殺してようが、中身は子供なんですね分かります。

ようやく入江正一が普通の単独任務を成功させた。

まぁ初めて人を殺したとあって、落ち込みようは半端なかった。

ヴァリアーのボスであるこの私に、慰められるくらいである。

多分あれアフターケアしなかったら自殺してた気がする。

だってさ、頬に返り血付けて、無言で私の部屋の前で呆然と立ってたんだよ?

あの時叫ばなかった私はえらいと思う。

あの後3日ほど引き籠ったが、昨日ようやく持ち直したようだ。

誰にも気付かれずに彼を慰めるのに一苦労したが、これでようやく入江正一の不信感が拭えればと思う。

それと二週間前にようやく両手剣が送られてきた。

待ってましたぁぁぁぁぁぁ!

心の中で叫びましたとも。

そして私が両手剣を持っている姿に幹部の者は皆驚愕していた。

銃はどうするって?メインは銃です。

両手剣が来て入江正一と打ち合いが出来るので、ようやく入江正一の経験値を上げれると思った。

それと、ルッスーリアとレヴィが前にも増して馴れ馴れしい…というか近づいてくる。

取り合えず定期的にぶっ飛ばしているにも関わらず、レヴィに至っては笑っているので本気で気持ち悪いと思った。

オッタビオは今もずっと私の補佐をしている。

なんとなくこいつは他の幹部よりも距離が遠い気がして、裏切った理由も分かったような気がした。

現在、入江と一緒に訓練所に籠って入江と剣を交わしていた。

 

「足」

「うおっ」

「脇もっと閉めて、ほらまた足!」

「うぎゃあ!」

 

ヴェロニカが入江の足を引っかけると、入江は派手に転び出す。

 

「目を瞑らなくなったのはいいけど、今度は足が注意散漫だ」

「ぅ…ごめん」

「最初は皆そうだ…だがこのままだと難易度の高い任務じゃ死ぬ確率の方が高いな」

「そっか……もう一回お願いします!」

 

最初の頃に比べれば入江は間違いなく成長している。

まず攻撃を前に目を瞑らなくなった。

逃げ腰にならなくなった。

あげればキリがないが、これならヴァリアー隊員でも不思議じゃないくらいの実力だろう。

この前人を殺す覚悟を身に付け、一皮むけた彼は必死に私に喰らい付こうとする。

その意気やよし、私も厳しく彼を指導する。

数時間後、疲れ果てて倒れた入江を横目に剣を腰に差す。

 

「今日はもう終わり」

「え、まだ出来るよ…」

「無理をすれば体が壊れる」

「ぅ、分かった」

 

まぁスクアーロの体だから多少の無茶は大丈夫だと思うが、それでも彼の体はまだ子供だ。

必要以上に酷使すればどこかでガタがくる。

 

「ヴェロニカちゃんはまたあの訓練でもするのかい?」

「ああ」

 

あの訓練というのは、私の炎のコントロール力の訓練だ。

今までも自由自在に扱うことの出来たが、それはあくまで体外に放出した炎のみであった。

そして今から私が鍛えるのは、体内でのコントロールである。

これを入江に話すと非常に危険な訓練であり、無謀なことだと言われ激しく止められた。

当たり前だ、一歩間違えれば内臓を焼いてしまうのだから彼が止めるのも無理はない。

体外コントロールとは違い、一つ一つずつが命の危険性があり、私も思いついた当初はこの考えは捨てようと思っていた。

だが、未来を思えばこれは結構有力なのでは?と思えてきた。

だって白蘭のGHOSTもそうだけど沢田綱吉も炎を吸収してきたり凍らせてくるし、それに関して対策が何もないままだとハッキリ言って詰む。

いや沢田綱吉と戦うことはないと思いたいが…。

吸収されたり凍結させるから炎は使えない、となると素の力で対峙しなければならないことになる。

どれだけ体を鍛えても死ぬ気の炎を使う相手に生身の体が勝てるわけがない。

であれば体外に炎を出さずに、体内に循環させて身体能力を強化することで、それらのデメリットは軽減できるのではないだろうか。

幸い私には剣術もあるので、問題は身体能力の差だけである。

入江は最後まで反対していたが、私が押し通した。

まぁ炎のコントロールだけなら私はトップクラスだろう。

 

「っ…」

 

少しだけ思考がズレて、指の中の神経に通していた炎の加減を間違い、一瞬焼けるような痛みに襲われる。

指を見ると、少しだけ皮膚の下が赤くなっていた。

外面を触ってもただの皮膚だが、内面は火傷を負っていると一目で分かる。

内面で火傷をすると少なくとも一日は痛みが引かない。

一番酷いときは、肺の端っこを焼いてしまい一週間ほど激しい痛みに襲われた。

流石の私もひやひやしたので、今の段階で臓器付近に炎を通すのはやめた。

入江の体力が回復し、歩けるようになるとヴェロニカと入江はその日の特訓を終了した。

 

