Veronica Ⅱ   作:つな*

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Veronicaの虚像

はい、ヴェロニカです。

現在日本にいます。

今回の代理戦争参加者には十分な注意を払いながら日本に赴いたわけで、ホテルとかも何度も誰とも被ってないか確認したから安心出来るね。

代理戦争の詳しい説明は後日分かるってマーモン入ってたけど、今日あたりに説明役の下っ端が来る予定だろう。

 

「見て下さいよボスー」

 

フランの声に視線を移すと、そこにはベルの人形を有幻覚で作り出し、これまた有幻覚の針で突き刺している。

 

「ミーも有幻覚使いこなせてますよ」

「……」

 

背後でベルがスクアーロに羽織締めにされて抑えられているのを見てフランに呆れながらため息を吐く。

 

「よくやった、だが無意味にベルを煽るな」

「えー」

 

ぶーぶー言いながら有幻覚を解いて、別のものを作り出していく。

そして夜、皆が夕飯を食べ終わった頃だった。

いきなり部屋のインターホンが鳴るので、ルッスーリアに外を覗かせに行くと、チェッカーフェイスの遣いの者がきたのだ。

中に入れて、今回の代理戦争の説明を受ける。

 

・アルコバレーノは直接戦闘に出てはならない。

・アルコバレーノは自分の代理を立てて戦う。代理は誰でもいいし物でもいい。この集団をチームと呼ぶ。

・チームには腕時計が8つ支給される。アルコバレーノ用のアルコバレーノウォッチ1本、代理のリーダー用ボスウォッチ1本、代理メンバー用バトラーウォッチ6本。

・代理のリーダーがつけたボスウォッチが破壊された場合、そのチームは敗け。即退場。

・バトラーウォッチを破壊された代理メンバーは、チーム内で未使用のバトラーウォッチがある場合、または別のチームとして敗者復活可能。

・バトラーウォッチを破壊された代理メンバーがその状態でバトルに関与した場合、そのチームは失格。即退場。

・戦闘は一日一回、一定時間行われる。いつ始まるかは腕時計が開始1分前に知らせる。戦いの地は日本。

・戦闘許可時間外にバトルを行った場合、そのチームは失格。即退場。

 

の以上だった。

 

遣いの尾道は説明が終わり次第、帰っていく。

そしてマーモンはヴェロニカにボスウォッチを、幹部達に一つずつバトラーウォッチを配る。

皆が付け終えると同時に、マーモンが全財産を叩いてまで作らせたヴァリアーリングを配り出す。

自分だけ配られていないことに不満を露わにするフランにヴェロニカが別のリングを渡す。

 

「やる」

「何ですかーこれ」

「ヘルリング」

「「「「ぶっ」」」」

 

ヴェロニカの言葉に他の幹部が全員吹き出す。

直ぐにベルとマーモン、スクアーロが反応する。

 

「ちょ、え!?何でボスがそれ持ってんの?」

「未来で幻騎士から奪った」

「つーかそれ所有者の精神喰わせて増力するタイプでしょ、やばいやつじゃね?」

「ボスー、ベル先輩がそんなこと言ってるんですがー」

「だから他にこれ付けとけ」

「次は何ですかー」

「マモンチェーンだ、それで効力をある程度は抑えるから精神を喰われても理性を削られることはない」

「それ本当ですかー」

「ああ、カスに一週間それつけて実証済みだ」

「ボスがそういうなら確かですねー、じゃあ嵌めてみますー」

「最高ランクの霧属性のリングだ、マモンチェーンで抑えられていたとしてもそれなりの増力になるだろ」

「わーい」

「施しだ」

「待て待て待て!最近俺の部下が鬱状態になりがちだったのそれのせいかぁ!?」

 

いち早く復活した入江がヴェロニカを問いただす。

 

「うるせえ」

 

必死の入江を一蹴して、ヴェロニカはヘルリングを嵌めたフランを見る。

 

「んー、何が変わったとか特にこれと言って分かるわけではないんですねー」

「だろうな、まぁ戦闘になれば嫌でも理解するだろ」

「ぶっつけ本番ってことですか」

 

フランは興味深そうにヘルリングをじっくり眺めていた。

 

「おい、てめぇら…明日の代理戦争…最初に―――――――」

 

