甘くない偽物の恋   作:鼻眼鏡26号

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恋愛って難しいよね。




7話

勉強会より数日後

 

 

「助っ人をやるの?」

 

 

「そうそう宮本さんに誘われて今度の休みに大会出るの。」

 

 

廊下で偶然会った桐崎が、水泳道具を持っていた理由を聞いてみるとどうやら水泳の大会に助っ人として出るらしく今日もこれからプールで練習らしい。

 

 

「大谷くんも暇があったら見にきてね。私の華麗な泳ぎを披露してあげるから。」

 

 

「そうだな。プール道具を持ってないし、観客席から見学させてもらうよ。」

 

 

「うん…それじゃあね!」

 

 

桐崎はそう言って鼻歌交じりのスキップをしながら室内プールへと向かって行く。

俺もプールに最後に入ったのはいつか思い出せないな。

 

 

 

 

2階観客席

 

 

 

 

俺は観客席の階段を上がろうとした瞬間、すでに誰かが居る気配を感じた。

俺は気配を消しながら階段を登り極力音を立てない様に服の擦れる音すら消して登り2階観客席を覗いた。

 

 

そこには鼻血を抑えながら顔を赤くしながら手に持つ双眼鏡でプールを見ている白スーツの外国人男性が居た。

側から見てとんでもない不審者だった。

 

 

そのまま気配を消しながら外国人男性の後ろの椅子に座って肩を叩いた。

 

 

「すみません…どちらさーーー」

 

 

その動きは一瞬だった肩を叩いた手を掴まれそのまま地面に倒され額に銃口を突きつけられていた。

体の震えが止まらなかった。次の瞬間には自分が撃たれている想像までさせられて指一本として動かせなかった。

 

 

「……貴様何処の組の者だ。」

 

 

「…く…組って?なんの話だよ。」

 

 

「しらばっくれるつもりか…私の背後を取るような者は只者じゃない事くらいわかる。」

 

 

「そんな事言われましても…い…一応…1年C組の大谷 優と申します。証拠なら胸ポケットに学生証が入ってますので。」

 

 

「……大谷優?」

 

 

そう呟いて外国人男性は俺を抑えていた手を離し胸ポケットにある学生証を取り出し確認すると

 

 

「どうやら本当のようだな。しかし、気配を消すなど高校生が出来るようなことではない。貴様一体何をしてきた。」

 

 

「料理です。」

 

 

解放された俺は立ち上がりながらも答え背中のゴミを叩いた。

その間も外国人男性は俺の事を警戒して目を離さなかった。

 

 

「…まぁいい、冗談で手の内を晒さないところ、考える頭はあるようだな。」

 

 

「いやだから、料理ですって。」

 

 

「しかし、今後は気配を消して背後に現れない事だな。相手のためにもそして、自分のためにもな。」

 

 

「いや、鼻血出して双眼鏡で覗いていたあんたにだけは言われたくねぇよ。」

 

 

と言うかなぜ俺はこの人に怒られてるのか不思議でならない。

 

 

「ふん…今日のところはここで消えてやる。それと今後は私を見かけても話しかけないようにな。」

 

 

そう言って外国人男性は一瞬で姿を消した。

 

 

「〜〜〜ップハー…緊張した〜マジで死ぬかと思った。」

 

 

俺は緊張から解き放たれて地面に腰をついた。

こんな死と隣り合わせなのは修行旅以来だ。

 

 

「にしてもマジで誰だったんだろうか。外国人って言えば桐崎さんだけど。………って、拳銃って銃刀法違反じゃん!」

 

 

冷静に考えてみると日本で拳銃所持は免許無しでは犯罪である。まったく日本の警察は何をしているのやら。

 

 

その後プールを見てみると桐崎がこちらに気づき思いっきり手を振ったり。その隣で泳いでいる小野寺が楽の手を掴んで泳ぎを練習しているところを見て少し嫉妬したり。集が宮本に殴られ飛んだりと色々すごかった。

 

 

翌日

 

 

この日練習試合で桐崎に観に行くと約束したためしっかりと水着を着用して室内プールに入って行く。

 

 

「おはよう、桐崎さんに楽も」

 

 

プール室内に入ると入り口近くに学校指定の水着を着た楽と桐崎が早速口喧嘩していた。

 

 

「おお!優も来たのか…って何だ!そのでっかい傷!」

 

 

「おはよう…筋肉すごいわね。」

 

 

2人が注目する俺の体には胸筋辺りにある3本の切り傷、そして旅で鍛えた強靭な肉体。

 

 

「ん?筋肉は海外旅してたら勝手について。この傷は雪山の狼にやられてな。いや〜大変だったな〜」

 

 

「本当に昔何してたの。」

 

 

「料理だ。」

 

 

俺の自信満々で答えは2人にとって納得はいかないようだ。

 

 

「じゃあ、俺の知ってる料理じゃねぇな。」

 

