現在ヴェロニカ28歳です。
父が去年ヴァリアーのボスを引退し、私がその跡を継いだ日から一年経った。
今頃我が別荘で優雅に高級肉を頬張っているであろう父に健康食を勧める日々を送っている。
若い頃は別にいいんだけれど、パパもう年じゃん?
だって63だよ?外見はまだ40前半にしか見えない謎に私は心底本人問い詰めたくなることがある。
8歳サバ読んだとしてもあの若さはおかしい。
にしてもその年齢で、何であんなステーキばっか食べて胃が凭れないのか最近の疑問である。
「ボス、報告書です」
部下が執務室に入ってきて、書類を持ってきた。
私は無言でそれを受け取り、部下はそのまま部屋を出る。
因みにパパの代の幹部はベルとマーモン以外皆引退した。
レヴィとスクアーロ、ルッスーリアはパパに忠誠を誓っていて、それを今でも貫くとかなんとか。
それでも結構な頻度でヴァリアー本部に来る辺り、暇人なのだろうか。
スクアーロに至っては仕事の書類を奪って勝手に殺しに行って戻ってくるほどだ。
ベルは未だ仕事以外で私のことをプリンチペッサ呼びするし、マーモンも部下というよりお目付け役に近い形だった。
私の守護者は、パパがボスであった頃、私が時間をかけて選んだ人材で固められている。
霧の守護者は未だマーモンである。
私はパパと違い、部下に対して暴力を行っているわけではないが、何故か皆私を怖がっている節があるのだが、何故だろうか。
マーモンに聞いてみたところ、私は酒が入った時にパパに似るらしく、恐らくその為だろうと言われた。
何それ怖い。
パパの代と違うところをあげるとなると、それは個々の戦力差だ。
これには思い切り力を入れている。
まず訓練を週に2回、短期任務も週3、長期任務は月1、他諸々と取り組んでいたお陰で下っ端の人達も基礎ステータスがぐんと上がった。
そしてそれが死亡率を下げ、入隊希望者が増加し、今では総人数61名というパパの時代の倍ほどの人数で構成されている。
それに伴い入隊試験の難易度が上がり、入ってくる人材の実力が底上げされる結果になった。
お陰で元々ボンゴレ最強独立暗殺部隊だったが、その名に拍車がかかっていく。
多分今クーデター起こしたらこれ絶対成功すると思う。
だって沢田綱吉も高齢だし…。
まぁ面倒だし私はパパのような思考回路ではないのでやらないけどね。
概ね順調にヴァリアーは発展していた。
沢田綱吉はボンゴレを自警団に戻そうと今も尚奮闘している様子だが、未だ暗殺部隊であるヴァリアーが存在しているようでは彼の目標が達成できるか怪しいところである。
だがパパと違い私がボスになったことに少なからず常識のあるボスということで安堵したのか、ヴァリアー本部に訪れるときの足取りが少しだけ軽くなったように思える。
だが沢田綱吉、それは間違いだ。
私は一応パパより穏やかではあるが、一度キレたら収拾が着かない。
常時暴力によってストレス発散しているパパと違って私の場合、一度火が付いたら鎮火するまで長くかかるのだ。
まぁ過去にキレたことなど一度しかないし、それも親子喧嘩だったので最終的にパパにぶつけることで事なきを得た。
本部の半壊、炎の引火が原因の山火事、それから喧嘩を仲裁しようとして病院に送り込まれた者は数百人に上る事態に、被害総額は数億円に至った。
その現場を見ていた者は結構いて、それから私の機嫌を伺う様子がしばしば見られた。
あれは自分でもあまり覚えていないが、パパと共に数日もの間、体の至る所に包帯を巻いていたような気がする。
まぁその親子喧嘩のお陰で、私の実力が改めて再確認され、私の次期ボスへの着任に反対する者がいなくなったほどだ。
私の話はここまでにして、そろそろ現実に戻ろうか。
目の前の提出された書類を見る。
ボンゴレを敵視している勢力は年々減ってはいるが、未だ無くならない。
ヴェロニカはこの現象に疑問を抱くが、ここがリボーンの世界であることを思い出し、考えることを放棄する。
多分これはいつまでもマフィアが存在するために世界の抑止が動いてるんじゃなかろうか。
じゃなきゃこの世界の意義が無くなるわけだし。
ヴェロニカは長時間椅子に座り続けていたため肩が凝ってきて、一度外に出ることにした。
