Veronica Ⅱ   作:つな*

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Veronicaの指導

翌日の朝、ヴェロニカが昨夜の訓練所へ向かう途中、廊下の曲がり角から声がしてきた。

それは沢田綱吉と山本の声だった。

 

「おう、ツナおはよ」

「や、山本!おはよう…昨日は大丈夫だったの?」

「ん?」

「ほら、ザンザスといきなりどっか行ってたけど…」

「ああ!俺の実力知りたいからって打ち合いしてたんだ!全く歯が立たなかったけどな」

「ええ、山本でも歯が立たなかったの!?」

「でもこれから沢山吸収して強くなってやるんだ」

「え、えっと……それならいいんだけど…」

 

二人分の会話が近くづいていき、曲がり角を曲がると声の主と盛大に鉢合わせる。

 

「うわっ、ザ、ザンザス…」

「お、ザンザス!探してたんだ、いつから修行するんだ?」

「5分後に昨日の場所へ来い」

「了解」

 

始終ビビっていた沢田を無視して要件だけ伝え、そのまま通り過ぎる。

5分後、訓練所に向かうと既にそこには山本が体を解していた。

 

「いよ!今日は何するんだ?」

「最初はリングの炎のコントロールの訓練だ」

「え?打ち合いじゃねぇの?」

「剣術も無駄な動きは多いが、それ以前に炎の使用効率が悪すぎんだよドカス」

「効率?」

「1で済ませられるものを、お前は5で消費してる節があるからな…体力切れを起こしやすくなる」

「へぇ…んで俺はどうすればいいんだ?」

「リングに炎を灯せ」

「おう」

「それを消しては灯してを繰り返せ、出来るだけ早くだ」

「お、おう?」

 

いっそのこと、修業期間全てで山本を魔改造してやろう。

それが、今回のヴェロニカの目標だった。

さきほど言ったように、山本だけでなく他の奴等も炎の使用効率悪すぎるんだよ。

まぁ短期間で戦えることだけ考えていて、炎の効率なんぞ考える暇はなかったと思うが、それをするかしないかで戦況は大きく変わる。

特にコントロール力においては、鍛えると鍛えるだけ察知能力が向上する。

山本は基本感覚派ではあるが、思考力が低いわけではない。

言うならばバランスのいい戦闘スタイルなのだ。

剣士としては一級品のセンスがあるだろう、それに覚悟と経験が重なれば、恐ろしい程強くなる。

目の前の山本はリングに集中していて、最初と比べて炎を灯す感覚が早くなっている。

直ぐにコツを掴んだ山本の才能は目を見張るものがあり、今も段々感覚が狭まっていく。

スクアーロが勿体ないと思い指導を付ける意味が今なら分かる。

こいつは、剣士として育てたくなるわな、そりゃ。

 

「な、なぁ…これ一体どれくらいの感覚まで短くすればいいんだ?」

 

数十分経ってくると、少し飽きてきたのか山本が問いかける。

ヴェロニカは仕方なく、自身のリングに炎を灯す。

そして消しては灯す感覚を徐々に早め、最終的にずっと灯しているかのように見えるまでになる。

 

「最終的にこれくらいにはなれ」

「え、これ今も消して灯してんの!?ずっと灯してるようにしか見えねぇ!」

 

山本は目標が明確になったことで、再びリングに集中し出す。

それから数十分経ち、そろそろ山本の集中力が切れかけてきたので一旦止めさせる。

 

「それは毎日最初に練習するくらいでいい、刀を構えろ」

「え?お、おう!」

 

いきなり剣を抜くヴェロニカに焦るように山本も刀を構える。

 

「お前の直すべきところは指摘する、それを意識しろ」

「分かった」

 

山本は真剣な表情になり、刀をヴェロニカに向ける。

そして最初から型を使いながら攻めてきた。

さて、ここからどれだけ強くできるのやら…

ヴェロニカも剣を振るった。

 

数十分後、倒れたのは山本だ。

どうやら体力が底を尽きたらしく、ヴェロニカはストップウォッチを見る。

 

『20分46秒』

 

ハッキリ言って予想以上に短かった。

まさかアニメ一本分しか体力ないとは…

チョイスとか10話くらいあるんだから頑張って欲しい。

目の前の山本は息切れを起こし、足に酸素が行っていないのか震えている。

途中で指摘した場所は、数度打ち合いしていく中で直そうとはしていたようだが、直ぐに戻ってしまっていた。

こればっかりは時間がかかるもので、仕方ないとは思っている。

 

「はぁ……はぁ…」

 

ずっと肩で息をしている彼を見る。

パパの体って不思議、全く疲れないんだなー…

いやまぁ炎や体力の消費を最小で抑えて戦っているから、これくらいで疲れはしないが。

数分するとようやく息が整って来たのか、山本が口を開く。

 

「あ、あのよ…あんたとってもスクアーロと剣術が似てるんだけど…スクアーロから教わったのか?」

 

全くもって遺憾である。

いや元を辿ればスクアーロだけど!