ヴェロニカの言葉にその場の全員が口角を上げる。

 

「「「「「了解ボス」」」」」

 

 

ホテルの部屋は和室と洋室があり、ヴェロニカは和室で寛いでいた。

一つ手前の広間では他の者達が酒を飲んでり、筋トレをしたりと時間を潰している中、スクアーロがヴェロニカのいる奥の間を開ける。

 

「ヴェロニカちゃん」

「何だ」

「これ」

 

小声で話しかけてきた入江はヴェロニカにイヤホン型の超小型通信機と半径5㎜ほど発信機を渡す。

ヴェロニカはそれを受け取ると、発信機の方を迷わず口に放り込む。

そして入江の持っている端末に点滅が付く。

 

「よし、成功だ…そのイヤホンを付ける際に憤怒の炎を灯してね、切る時も同じだ」

「分かった」

「じゃあ武運を」

「お前もな」

 

入江はそれだけ言うと、何事もなかったように広間に戻る。

その夜、ヴェロニカはフランの寝ている部屋に入りフランを揺すっていた。

 

「おい、フラン」

「ぅ~ん……ん?」

「起きろ」

「ヴェロニカの…お姉さん」

「寝ぼけるな、お前に頼みがある」

「ふぁい…」

「いいか、今から―――――――――」

 

「え」

 

 

 

「よくやった」

「……このこと知ってる人はミーだけですか?」

「スクアーロも知っている…だが誰にも悟られないようにしろ」

「はーい」

「フラン、頑張れよ」

「分かりました…」

 

ヴェロニカはフランの頭をくしゃくしゃと軽く撫でると、部屋を出る。

そして誰にも見られていないことを確認し、ヴァリアーリングにマモンチェーンを巻く。

 

「さてと……やるか」

 

窓を開け、縁の方に足を掛け、月の光で照らされる夜景に足を踏み出した。

そこには黒いローブが夜の冷たい風に靡かれながら宙を掛けていた―――――――

 

 

 

 

 

マーモンside

 

代理戦争一日目

 

並盛中では放課後になったばかりの時刻で、第一回目のバトル開始の合図が鳴り響いた。

僕も参加しようと思ったけれど視界の中にいるボスが未だにソファで眠りこけていることに焦り出す。

取り合えず起こしてみようかな…ダメだ、怖くて出来ない

すると部屋の中にフランが入ってくる。

 

「あれーマーモン先輩、戦いにいかないんですかー?」

「ボスが起きないんだよ」

「それ潔く諦めて一人で行けばいいと思います」

「ったく、どのみちスクアーロ達が早々負けるとは思っていないよ…最初は様子見することにするさ」

「それって移動するのが面倒なだけですかー?」

「君こそ何でここにいるのさ」

「ミーはボスの側近でーす」

「ボスにそんなのいらないよ」

「まぁまぁ、今のミーが行ったところでバトラーウォッチ破壊されるだけですよ」

「それもそうか」

 

あっという間に10分は過ぎ去り、何事もなく初戦が終了してしまう。

少しすると、無傷の幹部が帰ってきて報告してくる。

そしてアルコバレーノウォッチに例の言葉を伝えると、一時的な呪解が出来ることを知ったのはよかった。

すると途中で忌々しいチェッカーフェイスから現状報告があった。

 

そこには10分の間に、いくつかバトラーウォッチが壊されていた。

 

コロネロチームは二人敗退。

マーモンチームとスカルチームは敗退者無し。

ヴェルデチームとユニチーム、リボーンチームともに敗退者一名。

 

マーモンはこれにまずまずの出だしだと思い、ボスを見るが食事を平らげている彼に内心不安を隠せなかった。

 

ねぇボス…やる時はやってくれるよね……信じてるよ…

 

 

翌日、常に身構えていたけど夜になるまでバトル開始の合図が鳴ることはなかった。

今夜のバトルは夜戦ということもあって、再び作戦を立てようと言おうとすると、徐にスクアーロが立ち上がる。

 

「おめーら、今から場所を変える。荷物を纏めろ」

「はぁ?」

「あら」

「なぬ?」

 

他のやつも驚いているからスクアーロの独断…なのか?

マーモンは困惑しながらボスに視線をやると、既に黒いコートを羽織っていた。

場所移す気満々だ!この人!

