Fate/I am sword 作:雑種48号
唐突だが、我には好きな奴がいる。
彼女を形成するそのカタチに惚れた。
人を愛し、魂を尊び、死後を護る。しかし己が生を謳歌することは叶わず、太陽を見ることも許されない。
そんな中虚ろな瞳で、しかし確固たる意思を持って自身の役割を全うしようとする彼女は、我にはとても哀しいものに見えた。はかないものに見えた。
そして何より、とても愛おしく、守りたいものに見えたのだ。
世界を見せてやりたい、始まりの陽の光や闇に輝く星々、そして彼女自身が愛してきた人々の笑顔を。
あわよくば一緒にウルクを散歩して小柄なエレシュキガルと手を繋ぎたい。お昼には、ご飯を食べて膨らんだ彼女の頬を見て癒されたい。
夕陽を背景に我の想いの丈を伝えて結ばれたい。
っと、少し本音が出てしまったか。まあ良い、何を思うにしてもまずエレシュキガルをでえとに誘わないとな。
そう云えば、
エレちゃん探して三千里。冥界を歩いていると、小さい女の子ことエレシュキガルが見えた。
体を上下に揺らしている、可愛い。体と一緒に彼女の髪も揺れている、さらに可愛い。不味いな.....それは我にとって狂気たりえる。
あぁ、ずっとこの景色を楽しみたいものだ。言っても仕方のないことではあるんだけど。
「エレシュキガル、冥界からのサポートは助かった。ありがとう」
「貴方に言われるとお世辞にしか聞こえないわよ.....」
確かにそうかも知れないな。我、世界を創った剣だし。原初の地獄の体現だし。
ティアマトには申し訳ないが、彼女もまた我の敵と呼べるほどのものでは無かった。これは傲慢でもなければ自信過剰でもない、そういうふうに出来ているのだから。
「すまない。しかしまあ、我はともかく英霊たちの、何より
「べっ別に私はあの金ぴかのためにやったわけじゃないんだから!!仕方なく手を貸したのよ、仕方なく!」
何の前触れもなく声を荒げるエレシュキガルか、これもまた乙だな。可愛い。
しかし、じっとエレシュキガルを見つめる我に一抹の恥ずかしさが芽生えたのか、彼女は露骨に話題を変えてきた。
「それにしてもエア、貴方は金ぴかから離れてもいいの?」
我は我として一個体であるし、そもそもサーヴァントとは原点からして違うのだが。とにかく今はでえとだ!エレシュキガルをでえとに誘わなくては。
「
冥界の女神が少し驚いたように息をのんだ。そんな少しの仕草さえ可愛いと思ってしまう我は、かなり重症なのだろう。
なにかを思いついたのか、エレシュキガルは我を見て小悪魔めいた笑みを浮かべた。
「そう。あれかしら、貴方は私をデートに誘いたいんでしょう?」
今度は我が驚きを隠せなくなる番だった。
なぜ分かった、エスパーなのかエレシュキガル!?可愛い。
「ねえそうなんでしょ。いいのよ気にしなくて」
この誤魔化すのは得策ではない。むしろ今だからこそ、エレシュキガルをでえとに誘うチャンスなのではないか。覚悟を決めろ、我。
「貴方の気持ちは十分わかって「.....エレシュキガル、聞いてほしい。大切な話だ」えっ?」
誰かの嘆息が聞こえたような気もするが今はどうでもいい。
「お前の言った通りだ、エレシュキガル。我はお前をでえとに誘いに来たんだ」
「え、ちょっと待って!?えっ!?リハと違うんですけど、違うんですけど!!」
「なにを言っているんだエレシュキガル、お前の言っていた通りだ。まあ本当は隠しておきたかったんだけどな」
エレシュキガルの慌てる姿もまた可愛い。なぜ慌てるのかは知らんが。
「明日の昼時に迎えに来る。楽しみにしていてくれ」
言いたいことは言い終えた。我は、みんなにでえとのアドバイスをしてもらおう、そうしよう。
「また明日だエレシュキガル、明日お前に告白するからな。気楽に待て」
それにしても忙しくなるぞ。服は
「え!?私デートに行くの!?それで告白されるの!?それもあの
未だ状況を飲み込めない女神が一人。そして、それを見てイイ笑顔を浮かべる女神が一人いた。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
次回では、ギルガメッシュやイシュタル、カルデアの皆さんも出てきますのでご心配なさらず。