汚い餓鬼を拾ったので虐待することにした   作:クーネル・アソーブ

3 / 5
真っ赤なゲージと、乗り続けるランキングに戦々恐々です。
やはり2chは強い(確信



汚い餓鬼を拾ったけど連れまわすことにした

朝起きると餓鬼の元気がなかったので車に乗せて振動攻撃。

そして白服を着た女性二人に押さえつけられ、

白服の男に針を刺してもらう。この時の悲鳴にはさすがに耳を覆う。

白服に金を渡し、来週も来ることを約束する。

 

白いベチョベチョしたものと果物を摩り下ろした水っぽいものを食わせる。

いつもはがつがつ食べるのだが、今日は進まない。

埒が明かないので食器を奪い取り口に突っ込み食べさせる。

食べさせた後は白服の女性から買った白い粉を複数飲ませる。

ぐったりとした餓鬼を熱が籠りやすい台に放り込み寝るまで監視した後に就寝。

 

元気も戻ってきたが、ここぞとばかりに白服屋敷へ何度も行く。

白服屋敷に行く前はあまり声も出ないようだ。

 

ある日白服と話していると餓鬼の姿が見えない。

探していると屋上のベンチで膝を抱えている餓鬼を発見。

声をかけると無言で突進してきて、抱き着いて離れない。

「―――――」

か細い声で、何かを呟いたが聞こえなかった。

恨み言だろうか・・・

 

 

次の日餓鬼は姿を消した。

 

side響

 

「…?」

ある日起きる何故か体に力が入らず、視界がグラグラする。喉もひりついたように張り付き水が欲しい。

水を飲もうと立とうとすると、私の視界はグラリと倒れた。見えたのは驚いて近づいてくるお姉さんの顔だった。

 

私はどうやら風邪を引いたみたいだった。あのホームレス時代でも体調を崩さなかったのに今更風邪を引くなんて驚いた。

「大丈夫か?起きれるか?」

お姉さんに迷惑をかけて申し訳ないなぁと思っていると、お姉さんが電話を片手に入ってくる。

「今、病院に電話をして予約入れたから病院で薬を貰ってこような」

…なんですと?

「ゲホッ、ゲホッ。病院はだめ…。保険証持ってないし、身柄がばれちゃう…。」

今でこそお姉さんに養って貰っている身だけれども、もともと私は世間で嫌われている生き残りなのだ。ましてや家出している身。私の身分がばれれば間違いなくお姉さんに迷惑がかかる。それは嫌だ。

「別に気にしなくてもいいのに」

私が気にするんです!思わず大声を挙げそうになったけど、口から出たのは咳だけである。

「だって、これから行く病院では保険証使わないから」

へっ?どういうこと?

詳しく聞いてみると、これから行く病院はお姉さんの知り合いが経営している病院で、プライバシーもしっかりと守られているのだそうだ。お金も気にしなくていいらしい。

それなら安心できるかもしれないけど、やっぱり人前に出るのはしり込みする。

「身バレしたくないから外に出たくないんだろ?それなら帽子とマスクをつければいいじゃん」

…なるほど、その手があったか。

 

お姉さんの運転は快適で、振動もちょうどよく、眠っていたのを起こされた。

プライバシーが守られているというだけあって、患者を呼ぶ時も番号で呼ぶなど、個人情報が守られていて安心した。

配布された番号が呼ばれて、診察室に入ると早速往診を受ける。

「疲労がたまって流行り風邪を引いたようですね。注射を打っておきましょう」

いきなりだけど、私は注射が嫌いだ。どれぐらい嫌いかと言うと座薬と注射なら座薬のほうがまだましというぐらい注射が嫌いだ。

「注射は嫌です」「ダメです」

即座に却下された。お姉さんに助けを求めようと視線を向けても合掌されて見放された。

「痛くないですよ~」

(そう言われていたくなかったことなんて痛い―――!」

 

家に帰るとリビングのソファに寝転がされた。何か手伝おうかと思ったけど、「病人は寝てろ」の一点張りである。ソファで横になっているとちょうど台所のお姉さんが料理しているのが見える。

(私が病気の時お母さんも気にかけてくれたなぁ)

昔のことを思い出していると、お姉さんがお粥を持ってきてくれた。何かお腹に収めないといけないのは分かっているけれども、食欲がわかない。

すると、お姉さんはスプーンでお粥をすくって冷ますと「アーン」とスプーンを差し出してくる。

「食欲がないんで「アーン」」

「いや、だから「アーン」」

「その「アーン」」

「…」

負けて口に含んだお粥は美味しくて、二口目からはするするとお腹に収まった。

でも恥ずかしかったから次からは無理でも自分で食べようと思う。

同じように摩り下ろしたリンゴも「アーン」されそうだったけど、さすがに恥ずかしかったので自分で食べた。

お姉さんが残念そうなのは気づかないふりをした。

食後に飲むようにと出された薬の量に嫌気がさした。どうして薬って、こんなに美味しくないんだろうか?

