Veronica Ⅱ   作:つな*

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Veronicaの潔白

大空戦の時刻となり、ヴァリアー側も沢田側も並盛中に集まり出す。

今まではただ単に邪魔だからというだけで、ホテルに置いてきていた剣を腰に差していたヴェロニカを見て、沢田側が驚いていた。

 

「け、剣?」

「あいつ…剣も扱えるのか」

 

緊張した面持ちでこちらを観察してくる彼らを視界に入れず、ヴェロニカはチェルベッロに進行を急かす。

ルッスーリアやランボなど重症な者も集められ、沢田綱吉はそれを非難するがチェルベッロは受け付けなかった。

全員が集まると、リストバンドの装着を命じられる。

そして各自、対戦会場だった場所へと向かう。

すると、モニターに映された守護者達がうめき声をあげながら倒れだした。

ヴェロニカは余め分かっていたので反応はしないが、沢田綱吉は他の者の様子に混乱していた。

そしてチェルベッロが大空戦の説明をし出す。

デスヒーターのタイムリミットは30分だと聞いた沢田綱吉側の人間が焦り出した。

他の観覧者は特定の位置で待機するよう移動した後、沢田綱吉とヴェロニカの二人だけになり、チェルベッロの戦闘開始の合図で、ヴェロニカは地を踏み出す。

 

序盤は剣を使わずに、銃だけで相手をする。

パパなら最初は素手で相手するだろうが、そんなナメぷ精神は私にないから。

最初からフルボッコにしていきたいと思う。

銃を推進力で空中戦が可能になり、ヴェロニカは沢田綱吉と空中で衝突する。

何かリボーンの声がここまで聞こえてくるんだが、これ憤怒の炎について説明してんのかな。

ヴェロニカは目の前の沢田に炎を強めに一発撃ち込み、距離を取った。

屋上に足を着け、他の守護者の場所を横目で確認する。

そして、向かってくる沢田を避けながら、反撃を装い他の守護者のポールを破壊する。

雨、嵐、雷と破壊していき、ヴェロニカの狙いが分かったのか、沢田が先ほどよりも一層警戒してきた。

沢田はベル、レヴィ、そしてスクアーロが動けるようになったことに焦り出す。

ヴェロニカは彼らから意識を逸らし、沢田綱吉に向かって攻撃を仕掛ける。

沢田はヴェロニカとの応酬に疲弊していき息が乱れ始めるが、ヴェロニカは手を休めず段々と沢田綱吉を追い詰める。

 

本来のヴェロニカは元々スピード戦を得意とし、火力戦は消耗の関係や効率を考えると進んですることのない戦闘スタイルだった。

最小限の効率を重視した結果、技術の精度、いわばコントロール力は随一だった。

そんなヴェロニカがザンザスに憑依した時、一番に驚いたのはその炎の保有量…いわば体力である。

ヴェロニカもザンザスの血を受け継いでいるので、他よりも遥かに炎の保有量は多いが、ザンザスはそれをも凌いでいた。

まるで底の見えない保有量に、なるほどだからあんなに消耗を気にせずに火力戦を主としていたのだと納得するほどである。

コントロール力を極めたヴェロニカがザンザスの炎の保有量を兼ね備えている今、沢田綱吉の勝率は絶望的だった。

また銃に込める炎の量や形質を変えるだけで攻撃のバリエーションは幅広くなることが沢田を苦しめる要因にもなっている。

ここでもう一つヴェロニカについて付け加えると、彼女が得意なのが銃撃戦や剣術戦のみではないということ。

彼女が14歳から18歳の間にスクアーロとザンザスからしか学んだわけではなかったのだ。

短剣や空間認識などはベルから、死ぬ気の炎や任務への効率的な動きはレヴィ、戦術や全ての属性への特徴などの座学をマーモン、そしてルッスーリアから体術と、様々なものをスペシャリストから教わっていたのだ。

