とある世界の選択異譚《ターニング·リンク》   作:タチガワルイ

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遭遇救出のジャッジメント

 __2010.8.10.11:42:56__

 

 「オ、オカリンは!?」

 

 「もう先行っちゃったのです」

 

 もうどこだかも分からない路地裏の一角。

 オカリンは思わぬ速さでどんどん僕らと距離を空けていき、遂には見失ってしまったのだ。

 僕は全身から汗を流しながら路地裏の壁に寄りかかった。

 喘ぐように息をするが、全身は悲鳴をあげている。

 

 「はぁ、はぁ、まゆ氏、ごめんよ····こんな遅い僕でさ」

 

 「気にしなくて良いのです。それに、まゆしぃは、オカリンが来てくれるって信じているのです」

 

 まゆ氏の笑顔が眩しいッス。

 まゆ氏は汗一つかかず、息も切らさずにいつも通りのほほんとして笑っている。

 体力が底なしなのは間違いないらしい。テラヤバす。

 少しでも涼しい息を吸おうと顔をあげた時。

 こちらを目掛けて何かが落ちてきていた。

 

 「!?まゆ氏!」

 

 「ん?」

 

何か落ちてくる!そう思いまゆ氏に空を指差して叫ぶ。まゆ氏は振り返ると同時に身を翻し、落下地点から逃れる。

 だが、遅すぎた。

 何かは突然破裂するように広がり、大きな『ネット』を広げる。

 そう、何かとはネット弾だったのだ。

 

 「な、何ぞ!?」

 

 「ダル君~、これ、網~?」

 

 もがくがネットは絡み付き、ちっとも出られない。

 

 「ギャハハハ!豚とクラゲが網にかかってやんの~!」

 

 そんな軽い台詞と同時に路地裏を塞ぐように前後3人、計6人のチェーンやらピアスやらジャラジャラつけた不良がやってきた。手にはネットランチャーが握られているため、このネット弾は彼らの仕業であることが伺えた。

 

 「ちょ、これなんだお!?」

 

 「いやー、デブヲタを捕まえるだけの簡単なお仕事ですってなぁ。なー班長?」

 

 『班長』と呼ばれた男はそのチャラい人系の男子には一切返事をすること無く、ぬけぬけと言い放つ。

 

 「俺達は君達の保護に来た。君たちに会いたいと言う人がいてね。それで迎えに来たわけだ」

 

 

 くっそー!オカリンの厨二病がやたら的確な件について!

 あそこでオカリンが即座に逃げ出そうとした理由にやっと合点がいったが、逆に何故こんなに彼が的確に動けたのかも疑問に思う。

 だが、デブの僕にはどうする事も出来ない。

 ごめん、オカリン、牧瀬氏……。

 そう内心謝った瞬間だった。

 

 「ぐ、あ!?」

 

 「あがぁ!」

 

 背後で男の悲鳴が2人分。呻き声は更に続く。

 

 「ぐはっ!?」

 

 「な、きさ___あがぁ!」

 

 前方の班長とチャラい人系の男も呻き声を上げて倒れた。

 その直後、自分達の前に『突然』ツインテールの少女が出現した。

 

 「風紀委員(ジャッジメント)ですの!全員、お縄に頂戴いたしますわ!」

 

 ___異能美少女ktkr。

 

 その思考を最期に、僕の意識は真っ黒に塗りつぶされた。


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