 

「ちょ、ちょっと!何でホテル替えるのよ?」

「復讐者がうろついてるという情報が入った」

「「「「「!?」」」」

「おいマーモン、心当たりはあるかぁ」

 

スクアーロの言葉に僕は先日のリボーンの手紙を思い出す。

そこには第8属性の炎、バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタインについてだったのを、その場にいる幹部達に教える。

 

「透明のおしゃぶり持つアルコバレーノか…」

「そいつが復讐者と繋がってるってことなのよね?」

「そうだよ、だから今回の代理戦争を復讐者が嗅ぎつけてきたんじゃないかな…」

「なるほど」

「なら尚更場所移動すんぞぉ、あいつらは俺達のことを探っている可能性も無いわけじゃねぇってことだぁ」

「どういう意味?」

 

ルッスーリアの問いにスクアーロは頭を搔きながら順を追って説明していく。

 

「そいつらがいきなり乱入してくることを前提にすると、どうやってこの代理戦争に参加すると思ってんだぁ」

「え、あ…」

「そうだ、どこかのチームからウォッチを奪うことだろうなぁ…そしてそれはウォッチを一つも破壊されていないチームを狙うハズだ」

「スカルチームと俺達ってわけね」

「ってわけだ、移動するぞぉ。それとこれおめーらのリングに巻いとけ」

 

ベルの言葉にスクアーロはそう応えてあるものを投げ渡す。

僕は手の平に落ちてきたものを見ると、それはマモンチェーンだった。

とても精密に作られていると分かるそれを一体スクアーロはどこから持ってきたのかは分からないが、どのみち教えるつもりはないだろうと思い、素直にチェーンをリングに巻きつける。

恐らく復讐者に感知されないようにするためのものだろう。

 

「う”お”ぉいボス、あんたもだ、ほらよ」

 

スクアーロはボスにもそれを渡し、ボスも渋々それをリングに巻きつける。

派手な戦いを好きな時に好きなだけしたいボスに、この戦争の細かいルールは合わなかったらしく、とてもやる気を削がれてることが一目見ても分かった。

だからこそ、ボスのやる気が完全に無くなる前にどこかのチームを押し付けて、ボスにカッ消してもらいたかった。

それと先ほどからボスから離れようとしないフランに苛つくも、ボスが何も言わないので放置する。

ルッスーリアやレヴィの妬みの視線が集中しているがフランは気にしていないようだった。

そしてスクアーロの後を追って僕らは別のホテルに移動する。

既に外は暗くなってきていて、移動先のホテルに着いてチェックインをする。

するとスクアーロが地図を取り出してくる。

地図を囲んで、スクアーロの指示に耳を傾ける幹部達を他所に眠っているボスに僕は焦る。

スクアーロはコロネロチームとヴェルデチームに警戒し、復讐者にも気を付けるよう忠告をしていた。

フランも聞いてるようで聞いていないことが丸わかりな態度でふざけたリンゴの被り物で遊んでいた。

あのガキにバトラーウォッチをあげたのは間違いだったか…

すると、バトルウォッチが鳴り出す。

それに反応して他のチームの場所を割り出して、スクアーロ達がそこに向かいだす。

僕も眠り込んでいるボスと遊んでいるフランを放置して幹部達についていく。

数分で辿り着いたそこには、別荘のような所で他チームが密集して戦闘を繰り広げていた。

目に見える範囲でヴェルデ・リボーン・ユニのチームが戦闘していて、僕たちも乱入しようとしたらスクアーロに止められる。

 

「おい、森の方…5~6000m地点だ…誰かいるぞぉ」

「は?」

「待て、今近くの監視カメラで確認させてる」

 

いつになく険しいスクアーロが通信機越しに、さらに眉を顰める。

静かにスクアーロの言葉を待つ幹部達に、スクアーロは一旦距離を置くようにジェスチャーする。

 

「5000m地点、崖の上にコロネロチームがいた、恐らく一網打尽を狙ってたんだろうな」

「シシッ、あっぶねー」

「あら危なかったわね~」

「そのまま奴らの隙をついて殺すのか?スクアーロ」

「が、いいだろうなぁ…なら出来るだけ戦闘終了間近がいいだろ…取り合えず奴等の視界に入らずに近寄るぞ」

「「「了解」」」

 

これなら本当に勝てるかもしれない!