子供の頃からよく歩いていた庭を眺め、白いベンチを見つける。
「懐かしいなぁ…」
昔、ここで沢山炎の練習をしていた。
思い出の場所であるベンチにヴェロニカは腰掛け空を見渡す。
ああ、私がこの世界に生まれ落ちた事実に疑問を抱いていた時も空を見上げていたな…
ザンザスが父親である事実に不安を抱いていた自分が今ではこんなにも彼が好きという事実におかしさが胸に込みあがる。
「あー、パパの顔見に行こ…」
思い立ったが吉日、ヴェロニカはすぐさま車を出させ別荘に向かう。
数分走っていると、やっと別荘の屋根が視界に入った。
玄関まで送ってもらい、部下には中の広間のソファで待た、ヴェロニカはザンザスの部屋に向かう。
「パパー」
ノック無しに部屋の扉を開けると、中ではザンザスが足をテーブルの上に乗せながらテレビを見ていた。
「あ?」
「顔見に来たよ」
「仕事しろドカス」
「嬉しいくせに」
「ほざけ」
「ていうか昼から酒って」
「俺の勝手だろうが」
「老体に優しくないわね」
「あ"?誰が老体だ?」
「パパって昔から不健康すぎる食生活だったから、寿命の長さがとても心配だわ」
「いつ死んでもおめーに関係ねーだろ」
「ってなわけで、野菜ジュースとビタミン剤、血圧抑制剤持ってきたよ」
「聞け」
「パパっていつでもイライラしてるしいつか血管プッツリ切れそうだから、最低限血圧だけは気を付けてね」
「おい、カッ消すぞ」
「そういえば、この前スクアーロがまた勝手に部下の任務奪って行っちゃったんだけど」
「……」
「パパから一度怒ってよ」
「お前がやれ」
ザンザスは不貞腐れたような顔で酒を煽り、テレビを見出す。
ヴェロニカは持ってきたものをテーブルの上に置く。
偶にゴミ箱に空になった野菜ジュースのパックを見るので、一応飲んではいるようだ。
「ヴァリアーの入隊定員枠増やしたのか?」
いきなりザンザスがヴェロニカに聞いてきた。
ヴェロニカは休日や暇になると別荘でザンザスに現状を喋るため、ザンザスもヴァリアーの内部状況を把握しているのだ。
「増やしたって言っても2つだけね…それに去年より難易度2倍以上も高くなってるし…入隊者は半分いればいい方だと思う」
「けっ、少数精鋭の意味がねーだろ」
「本部と支部に分けたから、本部では35名しかいないわよ…それに強いから問題ないんじゃない?」
「組織がでかけりゃどこかで腐敗が出んぞ」
「まぁそうね、私は70前後で人数は抑える予定よ…それにいくら死亡率が低くなったと言ってもボンゴレで比べれば高いわよ」
「弱ぇ人間なんぞ要らねぇ」
「だから強化訓練してるんでしょ」
ヴェロニカはザンザスの隣に座り、リモコンでテレビのチャンネルを変える。
ザンザスの咎める視線を無視しながら、チャンネルを変えていると、とある番組のチャンネルで止める。
その番組では日本での温泉旅行の番組が流されていて、その番組を数十分見ていたら、ヴェロニカは携帯に何かを打ち出す。
「ねぇパパ、今度休み出来たら日本行って温泉行こうよ」
「一人で行ってろ」
「パパ最近ずっと籠ってるじゃない、少しくらい外出よう」
「興味ねぇ」
「ちょっとスケジュール確認してくるからまた明日来るね」
「聞け」
ザンザスの言葉を無視して、ヴェロニカはソファを立ち上がり、扉に手を掛ける。
「ちゃんと薬とジュース飲んでね」
「黙れ」
ヴェロニカはそのまま部屋を出ると、広間で待っていた部下に声をかけ、車に乗り出した。
「あ、ヴァリアー本部に帰る前にボンゴレ本部に寄って」
「分かりました、何か御用時で?」
「少しね」
そのままボンゴレ本部に着き、ヴェロニカは本部の廊下を堂々と歩き進み、研究所と書かれている部屋の扉を開け、奥の方にいる茶髪の高齢に片足突っ込んでいる男性に声を掛けた。
「入江」
「あ、ヴェロニカちゃん」
「久しぶりだな、この前の論文を見た」
「え、あれをかい?嬉しいなぁ」
「少しそれで聞きたいことがあってな」
最近の出来事だが、入江正一が死ぬ気の炎の解析に関しての実験及び推測をまとめた論文が出され、ヴェルデに次ぐ天才科学者として名を広めた。
今はまだ解析途中であるが、彼の研究結果は研究陣に多大な影響をもたらした。