その中でもヴェロニカの専売特許であるコントロール力を応用出来るものが体術だった。

体外の至る所に炎を纏い身体能力を上げるという集中力とコントロール力を必要とする難易度の高い技術を習得していたヴェロニカだからこそ体術と相性が良かったのだ。

それは晴の活性化による身体能力の底上げよりは劣るも、大空・憤怒の炎を纏った身体能力は逸脱していたものである。

どれだけ沢田綱吉の反射神経や身体能力を上げていても、それはあくまで炎の放出による恩恵である為、ヴェロニカと同レベルになることはない。

 

ヴェロニカは銃という遠距離戦向きの武器を手にしながらも体術という近距離戦の両方を使い分けながら沢田を追い詰めていく。

いくら沢田綱吉が修行したといっても、一週間程度で彼がヴェロニカに勝てる理由にはならなかった。

一際強く沢田綱吉の脳天目掛けて(かかと)落としを喰らわせると、沢田綱吉はそのまま地面に衝突し、クレーターが出来る。

 

「沢田殿!」

「おいおい…実力が違い過ぎるぜ……ザンザスは無傷だ」

「ザンザスの奴め…遠距離近距離からの戦術を得意としているのか…ツナの奴に不利すぎる………やべーな」

 

外野の焦る声と、リボーンの解説する声を耳を傾けられる程度にはヴェロニカに余裕があった。

するとよろめきながらも立ち上がった沢田綱吉は両手を胸の位置に持っていくと、炎の波動が変化する。

きた!

ヴェロニカはそれを促進するかのように、沢田綱吉を遠くの方へ強く飛ばし時間を稼がせる。

ゆっくり歩いている最中、モニターを見て他の守護者の様子を少しだけ覗く。

そこでは雲雀は山本の場所へ、ベルはマーモンの場所に、獄寺はレヴィを倒していてランボを救出、スクアーロは晴の守護者の場所にいた。

ヴェロニカは遠くで沢田綱吉の波長が変化するのを察知した。

ようやく零地点突破の状態になったと分かると、そこへスピードを出して向かう。

 

零地点突破は相手の炎を中和してダメージを抑える技である。

ヴェロニカの、相手の炎を調和してダメージを無効化する技と原理は同じだ。

だが沢田綱吉は超直感で辿り着き、ヴェロニカは努力で到達した。

そしてこの技らは似通っていながらもデメリットが異なる。

零地点突破は、相手の攻撃力が大きければ全て中和しきれず体力を摩耗するという点があり、ヴェロニカの調和の技術は波長を掴むまでの集中力と、掴んだ後の波長に合わせるコントロール力がとても難しいという点だ。

その点ヴェロニカは長年の戦闘や修行でこのデメリットを克服しているが、沢田綱吉は会得して間もないため原作でもザンザスの炎を中和しきれずに摩耗したのだ。

 

ヴェロニカが沢田綱吉の場所へ着くと、そこには先ほどの波長とは異なる沢田綱吉がいた。

直ぐにヴェロニカは彼の波長を掴もうと意識しながら攻撃を繰り出す。

先ほどよりも強力な攻撃を連発する。

沢田綱吉はその攻撃を中和しようとするが、先ほどより量の多い炎を中和しきれずに体力を消耗していく。

その様子を見ながら外野は騒然としていた。

だがボロボロになる沢田綱吉を畳みかける様にヴェロニカは、蹴ったり殴ったりして遠くに吹き飛ばす。

出来るだけ遠くに飛ばして時間を稼がして、零地点突破・改を会得してくれればなぁ…

周りの様子と段違いのヴェロニカの内心に気付いているのは多分入江だけである。

銃の弾を補充すると、そのまま沢田の元へゆっくりと向かう。

敢えてゆっくり歩いているが、他の者から見ればじわじわと殺しにかかっているように見えていることをヴェロニカは気付いていない。

 

「おい…そのしょぼい零地点突破でお前のいう大事な仲間は誰も救われてねぇぞ」

「今度は俺の番だ…」

 

ヴェロニカの言葉に煽られるように、沢田綱吉は右手の手の平と左手の手の甲を相手に向けて組み合わせ、四角形を作る。

 