水で流し込むと、薬の効果もあってか眠気が襲ってくる。

お姉さんがベッドまで運んでくれて、眠るまで一緒にいてくれた。

でも、子守歌は必要ないと思います。

(そんな年じゃないんだどなぁ)

綺麗な歌声だと感心しながらこの日、私の意識は落ちた。

 

それから何度も外出したけど、私が気づかれることはなかった。

私は周りに騒がれないことに安心した。もしかしたら自意識過剰だったのかもしれないと恥ずかしく思った。

(まぁ私のことを知っている人なんて早々居るはずもないか)

私は油断していた。外出することに慣れて、気が緩んでいたのかもしれない。

私が過去を忘れていても、過去は私を忘れていないことを。

 

それは何度目かの病院での出来事。

お姉さんがお医者さんと話しをしていて時間があったので紹介された屋上に行ってみた。

寒い季節なので人の姿は見えなかったが、緑化モデルとして様々な草木が生い茂っていた。

「春にここでピクニックでもしたら、気持ちがいいんだろうなぁ」

あまり咲いていないが、それでも豊富な種類の草木に目を楽しませながら歩いていると、ひときわ大きな木の下で、女性が一人車椅子に座っていた。

誰もいないと思っていたので人がいることに驚きはしたが、邪魔をしちゃ悪いと思って別の道に入ろうと思った。

「アナタ…、立花響さん?」

だからいきなり私の名前を言われて驚いた。

思わず振り返って女性の方を見ると、確信したのかやっぱりと頷いている。

…カチカチと聞こえる。何の音だろうと音の出所を探すと、私の歯が鳴る音だった。

自覚すると、私は冷や汗がどっと溢れてきた。

この人は私の名前を知っている。ということは私の過去も…!

蘇るのは迫害されていた日々。助けてくれる人なんていなくて、ついには親からも厄介者を見る目で見られた。

もし、彼女が私のことをばらしたら。足が竦んで動けなかった。

「大丈夫よ。あなたのことはばらしたりしないわ」

脅していると思ったのだろう、彼女は慌てて弁明してきた。

「…本当ですか?」

もちろん、と彼女は頷いた。

「貴方とは一度お話したかったの」

「えっ?」

彼女は長くなるからと私をベンチに座らせて語りだした。

あの日からの彼女の人生を。

 

「私、あなたとお話したかったの。私と同じ、コンサートの生き残りであるアナタと

「ええ、私もあのコンサートに行っていたの。そしてあなたと同じように周りの人から追い立てられたわ。私は何もしていなのに。だって当時私はトイレにこもっていたんだもの

「はじめは知らない人から。何の関係もない人まで自分たちが正しいって言って、石を投げたり、張り紙をされたりしたわ

「次は学校のみんなから。仲の良かった友達も、頼れる先輩も、かわいかった後輩も、優しかった先生もみんな私を責めるようになったわ

「最後は家族まで私のことを責めるようになった。父は仕事がうまくいかなかった理由を私のせいにしたり、母は私のことを汚いもので見るようになった。弟は私に死んじゃえばよかったなんて言ってきたわ

「私は耐え切れなくなった。いっそのこと死んでしまおうかと思ったとき、貴方のことをニュースで見たわ。家を燃やされ、行方不明になった女の子として

「あなたのニュースを見て私は思ったの。誰も私をいらないならここにいる必要はないんじゃないのかって

「その日のうちに荷物をまとめて家を出たわ。下ろせるだけのお金を持ってどこか遠くに行こうと思ったの。あなたはどうだったかしら?

「私はどこにでも行けると思っていたわ。どこにでも行けるし、何でもできると根拠のない自信であっちこっちに行ったわ

「でもお金がだんだん無くなって、お金を稼ぐ方法もわからなくて食べ物にも困るようになった時、私は生まれて初めて神様に真剣に祈ったわ

 

「どうか助けてください、ってね

 

「そしたら私を拾ってくれる人がいたの。最初は男の人だから警戒していたんだけど優しい人で気を許しちゃったわ

「私はいい気になっていたのね。この人なら私を受け入れてくれるって。何の根拠もないのにね

「私はその人に打ち明けたわ。私がコンサートの生き残りだって。当時お手洗いにこもっていたから無実だったてね

「その人は受け入れてくれたわ。私の言うことを信じてくれるって

「でも、周りの人はそうじゃなかった

「どこから洩れたのかわからいけど、私の素性がばれたの。私はまた迫害されたわ。仕方ないことよね。私が何を言っても彼らにとって私は人殺しだもの

「でも、彼は、私を助けてくれた人は違った。根気良く周りと話して私が無実だということを説明してくれたわ

「嬉しかった。嬉しくて今でも涙が溢れちゃうくらい

「このまま何もかもうまくいくと思っていたわ

 