この世界のスクアーロ…否、入江には私が教えたのだ。

 

「逆だ」

「え?」

「俺が奴に教えた」

「じゃあザンザスは剣がメインだったのか?」

「違ぇ」

「はは……マジか」

 

なんだかショック受けてるみたいだが、多分あと数年すれば君の方が剣術は上になると思う。マジで。

安心して強くなって欲しい、切実に。

 

「なぁ…俺は弱いか?」

「ああ」

「そっか…」

 

初心者にしては強いよって言いたいけど、ザンザスはそんなこと言わないし私も言わないと思う。

確かこいつまだ剣握って二か月とかでしょ?

ぶっちゃけこいつの成長速度は半端ない。

流石レギュラーなだけありますわ。

漸く立ち上がった山本と再び打ち合いが始まる。

昼は笹川涼子に持ってきてもらい、そのまま訓練所に籠ること数時間、そろそろ寝る時間だと思い修行は切り上げる。

ボロボロの山本は歩くのがしんどいらしく、少し休んでから部屋に戻るようだ。

まぁあれだけフルボッコにしたのに喰らい付いてくるその意気やよし。

今日までこのアジトで修行して、明日から場所移すか。

森の中とかでいいだろ、雨属性の炎を感覚で捉えるのは森など自然が一番らしいし。

地面に横になる山本を見て、自身の体も少しだるさを感じた。

どうやら私も久々に長期間体を動かして疲れているらしい。

訓練所を出て、部屋に戻りシャワーを浴びるとそのまま爆睡する。

 

 

 

 

 

 

 

 

沢田綱吉side

 

夕飯を食べている時にそれに気付いた。

 

「あれ?そういえば山本いないね…まだ修行してるのかな?」

「ザンザスの指導なので余程厳しいんじゃないでしょうか」

「あああ、大丈夫かなー山本…」

「少し見てみますか?まだやってるハズですし」

「えええ、ザンザス怒らないかな」

「その時は俺がお守り致しますよ!」

 

獄寺君の言葉は頼もしいけど、ザンザス相手だと不安しか感じない。

俺は零地点突破を習得しても、ザンザスには勝てなかった。

それどころか、どこか余裕そうな表情で相手をされていたから、多分ザンザスの本気は俺じゃ敵わない。

つい最近俺たちを殺そうと襲って来て、でも理由があって、何も言わずにイタリアに去っていったヴァリアー。

最後は釈然としなかったし、ザンザスが九代目を本当に殺したいほど憎くて、復讐に俺を殺そうとしたってことに今でも違和感が残っていた。

ザンザスの怒っていた理由も全部露わになったけれど、本当にそれだけだったのかが分からなかった。

九代目の謝罪にザンザスが何を思ったのかは分からないけど、あの件は何事もなかったかのように揉み消されたって言ってたし。

やっぱりこの間殺しにきた相手に、山本を任せるのは不安すぎる。

特にザンザスは冷酷な仕打ちをした奴だから尚更…

考えごとをしていたら、頭に強い衝撃が襲う。

振り返るとそこにはリボーンがいた。

 

「おいツナ」

「いったぁ!何すんだよ!」

「山本が心配なら見に行けばいいだろ」

「分かってるよ…ったく…」

 

俺は頭を摩りながら、夕飯を食べ終わると獄寺君と一緒に山本のいる訓練所に向かった。

近づくにつれて金属の衝突音と、声が聞こえてきた。

 

「なんか聞こえますね」

「やっぱりまだ修行してたんだ…」

 

獄寺君と一緒にドアを少しだけ開けて中を覗く。

すると、そこには山本とザンザスが打ち合っていた。

山本が刀を振るっているのとは逆に、ザンザスは常に避け続けている。

 

「おい、下手くそなカウンター狙うよりフェイントを狙え、カス」

「ぐっ」

 

山本が距離を取り、匣兵器を出して攻撃に移る時、ザンザスが一気に攻撃に転じる。

表情を顰め攻撃をギリギリで防ぐ山本に対して、ザンザスはそのまま畳みかける。

 

「足」

「うおっ」

 

ザンザスが山本の足を蹴り、山本のバランスが崩れる。

ザンザスは敢えてそこに攻撃は加えずに、再び構えだすのを待っていた。

そして山本が刀を振り上げる。

 