「零地点突破……改!」

 

その言葉を聞くと、ヴェロニカは沢田綱吉に向かって一発だけ放った。

ここで何発も当てると、逆に体力回復することは分かっているので敢えて一発のみである。

予想通り炎を吸収して体力を回復させた沢田綱吉がいた。

リボーンやシャマル、バジルにコロネロが遠くに見え、喜んでいる様子が伝わる。

このまま初代エディションに至る為に何発か弱い弾を撃ち込み吸収させ、沢田綱吉の体力を回復させる。

 

「お前を絶対に十代目になどさせるものか」

 

沢田綱吉はヴェロニカに向かって来て、炎を纏った拳で殴ろうとする。

だが既に見切っているヴェロニカには通用しない。

まだ初代エディションの段階に移行するのに時間がかかるのか?

もう一度遠くの方にぶっ飛ばすか…

沢田綱吉の拳を避けながら、そんなことを思考するヴェロニカは左手で沢田綱吉の顔面を掴んだ。

そのまま全力で投げ飛ばそうとした時――…

 

ピキリ

 

「!?」

 

冷気が漂い、一気にヴェロニカの左手が凍り出す。

これを狙っていたのか!

凍る左手を下げ、沢田綱吉と距離を取る。

凍っている左手を右手で溶かそうとするが、沢田綱吉がそれを阻むように特攻してくる。

 

「チッ」

 

ヴェロニカは銃を右手から離し、剣を抜いた。

沢田綱吉はこの状況で武器を変えたザンザスに警戒しながらも、攻撃を繰り出そうとした。

ヴェロニカは剣の先から広範囲に渡り炎をまき散らして、視界を潰す。

それも直ぐに沢田綱吉が吸収したので、視界は正常になるが、そのひと時でも十分であり、ヴェロニカは態勢を整える。

凍った左手は溶かす暇はないので、諦めて右手だけで構えだす。

そして体内に炎を巡らせ始める。

 

「お前を……倒す!」

 

沢田綱吉が畳みかけてくるのを、剣で捌きだす。

沢田は自身の炎を氷にして、ヴェロニカの動きを止めようとするが、ヴェロニカのスピードは人間離れしていた。

 

「おい、今のザンザスは炎を吸収されるから使えないハズだ…なのに何であんな動きが出来るんだ!?」

「おかしいぞ…あれは人間が出来る動きじゃねぇ」

「な、何故…」

「あいつ……一体何をしやがったんだ!コラ!」

 

外野はザンザスの動きに困惑しているが、今のヴェロニカにはそれを耳に入れる余裕はなかった。

ヴェロニカは辺りを見回す。

今二人が対峙している場所はグランドであり、周りにものがない。

そのためヴェロニカの十八番である糸状の炎を巡らすことが出来ないでいた。

このまま剣で凌ぐのは体力を使うが、それは相手も同じであり疲労が蓄積している様子の沢田綱吉を見て、ヴェロニカは息を吐き覚悟を決める。

最大の防御は攻撃である、とは誰の言葉だろうか。

その言葉の通りヴェロニカは防御を捨て、攻撃と回避のみで沢田綱吉とやり合い始める。

フェイントやカウンターを狙い、絶対に体を接触させないようにした。

一瞬だけ剣先に炎を纏わせて、氷を砕きそれを蹴り飛ばす。

いきなりの飛来物に対処出来ずに、そのまま沢田綱吉の額に氷が当たる。

足を止めた彼の額からは夥しい血の量が流れていた。

ヴェロニカは視界が悪くなった沢田綱吉の頭を掴み、思い切り地面に叩きつけた。

そして剣を振り下ろそうとした時―――

 

「ザンザス!」

 

一人の男の声がグランドに響いた。

沢田綱吉は意識が遠ざかりそうな中、声の主を見やる。

 

「ディーノ……?」

 

沢田の声に反応し、ヴェロニカもそちらを向く。

そこには金髪の男性、ディーノが大声をだして叫んでいた。

 