僕は、いつになく慎重になっているスクアーロに内心感謝していた。

戦闘開始から早20分ほど経ったところ、コロネロたちのいる場所の200mほど離れた地点でヴァリアーが張っていた。

スクアーロが双眼鏡を覗きながら戦況を通信機越しに皆に教えていた。

 

『沢田綱吉と沢田家光が戦闘を開始した、そのまま待機』

 

僕はベルの肩に乗りながらスクアーロの報告を聞いていた。

 

「シシ、そのまま相打ちにでもなってくれねーかなー」

「あの門外顧問、想像以上に強いね」

 

『ルッスーリア、ベル、西に300m移動』

「了解」

 

スクアーロの指示通りの配置に置につき、アルコバレーノウォッチを見ると、そこには4分と表示されていた。

 

『残り1分になった瞬間に乗り込む、ルッスーリア、お前はラル・ミルチを。レヴィ、ベルは沢田家光だ。俺は沢田綱吉をやる。』

 

残り3分が僕にはとてつもなく長く感じた。

20秒前になると、ベルが立ち上がりリングに巻きつけていたマモンチェーンを外す。

3…2……1

 

『行け!』

 

バトルウォッチの残り時間が1分を切った瞬間に、ベルが駆け出した。

そして戦闘中の沢田家光に向かってナイフを投げ出した。

 

「「!?」」

 

突然の乱入者に驚愕する者達に構わずにナイフを数十本投げると、流石は門外顧問か急変する状況でも冷静に判断し、ベルのナイフと共に真上からレヴィの落した雷も避けだす。

沢田綱吉はスクアーロに襟元を掴まれて森の中の方に消えていき、リボーンもそれを追っていく。

 

「まさかヴァリアーもこの場にいたとはな」

「シシッ、うちの隊長があんた達見つけなきゃやばかったけどね」

「ここで殺されてもらうぞ、門外顧問」

「積年の恨みってやつ?シシッ」

 

レヴィとベルは8年間ボスを凍らせた九代目とそれに関与していた沢田家光を激しく嫌ってたなと思い出す。

僕は邪魔にならないよう少し離れた場所にいき、コロネロを監視する。

 

「おいコラ!奇襲とはいい度胸だな!コラ!」

「フン、君たちに言われたくないよ」

「だがお前たちヴァリアーの戦力じゃ家光には勝てねーぞ!コラ!」

「それは君が決めることじゃないよ、そろそろ黙ってくれないかい?」

 

コロネロを黙らせて、戦況を眺める。

20秒を切った今既にレヴィのウォッチが壊されて森の方にふっ飛ばされていた。

なんとかベルが家光の攻撃を防いでいるが、それも持つか分からなかったので僕は呪解する。

 

「ウロボロス!」

「「「!?」」」

 

ベルと家光、そしてコロネロも驚いていたが、僕はすぐに家光に向かって幻術で攻撃を掛ける。

 

「ベル!僕が少しの間抑えるからその間に殺して!」

 

僕は全力で家光に幻術を掛けていく。

五感を惑わせるとともに、二重で幻術を掛けていく。

そしてベルが家光の頸動脈を狙ってナイフを飛ばす。

 

「やらせるか!コラ!」

 

そこにコロネロが呪解してフランのナイフを撃ち落としていた。

そしてコロネロが目にも止まらぬスピードでベルを追い詰めるが、僕が咄嗟にコロネロの足を幻術で凍らせる。

均衡する状況の中で、家光がマーモンの幻術を破ってきた。

マーモンは再び幻術にかけようとするがその前に家光の拳がベルのウォッチに触れようとした瞬間―――

 

ジリリリリリリリリリリリッ

 

家光の拳が止まり、ベルの頬に汗が伝う。

僕もコロネロも呪解が解けて、再び赤ん坊の姿になった。

 

「時間切れか」

 

家光の声にハッとして、僕はベルに駆け寄る。

 

「ベル!ウォッチは!?」

「え、あ…」

 

するとそこにはウィッチに罅が入っていて至る所が外れていた。

家光の拳は触れることはなかったが、風圧と拳に纏っていた大空の炎が微量に時計に触れたことで壊れたようだった。

僕はショックに言葉が出なく、ベルもバツが悪そうにマーモンを腕の中に抱えだす。

 