「予備動作が長ぇ」

「ぐあっ」

 

大きく振るったザンザスの攻撃に山本が飛ばされる。

一瞬山本に駆け寄ろうと体が動くが、それを抑える。

 

「集中切らすんじゃねぇカス!」

「おう!」

 

二人の打ち合いを見て、息をのみ込んだ。

十数分すると、山本が倒れる。

 

「ぜー……はー……はっ、はぁ………」

 

ザンザスは訓練所の隅に置いてある椅子に座り、何かカメラのようなものを眺めている。

俺と獄寺君はそこまで見ると、そのまま訓練所を遠ざかる。

廊下で歩いている際、お互い無言だったけど、獄寺君が口を開いた。

 

「ザ、ザンザスの野郎…ちゃんと指導してやがりましたね」

「う、うん」

「なんつーか…意外でしたが」

 

俺たちがこうやって話をしてる間に山本はまだ修行をしてるんだ…

体に鞭打って、今も汗水垂らして必死に立ち上がってる

 

「獄寺君、俺…もう少しだけ訓練してくる」

「ぉ、俺も…自主練してきます」

 

俺達もまだ出来るんだ、まだ強くなれるんだ―――――

 

 

 

 

 

ヴェロニカside

 

ヴェロニカです、修行を始めて六日経ちました。

多分今日チョイスだった気がするんだが……

目の前には匣兵器と連携技を鍛えている山本がいた。

そろそろ言った方がいいかな?これ遅刻しそうだし。

 

「おい」

「ん?何だ?」

「そろそろチョイスとやらの時間じゃねぇのか?」

「え?あ!今何時だ!?」

「11時58分」

「えええ!?もう時間ねぇじゃん!急がねぇと!」

 

現在時刻を知った山本が焦りながら支度を始める。

走っても間に合わないのは分かっているので、山本は刀に炎を灯しその推進力で飛行して並盛神社に向かっていく。

仕方ないので手向けとして、チョイス会場への転送に必要な炎は私が出してやろうと思ったヴェロニカは、山本の後をベスターに乗りながら猛スピードで追い、その間に炎を銃に溜めれるだけ溜めまくっていた。

多分これ程までの大量の炎を絞り切ったことがないと言うほど銃に溜め込んだところで、そろそろ並盛神社が見えてきた。

何かすごく大きな白蘭の顔が宙に浮いてるんだけど、なにあれ気色悪っ!

山本と同時に沢田綱吉率いる守護者の立っていた場所に着地した瞬間、宙に浮いている白蘭の顔に向かって銃口を向ける。

隣にいた山本と沢田綱吉は目を丸くして、ヴェロニカの挙動に固まっていた。

 

「予定狂って残念だったな、カスが」

 

どうせ沢田綱吉達にここで疲労させるつもりだったんだろ、知ってた。

でも残念でした、私が全部持ってやるよ!

500万FV(フィアンマボルテージ)なら最大火力出せばいけると思う、多分、きっと、メイビー。

白蘭の驚愕する表情に引き金を引き、銃弾を放つ。

橙色の禍々しい憤怒の炎が、衝撃波を描きながら白蘭の脳天にぶち当たる。

風圧が一帯を包み込み周りの木々は勢いよく揺れ、沢田綱吉達も必死に踏ん張っていた。

そして数値は5,000,000を超え始める。

 

「バカな……」

 

白蘭が呆然と無意識に放った言葉だろう、それに俺は口元をあげる。

ざまぁみやがれ、このマシュマロ野郎!

にしても多すぎたかな…表示が5,000,000を超えて測定不能になってんですが。

流石に全部出し切った感あって、大きな疲労を感じるが、段々と体力が少しずつ回復していく様子にヴェロニカは驚き呆れる。

ここまで来ると、パパの体ってもはや神秘なのでは…

その後白蘭がフィールドカードの抽選を行い、沢田綱吉が雷のフィールドを引く。

移動装置が光り出し、ヴェロニカ含むその場にいる全員が移動させられる。

移動中、山本がこちらに笑顔のまま声を掛けてきた。

 

「ザンザス!何か知らねーが助かったぜ!」

「施しだ」

「ありがとなー」

 

能天気な山本の笑顔に若干苛つくが、無視してそのまま浮遊感に身を任せる。

なんだか入江が有り得ないようなものを見る目でこちらを見ているが、この際気にしたら負けだと思う。

目の前が眩い光で覆われ、ヴェロニカは目を細めた。

浮遊感が無くなり視界が少しずつ見えてくると、そこは高層ビル群のど真ん中だった。

他の人達も転送された場所に驚きを示す。

 