「お前ら争奪戦は一時中止だ!」

 

ディーノの言葉に誰もが驚愕し、いち早くチェルベッロがやってくる。

 

「それを決めるのは私たちです、試合の邪魔はしないでください」

「それが、九代目の勅命でもか?」

「「!?」」

 

ディーノが出してきたのは九代目の勅命印の灯った書状だった。

そして日付はついさっきを記載されていた。

 

「さっき九代目が意識を取り戻した…そして争奪戦を中止するよう言ったんだ…いくらお前らでも九代目の命には逆らえないだろ?」

 

ディーノの言葉にヴェロニカも驚く。

まさかこんなに早く起き上がるとは予想外だったな

いやでももう沢田綱吉が零地点突破初代エディションを会得したことだし、もう戦う理由もないんだけどね

ただここで引くとヴァリアーの面々に示しつかないしなぁ

ベルやマーモン、スクアーロなど幹部達が既にグランドに集まっていて、沢田達の守護者も駆け付けている中、ディーノは携帯を取り出す。

 

「それと門外顧問からだ…ザンザス、お前に確認したいことがあると言っている」

 

うん?

内心首を傾げながらも、沈黙を貫き通す。

ディーノはそのまま携帯のボタンを押すと、スピーカーになりその場に居る者全員に声が響いた。

 

『ザンザス』

「…」

 

家光の声はなんとなく苦しそうで、確かイタリアで重症を負っていたのを思い出す。

 

『さきほど…8年前の………ゆりかごの事件を…俺たちは洗い直していた……』

 

んん?何で?

 

『そこ…で…森の方でスクアーロとオッタビオの…戦闘していたところに監視カメラがあったが……当時のザンザスの最期の攻撃の衝撃波で壊れたそれを復元することは出来なかった…だが、現代の技術でなんとか復元することが出来た…』

 

お、おう…

一体何がしたいんだ?

 

『声も録音されていて…その時の音声を流す』

 

『「オッタビオかぁ"…」

「あなたはここで殺させてもらいます」

「黙れこの裏切り者があ"」

 

「てめぇ何で嵌めやがった…」

「何で……ですか………」

 

「あなたが彼に出会いさえしなければ……こうはなりませんでしたよ」

「あ"?」

「あなたも彼も、ここで葬り去って…私が理想のヴァリアーにしてみせますよ」

「何だと?」

「彼が幼い頃から仕えていたというのに…その恩を忘れて薄汚い銀色なんぞに…私の理想はこうではないんだ、何の為にザンザスに仕えてやったと思ってるんだ!」

「ふざけんじゃねぇ!」

「っ」

「ザンザスはてめぇの玩具じゃねぇんだぞ!オッタビオ!」

「黙れ!」』

 

辺りは静まり返っていて、誰もがその会話に目を見開いていた。

 

「な……それ、じゃぁ…」

 

隣にいた沢田は、こちらを振り向く。

 

『ザンザス……8年前……クーデターを策略していた…というのは、オッタビオの嘘だったのか?』

 

その言葉にヴァリアー以外の者が全員驚愕し、ザンザスに視線を向ける。

ま・さ・か・の!

潔白を証明されちゃったよ!

いやそれ8年前にして欲しかった!切実に。

ええええ……そんなぁ……

一気に気落ちし、ため息が出てきた。

その溜め息にスクアーロが反応し、家光の問いに答える。

 

「そうだぁ"……ボスは何も策略なんぞ企てていなかったぞ……」

『……』

「何か言いやがれってんだ!あ"あ"!?」

 

おおう、入江が激おこだ。

ぶっちゃけオッタビオのせいで一番苦労したのって入江だよね

だって私寝て起きたら8年後、みたいな感覚だったし…

これ沢田綱吉襲ったのは、九代目への復讐とかそんなんでいいかな

 

『この会話は、九代目にも聞こえてるハズだ……ディーノ……九代目に繋げてくれ』

 

ワッツ?

