Magical Girls Story   作:orzタケシ

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色々あって遅れました本当にすみません。
文章が迷子だったりしますが、許してください。
次は多分恐らくきっと来週くらいです。


第12話 I will be flyikg (後編)

「ギャアアアアア!!!!!」

最強の魔法少女ブラック・リベル。

つい最近この地域に出現し。多数の周辺被害を起こしていると共に数多の悪魔を撃滅している彼女(いや、彼というべきか?)は今、異常な速度で大空を飛んでいた。いや、飛ばされていた。

「ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!ぶつかるぅ!!」

最初よりも随分距離があったからという単純な理由でさっきよりも少しだけ魔力量を多くして爆発させた。それがこの有様だ。

「え!?ちょっと!まっ…!」

悪魔が驚いた声を上げて制止を呼びかけるがもう遅い。

「あっ!ちょっ!えっと!取り敢えずアタック!」

「「ゴフッ!」」

無理矢理入れた縦回転からの背中でのタックル…いや、それはただの衝突事故だった。

その勢いはあまりの衝撃で自分までダメージを被る。さらに。

「ウワッ!」

「腰がっ!」

回転をつけたことにより背中だけでなく尻や脚が顔に当たる。それでもなお速度は落ちず、そのまま錐揉みで落下していった。

「くそっ!あぁ!もう離れろぉ!」

「うるさい!出来たらやってるから!羽、邪魔!」

「私の綺麗な羽を邪魔ですって!?あんたのメイスが邪魔なんでしょ!?」

シトリーの羽にメイスが引っかかることで2人とも動けない状態になっていた。さらに攻撃仕様にも両者共に近すぎて逆に出来ない。

「ヤバイ落ちるって!」

「いたっ!羽をむしらないでよ!」

その間にも更に落ちていく。

「落ちるぅ!て、あっ!杖消せるの忘れてた!」

『ボン』という音を立て杖を消す。

「よし!離れろ!」

「うわっ!」

羽の拘束が解かれるや否や待ってましたと言わんばかりに悪魔にに押し出され、シトリーが飛び去る。いやただ空中で静止しているだけだ。それはつまり。

「おちるぅ!杖召喚(ステッキ)!」

流石に地上300メートルから落ちたらこの身体でもどうなるかわからない。(100は余裕だった。)

「アルモア!慣れたでしょ!行くよ!」

大した火力はいらない。最初より格段に少ない魔力で。

「あぁ!お前も加減覚えろよ!」

メイスの槌が回転して魔力を圧縮し爆発弾に変換する。

「 行くぞ!」

銃口が開くもういつでも撃てる段階だ。

「うん!こっちも準備できた!」

そうして槌部が展開。

「「発破!」」

一直線に、矢のように、それでいて自分が対応できる速度で魔法少女ブラック・リベルとは飛翔した。

 

 

 

 

そこからはお互いの飛行性能による激しい空中戦が始まる。

 

(なんて速度!しかも撃ってくる魔法弾の威力も命中したら多分即死!爆発に巻き込まれてもその時点で終わる!)

自分よりも速い速度、自分よりも高い火力。しかし。

(逆に早過ぎてうまく曲がりきれてない、飛行戦に慣れてないんだ!それに、この魔法弾も連射はできなさそう!なら!)

片や爆発による異常な速度と火力を誇る魔法少女、ブラック・リベル。

 

 

(爆撃弾じゃおせぇ!何発か撃ってもあの旋回性能で軽く避けられる!それになんて連射性してやがる!)

自分よりもはるかに小回りのある旋回性能、そして魔法の弾丸の連射。更には自身の魔力残量の問題しかし。

(火力と速度は俺が上!飛行戦もあと少しで完全にモノに出来る!だったら!!)

片や空を縦横無尽に駆り魔法弾の連射により翻弄する悪魔。第12柱シトリー。

 

 

(慣れさせる前に速攻でカタをつける!)

(魔力が許すギリギリまで耐えて最後にブチかます!)

 

両者の狙いはまさに正反対のそれ。

 

(短期決戦よ!!)

(持久戦だ!!)

 

1人と1体の激しい航空戦が始まった。

 

 

 

幾たびも、魔法弾が飛び交う中。

先にアクションを起こしたのはやはりシトリーだった。

連射性にモノを言わせた弾幕と虚をつくために加速して近づく本体での近接戦闘。

「くそっ!予想してたけど辛いなぁもう!」

ブラック・リベル、黎徒には武術による圧倒的近接戦闘能力がある。さらにはシトリーの魔法弾を緊急回避でだが躱す程度の飛行スキルは手に入れた。しかしその両方となると、いくら即応性の高いブラック・リベルでも対応はかなり困難になる。

「まだまだこんなもんじゃないよ!」

 

更にシトリーは自分の魔力をこの短期決戦にかけるために弾数を増やし速度を上げる。

 

「ッ!!!よけきれぇ!!」

強い爆発では動作が遅い、それ故に体ごと90度転回して全力回避、しかし。

「うわぁぁぁ!」

飛んでくる弾の数は序盤の約倍程度、避けられるはずもない。

「クッソ!いったいなぁ!」

爆炎の後でてきたブラック・リベルの体はボロボロになっていた。

 

それでも尚シトリーの追撃の手は止まらない。

(よし!今のはだいぶ効いてる!あと少し!あと少しで!終わらせれる!勝てる!)

