あいあむあいあんまん ~ISにIMをぶつけてみたら?~ 作:あるすとろめりあ改
本軸のストーリーとは直接繋がりませんが、オマケとしてお楽しみください。
因みに、これを投稿した時点での最新話(024)よりも2年の月日が流れた時間軸の主人公(20)です。
さて、ドッタンバッタン大騒ぎするぜよ。
其の一 welcome to ようこそニューヨークへ。
えーっと……どこから話せば良いのかな?
まあ、そう焦らないでよ。これじゃまるで尋問…………わかったよ、話すから。
君も知っている通り、朝は研究室にいたんだ。
だけど、無性に空へ飛び出したくなって……折角だから新作のスーツを着て飛び出した。文字通りにね。
高度2万メートルの辺りをウロウロと……その辺りは省略しろって?
2,30分くらいかな……特に何事もなく悠々自適に飛んでたよ。
そしたら……突然、空に青い
靄は物凄い吸引力で、反対方向に引き返そうとしてもちっとも進めやしない。それどころか徐々に引き寄せられて……結局、吸い込まれてしまったんだ。
その後?だから、ここからが本題なんだって。
僕はその世界で想像もつかない様ほどの衝撃的な体験をすることになる。
世界最高峰の力を持ったスーパーヒーロー……彼等のチームに、僕はお邪魔させて貰ったんだ。
彼等の名は────アベンジャーズ。
◯
「メーティス!何があった?!」
『わかりません。台風では無かった様ですが……』
「しかも夜になってるし……と言うかここは何処だ?」
『先程の影響かシステムがオフラインになっています。…………駄目ですね、ひとまずGPSに接続します』
さっきまで真昼間の海の遥か上空を飛んでいた筈なのに、アイアンマンのコントロールが戻った時には真夜中で、しかも下に広がるのは高く聳え立つビルの山岳だった。
そんな長い間を揉みくちゃにされたとは思えないのに、これは明らかに異常だ。
だからメーティスに現在地を尋ねたら……驚くべき結果が返ってきた。
『現在地を取得しました。ここは……アメリカ合衆国のニューヨーク州、マンハッタンです』
「はあっ!?」
日本からニューヨークと言えば、距離にして1万キロは離れている。
そんな距離を一瞬で移動してしまうとは、俄かに信じ難い。
しかしGPSの誤差がそこまで出るとは思えず……兎に角、飛び続ける事しか出来なかった。
「じゃあアレはメトロポリタン美術館で……セントラルパークだって言うのか!?」
『地図上では一致します』
「何てこった……」
実際に見える景色もニューヨークのソレならば信じる他ない。
つまり、このまま南に進めばロックフェラーセンターや、エンパイアステートビルでお馴染みの摩天楼がある訳だ……。
アイアンマン・スーツを纏って空を飛んでいると、どうしても映画の“アベンジャーズ”を思い出してしまう。
いや、それよりも高校の修学旅行を思い出すべきだろうか。
確かあの辺りで戦車みたいなロボットに襲われて…………いやはや、懐かしい。もうアレから3年も経っているとは。
「そうそう、ありもしないスタークタワーはどの辺りにあるんだろうかって探してみたりして…………ん?」
視線の先、遥か南。
グランドセントラル駅の手前に、他を凌駕する高層の建築物が見えた。
メットライフビルじゃない。と言うか、あるべき場所にメットライフビルが無く、代わりにそのビルが聳え立っている。
先進的な建築デザイン。ニューヨークと言えども他に類を見ない構造だ。
何よりも目を惹かれるのはビルに刻まれた自己顕示欲が丸出しな『STARK』のロゴ。誰が言ったか、確かに下品とも言えなくは無い。
「スターク……タワー?」
幻が、そこにあった。
いや……アイアンマンのディスプレイに表示され、400mの建築物が3Dスキャンされてしまえば現実の物であると認めざるを得ない。
『地上高は約420m。スキャンした限りではニューヨークで一番高層の建築物みたいですね』
「そうか、まだパークアベニューも新ワールドトレードセンターが出来ていないから……」
911のテロで崩壊した後に建設された1 ワールドトレードセンターは2014年に完成したが、アベンジャーズの出来事が2012年頃であると考えれば、当時の最高峰であるエンパイアステートビルを軽く越えてニューヨークで一番高い建築物になっているのだろう。
流石はトニー=スターク。建てるからには一番を目指すというのは実に彼らしい。
『奇妙です。1 ワールドトレードセンターが存在せず、逆に存在しない筈の高層建築物があります』
「メーティス、多分ここは……」
異世界。
