Beast's & Nightmare 大森海の転生者    作:ペットボトム

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今回色々とはっちゃけてしまった・・・・・・原作キャラのイメージとか壊してしまってるけど、気がつきゃこうなったんだよ。すまない・・・・・・
それでも楽しめる人はこれからもよろしくです!


6.生命の詩の内訳と武器の改革 そして愛機は完成した

 城の地下で、(オベロン)はソーマに魔力転換炉(エーテル・リアクター)の生産を手伝うよう要請してきたのであったが、

 その瞬間、ソーマは喜色満面で了承した。「ロボットの動力炉を作って欲しいやり方は教えるから」

 このようなことを言われて断るような男ではなかった。

 王の表情に安堵の笑みが深まり、抜き身の刀に鞘が覆い隠されるようにその狂気と熱も収まっていく。

 しかし、彼の提案は目の前の少年の魂魄に核燃料棒を挿入するようなものであった。一見して表面上静かであっても、加熱と暴走は確実に進行していたのである。

「さて、そうと決まれば、幻獣騎士(ミスティック・ナイト)を作るためには幻獣騎士を知らなければなりません。というわけで私に専用幻獣騎士、ください。」

 キョトンとした顔で今度は王が尋ねる。

「街にとっての重要な作業を任せるからにはそれなりの報酬が必要なのはわかる。幻獣騎士が欲しいというなら構わないが、私が作って欲しいのは魔力転換炉であって、幻獣騎士ではないよ?」

 人の話、ちゃんと聞いてる?暗にそう言ってるようなものだったが、今度はソーマがおかしなことを言う、とでも言いたげな表情で、こう言った。

「魔力転換炉だけで、幻獣騎士が出来上がっているわけではないでしょう?内部骨格、筋蚕、魔導演算機(マギウス・エンジン)、装甲。魔力転換炉の出力アップだけでそのスペックが上昇するわけではありません。筋蚕に至っては生物ですからね。品種改良はその道のプロにまかせるとして、何か代替品になり得るものがあるかどうか検証等を行うべきかもしれません。内部骨格や装甲に使われる素材もより良いものを見つけられるかも知れないでしょう?

 新型の開発を行う上で、これらの諸要素に対して何が出来るか。それを知るためにも操縦したり、分解したり、改造してみたりして機体を把握する必要があります。だから幻獣騎士ください。」

 なんだか話のベクトルがおかしくなっている。王は彼に動力炉の増産の手伝いをお願いしたのであって、新型開発など頼んだ覚えはないのだが。

「今まで幾多の人物が改良に挑んできて、幾つもの壁に阻まれたからこそ、今の形に収まったのだ。もはや幻獣騎士の性能向上など微々たる物にしかならないだろう。

 個の力を強化するよりも今は炉の増産を行って、数を揃えるべきだ。夢のようなことを言ってないで、共に炉の増産に尽力してくれ。」

 顔を顰めて嗜めるオベロンにしかし、ソーマはため息をついてこう言った。

「王よ、あなたがそんなに志が低い事でどうするのです?数を揃えるべきだというのは同意しますし、もちろん炉の増産には喜んで協力させてもらいます。

 しかし、陛下? 個の性能を強化するだけではありません。筐体の生産性を上げるためにも研究は必要ですよ。より量産に向き、性能が高められるかもしれない素材や技術のヒントが、この世界のいったいどこに眠っているのかわからないのです。それを調べるためにも幻獣騎士ください。」

 これ以上の説得は無駄のようだ。8歳の子供に世の理を説いても実感として湧きはすまい。

 協力については色いい返事がもらえたのだ。これ以上ないではないかと思って、とりあえず約束の機体は提供することを決めた。

 数ヵ月後に完成する予定の機体を宛がうことを言い渡そうとしたとき、更にソーマは続ける。

「ああ、そうだ。いっそのこと私が作った魔力転換炉を組み込んだ機体をください。ついでですから、製造工程も見せて欲しいですね。」

 いい事思いついたと言わんばかりのあまりにも軽く放たれた言葉に、王は眩暈がする思いがした。

「簡単に言うがねぇ?魔力転換炉に使われている“生命の詩(ライフ・ソング)”はあまりにも長大な魔法術式(スクリプト)だ。私は父母にこれを教えられて、完全に習得してお墨付きをもらうのに5年を要したんだよ?」

 たかが、数ヶ月程度で覚えられると思っているのだろうか?この子供は?