じいちゃんも聞いてんの?

おおぅ、昨日重症にまで追い込んだから、正直声を聞くのは気が引けるなぁ…

ディーノが携帯を操作すると、スピーカーが一時切れ、再び繋がる。

 

『ザンザス……』

 

携帯越しで弱弱しい声が響く。

先ほど意識を取り戻しただけで、油断できない状態であることに違いはないのだから。

 

『…………………全て私の……自業自得だった…な』

 

ん、まぁそうだね。

いや私も仕返し酷過ぎたけど…両成敗だよね!

そして周りの視線に気付く。

これは私の言葉待ちですか?

 

「おいクソジジイ……俺はあんたを許すことはない……これまでも、これからもな」

『すまない……ザンザス………お前を、信じてやれなかった…』

 

うわ言の様に謝る九代目の通話は切れ、その場に静寂が訪れる。

うわぁ…なんか私居た堪れない…

ここはそのままずらかる方がいいのでは?

本当は沢田綱吉をフルボッコにして、ヴァリアー独立組織にするーとか考えてたんだけど、これはボンゴレ所属のままで解決しそうな気がする。

んーまぁいいや帰ろう

ヴェロニカはそのまま地面に倒れる沢田綱吉を無視して校庭を出ようと足を動かした。

チェルベッロが慌てて止めに入る。

 

「ザンザス様、リングの行方を決めるまで――…」

「リングなんぞ興味ねぇよ」

 

ヴェロニカはチェルベッロの二人に炎を放ち、灰にする。

その所業に周りは驚く。

 

「興冷めだ」

 

それだけ呟くと、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

スクアーロside

 

 

僕はデスヒーターの毒で動けなくなり、山本君と共に倒れていた。

だが、ヴェロニカちゃんがポールを破壊してくれたおかげで、解毒が出来て一息つく。

そして足元を見ると、苦しんでいる山本君がいた。

僕は監視カメラを全て壊していき、壊し切ると山本君のリストバンドにリングを嵌めて解毒した。

僕の行動が意外だったのか目を丸くして驚いていた。

 

「何で…」

「勘違いすんじゃねぇぞ」

 

それだけ言うと、そのままルッスーリアの方へ向かう。

そこに着くと、まだ誰もついていないようで笹川とルッスーリアが苦しんでいる。

 

「スクちゃぁん、助けてちょおだぁい…おねがぁい」

 

重症の体に毒じゃ直ぐに死んでしまうと思い早めに来たが、この調子なら普通に30分は大丈夫だと思った。

 

「貸しだ」

「分かってるわよん…」

 

ポールを破壊しルッスーリアを解毒すると、笹川の解毒を考慮してリングはそこら辺に放り投げて、体育館へ向かう。

だが途中で雲雀恭弥と山本に遭遇し、戦闘になった。

山本は先ほどの解毒のこともあり、全く手は出さずに雲雀と対戦しているのを眺めていた。

疲労していた雲雀は思っていたよりも早く倒すことが出来、意識だけ狩ってそこらへんに放り投げる。

そして山本君に向け、剣を構える。

 

「来いよ」

「いや……俺はいいや」

「あ"?」

「さっき助けてもらったし…あんたは悪い奴じゃない気がするのな」

「てめー頭おかしいぜぇ"…俺はただてめーとまた殺し合いが出来るから解毒させたんだぞぉ"」

「でもそれで俺は助かった、ありがとな!」

 

これは天然で済まされないような…

入江はそのまま体育館へ行こうとした時、グランドで激しい音がした。

山本君は外の音を気にしながらも校舎を走っていった。

これ以上下手なことしてヴァリアーの面々に疑われてもなぁ

入江はそのままグランドに向かう。

そこではヴェロニカちゃんと綱吉君の勝負が苛烈を極めていた。

抉れる地面と灰と化す壁、沢田綱吉が零地点突破・改を出したところだった。

あ、ヴェロニカちゃんこれ待ってたんだ…

うっわぁそれでもフルボッコ…

やっぱり経験や年の差もあって綱吉君が彼女に勝利する見込みはほぼないな、うん

少しすると零地点突破初代エディションで、ザンザスの左手を凍らせたことにスクアーロは驚く。

だが、ヴェロニカちゃんがそのまま右手だけで沢田綱吉をのしていく姿に、やっぱり勝てないなぁと思っていたりする。

大空戦を見ていると、ベルやマーモンがリングを持ってグランドへ姿を現す。

レヴィもボロボロになりながらもスクアーロの所へ寄ってきた。

 