より正確に言えば、アース199999──── マーベル・シネマティック・ユニバースだ。
『警告。此方へ接近する飛行物体を確認』
「なに、戦闘機か何か?」
『いえ。これは…………』
メーティスがモニターする方角に、身体の向きを変えながら空中で静止。ホバリングを開始する。
ディスプレイに表示される速さはかなりの物だ……マッハ2を超える。F22……にしたって、機影が小さ過ぎる。
まるで────
《やあ、そこの君》
「────っ!」
アイアンマンだ。
ただのアイアンマンじゃない。
本物だ。本物、僕とは違う。
トニー……トニー=スターク。マーク6が、目の前に。飛んでる。そこに、いるんだ…………!!
《中々、上等なスーツを着てるじゃないか。良かったら何処で仕立てたのか僕にも教えてくれないかな?》
「あー……だったら普段着でゆっくりと話をしたいかな。フィッティングルームを紹介してくれるんだったら付いて行くけど」
《そうか、だったら最高級のブティックを紹介してやるよ。着いてこれるか?》
「もちろんさ」
◯
そして、スタークタワーの上空へ。
アイアンマンは。トニーはヘリポートの様なスペースに着陸すると、側面の床からロボットアームが飛び出して来て、歩くトニーを追い掛けながらスーツを取り外しにかかる。
『トニー様、S.H.I.E.L.D.のコールソン様からお電話です』
「…………今は会議中で対応出来ないとか言っておけ」
『どうしても、と仰っています』
「上手く対応してくれよ。大事な議題なんだ」
歩く度に軽々と装甲が外されていく姿は感動的だ。と言うかもう、混乱しているくらいだ。
うわー……もう、凄い。まるで夢みたいだ。えっ、本当に夢じゃないよね?
「一張羅を脱ぐのに何か入り用かな?」
「あ────っ!いえ、自分で脱げますのでお構いなく!」
僕のアイアンマン…………って言って良いのか分かんなくなっちゃうけど。Mark.9にも自動着脱機能が搭載されている。
更に言えばMark.7からの自律機能も継承されているから、脱いだ後にちゃんと付いて来てくれる。メーティスが悪戯したりしなければね。
「…………」
トニーの通った道を辿って歩きながら、スーツを脱いでいく。
そんな姿を、トニーは黙って見ていた。見られていた。
何かを探るような。ちょっと怖い眼つきをしている。
仕方ないよね、警戒されちゃっても。僕が逆の立場だったとしてもそうする。
「トニー、遅かったじゃない。え……誰、この人?」
「ああ、ちょっと
「は、はい!倉持幸太郎です!」
「くら……こ、たろ…………日本人だったのか?」
「あ、呼びにくかったらお好きに呼んでください。因みにスペルは……この紙、お借りしますね」
僕の名前は呼び難い部類だろうから、仕方がない。
一郎とか野茂みたいな名前だったら簡単なのに。残念だ。
「kotaro……コタロー、か」
「はい。改めて、はじめまして」
「それで……どうなってるの?」
「実は僕にもよくわからないんだよ」
「はあ?」
「外であれを着ていたものだから、声を掛けて見たんだ」
そう言って、指差したのは室内まで付いてきたMark.9。
応じる様に左手を腹部に当てながら、右手は腰の後ろに回して謹厳な仕草でお辞儀をした。まるで執事みたいに。
「お辞儀をしたわよ……」
「なあ君、誰も入っていないよな……?」
「ええ、中に誰もいませんよ。ほら、メーティス」
スーツの着脱機能で中身を見せる。
当然だが、内部のメカニズムが露わになるだけで中に人が入っている訳では無い。
全部、メーティスが勝手にやったことだ。
「AIがスーツを制御して簡易的な動作をする事が出来るんです」
「なんてこった……本当に?」
「ええ、本当です」
この時代のトニー、マーク6やマーク7ではまだこの域にまで達していない筈だ。だからだろうか、驚愕した顔でMark.9を眺めている。
まあ、僕はズルみたいな物だけど……ある意味、アイアンマンの未来の姿を知っている訳だし、それにアイアンマン歴で言えば僕は既に7年弱なんだから。
「それは、誰が造ったんだ……?」
「僕です。僕が造りました」
「なんだって……?今、なんて言った?」
「僕が、造りました」
「まさか…………」
とても信じられないと言った口調で、問い詰めようとしてくる。
仕方が無いだろう。アイアンマンを、赤の他人が造ってしまっていたら大問題だ。
洗いざらい話せと言われるだろう。でも聞かれたら話しちゃうかもしれない。
だってトニーだよ?トニー=スタークだ!話せる口実があるんだったら何でも話してしまいたい位なんだから!