 王はやや苛立ちを覚えながら、物の道理を知らない子供に言い聞かせる。

「そうなのですか?まあ、あまりにも長大な時間がかかるようなら、陛下に作って下賜していただきますが、それはそれとして、自作動力炉を搭載した機体に乗るというのはやってみたく思います。

 とりあえずやるだけやらせてください。」

 もうこれは何を言っても無駄だろう。挑戦して挫折するのを待つしかない。そう思って王はその日は彼を帰すことにした。

「いや、私はやるだけやらせてくださいっていったんですよ?それなのにどうしてそんな酷いことをおっしゃるんです?」

 彼はソーマの言っている意味が解らなかった。機体の譲渡については了承したではないか。

「生命の詩ですよ!教えてくれるのではなかったんです!?」

「待ってくれ、もしや今これからやるつもりなのかね?」

 当たり前ではないかと言う顔をされた。

「そうはいっても、教材の準備がまだ整ってないんだ。また後日にしてくれ」

 そのとき、王が見たソーマの瞳はこう語っていた「は?それぐらい準備して置けよ 愚図が」と。背筋が凍る。

「まあ、いいです。そういうことならまた後日にお願いする事にします。本日はどうもありがとうございました。」 

 言葉こそ丁寧なものだったが、その声音は不満によって低く濁っている。

 会釈して、帰路に着く彼の背中を見て王は思った。「自分はとんでもない人物を共犯者にしてしまったのでは?」と。

 

 

 

 ソーマは城の地下にて、王が公務の合間を縫って“生命の詩”の魔法術式を紙に記したそれとにらめっこしていた。

 あの取引から3ヶ月が経過している。当初、勢い込んで生命の詩について学習しようと机にかじりつき、その構文を覚えようとしたのだが、ソーマは苦戦していた。

「話には聞いていたが、長い・・・・・・」

 たしかに途轍もない長さだ。構文が記された紙で、用意された勉強部屋が埋まってしまっている。よほどの記憶力と熱意がない限り、こんなものはそう簡単には丸暗記できない。

 もし、これを数ヶ月程度で暗記しようと思えば、熱意と狂気だけではない。もっと特殊な才能と経験が必要であろう。そう思える内容であった。

「私も遊びたい盛りの子供の頃に、父母に構文の書き取り練習をさせられて苦労したよ。いやぁ、実に懐かしいなぁ」

 そう笑う彼の姿に以前の狂気は見えず、純粋に昔を懐かしみ、思い出に浸っているようだった。ソーマはそんな王の様子には頓着せず、生命の詩に釘付けだが。

(こんな魔法術式を丸暗記するのは確かにすぐには無理だよなぁ・・・・・・まてよ?この構文・・・・・・なんだか同じ内容が繰り返されてるような?)

 膨大な情報の波の中にある程度の規則性をもって繰り返されているその構文が妙に気になって、ソーマは王に質問する。

「陛下?この部分、なんだか同じ内容を繰り返してないですか?」

「うん?ああ、拡大術式(アンプリファ)のことかい?これは大気中を漂うエーテルをその前の構文で励起して魔力に変えた後、それを増幅する役割を果たす構文だよ。」

 彼の話ではこの構文と使われている触媒結晶の品質が、魔力転換炉の生み出す魔力量を決定する要因なのだそうだ。

 それを聞いたソーマの脳裏で“あるアイディア”が結実した。うまくすれば、たいへん希少な素材である精霊銀(ミスリル)の使用量を減らせるかもしれないアイディアがだ。

「・・・・・・陛下。仮にですよ?この拡大術式のみを生命の詩の中から抜き出して、鋳込むとしたらどれぐらいの精霊銀の質量ですみますか?」

「おかしな事聞くねぇ・・・・・・そうだねぇ、仮にそんなものを作ったとしたら、今の魔力転換炉の1/3ぐらいの量になるんじゃないかなぁ?