私もその論文を読み、興味を持ったので入江に聞きに会いに来たのだ。
入江の他にも研究室にはジャンニーニ、スパナがいて、二人は何やら真剣に何かを話していた。
「入江…あの二人は真剣に何を話しているんだ」
「ああ、さっき偶発的に出来た発明品があって…」
「なんだそれは」
ヴェロニカの問いに今度はスパナがヴェロニカの元に寄ってきて答える。
「多分パラレルワールド装置だ」
「パラレル?また大層なものを発明したな、行先は分かっているのか?」
「いやどこに行くかは分かっていないんだ…だが同一世界ではないどこか…加えて他の不安要素もまだある」
「けれど今までは時間軸の移動のみしか出来なかったので、パラレルワールドとなると大発見ですよ」
ジャンニーニの言葉にヴェロニカは苦い顔をする。
「まぁ、そうだが…危険じゃないか?また白蘭のような者が出てくるぞ」
「そうなんだよね…大きな発明だけど危険だからこれはそのまま壊してしまおうか」
「そうですね」
ジャンニーニの落ち込んだ声と共に、入江正一は装置を持って廃棄室に向かおうとする。
途中で入江正一が足を滑らせ、装置の下敷きになろうとし、ヴェロニカがそれを助けようと入江の方に手を伸ばす。
その時、眩い光と白い煙を出した機械が目に留まった。
そしてヴェロニカは懐かしい感覚に悟った。
あ、これ飛ばされる。
「勘弁してよ…」
ヴェロニカの小さな嘆きは誰の耳にも届くことなく、意識が霞んでいった。
「ぅ……」
意識が戻り、ヴェロニカは目を薄く開ける。
自身がベッドの上で横になっていることに気付き、辺りを見回すとヴァリアー本部のボスの執務室であった。
あれ?今回はただ気を失っただけかな?
ヴェロニカはベッドから起き上がると、下半身に違和感が生じた。
「ん?」
徐に手を伸ばし、違和感のある場所を触る。
「っ!?」
あ、アカン…これアカンやつだ。
ないものが付いてる。
理解しつつある現実に涙目になりながら自身の胸に手を伸ばす。
そこには硬い、逞しいであろう胸板があった。
「―――――――っ!」
いやぁぁぁぁあああああああああ!
ここで叫ばなかったのは称賛ものだろう。
ヴェロニカは違和感に抗いながら洗面台の方に向かう。
洗面台に行くと、鏡を覗き込む。
「ぅっわ…完全に男顔………」
てか私の男顔って凄くパパの若い頃に似てる。
ん?にしても若すぎないか?
これ15、16な気がするが……
「っていうかこれ…パパじゃね?」
ヴェロニカはすぐさま洗面台から離れ、部屋に置いてある机の上の書類を見る。
書類の日付を見て驚愕した。
「……46……いや47年前?」
思いっきりパパですわコレ。
え、私過去に来た上にパパの体乗っ取ってんの?
嘘だろ、今度はこれかよ。
ていうか今頃未来では大混乱じゃねぇか、ヴァリアーとボンゴレ本部が険悪になってなきゃいいんだけどな。
ダメだ、スクアーロ達が乗り込んでいく図しか思い浮かばない…
ヴェロニカは16歳であろうザンザスの発達途中の体と、その手のひらを見る。
流石に40年後みたく手のひらは硬くないか…
机の上に二挺拳銃があり、ヴェロニカはザンザスの手のひらから憤怒の炎を出してみた。
一応出るけど、何か火力が低いような…?
まぁまだ十代だから、これから強くなっていくのかな…
にしてもパパの体ってことは、炎の調節とかどうなってんだろ。
ヴェロニカは憤怒の炎を手のひらに薄く纏ってみると、それは薄く綺麗に纏えた。
よかった、これ一応私の戦術の一部だし、火力ブッパのみとか不安すぎる。
あと剣がない。
九代目に早急に作ってもらおう。
あ!ていうかこれそろそろクーデター起こす時期だったんじゃ?
私冷凍なんてされたくねーよ!
アカンって、これパパがスクアーロにクーデター起こすことを言ってなければいいんだけど。
つーかいくらパパの口調似せたとしてスクアーロに絶対バレるんじゃね?
ヴェロニカは取り合えず、着替えを済ませ部屋を出る。
それは40年以上も前とあって、少しだけ構造が違い、どこにだれがいるのかすら分からなかったので本部を歩き回ることにする。
スクアーロに会うために、周りを見るが知らない顔をした隊員がいるだけで、銀髪は見当たらなかった。
あるぇ?そろそろ出てきてもいいんじゃないかなぁ?