しかし、尋問が始まる前に電話の着信を告げるコールが鳴り響いた。多分、コールソンからの着信。…………ダジャレじゃないよ?
『トニー様、先程のお電話ですが無理矢理システムに割り込まれてしまいました』
《スターク、話がある》
「あー……現在この電話は出る事が出来ません。お急ぎの方は専用窓口から」
《急いでいるんだ》
「こっちも取り込み中なんだ────」
専用窓口……では無い筈だが、エレベーターからフィル=コールソンが現れた。
おおっ、コールソンだ!まだ生きてる!いや、結局は死んでなかったんだけどさ。
「おい……セキュリティはどうなってるんだ」
「スターク。……誰だ、その男は?」
「あー……僕の隠し子だ」
「え、えええっ!?」
「なっ──嘘でしょっ、トニー!?」
「嘘だよ。嘘に決まってるだろ。おい、冗談だってば、真に受けるなよ?」
もう、大混乱。大パニック…………トニー=スタークの場合、それが冗談に聞こえないんだよなぁ。
年齢的にギリギリ……20年前と言うと、社長に就任したばかりだからあり得そうだ。いや、違うけどさ。
「悪いけど君、部外者は少し席を外していて貰えないかな」
「あー、でも……」
出て行けと言われても、逆にどこへ行けば良いのかが分からない。
確か、ロキが現れるのはドイツだったけ……そこで待機していれば良いかな?
「何の用事で来たか分からないが、あながち部外者じゃないかも知れないぞ」
「なに……?」
「もしかして、アベンジャーズのこと?あ、いや……何も知らないけど」
「……アベンジャーズ計画は中止になったんだろ?それに、僕は適正では無いと言われた」
「それも知らなかったわ」
「曰く、僕は自意識過剰な上に衝動的で、協調性が無いとかってね」
「それは、知ってた」
「性格云々の話では無くなったんだ」
「あっそ……」
「良いから、これを読め」
おいてけぼりの中、話が進んでいく。
もしかしなくてもやっぱり……四次元キューブや、アベンジャーズについての資料だろう。電子版の。
でも何で、あんな大きな資料なのかな?USBメモリとかで渡せば良いのに。
「悪いけど、手渡しは嫌いなんだ」
「急いでいると言っただろう?」
「あのー……すみません、ちょっとお借りしますね」
「あっ、君……!」
「別に良いじゃないか、欲しがってるのならくれてやれよ」
「今は悠長に事を構えている場合じゃないんだ……!」
「そんなに怒るなよ。何があったって言うんだ?」
コールソンから資料を引ったくり、勝手に起動する。
PCタブレットみたいな機器だけど……やっぱり、無線グラフィックI/Oに接続が出来るみたいだ。
幸いな事に、ここで使われている空中浮遊型タッチパネル……と言うのか知らないけど、僕が使っている物と基本的なインターフェースは似通っている。
これなら、こうやってから、こうすれば…………ほら、立体視化が出来た。
様々な文章や映像で構成された資料が、空中に浮き出す様に表示される。
キャプテンアメリカ、ハルク、ソー……そして、この資料の群の中で最も重要な情報も、あった。
「これだ……っ!!」
態とらしく、大きな声で言ってみる。
いや、それに…………多分、50%よりも高い確率で、本当に原因はこれかも知れない。
じゃなかったら、帰る手段が無くて困ってしまうし。
「コレです。四次元キューブ、恐らくはコレのせいで……僕は異世界からやって来た」