 だが、そんなものを作ってどうするんだい?そもそも大気中のエーテルを励起して魔力を作り出さなければ、増幅なんて意味がないぞ?」

 そこでソーマは提案した。生物がもともと持っている魔力をこの魔法術式で増幅することは出来ないだろうか?と。 

 エーテルの励起に司る部分を省略し、拡大術式のみを刻んだ精霊銀製装置。彼はそんなものを作ろうと考えているのだ。

「これなら、比較的単調な構文の繰り返しで済みます。鋳込む術式の規模も少なく済むので、精霊銀の使用量を抑えられるでしょう?」

 工程数の省略に繋がるから量産性もあげられるんじゃないですか?などと、朗らかな顔で告げられた提案に王は愕然とした気分を味わった。

 生物の元々持っている能力の拡張。幻獣騎士も幻晶騎士も元をただせばこれと同じ発想の元で開発されたものだ。

 そんな極めて単純明快で子供にも考え付きそうなアイディアをどうして自分は考え付かなかったのだ?

 アールヴの優れた魔法能力と知性に対する自負がいつしか傲慢へと変わり、その視野と発想力を狭めていたと言うのだろうか?

 茫然自失していた彼だったが、この方式の問題点にも気づく。

「生物の生み出す魔力量には個体差があるぞ?それだけじゃない。体調や気分次第でも大分ブレがあるはずだ。この欠点は運用上問題になりはしないか?」

「それは問題ですね。しかし、精霊銀の量を節約して量産性を高められる事を考えれば、優先すべきはどちらでしょう?」

 ・・・・・・たしかに背に腹は変えられない。現場に多少の負担をかけることになるかもしれないが、数を増やせるなら運用を工夫することで何とかなる問題な気もする。

「まだあるぞ。君達夢魔族(インキュバス)ならともかく、他の生物の魔力を増幅しても、その生物固有のそれと化してしまっていて制御することなどできはしないだろう。これをどうするつもりだ?」

 しかし、これまたあっさり解決策を提示されてしまった。

「俺以外の人は自分自身の魔力を増幅してしまえばいいんではないですか?つまり、騎操士(ナイト・ランナー)本人が魔力転換炉も兼任するというわけです」

 操縦者自身が動力炉になるという驚天動地の発想にオベロンは悲鳴にも似た唸り声を上げてしまった。

「そうと、決まれば、すぐに実験して確かめて見なければならないですよね?試作実験用魔力転換炉、いや、これはもう魔力転換炉とは言わないかな。

 そうですねぇ。魔力増幅器(マナ・アンプリファー)とでも呼びましょうか。これの設計をしましょう。俺だけでは設計は難しそうだから、王も手伝っていただけますね?」

 彼の腕を強く抱いて逃がさないソーマの目はこう語っていた。「放して欲しかったら俺に協力しろ。OK?」と。 

 以前地下で抱いた思いは確信に変わっていた。更にこう思った。「私はこの怪物に捕らわれてしまった。もう逃げられない」と。

 

 

 

 さらに数ヵ月後、ソーマはソリフガエの邸宅で自分の作り出した魔力増幅器“蜘蛛ノ書架(スパイダーシェルフ)”を組み立てていた。

 精霊銀製のフレームによって構成された容器(ケージ)とでも言うべきもので、それらはこの装置の中心に固定されている動物へと、神経線維を伸ばしている。

 ロシナンテ。かつてソーマに動物兵器として改造された彼の愛馬は今、機体の動力炉に改造されようとしていた。ここだけ聞くと酷い話である。

 蜘蛛ノ書架はロシナンテの魔力をソーマが吸い出した後、この装置を支えるフレームに使われている精霊銀に鋳込まれた拡大術式にしたがって魔力を増幅させる。

 拡大術式の使用には以前ソーマが討伐した巣喰蜘蛛(フォートレス・イーター)の体内にあった触媒結晶がフレームにはめ込まれて使われている。

 これにより、だいたい現在量産されている魔力転換炉1~3個分程度の出力が出せる予定だ(出力にブレがあるのはロシナンテの体調やテンション次第で変わってしまうからだ)

 ロシナンテの魔力生産能はまだ成長しているので、もしかすると今後も出力上限は伸びていくことになるかもしれない。本当にとんでもない動物兵器である。さすがは未確認生物(UMA)だ。

