Veronica Ⅱ   作:つな*

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Veronicaの焦燥

「まずその喋り方をやめろ」

「いででででで」

 

ヴェロニカです。

現在パパの体で入江正一…いやスクアーロにアイアンクローをしている。

えー、今回もこのカス研究者のせいでパラレルワールドの過去の時間軸に飛ばされてしまった。

入江は目を覚ますと、若返ってて、しかも顔が変わっていると分かり混乱していたところ、金髪眼鏡のお兄さんに連れてこられたそうだ。

挙動不審な様子にヴェロニカは直ぐに彼が何者であるか気づき、二人きりになったところで現状の把握に努める。

入江の話では、私たちを飛ばした装置は偶発的に発見できたものらしく、構造も解読できないし、今この時代では技術力に差がありすぎるとのことで戻れる方法は絶望的のようだ。

取り合えず蹴りを入れた。

こいつが転びさえしなければ飛ばされずに済んだのは事実である。

土下座までして許しを乞うていたので、仕方なく許した。

正直スクアーロの土下座姿は見たくなかった。

姿がザンザスだけあって威圧感で白目をむきそうな彼にヴェロニカは溜め息を吐く。

 

「で、当面どうするかなんだけど…」

「そ、そうだね……歴史通りに進めればそれに越したことは…」

「おい、私は冷凍される趣味はないぞ」

「れ、冷凍!?あ!そうか、ザンザスは確かクーデターをっ」

「そう、そこで8年ずっと凍らされてたんだけど…私クーデター起こす気ないわ」

「まぁ、そうだけど……」

「何よその目…」

「ごめん、不謹慎なんだけど……ザンザスの顔でその口調って一種の暴力だよね」

「カッ消すぞ」

「ごごごごめんなさい!」

「クーデターは起こさないし、未来で沢田綱吉を襲う予定もないよ…完全に歴史から逸れてるじゃない」

「うう、でもそのまま行かなければ未来で白蘭さんを倒すという事実が変わってしまうかもしれない」

「……別にあんなカス、私が殺すわ」

「ヴェ、ヴェロニカちゃんも見ていただろう!?あの人の恐ろしさを!それにボンゴレリングを持たないと彼に勝てない!」

「……確かに父にボンゴレの血は流れていないからリングを嵌めることは出来ない…でもそれ以外に対策の立てようはあるでしょ…なんせ19年もあるんだから」

「だ、だけど!」

「問題はGOHSTのみ…あいつを早々に殺せれば白蘭が強くなることもないだろう」

「た、確かに……もしかしてヴェロニカちゃんはボンゴレのボスの座を狙っているのかい?」

「あ?んなわけないでしょ、そんなのに興味はない」

「そ、そんなのって……」

「パパは最強のボンゴレが欲しかったようだけど、私は別に…それよりも…」

「?」

「ヴァリアーという完全に独立した一つの組織としての最強が欲しいの」

「えええ!?」

「マフィアはボンゴレが一番、一番って煩わしい…ならばボンゴレ以上の組織を作ればいい」

「でもそれって…」

「別に、敵対するわけじゃないんだからデメリットはないわ…ていうかこんくらい野望なけりゃ幹部の彼らはついてきてなんかくれないわよ」

「それもそうだけど…なんていうか……ヴェロニカちゃんはザンザスの未来を全く別のものに変えるという認識はあるのかい?」

「愚問ね、14歳の頃父の死を改変した私にそれを言うのかしら?」

「ああ、そうだったね……これって僕もヴァリアーにいなきゃ…いけないよね…?」

「別に、好きにしろ。だが私は部下にしか施しも救いも与えないぞ」

「うう……ヴェロニカちゃんが頼もしすぎて離れられないよぉ…」

「そ、じゃあ…まず手始めにあなたの口調と戦闘力…どうにかしなきゃね」

「え!?僕も戦うの!?」

「当たり前でしょ、周りに出来るだけ怪しまれない程度には強くなってもらうわよ」

「ええええ、無理だよぉぉぉおおお」

「スクアーロの顔でそんな情けない声を出すな!あなた一応チョイス参加者だったでしょ!?」

「それでも!あいつの真似なんて出来るわけがない!」

「ミルフィオーレの潜伏期間だってあんなに虚勢張れてたじゃない」

「何でそんなことまで知ってるのさ…」

「それよりも、剣は?」

「え?へ、部屋かな?」

「取りに行くわよ」

「胃が……胃が痛くなってきた…」

「あとで胃薬買ってあげるわ」

「僕に戦うなんて無理だってぇぇぇぇえええええ」

「黙ってついてこい!」

 

ヴェロニカは入江に部屋はどこかと問いただし、聞き出したそこへ引き摺って行く。

スクアーロの部屋に入ると、入江をベッドの上にぶん投げた。

 

「ぶへぇ」

「まずはその義手に剣を付けて」

「ど、どうやって」

 