「悪かったって、マーモン」

「ぅぅ…」

 

目の前の家光は、危なかったーと能天気に笑っており、今すぐに殺したい気持ちになりさっさと帰りたくなった。

だがその時だった。

 

バキッ

 

ウォッチが壊れる音と共に、少量の血が地面に散る。

 

「なっ……」

 

その場の誰もが目を見開き、言葉を失う。

 

「おいおい油断大敵だぜぇ”」

 

そこには銀色の長い髪を靡かせながら、家光のウォッチを破壊したスクアーロがいた。

我に返ったコロネロと家光がスクアーロの行動を咎める。

 

「おい!バトル終了の合図は鳴ったぞ!コラ!」

「そうだ、お前がしたのは反則の何ものでもないぞ、スクアーロ」

「失格だぞ!コラ!」

 

コロネロの言葉に我に返った僕は今度こそ青ざめて意識が遠ざかりそうになった。

 

「それは代理戦争参加者だけだろぉ?ルール見直してこいや」

「「!?」」

 

家光、コロネロが目を見開く。

そしてそれは僕やベルも例外ではなかった。

 

「何言って、おめーの腕にしてあるウォッチが…」

「おいおいおめーの目は節穴かぁ?これは似てるが市販で買った別もんだぁ”」

「「「「んなっ!?」」」」

 

今度こそその場の誰もが声を出して驚く。

よく見たら本当に似てるけど、違う部分があった。

じゃあ僕に渡されたウォッチは今どこに!?

 

「おい、反則じゃねぇよな?尾道」

「はい、まだスクアーロさんは参加者ではありませんので」

 

急に登場する尾道に僕は驚くが、この男の言う通りならば…

 

「コロネロチームはボスウォッチを破壊された為失格です」

「くっそーーーー!」

 

尾道の言葉にコロネロが地面を叩いて叫び出す。

家光もルールを搔い潜ったスクアーロに対して苦い顔をする。

スクアーロはとてもご満悦のようで、家光に対してニヤニヤと笑っていた。

 

「ッハ、ざまぁねぇなぁ!」

 

そういえば8年前のゆりかごの件で、一番怒っていたのはスクアーロだったなと思い出す。

しかも家光に対してとても、とてもご立腹だったから今回のことでスッキリしたらしい。

 

「シシッ、そういえばオカマはどうなったんだよ?」

「私はここよ~、ちゃんと死守したわ~!」

 

ルッスーリアの声が上の方から聞こえてくる。

 

「ってことはこっちはバトラーウォッチ2つ壊しちまったけど、1チーム潰したってことっしょ」

「こっちの損害もあったが、警戒していたチームを潰せたのは大きかったってことだあ”」

 

スクアーロの言葉に確かに、と思った。

そしてコロネロチームを放置して、そのままホテルに帰る道中でスクアーロが確認しだす。

 

「おいお前らちゃんとチェーンつけ直したか?」

「してるよー」

「私もちゃんとつけ直したわ」

「忘れるわけがないだろう」

「僕もつけてるよ」

 

皆が付けていることを確認し終えると、ホテルの方へ戻っていった。

ホテルに戻るとフランが眠っているボスの横で爆睡していた。

 

「う”お”ぉい!こいつに危機感ってのはねぇのかぁ!」

「つーかボスもずっと眠ってたわけ?ウケるんですけど」

「ボスがずっと眠ってるのはいつものことでしょ!ほら私たちももう休みましょ」

「そうだな」

 

何だろう、代理戦争中まだボスと話していないけど…本当にボスは戦ってくれるのかな…

若干不安になりつつも、僕はアルコバレーノの会合に向かった。

 

 

 

スクアーロside

 

 

「なっ、スクアーロ!?」

 

襟元を掴まれた綱吉君が僕を見て驚いていた。

そのまま森の中まで降りていき、崖の上の方と距離が開いたことを確認して綱吉君を離す。

綱吉君が僕を警戒しているところに、リボーン君が追いついてくる。

 

「おめー達はこれを狙ってやがったのか」

「さぁな、だが今おめーと戦うつもりはねぇよ」

「!?」

「どういうことだ?」

「俺の目的はお前と家光を離すことと、ある情報を伝えることだぁ」

「情報?」

「復讐者がうろついている」

「「!」」

「復讐者の中に透明のおしゃぶりを持ったアルコバレーノがいるとマーモンから聞いた、そいつが関わっているかもしんねぇなぁ」

「な、何で俺達にそれを教えてくれるんだ?」

「さぁな、俺は確かに伝えたぞ」

 