するとブラック・リベルの方から長い深呼吸のような音の後「入った」という小さな呟きが聞こえた気がした。

 

 

 

 

身体中が痛いしかし、それのおかげで頭の中はクールになっていた。

「 スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………入った。」

受けたダメージは大きい、今まで魔法少女をやってきてここまで追い詰められたのはおそらく今が初だろう。

しかし、その中でブラック・リベルは…仙藤黎徒は勝利を確信していた。

周り全てがクリーンに見える。今、周りにいる全ての物が遅く感じる。頭がスッとして、自分の思った事全てが上手くいくそんな感覚、『ゾーン』だ。

 

『ゾーン』とは何も特別な現象ではない人間は生命の危機を感じる程の事象が起こるとき。人の脳のリミッターが解除され、その危機に対して全力で対処する。その現象のことを総称して『ゾーン』と呼ぶ。更にこの状態は命の危険だけではないスポーツやゲーム、更には勉学にまで起こり得る現象である。

 

 

そして、黎徒はそれを自覚出来る程の超集中状態。

一度だけ体感したレベル、黎徒が爺から初めて一本とった時と同じ状態。

 

 

 

迫り来る魔法弾の嵐、先程までのブラック・リベルであれば回避はしきれなかった。だが今であれば…

 

 

 

既に回避経路はイメージした。

連続で爆発させる、つまり連続で魔力を送るために魔力を指に集中させる。そうして黎徒はシトリーめがけて弾幕の中を突っ切った!

 

 

 

 

シトリーは信じられない光景を目の当たりしていた。

確実に勝つための全力を注いだ魔力弾の嵐、その中をさっきまで飛行すらおぼつかなかった。あの魔法少女が、あの速度のままで、さらに加速して、全弾躱しながら突っ切ってきたのだ。

「う、うそでしょ?」

よく見るとその躱し方も独特だ。爆発による飛行という特性上滑らかには移動できない。だからだろう、早過ぎて見にくいが先程から無理矢理メイスの向きを変えて躱している。

 

そうして10、20と爆発音が鳴り響いた後、魔法少女は弾幕の嵐を抜けていた。

 

 

 

心の中でジワリとだが確実に何かが折れる音がする。

それは自身の中で敗北を告げる音だった。

 

そこからは早かった。シトリーの中で闘争から逃走に切り替わる。

 

「やってられるかっての!!!」

残っているありったけの魔力を敗走に使う。

 

見通しが甘かったのか?いや、そんなはずはない。無いはずなのに………

 

爆発の音が止まる。振り切ったかと思ったが魔法少女の射撃が何かを思い出し転回全力回避。

 

「キャァァァァァァァァァァァ!!!!」

直撃は避けたが爆発に巻き込まれ背中で受けた。

それにより飛行のための翼が使い物にならなくなるダメージを受けシトリーは落下していった。

 

 

 

悪魔が落ちていく、あの様子だと直撃は避けたようだ。

「それじゃトドメと行きますか。」

メイス内部を爆発させ急降下、使う技は残り魔力を考えて叩きつけの爆 撃 槌 撃(エクプロドインパクト)だ。

「くッ!よけっ……」

振り上げ頭を狙って全力で振り下ろす。

「キャッ!」

短い叫びと共に悪魔が吹き飛ぶ。すんでのところで直撃だけは免れたようだが既に心も体もボロボロという様子だった。

「よく避けれたわね、だけどもうハズさない。」

ゆっくりと確実に歩みを進める。

すると悪魔ゴソゴソと何やら動き出す。

悪魔の目の前に着くと片膝をついて、頭を垂れる形をとっていた。

魔力を込めて槌を回転、スパイクを開き爆 撃 槌(エクプロドインパクト)の準備を完了させメイスをゆっくりと持ち上げた。

 

 

 

20年ほど前、シトリーの下には60の軍があった。そう、あった。過去形だ。60の軍も今や残り3つ。57の軍は使徒(アポストロ)との戦争の時にほぼ全員死んだ。悪魔という種族そのものが自分自身を含め同族に情なんて湧かない。

しかしそれは昔の話20年前の戦争でシトリーの軍につく悪魔の、その死に様を見た時、あの時から死がどうしようもなく怖くなってしまっていた。

これはシトリーだけでは無い。戦争を経験し、生き残った悪魔のほとんどがどこかに死への恐怖を抱え、生きるようになった。なってしまった。それほど凄惨な死に様だった。

 

そして今の状況、シトリーは考える。

自身が死なぬためにはどうするべきか。

もし、今ここで逃れることが出来たとしてあの魔王は、今の魔王は許してくれるのか?おそらくはノーだ今の魔王は無慈悲だ。おそらく殺される、またはそれに近い何かをされる。

魔法少女が近づいてくる。

 

では解決策1、ブラック・リバルを倒して魔界に帰る。

不可能だ。

解決策2、ブラック・リベルから全力で逃げる。

無理だ。そんな体力も魔力もない疲弊しきっている。

解決策3、援軍を待つ。

却下、希望は持てない。

ならば解決策4、魔法少女の仲間になる…

相手のメリットがあるのか?