 

「そうね。ダーリンのもやしを見ればよくわかるわ。」

 

 

「なんだと!?」

 

 

「なによ!」

 

 

なぜすぐに喧嘩を始めるんだか。

急な大声で周りの視線を集めてしまうし。

 

 

「ほらほら2人とも、周りに迷惑だから喧嘩はやめなさい。それに桐崎さんは、試合でるんだから準備運動しなきゃな。」

 

 

「ほら!優だって準備体操必要だって言ってるだろ!しっかりとやりなさい。」

 

 

「うう…わ…わかったわよ。」

 

 

「俺らも一緒にやるからそう腐らないで。」

 

 

こうして3人で準備体操をしていると今度は小野寺と宮本がやって来た。

 

 

「おはよう、桐崎さん、一条くん、大谷くん。」

 

 

そう言って歩いてくる小野寺は学校指定水着…なんかいいね。

 

 

「お…おはよう小野寺。その…大丈夫か?」

 

 

「うん多分!大丈夫。昨日お風呂でイメージトレーニングしたし。」

 

 

「そうか…とにかく今日は25メートル泳ぎきる事が目標だからな。」

 

 

「うん、ありがとう頑張るね!」

 

 

楽と小野寺の話は昨日の練習があったから俺は話には入らずに蚊帳の外だった。

 

 

「何よこの私との態度の違いは。」

 

 

「なんでだろうね?」

 

 

話に夢中になってる楽には聞こえてないようだが準備体操を続ける桐崎がボソッと呟いて俺はそれに相槌を打つしかなかった。

ここでお互いが意識しているからだよ。とか俺の口からは言いたくなかった。ただでさえ見ていて辛い思いをしているのにこれ以上はなにも考えたくなかった。

 

 

「大谷くんは変人という名の紳士だから大丈夫よね?」

 

 

「その変人というのがなければ素直に大丈夫って言えるんだけどな。」

 

 

「変人っていうのは別に変な意味じゃないわよ。お人好しすぎてそれでいて優しい良い人って事で変人。」

 

 

「変人要素がいまいちわからないけど、あの桐崎さんがそこまで言ってくれるのは嬉しいよ。」

 

 

「あのってどういう意味かしら?」

 

 

「さぁ?…どうでしょうね?」

 

 

桐崎と準備体操をしながら話をしてとても楽しかった。

話している間は胸が締め付けられる辛さはなかった。

 

 

「さて、準備運動も終わったし受付行ってくるね。大谷くん、私の勇姿を見ときなさい。」

 

 

「ああ、期待してるよ。ちゃんと目に焼き付けとくから。」

 

 

そう言って俺は桐崎を見送りプールの端っこに腰を下ろした。

そうしていると隣に宮本がやって来た。

 

 

「桐崎さんと随分仲が良さそうね。」

 

 

宮本の言葉には質問として言っているが、その表情は普通な顔をして疑いの顔と俺は見切った。

 

 

「まぁ、友達として応援はしないとな。」

 

 

宮本はかなり察する能力がすごいためあくまで自然に落ち着いて答えた。

というか普通な顔して疑いの目とかすごいな。ポーカーとか強そうだな。

 

 

「………あなたの顔は本当に読めないわね。率直に聞くわ一条くんと桐崎さんあの2人の関係はどう思うの?」

 

 

やはり疑っていたか。…まぁあの2人の演技で信じ込んでいる奴の方がどうかしてるがな。

 

 

「お似合いのカップルだよな……って言ったら怒る?」

 

 

ゴスッ

 

 

「ーーーーッ!?」

 

 

「大丈夫か?宮本。」

 

 

俺の答えに不満を持って俺の脛を蹴ったのだが蹴った足の方が痛み宮本は足を抱えた。

 

 

「く〜〜なんなのその硬さ。あとなんか知ってるのに教えないその姿勢が腹立つ。」

 

 

「ハァ……なら聞けばば良いじゃん桐崎さんに直接、友達なんだから。」

 

 

「聞ければ苦労しないわよ。」

 

 

「でも、他人からその事情を聞いて首を突っ込むものじゃないよ。やっぱり本人から聞かないと意味はないよ。」

 

 

「………ムカつく。もういいわ今度本人に聞くから。」

 

 

「おう、頑張れよ。」

 

 

そう言って宮本は離れて行き楽の方へと歩いて行った。

俺は一体何をしてるんだから。多分だが宮本も小野寺が楽のことを好きだというのを分かっているからあんな質問をして来たんだろう。……深読みしすぎかな?

 

 

それでも俺の胸は締め付けられるように苦しかった。

 

 

その後、練習試合は滞りなく進みその中で桐崎はとてもいい結果を出しとても嬉しそうにしていた彼女の顔がとても綺麗に思えた。

俺はとても醜く思えた。手に入らないと分かればすぐに移り変えようと思っている自分が醜いと思った。

 

 

 






本当に難しい


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