 ちなみにこれは操縦席も兼任している。ロシナンテの背中に乗って彼を椅子代わりにしながらその体にマウントされた形で取り付けられた鐙や操縦桿で操作する形式だ。

 愛馬と一緒に乗れるロボなんてステキじゃない♪などとソーマはご機嫌だが、この仕様を聞いた王は盛大にズッコケていた。

「私の愛馬は凶暴です・・・・・・なんてね♪」

 某作品のソロモン72柱の悪魔の名を冠した機体に乗ったパイロットの名台詞を口にしてほくそ笑む主の姿を、「また始まったよ、ご主人の悪い癖が」 とでも言いたげな顔でロシナンテは見ている。時々この少年はいきなり周りのものが解らないような発言をして笑い始めることがあって困りものだ。

「さて、この装置も大分仕上がったことだし、組みあがった内部骨格を見に行くかな」

 そういって、ハーネスやフレームによって固定されていたロシナンテを開放してやると、そのまま跨って王城に向かって走りだして行った。

 今は昼だがもはや、駄馬の皮を脱ぎ捨てたロシナンテは風となって街を駆けていく。ソーマは今が楽しくて仕方がなさそうだった。

 

 

 

 工場にて借り受けたスペースにそれは鎮座していた。

 それはくみ上げ途中の幻獣騎士の内部骨格だった。胸郭部分が従来機「アラクネイド」に比べてやや肥大化しているその筐体は、ソーマ専用機となる予定の機体である。

 胸郭が大きめに作ってあるのは蜘蛛ノ書架とロシナンテを格納するスペースを確保するためだ。

「胸郭以外はアラクネイドと同じなんだけどね」

 そうこぼすソーマは不満そうだが、こればかりは仕方ないだろう。フレームの構成は長い研鑽の末に最適化されていて、変に弄っても効率が悪くなるだろう。

 これに取り付ける予定の筋蚕の方に至っては家畜昆虫だ。品種改良など彼の専門外だ。

 新しいアクチュエーターでも発明しない限り、これらの要素の改良は不可能だろう。そして、現時点でそういったアイディアなどない。

 蜘蛛ノ書架とロシナンテのおかげで出力アップそのものは出来たわけだし、今は満足するべきだ。そのはずなのだが・・・・・・

(なんだろうなぁ?この違和感は?何か忘れてしまっている様な気が・・・・・・)

 しばらく唸っていると、後ろから声をかけてきた人物がいた。

「お~、桃姫。今日も機体を見て唸ってるのか?お前さんも好きだねぇ」

「・・・・・・主任、その呼び方止めて。ロシナンテに蹴られたい?」

「お~、怖い。そんなに怒るなよ。お前だって、俺のことは主任とか勝手にあだ名つけて呼んでるじゃないか」

 誰が毎回大王に攫われて配管工に救われる姫だというのだろうか?失礼にも程があると憤慨するソーマをニヤニヤしたしまらない顔で茶化す彼はダンクル・チャトグター。この工場で鍛冶師をしているドワーフ族の青年鍛冶師だ。

 ダンクルは巣喰蜘蛛討伐の英雄が報賞品として幻獣騎士を欲し、王が彼に下賜する予定の幻獣騎士がこの工場で製造されると聞いたとき、そんなとんでもないことを成し遂げて王に要求するやつの顔をぜひ拝んでやろうと思った。

 そしてその人物が目の前に現れたとき、どこの貴族令嬢なんだ?と思ったのだが、少年だと聞いて更に驚いた。ストロベリーブロンドの髪色を持ったお姫様のような少年を彼はいつしか「桃姫」と呼ぶようになった。

「主任は主任だよ。顔がそんな感じだ」「お前は時々意味のわかんないこと言うなぁ」

 ダンクルの顔を見たとき、ソーマは思わず「主任だぁぁ!?」と叫んでしまって、他の鍛冶師から怪訝な顔をされたが、今ではそれらの人間も面白がってそう呼ぶようになってしまった。