この頃のパパって普段何してたのさ、学校絶対行っていないだろうし。
家庭教師………ダメだ、思いつかない。
何だっけ、パパの小さい頃から仕えてた奴………いた気が…
ヴェロニカはもはや果てしなく昔の原作知識を掘り起こす。
またこの知識を使う日が来るとは思っていなかったのだ。
「ザンザス様」
後ろから初めて聞く声に振り向き、その男の顔を見た時にヴェロニカは思い出した。
こいつは裏切り者だ。
今のうちに殺しておこうか?
ヴァリアーのボスとしての覚悟を持っているヴェロニカに躊躇するような思考など持ち合わせてはいなかった。
一瞬銃に手を掛けようとしたが、それは早計と捉え、取り合えず話を合わせようとした。
「何…だ」
「先ほどから誰かをお探しのようでしたが…」
「カス鮫はどこだ…」
「ああ、スクアーロのことですか、彼ならまだ寝ているのでは?起こして来ましょうか?」
「俺の部屋に連れてこい」
「了解しました」
金髪眼鏡の男は一礼し、ヴェロニカに背を向け歩き出した。
危なかったぁ…パパの口調で話しかけなきゃいけないのかぁ
一瞬口調が女になりそうだった…
取り合えずあいつの裏切った時期って曖昧だけどあれだよね、解凍後だからもっとあとだよね?
ダメだ、これほど頼りない記憶よりは自分の、っていうかパパの直感を信じよう。
つーかあいつの名前なんだっけ…
全く思い出せない……何だっけ、確か――…
「ピスタチオ…」
「あら、ボスったらピスタチオ食べたいのかしら?」
ぅおおおおい!後ろから出るな!
ビックリしたわ!
「ルッスーリアか…」
「おはよ~ボス!スクちゃん探してたのぉ?あの子ならまだ寝てるわよ」
「……フン」
「あたし任務いってくるわねぇ、早くボスの元に帰ってくるわよん!」
ルッスーリアは嵐のように去っていった。
にしてもあいつ若いなー
流石48年前…
未来でも一応皺とか気にかけていて洗顔とか美白溶液でケアしていたから、あまり年を感じさせなかったけれど…
ヴェロニカはスクアーロが来るであろう、自室に戻った。
数分後、自室の扉が開きスクアーロと先ほどの眼鏡の男が入ってきた。
「ザンザス様、スクアーロが何やら頭を打ったようで…先ほどから態度がおかしいようですが…」
「なに?」
ヴェロニカは目の前の髪の短いスクアーロを眺める。
スクアーロは視線を泳がせながら、ヴェロニカと目を合わせないようにしていた。
おかしい……どう考えてもおかしい……
しかも一番初めにだみ声での挨拶がない…何があったし…
「おいカス鮫」
「な、何…」
これはおかし過ぎる通り越して、面白い…
何だこのスクアーロは…誰か別の人じゃないかと疑うほど……あ。
「おい、こいつと二人にしろ」
「分かりました」
眼鏡の男は部屋を出ていく。
スクアーロは心なしか顔色が青ざめている。
「おい」
「う……あ…」
ヴェロニカはスクアーロの襟を掴みながら問う。
「お前入江か」
「ひぃぃぃすいません!僕スクアーロじゃっ……え?」
「私だ、ヴェロニカだ」
「え、え?」
「どうやらお互い、別の世界の時間軸に飛ばされたのか…」
「ぇぇぇええええええええ!?」
「おいスクアーロの顔でそんな情けない顔はやめてくれ…」
中身が入江のスクアーロの襟を離し、ソファーに連れていく。
お互いソファーに向き合いながら座り、状況を冷静に考え出す。
そして数分後、二人して頭を抱えた。
「「どうしてこうなった」」
Veronicaの続編でした。
毎週月曜日17:00投稿です。
ヴェロニカinザンザスと入江正一inスクアーロのドタバタ物語(時々シリアス)ですね。
完全にギャグではありません、が前作よりも少しシリアス感ないと思います。
正直あげようか迷ってた作品です。
ほぼ最後まで書きあがってはいたんですけど、投稿する前に別の作品あげちゃったんですよ…
そこで文章力が若干変化しててその後でもう一度放置してたこの続編の方読んでたら…あれ?これちょっと内容が下手すぎたかなと思っちゃって…だってベタな展開だなぁと思うし…
でも無理してまた書き直す気力もないしなーと思って取り合えず少しの添削だけして投稿しました。
ハッキリ言って時間経ちすぎて内容覚えてなかったし、この作品への熱が冷めつつありましたね(笑)
それでもいいよ、暇潰しで見てるだけだからというお心広い方がいれば何卒完結までお付き合いお願いします。