「早く解毒してたならリング集めろよ」

 

ベルから文句を言われるが、スクアーロはそのままヴェロニカの戦いを見ていた。

ヴェロニカが沢田綱吉の頭を掴み地面に叩きつけ、剣を振り下ろそうとした時、ディーノの声がグランドに響く。

突然の乱入者にベルもマーモンも警戒するが、次に放たれる言葉に驚愕する。

 

「お前ら争奪戦は一時中止だ!」

「はぁ?」

「どういうことだい」

 

ベルとマーモンが困惑しているが、そのままディーノは喋り続け九代目の勅命印のある書状をチェルベッロに見せていた。

そして携帯を取り出して何をするかと思えば、門外顧問と繋がった。

そこからは衝撃的な展開だった。

まさかの僕とオッタビオの戦闘の録画、録音がされていたなんて!

録音を流し終えると門外顧問がヴェロニカちゃんに話しかけるが、ヴェロニカちゃんは溜め息を吐くだけだった。

あ、あれ多分疲れてるんだ…

いち早くヴェロニカちゃんの内心に気付き、スクアーロが家光の問いに答える。

ヴァリアーの面々は憤慨しているようだが、今は頼むから何もしないで欲しい。

 

「そうだぁ"……ボスは何も策略なんぞ企てていなかったぞ……」

『……』

「何か言いやがれってんだ!あ"あ"!?」

 

君たちのせいで僕がこの8年間どれだけ苦労してきたことか!

三枚に卸してやろうか!

危ない、スクアーロの影響が……

 

その後家光との通話を切り、九代目に繋げる。

九代目は今にも死にそうな声でヴェロニカちゃんに謝っていた。

それでも僕は許すことは出来なかった。

多分、昔の僕なら納得は出来なくとも許していただろう…

だけど、ヴェロニカちゃんといた日々を思えば、九代目を許そうとは思わなかった。

だからといって殺したいとは思えないけれど。

ヴェロニカちゃんも九代目に落ち着いた声で許しはしないと言った。

それはザンザスの言葉なのか、ヴェロニカちゃんの言葉なのか分からなかったけど、多分どっちの言葉でもあるのかなと思った。

そのまま彼女は並盛中を去り、幹部達も不満を表しながら帰っていく。

あ、ルッスーリア忘れてた。

仕方なく、ルッスーリアのいる場所まで向かおうとすると、視界の端で沢田綱吉が倒れるのが見えた。

あんなにヴェロニカちゃんにボコられてよく今まで意識保てたなぁ…

僕なら瞬殺だね、うん

思考を戻し、ルッスーリアの場所へ行こうとしたら山本が声を掛けてきた。

それに獄寺は驚きまくっている。

 

「なぁスクアーロ」

「あ"?」

「あんたが俺に手加減してたのって……本当は十代目の座が欲しかったわけじゃなかったからか?」

「手加減しても沢田綱吉が負ければ、ボスはあのままお前らを殺す気だったぞ」

「やっぱツナとの闘いでもザンザスは手加減してたのか…」

「当たり前だろ、あのガキがどれだけ修行しようが…うちのボスに勝てる日なんて来ねえよ」

 

ヴェロニカちゃんは凄いんだ!と言いたいけど、遠回しに自慢するしか出来なかった。

山本君から視線を外して、今度こそルッスーリアを回収しに向かった。

 

 

あー、これから忙しくなりそうだなぁ…

 

 

 

 

 




前回出そうとしてたやつ↓

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