「異世界…………?」
「そういう代物なんでしょう、この四次元キューブっていうのは……」
だって、殆ど答えを知っているから。
これでチタウリを呼んだり、ロキがやって来たり……原因がこれじゃなかったら、もうお手上げだよ。
そんな僕の様子を、訝しげに見ていたコールソンが尋ねてくる。
「…………何者なんだい、君は?」
「僕は……異世界から来た、アイアンマンです」
◯
どうせなら、トニー=スタークと一緒に資料を読み耽っていたかったけど……そう言う訳にはいかなかった。
ペッパーと同様に、僕もワシントンD.C.へ行く事に。とは言っても、ペッパーに付いて行く訳じゃない。
途中でペッパーとは空港で別れて、僕はクインジェットに乗せられて別ルートでワシントンD.C.へ。勿論、Mark.9も乗せてね。
「何処へ行くんですか?」
「着けば分かる」
取り付く島も無かった。
基本的に、フィル=コールソンという人間はそういう感じだった。初めて会うから、分からない事だらけだ。
だって、まさか対面する事になるとも思って無かったから、予習なんてして来なかったし。
「君は本当に、異世界から来たのか?」
「憶測でしか無いですが……少なくとも、スタークさんは僕のアイアンマンを知らなかったし、僕はスタークさんの事もそのアイアンマンの事を知らなかったです」
嘘です。よく存じあげておりました。
「そうか……」
「あの四次元キューブって言うのは……魔法かなにかですか?」
「それに近しい。我々も全容を知らないんだ」
インフィニティ・ストーン自体、この時点ではあやふやか。
…………インフィニティ、インフィニット。
今頃、束はどうしているかな?心配していたら……後でこっ酷く叱られそうだな。
「着いたぞ」
「えっ、もう?」
どうやら、思ったよりも時間は経過していたようだ。
クインジェットから降りると、そこは飛行機の発着場みたいな場所だった。
その先には……大きな建物がある。
トリスケリオン。
S.H.I.E.L.D.の、最高司令。
「…………ふわぁ」
まるで観光ツアーだ。
マーベル世界の名所を巡ってしまっている。まさかまさかの連続。でも、これが現実。
「こっちだ、付いてこい」
「はい……!」
エレベーターに乗せられて、かなりの高層へと登って行く。
S.H.I.E.L.D.のセキュリティレベルなんて持ってる訳も無かったけど、仮発行のIDとコールソンの権限だけで進む事ができた。
「長官、連れて来ました」
「…………っ!」
長官、というワードだけでもう正体は判明した様なものだ。
此方に背を向けながら座る男は、軍服を纏っていて、更にスキンヘッドで黒人。
部屋が暗い上に後ろ姿だから良くは見えないが、恐らく左眼はアイパッチで隠されている筈。
「君が倉持幸太郎。異世界のアイアンマンらしいな」
低い、唸る様な声。
思わず臆してしまって、何とか肯定しようと何回も頷いてしまう。
後ろを向いているから、見えない筈なのに。
「私はニック=フューリー。S.H.I.E.L.D.の長官だ」
ほら、ご明察。
実はアベンジャーズってストーリーに絡みづらい(´・ω・`;)
だって完成している物語だからね、オリ主が邪魔って言う二次創作にありがちな展開になりがち。
と言う訳でトニーにベッタリでは無いようにしようっと。
どうしてMCUに来てしまったのか。その答えを求めて主人公はワシントンD.C.へ飛んだ。