入江はもたつきながらスクアーロの剣を義手に括り付ける。

ヴェロニカは入江の腕を掴み、先ほどの金髪眼鏡の男を探す。

 

「そ、そういえばさっきの眼鏡の男性は誰だい?ヴェロニカちゃん知ってるかい?」

「知らない、あと部屋の外ではその名前を呼ぶな」

「え、ああ、分かったよ……えーと……」

「ボス、クソボス、ボスさん、ザンザス…これがスクアーロのパパへの呼び方よ」

「え、ええ…じゃあボス…」

「黙れカス鮫」

「カ、カス!?」

「通常運転で、暴言吐きまくる人だからしっかりしなさいよ」

「胃が…」

「いたぞ」

 

ヴェロニカの視界に、先ほどの金髪の男性が見えて声を掛けた。

 

「おい」

「どうされましたか?ザンザス様」

「人気のねぇ広場はあるか、それか広さのある訓練所…それと九代目に俺の炎に耐えられる両手剣を作らせろ」

「剣とは…ザンザス様、剣を嗜むつもりですか?」

「それよりあんのかねぇのか」

「ありますよ、案内しましょう」

 

金髪眼鏡の男性について行き、広さのある誰もいない訓練室があった。

シェルター付きで炎を使っても大丈夫なように加工されてあり、防音機能もあった。

 

「ここの監視カメラとマイク全部切れ、それと夕方までここに来んじゃねぇ…人避けもしておけ」

「分かりました、昨晩探しておられた書物はどういたしましょうか」

「俺の机の上に置いておけ、他の書類は急ぎでない限り持ってくるな」

「了解しました、失礼します」

 

その男は頭を下げると、そのまま訓練室を出ていく。

数秒後、部屋の四角にあった監視カメラとマイクの電源が落ちる音を聞き、ヴェロニカは入江の腕を離す。

 

「声出してもいいぞ」

「え、ヴェ、ヴェロニカちゃんだよね?」

「そうだ」

「ザンザスにしか見えなくて……戻っちゃったのかと…」

「それよりもあなたに剣を教える」

「え、ヴェロニカちゃん剣も扱えてたっけ?」

「私の銃の師は父、剣の師はスクアーロよ…そのまま技術をあなたに教える」

「えええ!?そうだったの?」

「それよりも、あなた中身が入江だけど体力とか反射神経はスクアーロなの?」

「え、あ、多分スクアーロだよ。だって体が若返ってる時点で僕の体を引き摺っている要素はないからね」

「そう、じゃぁ取り合えずこの部屋100週して」

「ひゃっ、100!?」

「まずはあなたがその体に慣れないと何も始まらないわ…剣の振り方はそれからね」

「そんなぁ…」

「足を止めれば背中に炎を一発ずつぶち当てるから」

「お、鬼ぃぃぃいいい!」

「何とでも」

 

ヴェロニカによる入江正一強化スパルタ特訓教室が始まった。

数時間後、入江はふらふらになりながら走っていた。

 

「99……100」

「ぶはーー!もう無理、足の感覚がないっ」

「こんなことでへばるな、これからが本番だぞ」

「もういやだぁぁぁぁああ!」

 

入江は本気で泣きたくなった。

ああ、白蘭を倒す為に修行していた綱吉君もこんな気持ちだったんだ。

悟りに入っている入江正一にヴェロニカは蹴りを入れる。

 

「おい、なに感傷に浸っている…お前には時間がないんだぞ」

「時間?」

「はぁ……今までスクアーロは普通の任務を任されていたんだ、それも幹部の地位で」

「え」

「今のまま任務に出してみろ、十中八九死ぬ」

「ぅぇぇええええええ!?人なんか殺せないよぉぉおおお」

「それもあるが、お前に任務を寄越さない日々が続けば他の者に不信感を抱かれる」

「でも」

「人殺しはマフィアに関わっていた頃から覚悟していなかったのか?」

「僕は研究者だぞ!?人殺しなんて…」

「だがチェルベッロに対して麻酔銃を撃っただろう」

「ねぇ一体どこでそれを知ったんだい?」

「それよりも、お前は今色々と危ない状況だ…前も後ろも待つのは死のみ」

「そんな…」

「まず最低限死なないように実力を付けないと、ここでは生きていけない……何せヴァリアーはボンゴレの闇だ」

「ボンゴレの…闇……」

「暗殺しかない、人を殺すしか出来ない……いつ死ぬか分からない場所だ」

 

入江はザンザス、いやヴェロニカの顔を見て自分の状況を初めて理解した。

今までとは違い、死地へと送られるのだ

命のやり取りの日常、人の命を奪う日々…

目の前のヴェロニカはその日常の真っただ中にいたのだ。

ヴァリアーのボスという立場の重さをその肩に担ぎ、皆の先頭を歩いていくのだ。

27歳という若さでヴァリアーのボスに立った彼女の強さを、覚悟を、僕は理解できていなかったんだ。

自分の状況よりも入江の状況を心配してくれている彼女を見ていて、入江は自身がとても情けなく思えてきた。

 