「俺、主任でもなんでもないんだぜ?何?熟練工の風格とかがにじみ出てるような感じに見える?」

「いや、主にその顎が・・・・・・」「顎のことは言うなよぉぉ!?」

 ダンクルは顎が大きい。そりゃあもう、ソーマが前世のゲームで「主任」と呼んでいたモンスターを思い浮かべるのが無理もないぐらいに。

「だって、その顎を武器に地面をダン!ダン!と・・・・・・」

 彼をからかう為に口にした言葉だったが、ソーマはこのとき 今まで抱いていた違和感の正体にたどり着いた。そう“武器”だ。

「あのなぁ、お前だってすごい失礼じゃないか!?気にしてるんだぞこちとら!」

「ねぇ、主任」

 怒っているダンクルの心情はまったく彼には届いておらず、ソーマは自分の疑問を鍛冶師である彼に投げかけた。

「どうして、幻獣騎士は武器を持ってないんだろう?」

 ソーマは尋ねずにいられなかった。武器を持たないロボットというのも嫌いではないが、武器を使って戦った方が人型である利点は活かしやすいと思われたのだ。

 現行幻獣騎士の武器。それは強化魔法をかけた爪だ。それだけなのだ。他の武器がない。これでは戦術の幅も広がらないだろう。

「う~ん、そうは言ってもさ。剣は金属がなければ作れないし・・・・・・幻獣騎士の補強に使う以上の素材は・・・・・・なぁ?」

 ここでも巨人に資源を奪われている弊害が出てきていると言うことだ。いつか本格的に何とかしなくては。

紋章術式(エンブレム・グラフ)、あれを用意すれば、魔法を武器に出来ないのかなぁ?」

 魔法術式を直接外部の魔力導体に刻み込んで使う。数ヶ月前にこの街に衝突しようとしていた巣を受け止めた技術だ。あの後解体されてしまったが。

「大昔の幻晶騎士はそういう武器を使ってたらしいな。魔導兵装(シルエット・アームズ)って言ってたらしいんだけど、結構な量の銀が必要だったらしいぜ?量産型幻獣騎士全機に配備するのは無理じゃねぇかなぁ?お前の機体だけに着けるにしても高くつくと思うぜ?」

 昔は神経線維には銀線神経(シルバーナーブ)という銀製の細線が使われていたそうだが、それも装飾用途として、巨人が持っていってしまうそうだ。王が腹に据えかねるのも無理からぬことだ、いつか自分もやつらにきついお灸を据えてやらねばなるまいとソーマも憤慨した。

「うーん、他に作れそうな素材はないのかな?」

「板に出来る魔力導体ならなんでもいいらしいんだが、ほとんどが金属素材なんだよなぁ。そういうものって」

 八方塞りかと思ったときだった。ソーマは筋蚕の分泌する糸が魔力を通す素材であり神経線維として使われていることを思い出した。

「これに紋章術式を刻み込む・・・・・・それは無理だが、これを布状に加工すればいいんじゃないかな?それに紋章術式を記述して魔力を通せば、絹で出来た魔導兵装になりそうな気がする」

 このアイディアにダンクルはあきれ返った。

「お前自分が何言ってるか解ってるか?布を武器にして戦うだなんて・・・・・・」

 だが、すばやくソーマは補足説明をする。

「いや、布をそのまま兵装にするつもりはないよ?実際には魔獣の骨にでも巻きつけて、その先端に触媒結晶を取り付けて、後はそれらを外装で覆えばいいさ。」

 彼は簡単な模型を作ってダンクルに説明しはじめた。身振り手振りで説明するソーマの姿に周りの鍛冶師も興味を惹かれて集まってきている。

 そして、ソーマの語りだす新しい幻獣騎士の姿に驚愕しつつ、それが実際に形となったとき、どのような力を発揮するかを想像し始めたのだ。

 おそらくこれは新しい世代の幻獣騎士の雛形となるだろう。それを作らされることになるこの鍛冶師達ははたして幸運なのか、不運なのか・・・・・・

「うーん、現段階では手持ち武器として使うのは難しそうだね。神経繊維で魔力増幅器に繋いで内蔵火器にするしかないか?主任はどう思う?」

「・・・・・・お前、思ってたよりすごいヤツなんだな」

 その言葉と共に吐かれたダンクルの嘆息はどこまでも深かった。

 

 

 

「うーん、量産機を頂くよりも倍近い時間がかかっちゃいましたねぇ。でも楽しかったですよ俺は」

 完成した自身の専用機を前に9歳を迎えたソーマは実に満足げに呟く。

「・・・・・・これが君の幻獣騎士だというのかい?」

 専用機完成の報を受けて、様子を見に来た王はそれを見て唖然としていた。

「それ以外にいったい何に見えるんですか?王よ」

 そう口にする少年が作った機体。それはもはや当初の予定で作られるはずだったアラクネイドタイプの面影などどこにも見られなかった。

 アラクネイドタイプは全体的なシルエットが猫背姿勢で腕も多関節で長いものだったが、これはかなり人型に近いものになっている。あれから結局機体の内部骨格を根本的に作り変えたらしい。