「もうお腹が空きすぎて…」

「おい、口調を直せ」

 

ヴェロニカと入江がヴェリアー本部の廊下を歩いていた。

いつもならば、自室の方に食事が用意されるが、一人で食べる気分でもなかったので久々に食堂のような広間に向かう。

基本、そこはヴァリアー隊員のみが使いボスであるザンザスは滅多なことがない限り入らない。

ので、入った瞬間食堂に静けさが広がるのは無理のないことで。

一緒に食堂に入った入江…いやここはスクアーロにしておこう。

スクアーロの顔も若干引き攣っている。

何か別の場所に行こうぜ的な目線をヴェロニカに送るスクアーロ。

だが断る。

私は食堂のご飯を食べたことがないのだ。

いつもどっかのシェフかルッスーリアが作ったものしか食べたことなかったし…

前世で食べた食べ物の味なんて覚えてるわけもない。

何だろうこの安物の味というのを食べてみたくなったのだ。

ヴェロニカは周りの視線を無視して、食券を売られている場所に向かおうとして足を止める。

 

「おいカス鮫」

「な、なんだあ"…」

「てめーが注文してこい」

「っ!?……あ"あ"?何で俺がっ…おい!」

 

一瞬入江が出てきたが、持ち直しスクアーロの言いそうなセリフを出すが、ヴェロニカは無視して奥の席に座る。

正直言って財布持ってきてなかった、ハイ、スミマセン。

まぁ我ここのボスぞ?払わなくても大丈夫な気もするが。

数分すると、スクアーロが御膳を二つ持ち、顔を顰めながらこちらに歩いてきた。

 

「このクソボス、飯くらい自分で頼めよお"」

「るせぇ」

 

にしても入江、お前スクアーロの真似上手くなったな…

あ、でも若干額に汗が垂れてる。

スクアーロが持ってきたのは、パスタだった。

……いや別にパスタはいいんだけどね。

周りの奴等が凄い形相でパスタを見ている。

 

「スクアーロ隊長が、ボスにパスタ出してる」

「肉じゃない…だと?」

「嘘だろおい…」

 

ってなことを言ってますがそれは。

スクアーロの顔を見るが、何で私がパスタに手を付けてないのか全く分からない様子である。

これは部屋に戻ったら言わねば。

一応持ってきてくれたので食べはするが、これパパだったらスクアーロの顔にぶっかけてた気がする。

つーか高級肉じゃない時点でパパならキレてるな。

フォークを持ち、パスタを食べ始めると周りが困惑で騒めき立った。

そんな周りに疑問符を浮かべるスクアーロ。

カオスだなぁ…

カオスの原因であるヴェロニカはパスタを美味しく頂いていた。

パスタが残り僅かというところで、後ろからレヴィの声が聞こえてきた。

 

「ボ、ボス!?何故ボスがこのようなところにっ!」

 

腹減ってるからだよ。

レヴィは持っていたピザとサラダの乗ったトレイを綺麗に落とした。

よほど私がこの場にいることが衝撃的のようだ。

うん、私もパパが食堂なんかにいたら驚くわ。

パスタを食べ終えると、スクアーロが食べ終えるのを待たずに席を立ち、そのまま食堂を出る。

背後からレヴィの声が聞こえるが多分幻聴だ。

少しすると後ろからスクアーロがついてきて、執務室に入る。

 

「おい」

「な、なんだい」

「言い忘れていた、父の好物は高級肉だ」

「え」

「さっき周りが騒いでいただろ?お前がパスタを出したからだ」

「そうだったの!?でもヴェロニカちゃんはガッツリ食べる人だったっけ?」

「いや正直ステーキとかは偶に食べるくらいでいいんだが…如何せん父が高級肉ばかり食べるからこっちも食べざるを得ないというか…」

「何だか食事まで考えて食べるのって辛そうだね」

「だがサラダばかりを積極的に食べてるザンザスなんて気持ち悪いだけだろ」

「確かに」

 

入江は神妙な顔で私の方を見ていたが、スクアーロの顔でそんな表情しないで欲しかった。

 

「誰か来る」

「え、あ」

 

入江が振り向くと同時に、ノックと共にドアが開いた。

 

「ザンザス様、報告書を持ってきました」

 

入ってきたのはオッタビオだった。

オッタビオは報告書を机の上に置くと、こちらに振り向く。

 

「ザンザス様、昨日の書類には目を通されましたか?」

「ああ」

「あの第一部隊の中にスクアーロを入れてもよろしいですか?」

「何故だ」

「欠員が出てしまいまして…スクアーロは非番ですし、実力も申し分ないかと…」

「そうか」

 

え?みたいな顔をしている入江を他所にヴェロニカとオッタビオで会話を進める。

オッタビオが執務室を出た瞬間に、入江の目から涙が滝のように出る。

 