「ヴェロニカちゃん、ごめん……僕頑張るよ」

「ああ…生きて元の世界に戻るぞ」

「ああ!」

 

入江は自身の体を叱責して立ち上がる。

 

「まずは私の攻撃を避けろ、反射神経がどれくらいあるか確認したい」

「分かった!」

 

入江のスパルタ訓練教室は、入江の意識がなくなるまで続けられた。

 

 

 

オッタビオside

 

今朝、ザンザス様のお部屋に伺ったところ、本人は居らず本部の中を探していた。

すると、辺りを見回すザンザス様が少し離れたところで見つかり、声を掛けた。

 

「ザンザス様」

「何…だ」

「先ほどから誰かをお探しのようでしたが…」

「カス鮫はどこだ…」

「ああ、スクアーロのことですか、彼ならまだ寝ているのでは?起こして来ましょうか?」

「俺の部屋に連れてこい」

「了解しました」

 

ザンザス様自らスクアーロを探すことは稀だと思うも、私はスクアーロの部屋へ向かう。

スクアーロの部屋の手前で、ドアを開いた瞬間大きな音が聞こえ、私はそのままドアを開けて中を見た。

そこにはベッドから落ちている彼が呆然としている姿が視界に入る。

 

「スクアーロ…ザンザス様が及びですよ」

「え…」

「?」

「あ、え……?」

「強く頭打ったんですか?なんだか様子がおかしいですが」

 

何も返さない彼に本格的におかしいと思い、私はスクアーロの腕を取り、ザンザス様の部屋に向かいザンザス様に断りを入れて彼を医務室に連れて行こうとした。

 

「ザンザス様、スクアーロが何やら頭を打ったようで…先ほどから態度がおかしいようですが…」

「なに?」

 

ザンザス様はスクアーロを凝視し、それに彼は怯えたように挙動不審になる。

 

「おいカス鮫」

「な、何…」

 

ダメだ、これは医務室で頭を検査せねば、私はザンザス様に進言しようとすると、ザンザス様は二人にしろと私を部屋から追い出した。

面白がって甚振っていなければいいのですが…

 

少し時間が経つと、またもやスクアーロの腕を取りながらザンザス様が私に声を掛けてきた。

 

「おい」

「どうされましたか?ザンザス様」

「人気のねぇ広場はあるか、それか広さのある訓練所…それと九代目に俺の炎に耐えられる両手剣を作らせろ」

 

私は少なからず驚いた。

ボンゴレに来た頃に剣を教えはしたが直ぐにやめてしまい、銃のみで戦ってきた彼が再び剣を所望するのだから。

 

「剣とは…ザンザス様、剣を嗜むつもりですか?」

「それよりあんのかねぇのか」

「ありますよ、案内しましょう」

 

少し機嫌の悪そうなザンザス様をそのまま訓練所へ案内した。

人気がないといえば、奥の誰も使わないシェルター付きの場所があったような。

ザンザス様をそこまで案内し、鍵を開け中へ入れる。

 

「ここの監視カメラとマイク全部切れ、それと夕方までここに来んじゃねぇ…人避けもしておけ」

「分かりました、昨晩探しておられた書物はどういたしましょうか」

「俺の机の上に置いておけ、他の書類は急ぎでない限り持ってくるな」

「了解しました、失礼します」

 

一体何をされるおつもりで、と聞こうと思ったがザンザス様が先ほどから何やら急いているようだったので、聞かずに私はその場を退出する。

コントロールルームに入り、監視カメラとマイクを全て切り、再び仕事へ戻った。

今日のザンザス様は少し機嫌が悪そうであったし、どこか焦っているようにも思えた。

そして先ほどの異様な態度のスクアーロと何か関係しているのだろうか。

後ほど、他の幹部の者にも聞いてみよう…

夕方になり、仕事も一段落したところルッスーリアが声をかけてきた。

 

「あらオッタビオじゃない、お疲れ様ね」

「そちらこそ…ああ、そういえば少しお聞きしたいことが」

「あら?何かしら?」

「今日、ザンザス様が機嫌が悪い様に見えたのですが、何か知っていますか?」

「知らないわよん、あ、でも今朝ピスタチオを食べたそうにしてたわよ」

「ピスタチオ…ですか?」

「ええ、独り言いってたし…あたしがピスタチオケーキでも作ってあげようかしら~」

「そうですか…」

 

 

 

そして夕食後の席では…

 

「何故にピスタチオケーキ……」

 

あ、アカンあの金髪眼鏡の名前がピスタチオになってきた……。

 

 

 




おったb……ん"ん"っ………ピスタチオ美味しいですよね。


※9/20(水)に2018年に予約投稿するハズだった16話を間違って2017年の方で投稿してしまい、数人の読者様にネタバレをしてしまい混乱を招いたこと真に申し訳ありません。
今後このようなことがないよう徹底します。


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