「何度も会ってるような気がするけど、僕に会うのは初めてかい?綱吉君」

 

そこに白蘭が笑顔のまま登場する。

沢田綱吉達は皆一様な反応を示し、白蘭は沢田綱吉の次にヴェロニカに視線をズラす。

 

「やぁザンザス、初めまして、かな」

「…」

「君がこの場にいるなんて…中々予想外だったよ」

 

まぁそうでしょうな、どの並行世界でもザンザスがチョイスの場にいる世界はなさそうだし。

 

「それに、何故君まで過去から飛ばされてきているのか……俄然興味が沸いた」

 

ものすごく見つめられていて普通の人なら(ひる)むんだろうけど、残念怒ったパパの方が怖いわ。

この世界線のザンザスという男はどの並行世界よりも異色を放っているだろうね

白蘭は視線を沢田に移すと、チョイスについて話し始めた。

そしてジャイロルーレットを取り出し、沢田と共にルーレットを回し始めた。

大空、嵐、雨が一人ずつ、無属性が二人と原作通りの人選になる。

そしてターゲットが入江になり、チェルベッロが登場しヴェロニカ達は観戦室へと移動した。

観戦室に入る前に近場のビルのガラスを銃弾で撃ち割って、中から社長椅子を拝借する。

椅子を手にしながら入って来たヴェロニカにディーノ達が驚くが、無視してそのまま観戦室の奥で椅子に座りながらモニターを見る。

チョイスが始まり、沢田綱吉とカブトの戦闘が始まった。

あー始まったかぁ…

あ、入江忘れてた…

ヴェロニカは携帯を取り出し、イタリアの研究室に籠っているであろうスクアーロにかける。

少しのコールの後、覇気のないスクアーロの声が聞こえてきた。

 

『もしもし』

「…既にチョイス始まってるぞ」

『え』

「それと日本へ来るとき、あいつらも連れてこい」

『ちょ、ま』

 

それだけ言うと通話を切り、モニターを再び見る。

沢田綱吉がカブトの作った檻を石化していた。

数分後、沢田綱吉とカブトの戦闘が一段落すると山本のモニターに視線を移す。

見せてみろ、山本…お前の成長を。

 

 

 

 

 

 

山本side

 

曲がり角で囮の炎が揺れた直後、俺は走りだす。

すると、目の前の囮から触手が生え出して、俺に襲い掛かって来た。

 

❝常に足元を意識しろ❞

 

今までザンザスから口酸っぱく言われた言葉を思い出し、足元を横目で確認すると、地面に亀裂が走っていた。

直ぐに一歩下がると、先ほど立っていた場所には触手が地面から生えてくる。

 

「あぶねー…」

 

汗が頬を伝う中、目の前に猿と言われていた霧の守護者が現れる。

 

「今のを躱すか、山本武……少なくとも最初の頃よりは強くなったと見える」

「最初?」

「これなら分かるか?」

 

俺の言葉に、猿という男の姿に霧がかかり、徐々にそれが晴れていくとそこには幻騎士がいた。

 

「お前は――…幻騎士!」

「俺との実力差は知っているな…尽きのない男よ」

 

幻騎士は俺を見下しながら、剣を振り上げる。

そして振り下ろす直前に、俺は匣兵器に炎を注入する。

すると、小次郎と次郎が出てきて幻騎士の攻撃を相殺する。

 

「リベンジ出来るこの時を待ってたぜ」

「その刀を背負った犬が貴様のボンゴレ匣か」

「まぁな」

 

❝戦闘中は何も喋るな❞

 

ザンザスの教えがなかったら、俺は普段の様に次郎と小次郎の紹介も、本当は四刀流だということも教えていただろう。

言葉の駆け引きをするには俺には早すぎるからと、取り合えず何も喋るな、必要以上に情報を与えるな、これだけは徹底しろと何度も念を押された。

 

「ふん、貴様があの時より強くなっていたからと言って俺に勝てると思うなよ!」

 