シトリーはその策で行くことを決め片膝をついて頭を垂れる服従のポーズをとりながら脳をフル回転させる。

 

 

「なんのつもり?」

メイスを頭上に上げて魔法少女(死神)が問う。

 

やはり自身が生きるための方法は他に思い浮かばない。

自分の持つ軍は何があっても大丈夫なように全てバエルに預けている。

魔法少女(死神)ブラック・リベルの問いから数秒後、顔を上げてシトリーの口が開かれる。

 

「私の負け、完敗よ、貴方の仲間として使い魔になるから許してくれたりしない?」

 

「は?」

黎徒にとってこの言葉を聞くことになるのは予想外だった。今まで出てきた悪魔はそんな暇を与えずに爆殺してきたからなのだろうか?

他の魔法少女は悪魔を使い魔として持っているのだろうか?

テレビやネットではそんな話は聞かない。

茜達魔法少女(本物)も持っているようには見えない。それにさっきまで敵だった奴を信用できるか?というともちろん否、断じて否だ。

「論外、ここで死になさい。」

両手でつかを握り振り下ろそうとしたその時、後ろから声が掛かった。

 

「ちょっと待って!」

茜だった。

「その悪魔の強さは本物です。仲間にできたらかなりゆうに働きますよ!」

身内に敬語を使われるのはどうもむず痒いと、変な気持ちになっていると。

黎徒まずい!飛行で魔力を使い過ぎた!変身があと少しで解けそうだ!

という黎徒にしか聞こえないような小さな声。

 

 

 

「え!?マジで!?」

ブラック・リベルが驚いた様子で手首のシュシュに話しかけている、恐らく彼女の妖精だろう。

「あの…あ、こいつは私がなんとかするから!じゃね!」

慌てた様子でそう呟き悪魔の手を引いて駆け抜けていった。

「またちゃんと話せなかった…」

駆けていくブラック・リベルの背中を見て呟く。

「まぁどうせまた合うでしょ?その時に話せばいいじゃない。」

アクアマリンに変身している蒼華がフォローをしてくれる。

「はぁ、取り敢えず今日は解散、じゃあまたね。」

アメシスト、紫原 菫先輩のこの言葉で全員解散することとなった。

「あ…そういえば眞銀さん置いて此処に来ちゃってた。」

「それは…ドンマイ」

蒼華の慰めが逆にこれから茜を待っているであろう眞銀の説教の光景を思い浮かばせ落胆するのであった。

 

 

 

黒い魔法少女に引っ張られ、普段でさえ人通りのない路地裏、シトリーは正座をさせられていた。

「取り敢えず此処なら大丈夫かな…で、あんた仲間になる動機は?」

魔法少女はどうやら私の受け入れを迷っているようだった。であるならば此処は正直に。

「私、死ぬの怖いの。もし此処で逃げられたとしても「逃すわけないじゃない」…まぁ例えなんだけど、地獄に帰ってもどうせ私魔王に殺されるだろうし、ならいっそのこと…ね?」

「でもさ。もし、仲間になったとして、あんたが裏切らない保証は?」

(確かにもし私が人間ならやるかもねでも。)

「私の名はソロモン71柱が1、第12柱シトリー悪魔であるという存在にかけて契約は必ず守るわ」

悪魔にとって、人間との契約は命と同じレベルで重要なものなのだ。契約の破棄は死よりも重い罰が課せられる。

ブラック・リベルが少し考えた末一つ溜息をついてこちらを向く。

「OK、わかった。じゃあ貴方を使い魔として仲間にするわよ残り魔力もあんまりないしね。」

 

こうしてシトリーは魔法少女ブラック・リベルの、黎徒の使い魔として仲間になったのだった。

 




シトリー (悪魔)
ソロモン71柱第12柱。
猫のような耳と尻尾を持ち、白い美しい翼を持つ悪魔。
戦闘時の格好言わば正装はただ一言、エロい。
20年ほど前にあった戦争で仲間のその死に様を見て傷心。
以降、死に対して恐怖を覚えるようになった。
黎徒の使い魔としてこれからも登場。
ヒョウ柄の猫や金髪ローグの白人美少女に変身可能(悪魔時から耳と尻尾を、とっただけ。)

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