「でも、世界はそんなに甘くなかった

 

「ある日、彼が大けがをしたの。車にはねられたって

「彼をはねたのは私を悪という人の一人だった

「私が悪だから私の味方をする彼も悪だって、そいつは言ったわ

「私のせいで彼は怪我をした。

「私は罪悪感でどうにかなりそうだったわ。命は助かったけれども、私のせいで死んでしまうかもしれなかったんだもの

「私が罪悪感で潰れそうになっていると警察が来たわ。私は家出扱いだから家に帰らなくちゃいけないってね

「私は抵抗したわ。彼の傍に居たかったし、あの家に帰りたくなかったんだもの

「結局私は戻らされたわ。私を嫌そうに見る家族、無責任に攻めてくる人たち、裏切った学校の人たち

「もうさんざんだった。彼の元へ帰りたいと、そう願わない日はなかった。

「でもね、ある日思ったの。もし、私が彼の所に戻ったら、彼も迫害されるんじゃないのかって

「そう考えると、私は恐ろしくなった。彼は私のことを受け入れてくれた。でも、彼も迫害されたら?その時彼は私を庇ってくれるの?いや、庇ってくれたとしても、私は耐えられるの?って

「だから離れようと思ったの。どんなに恋しくても、どんなに寒くてもあの人のとこには戻れない

「でも、このまま生きていくのはつらいわ

「だから私は自殺しようと思ったの。

「でも死ねなかった。偶然通りがかった人に助けられちゃったの

 

「そうやって私はこの病院に入れられたわ。今はリハビリ中なの」

……私は言葉も出なかった。私のことがニュースになっていたのもそうだが、それ以上に彼女の経験が私には衝撃的だった。

一方的に話してもらったのも悪いだろうか。でも、現在進行形で救われている私の話をしてもいいんだろうか。

「立花さん、立花さんのことは聞かないわ。」

「…いいんですか?」

だから考え込んでいる私に背を向けて去っていく彼女に驚く

「でもね?後悔だけはしない方がいいわ。そうしないと何もかも失っちゃうかもしれないかもね」

去っていく彼女の背中には十字架が架かっている。そんな気がした。

 

彼女が去ってから私はベンチでぼんやりとしていた。

彼女の話は私にそっくりだった。もしかしたら彼女は未来の私なのかもしれない。

そう考えると私は怖くなった。彼女の話では彼女を助けてくれていた人が傷つけられた。すまり、私で言うとお姉さんが。

脳裏にツヴァイウィングの奏さんが浮かんだ。あの日、あの場所で死んでしまった奏さんにお姉さんが重なる。

「――――っ」

そんなことは起きない!だって今まで大丈夫だったんだから、これからも大丈夫!

―本当に?起きないって確信できるの?

悪い予感ばかりが頭を占める。そんなはずはない、大丈夫って思っているのに…。

「いたいた、探したぞ」

顔を上げるとお姉さんが笑って立っていた。

「~~~~~っっ」

「おっと」

私は飛びついて、お姉さんに抱きついた。服の上から出もわかるお姉さんの温もり。

「どうした、何かあったのか?」

私を心配してくれる優しい声。

頭を撫でてくれる安心する手。

――これが私のせいで傷ついたら?

私に何ができるだろう?お金もなく、力もない私に一体何が…。

――離れようと思ったの――

…そうだ、離れればいいんだ。

私がいるからお姉さんが傷つくんだったら私がお姉さんの傍に居なければいい。

(まるで私が疫病神みたい)

以前までは呪われているって自分で言っていたのに、これじゃ私がお姉さんに憑いているみたいだ。

お姉さんに話したら反対されるだろうから何も言えない。でも、

「大好きでした」

これぐらいは許してほしい。私のこの気持ちを口に出すぐらいは。

 

私はお世話になっていたマンションを見上げていた。目線の先にある部屋で私は色んなものを貰った。何も返せなくて、今ももらったものを身にまとっているけれど許してほしい。

「許されたいことばっかりだなぁ」

コンサートで生き残ったことも、逃げ出したことも、拾われたことも、いろんなものを貰ったことも、そして何も返せず黙って居なくなることも。

「今までお世話になりました。さようなら」

私は踵を返してマンションを後にする。

「どこに行こうかなぁ」

どこでもいいか。私は疫病神なんだから。




2chをリスペクトさせてもらいながらオリジナル展開になって申し訳ありません。
でもオリジナルのままだとビッキー死んじゃうし、許してください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。