「まままま待って、僕まだ誰かと任務なんて出来ないよ…」

「大丈夫だ、今度の任務はそこまで難しいものじゃない…それもチームで動く分楽になるはずだ」

「任務内容って?」

「敵対マフィアの制圧………と暗殺」

「ほらぁぁぁあああああやっぱ殺すんじゃないかああああ」

「うるさい」

 

ヴェロニカは入江の頭を叩く。

めそめそしている入江にヴェロニカは溜め息をつく。

 

「この任務でお前の実力を他の者にも見せてこい」

「僕まだ弱いじゃないかぁ」

「それでもヴァリアー隊員としておかしくない実力だ、私が保証する」

「ううう、こんな時に褒められても…」

「入江、任務は4日後だ…それまでに少しでも鍛えるぞ」

「うううう」

「情けない声を出すな」

「胃がぁ…」

 

目の前の入江はめそめそしながら胃を摩っている。

剣の師であるスクアーロのこんな情けない表情は見たくなかったと本気で思うヴェロニカである。

 

 

 

 

 

オッタビオside

 

 

近頃ザンザス様はお変わりになられた。

まずヴァリアーの内情を違和感のない程度に少しづつ変えていっている。

ほとんどの者は気が付いていないが、私はずっとザンザス様のお傍でザンザス様に仕えてきたので少しの違和感にも気付くことが出来た。

ヴェリアーはこのまま進めば着実に強大となるでしょう。

今まで自分のこと以外に興味も示さなかったあなた様に一体どのような変化があったのだろうか。

 

そしてあなたは力に貪欲になられた。

スクアーロを引き摺っては訓練所で修行紛いなことをしていることは知っていた。

直ぐに飽きると思っていたが、かれこれ一か月も続いていた。

それに比例するかのように、彼の周りの雰囲気が以前よりも少しだけ柔らくなった。

その証拠がベルフェゴールだろう。

ザンザス様に気安く声を掛けることが多くなり、ザンザス様も偶にベルフェゴールの遊びに付き合うことがあった。

ルッスーリア達もザンザス様の変化に気付いているのだろう。

証拠にレヴィとルッスーリアは書きしたためた手紙をザンザス様の机の上に何十枚も置いていたり、クッキーやケーキを作って持って行ったりするようになっていたのだから。

まぁ手紙の方は毎度燃やされていたし、定期的に二人はザンザス様に吹き飛ばされているが、二人に懲りた様子はない。

マーモンも以前より、ザンザス様に声を掛けることが多くなったような気がした。

だけれど、私とザンザス様の距離は一向に縮まりはしなかった。

少し前に、心臓を摩るあなた様を見た時に直ぐに病院にと進言したが、受け入れてはくれなかった。

ザンザス様が私の元から離れていくのを感じ、私は幹部の者たちに一種の妬みすら覚えた。

幼い頃からあなた様にお仕えしていた私は、不要になったのですか?

あなた様は私を離れ、どこへ行くおつもりなのか。

 

ザンザス様が変わったのはこれだけではなかった。

いきなり両手剣を求め、銃をメインとしての戦法は変わらなかったが、腰には常に剣を差していた。

未だ銃で事足りているので、ザンザス様の剣術を見たことはないけれども、たまにスクアーロが訓練所から傷だらけで出てくるので、剣帝レベルではないのかと推測はしていた。

これ以上力をお求めになるザンザス様を九代目はどう思っているのだろうか。

今のままでも十分強く、次期ボンゴレボス候補として賛同の声が非常に多い。

だが私は知っている。

少し前に、偶然的にも耳にしてしまったのだ。

ザンザス様が九代目と血が繋がっておられないことを。

ああ、ザンザス様がこの真実に気付く日はいつだろうか。

今ならばまだ間に合いますよ、九代目。

ザンザス様はこれからも益々強くなっていくでしょう…九代目、あなたよりも……。

 

 

少し前に催された式典への行きの車の中で、あなた様から向けられた殺気を思い出すと今でも震えだすのです。

 

❝オッタビオ…黙れ❞

 

私は不要になりましたか、ザンザス様…

あなた様への忠誠は届くことはないのですか。

あなた様の隣はどうしてスクアーロなのですか。

 

 

 

幼かったあなた様の手を握ったのは私だと言うのに―――――…

 

 

 

 

 




オッタビオの性格や口調なんて知らないよー!
ただ敬語キャラだったのは知ってるけど。
小学生の頃友達からリボーンの隠し弾(番外編)の小説を貰ったんですが、当時の私は全くリボーンに興味なんてなかった上に文字を読むのが大嫌いだったので、速攻ブックオフに売っぱらっちゃんですよね…今になって欲しくなるなんて…くっ。


ドシリアス苦手な方は見ないでください。

【挿絵表示】



絵を描いてる暇があるなら小説書けとか言われそうなんですが、絵はあくまで息抜きなんで勘弁してください(笑)

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