僕の言葉と共に、バトルウォッチが鳴り出す。

二日目のバトルが終わったと同時に、僕は崖を一気に登り始めた。

そして崖を登り切ると一気に沢田家光と距離を詰めて、背後からボスウォッチを狙う。

誰もが安堵している瞬間に響く破壊音に、僕は今度こそ息を吐く。

少し沢田家光に対して恨みがあった分スッキリしながら、文句を言ってくるコロネロや家光に対して説明し出す。

そしてそのままマーモン達とホテルに戻っていく。

今回は雲雀恭弥と鉢合わせしたくないが為にわざわざこっちに来ただけで、ついでにコロネロチームを倒せたのは運が良かった。

にしてもウォッチに関しては本当に急ぎだった。

あらゆる時計店を回りまくって似ているものを見つけて、そこからさらに似せるように改造した偽ウォッチ。

本物のバトラーウォッチはホテルの引き出しの中にしまってある。

元の世界でも復讐者がこの作戦を使っていたけどチェッカーフェイスからの勧告がなかったことから有効であるハズだ。

そして僕にとってこれからが本番でもある。

それは復讐者の奇襲の回避だ。

帰る途中、ちゃんとチェーンをしているかも確認しながらホテルに入る。

部屋に戻った瞬間にチェッカーフェイスの報告があった。

現在、ユニとコロネロチームが敗退しており、他は生き残っていた。

スカルチームはバミューダチームとなり、シモンファミリーは既に全滅させられたことが分かる。

ここから復讐者の奇襲が始まるはずだ。

わざわざ当初予約していたホテルをやめて、別のホテルにした上、先ほどホテルを移動した。

さらにマモンチェーンをつけているので、炎を察知して僕らの居場所を特定することは困難のはずだ。

しかも一日目に泊まったホテルには身代わりを置いているから、そっちへ奇襲する可能性が高い。

それでもどこか何かの拍子で居場所が割れてしまう可能性だってあるのだ。

警戒を解くことは出来ない。

ヴェロニカちゃんの方は大丈夫だろうか…。

それにフラン君の体力が気掛かりだ、あと少しだけ持ってくれればいいんだけれど。

僕は自分の部屋に戻り、PCを立ち上げて街の至る所に設置した監視カメラを見出した。

 

 

 

 

風side

 

雲雀恭弥がディーノのいるホテルに乗り込んで、ディーノと戦闘を始めてそろそろ30分が経とうとしていた。

どちらもまだ戦える状況で、ついに戦闘終了の合図が鳴り響いた。

 

「ふぅー…」

「なに、まだあなたを咬み殺せてないよ」

「今日のバトルは終わりだ恭弥…まあ明日にでも―――」

「ならこんな時計要らない」

 

雲雀恭弥の言葉を飲み込む前に、目の前で雲雀恭弥が自身のウォッチに向けてトンファーを振り下ろそうとしていた。

止めようと慌てて動こうとした時、盛大な爆音と共に雲雀恭弥とディーノが飛ばされていく。

いきなりの奇襲に驚くも、私は周りを警戒し出す。

煙の立つ中、瓦礫の崩れる音と、誰かの足音が聞こえそこに視線を移し、構えだす。

煙で誰かが分からないが、その影は雲雀恭弥の飛ばされたところへ向かっていく。

 

「あなたは誰です、代理戦争者の参加者ですか?」

 

既に戦闘時間外であり、参加者は戦えないことになっている。

ならば参加者がどこぞの刺客でも雇ったのか?

煙が晴れていき、さきほどの攻撃が直撃して意識のない雲雀の腕を掴んでいる者を視界に捉えると、私は目を見開いた。

 

「何故あなたが―――――――――…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




入江:おこだよ!復讐がてらコロネロチームを率先して潰しに掛かった人。


勘の良い人は気付く(確信)
あと入江の作戦に関して、原作でも復讐者の反則ギリギリの奇襲は注意されていなかった(記憶違いならゴメンネー)ので、一応立派な戦略に入るなーと思ってます。


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