 腕や脚も相当太く作られている。聞けば、パワーが欲しかったから、筋肉量を増やしたそうだ。精霊銀が節約できてるから、筋肉量増やすぐらいいいだろう?などと言われてしまった。もっと色々なものが増えている気がするが。

 胸郭が大きいのは話には聞いていたからわかるのだが。あの腹部に埋め込まれたものはなんだろう?触媒結晶に見えるが・・・・・・

「あれですか?魔導兵装ですよ。腹部に内蔵してるんです」

 紋章述式をどうやって刻み込んだと言うんだろうかと思ってると、飛んできた言葉は“布状に編んで作った筋蚕の糸に記述したものを魔獣の骨に巻きつけた”などという斜め上のものだった。

「格闘戦は従来どおり腕でやりますが、今回腹部に増やした格納スペースに収めた魔導兵装で法撃戦が展開できるようになりました。最初は魔導兵装を換装することで、いろいろな魔法を撃てる様にするつもりだったんですが、糸が熱や電気に弱いので風の基礎系統に属する魔法しか使えませんのでね。もう、いっそ固定武器として一体化させてしまったんです。」

 近接戦を展開するときは、装甲が閉じて結晶を守る仕組みになっているそうだ。 これが齎す戦術の幅の増加。それを思って王は震える。しかし、まだ続きがあった。どうやら頭部にも同様の機構が装備されているらしい。こちらはやや出力が低いようで主に牽制法撃用途らしいが、眼球水晶の視線がそのまま射線軸となるため狙いを付けやすいそうだ。

 もう色々といっぱいいっぱいである。

「これはきっと、今後作られる幻獣騎士の雛形になるはずです。まだまだ試したい改造案がいっぱいあるし、おもしろくなってきたぞ~!」

 疲れた。城に帰って昼寝をしたい。何かの夢だと思いたい。そんな気持ちでいっぱいな王であったそうな。

 

 後日、王はソーマが自身の機体に「カマドウマ」と名づけたと聞かされた。意味は解らなかったが、きっと碌な事じゃないにちがいない。




・・・・・・オベロンのキャラが前回とも原作とも変わりすぎだろ・・・・・・どうしてこうなったし
書き終わったらこうなってたんだ。すまない。
でもきっと、エル君が諸氏族連合じゃなくてオベロンに協力する流れになっていたなら、こういう展開になってたかもしれないよね?おかしくはない・・・・・・はず
あと、オベロンの前でのソーマの一人称が俺に変わってるのは猫を被るのを止めただけですw

アザトースさんが「ロシナンテにも機体を」とか言うからいっそ一緒に乗せてみることにしましたw貴重なアイディアをどうもありがとう!
エル君がサブアームで武器を構えるバックウェポンを作ってたから、こっちは腹部からゲッ○ービームよろしく風魔法をぶっ放すよ!やったね!
あと、FCSのプログラム作るのは難しかったみたいなので、頭部武器は視線が射線軸になるようにして補っています。これまた○ッタービームみたいですねw
どうやら私はゲッ○ーに魅入られてしまったようです。当初のロボのイメージはもう少し大人しめなはずだったんだがなぁ。ほんとどうしてこうなった?
全体的に戦闘スタイルがダイナミック系スーパーロボットになってます テンションで出力が上昇するとかいう熱血仕様だしw(ただし、ロシナンテのそれだけど)

スクリプトの記憶力に関してはソーマはエル君には劣るのです
なにせエル君は前世がプログラマーですからね。(しかも超一流)プログラムに対する習熟度と記憶力に関してはどうしても彼に軍配が上がるのです。
エル君に追いつくとしたら他の部分での工夫が必要なんですね
出力がやたらと強力になってますが、主にロシナンテのせいです。ソーマ自身の魔力は未だにファイヤートーチ1発でカラッ欠になるんですからw

生命の詩についてオベロンが覚えるのに5年かかったって言ってますが、いくら子供がスポンジのごとく物覚えがいいからといっても
遊びたい盛りのアールヴの子供がいやいや覚えるのと、(頭のおかしい)ガチのプログラマーが知識を貪るのとじゃ
効率が段違いなのは当たり前だと思いますw ソーマは丸暗記を諦めて、省略することにしましたが。

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