幻騎士が声を張り上げると同時に奴の眼力が一層険しくなる。

すると空気中の僅かな炎の揺らぎを感知する。

俺はすぐさま刀の鍔を地面に向け、炎を放出して推進力で空中に移動しそれを回避する。

直ぐ傍で爆音がなり響き、俺は炎を一瞬で最大火力を放出し、幻騎士に接近し刀を振り下ろした。

このスピードもザンザスのお陰だ。

火を点けたり消したりする作業は、最終的に一気に最大火力へ引き上げる感覚を大幅に短くした。

加えてザンザスが出来るだけ探知力に力を入れながら鍛えてくれたおかげで、さっきの爆発物の存在にも気付けた。

そんな俺の修行の成果に、目の前の幻騎士は目を見開いて攻撃を防ごうとするが、防ぎきれなかった斬撃が幻騎士の頬と額の装甲ごと深く抉る。

幻騎士から離れると、攻撃が入ったことがショックだったのか奴は唖然として、次に怒り狂い触手を出した。

俺の周りは触手に包まれドーム状のようになる。

そして直ぐ上の方から、先ほどと同じような炎の揺らぎを察知しその場を飛ぶ。

流石に幻騎士本人に纏っている幻術は精度が違う為奴の居場所が分からず、小次郎に触手の上から鎮静の炎を少量ずつ降らせる。

見えない爆弾を避けながら、鎮静の炎の効力が出てくるのを待つ。

すると、少しずつ他の空間とズレが生じている部分を見つけた。

 

「そこだ!」

 

俺は二本の柄を投げ、それは幻騎士の角部分に刺さる。

そして、幻術が解け幻騎士が可視状態になり一気に畳みかける。

 

❝相手に反撃をさせる暇を与えるな❞

 

ザンザスに言われた言葉通り、猛攻撃を幻騎士に畳みかけた。

幻騎士は驚く暇もなく俺の攻撃を躱したり防いだりしていく。

俺は小次郎とスピードを合わせて幻騎士に攻撃を続けながら、自然な動作で小次郎を形態変化(カンビオ・フォルマ)させる。

そこに言葉はなく、コンビネーションの特訓の成果でもあった。

俺の猛攻に焦る幻騎士は俺の刀が変形したことに驚愕している。

ザンザスから徹底的に、そして一番力を入れて鍛えてくれたのが、型までの予備動作の短縮だった。

何度も予備動作が長いと言われ反撃されてきて、何度も小次郎と技の練度をあげていたのだ。

悟られるな、自然に、気付かれる前に――!

 

 

攻式――――――

 

 

 

『真6弔花や白蘭、そしてお前たちの弱点を言ってみろ』

『え、弱点………?』

『それが無ければ確実に戦力がガタ落ちするのが一つだけあんだろうが』

『確実に戦力が落ちる?』

 

 

 

―――八の型―――

 

 

『リングだ』

 

 

――――――篠突く雨

 

 

一瞬でスピードを最大火力まであげ、幻騎士に向けて斬撃を突き上げた。

 

ビッ

 

頬に液体を浴びるのを無視し、直ぐに目的のものに手を伸ばす。

生暖かいソレを手に中に収め、背後にいるであろう幻騎士から距離を取る。

さきほどの攻撃は、手に残る感触からして直撃しなかったことが分かっていたので警戒を解かずに幻騎士の方へ振り向く。

そこには浅い傷ではあるが胸部からズレたところに傷を負った幻騎士が地面に膝をついてきて、その形相は言葉で言い表せないような、憎しみと怒りで満ちていた。

 

「きさ、ま……貴様ぁぁぁぁぁあああああ!」

 

幻騎士の剣を握る手の人差し指と中指が途中で切れていてそこからは血が止めどなく流れている。

指を失ったせいで剣を握る力が足りなくなったのか、はたまた痛みのせいか、幻騎士の手から剣が離れる。

俺は握りしめていた手を広げると、そこにはリングを嵌めたままの血だらけな中指と人差し指があった。

指からリングを外し、リングをスーツのポケットに入れると幻騎士に視線を戻す。

そして俺は残酷な言葉を放った。

 

 

 

「まともに剣も持てないだろ…降参してくれよ」

 

 

剣士にとって指がどれだけ大切なものであるか知っていた。

だけれど、ザンザスの言葉が何故か自分の中に留まっていた。

 

『人を殺したくないテメーに、致命傷になるかもしれない攻撃で胴体を斬りつけるのと、指を斬り落として戦闘不能にするのに…選ぶ余地なんてあるのか?』

 

 

手の平に転がる幻騎士の指は徐々に熱を失い、俺の中で何かが凍えるような感覚だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




山本のSAN値が削れて行きます。
今回はヴェロニカによる山本魔改造編でした。
正直ヴェロニカは冷酷な部分をパピーから教わってると思うんですよ…ヴァリアーのボスしてるくらいだし。
なんでちょっと先っぽ削るくらい大丈夫だろ!って山本を洗n…ゲフン、説得しました。
正直真6弔花とかリングなきゃ修羅開匣すら出来ないですし、リングさえ奪ったら結構戦力って傾きますよね。


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