とある世界の選択異譚《ターニング·リンク》   作:タチガワルイ

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はい!ごめんなさい半年ぶりの再開です!
じわじわやってくのでどうぞ気長によろしくお願いします!


混沌摩擦のアブダクション

 

__2010.8.10.12:17:13__

 

 

 

そこは、緊張の絶頂にあった。誰か一人でも余計な真似をすれば即座に誰かが死ぬ。

 

そんな極限の糸がピンと張り巡らされた死屍累々の路地裏の真ん中で俺は目の前の2人を見つめていた。

 

 

 

「銃を下ろして」

 

 

 

鈴羽が低い声で言いつける。脅しではないという意思表示か、小銃がカチャリと音を立てた。

 

 

 

「……銃を下ろすのは、そっち」

 

対して桐生萌郁は、動じることなく銃口を鈴羽の額にむける。

 

 

 

「脅せる立場だと思ってるのか?」

 

 

 

桐生萌郁は直立、鈴羽はしゃがんでいる状態からして、マウントを取っているのは桐生萌郁の方だ。だが、それでも鈴羽は余裕すら浮かべて言葉を続けた。

 

 

 

「あたしは既にあんたの仲間を5人無力化してる。残ってるのはあんた1人だ。それに、あたしはあんたと違って''本物の闇''ってのを知ってるよ。だから言ってるんだ。『今のうちに、銃を下ろせ』って」

 

 

 

桐生萌郁は僅かに眉を顰めたが、言葉を返さなかった。

 

上空で飛行機のエンジン音が近づき、甲高いエンジン音を振りまいて遠のき、やがて風が、止む。

 

 

 

決着は一瞬で着いた。

 

 

 

音が消えると同時に引き金を引こうと桐生萌郁が指に力を込める前に、鈴羽は引き金を引いていた。

 

弾丸は敢えて外されたが、その銃声は萌郁を怯ませるには十分で。

 

その隙に飛び上がった鈴羽が肩を当てる銃床で萌郁の顎を強かに殴ったのだ。

 

萌郁の軽い体が真後ろに飛び、壁に後頭部を打ち付けてそのままズルズルと沈み込む。

 

鈴羽は、小銃を捨てると、俺の方に向き直った。

 

 

 

「岡部倫太郎、そのリュックに縄とか入ってる?」

 

 

 

「え、え?」

 

 

 

「縄だよ!彼女を拘束しないと。他の雑魚はともかく、彼女は必要なんだよ。だから早く!」

 

 

 

「あ、あぁちょっと待て………」

 

 

 

未来ガジェットをしこたま詰め込んだリュックをガサゴソと漁ると、ふと手触りを感じて引っ張り出した。

 

 

 

「あった。バイト戦士、使えるか?」

 

 

 

手に持ったものー手錠ーを引っ張り出し、バイト戦士に渡す。微妙な顔をしていたが、受け取ってくれた。

 

それを桐生萌郁の腕に掛ける。さて、どうしたものかと思っていると、「彼女は私に任せて」と鈴羽が軽々と萌郁を担いだので、もう何も言わないことにした。

 

「じゃあ、安全な場所に監禁してくるよ。また後で、岡部倫太郎!」と物騒なことを言いながら走り去る鈴羽を見送った。

 

 

 

「……あれ、大丈夫、なの?」

 

 

 

「分からんが……信じるしかあるまい」

 

 

 

呆然と呟く紅莉栖にそう返すのが精一杯だった。

 

インデックスは終始固まっていたが、空気が一旦落ち着くのを見計らうと、口を開いた。

 

 

 

「あ、あのー、そろそろ男達が起きちゃうかも、なんだよ?」

 

 

 

慌てて逃げた。

 

 

 

 

 

 

路地裏から出たとき、ケータイが鳴った。

 

着信はーーまゆり。

 

焦って取り落としそうになりながら、ケータイを繋いだ。

 

 

 

「まゆり、大丈夫だったか!?」

 

 

 

『あ、オカリン!うん〜!大丈夫だよ!ごめんね、連絡遅れて…』

 

 

 

「気にするな、それより怪我はないか?ダルはどうだ!?」

 

 

 

『えっとね、えっとねぇ〜……今ねぇ、ダル君も一緒なんだぁ〜』

 

 

 

「そうか…!なら、どこにいる!?」

 

 

 

『ええっと……じゃっじめんと第117支部?だってー』

 

 

 

「分かった、すぐに向かう。そこから動くな!」

 

 

 

『うん、待ってるよぉ。じゃあ後でね〜』

 

 

 

逸る気持ちを抑えて電話を切り、紅莉栖とインデックスに向き直った。

 

 

 

「岡部、まゆりは無事って?」

 

 

 

「あぁ、無事だ。ダルもいるようだ。両方ともジャッジメント第117支部……というところにいるらしい」

 

 

 

「そう、よかったぁ……」

 

 

 

紅莉栖が肩の力を抜いたのがわかった。

 

 

 

「ねぇねぇ、どうしたの?」

 

 

 

インデックスが無邪気に訪ねてくる。

 

俺は上機嫌に答えた。

 

 

 

「あぁ、友達が、仲間が無事だったのでな。まずはそちらと合流したいが……ジャッジメント117支部、分かるか?」

 

 

 

「それなら大丈夫。そこなら知ってるわ。何度かお世話になった」

 

 

 

紅莉栖が横合いからそう言った。

 

 

 

「よし、ならばそちらを優先するぞ。インデックスも構わんな?」

 

 

 

「うん!むしろ私も連れてって欲しいかも。とうまも今は補習だろうし!」

 

 

 

ようやく方針が決まった俺達は、117支部に向けて歩き出す事にした。

 

………しかし、このシスター、平気でホイホイ着いてきているが、これが拉致だったりしたらどうするのだ?という不安にも駆られてしまった俺なのであった


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