とある世界の選択異譚《ターニング·リンク》 作:タチガワルイ
__2010.8.10.11:10:20__
「うっほぉ〜これが学園都市!これが科学の先端!萌え萌えだぉ〜!!」
「こんなに早く帰って来ようとはねぇ」
「わーテレビより大きいのです〜♪」
「………」
『学園都市』、第23学区入出場ゲート。
俺にとっては、まさに未知の連続だった。
直通の公共機関がバスしかなかった為、『学園都市』まではバスで行くことになった。
だがおかしいのだ。『街らしきもの』は見当たらず、代わりにひたすら長大な白亜の壁が、視界の一端を塗りつぶす。
一瞬巨大な刑務所かと思い、
「ダル、あれはなんだ?」
と聞いてみると、ダルはますます不思議な顔で、
「オカリン、あれが『学園都市』だぜ?ホントにどしたん?」
と、言われた。
と言うか、大体地図の規模からしておかしい。ケータイのブラウザで『学園都市』を確認した所、なんと東京の約3分の一を占領、さらに神奈川、埼玉にも跨る広大さを誇るのだ。
なんなんだ。まさか『機関』の本部か!?
なんて思いたくなるほどの出鱈目振りだった。
厳重な警備と、堅牢なゲートに守られた正門を潜り、受付窓口に入場チケットを渡す。それと交換で身分証明IDの着いた名札を渡されて金属探知機のゲートをくぐれば、晴れて『学園都市』へ入場だ。
一言の感想は、こうだ。『別世界』。
まるでここだけ世界線が変動したかのような異空間が広がっていた。
乱立するビルの隙間を縫うように風力発電のプロペラが多数回っている。なのに騒音がしない。
更にドラム缶型のロボットが待ちのアチコチを動き回っている。よく見ると通った後のコンクリートタイルが綺麗になっているため掃除ロボットらしいことが伺える。
あれを持ち帰って新しい未来ガジェットにするか、などと邪な事をついつい考えてしまう。
「オカリン!あれ持ち帰って新しい未来ガジェットにしない!?」
…やはり類は友を呼ぶらしい。
「やっぱり流石学園都市よね。航空機の形も若干違うし、ほら岡部、あれとか」
紅莉栖が興奮気味に指を指す。その先には、なにやらコンコルドを彷彿させる航空機が止まっていた。
………まさか、音速旅客機か?
そんな第23学区を通過し、バスに乗って第7学区へ。 何故第7学区かと言えば、
まゆりが「一番広そうだから行ってみたいのです」と言ったからだ。
ちなみに。俺がオペレーションを発動した直後に阿万音鈴羽が『岡部倫太郎!話は聞かせて貰ったよ!』
と言って飛び込んできた。何故ドアの前で待機しているんだと思ったがツッコミをいれるだけ無駄だと思って黙っていた。
チケットは4枚。
という訳でバイト戦士は『Amadeus』紅莉栖と共にラボで留守番。ブラウン菅工房の店番もあるだろうしな。
余談をするなら、未来ガジェット1~6号をリュックに詰め込んできたこと位か。
バス乗り場に行くと、緑色のバスが数台停まっており、俺たちは一番先頭のバスに乗り込んだ。
「ねぇ岡部」
「俺は岡部ではない。狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だ!………んで、なんだ」
「………それ、ホントにやめて。厨二病すぎて目も当てられない。……ここの学区にある高校に通ってたのよ。菖蒲院女子学園。二週間だけの交換留学で、ね」
隣で窓の外の景色を眺めながら紅梨栖が懐かしそうに話す。だが、今の話には1箇所おかしい所があった。
「ん?お前のその高校、九段下になかったか?」
「え?あぁ、確かに開校当初は九段下よ。でも、何年か前に『学園都市』所属になったのよ。………なんで知ってる?」
「いや、ぐ、偶然だよ。そうだったのか。ははは……」
やはり、世界線は思わぬ方向に変動している。なんとかして戻さなくては。
そう決意したのを待っていたようなタイミングで、無機質なアナウンスがバスの中に響いた。
『ピンポーン第、7学区中央停留所。第、7学区停留所。お降りの際は降車ボタンを押してください』