甘くない偽物の恋   作:鼻眼鏡26号

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短いけど勢いを無くさないようにしなくては




20話

桐崎さんがおばけ役の代役をやる事に多分だが焦っているのは俺だけだろう。

みんなの普段見る桐崎さんは成績優秀で運動神経抜群で顔もいい天は彼女に二物を与えるどころか三物与える完璧美少女だと思われているだろう。

だからこそ、彼女が暗いところを怖がるなんて誰も思いもしないだろう。

 

 

「各リーダー!俺は一旦この場から離れるからみんなは普段通りに行うように見ていてくれ。」

 

 

「?何だ大谷、なんか問題でも発生したか?」

 

 

「急ぎの用が出来ちまった。まぁ、多少なり見逃してくれ。」

 

 

「……おお!そうかそうか!…いいぜ、準備の時には随分と助けられたから今日くらいはしっかり羽を伸ばせよ!」

 

 

「わり…ちょっと行ってくるわ。」

 

 

そう言って俺はインカムを外して無線機と電気の付く懐中電灯を持ちその場から離れる。

桐崎さんのペアは確か集だったはずだから、まずはそちらに向かうとしよう。

本部から出て肝試しの順番待ちをしている所へ足を運ぶと集の姿を探す。

案の定いつものメンバーが集まっていたところに集や楽の姿を発見したためすぐに向かった。

 

 

「集!」

 

 

「優!ちょうど良かった!桐崎さんがいなくなっちゃって…」

 

 

「ああ、その事についてこっちも聞いてる。どうやら体調を崩したおばけ役の子が近くにいた桐崎さんと交代したらしい。」

 

 

「じゃあ場所は分かって?」

 

 

「統括リーダーを舐めるなよ…地図からお化けの配置まで全部記憶してるからな。…だから、そこでソワソワしてる一条楽くんは突っ走らないようにね。」

 

 

俺は視界の端にソワソワしてる楽に声をかける。

本人は多分、桐崎さんが暗いところが苦手だって事は教えられてないだろうけど楽は人の為なら自分を省みない所があるから、そこはしっかりと釘を刺さないといけない。

 

 

「で…でも、ハニー1人じゃ心配で…」

 

 

「そんな慌てて暗闇の中の森に突っ込んで怪我でもされたら目も当てられない。…その優しさはいい事だが、自分のことも大切にしろ。…第一に、そんな非常事態に対して動く為に俺たちがいるんだ、だから少しは俺を信用しろ。」

 

 

俺の説得にとりあえず楽は肩の力を抜いて、俺の肩に手を置く。

 

 

「ハニーのこと頼んだぞ。」

 

 

「任せとけ」

 

 

その言葉を残すと俺は森へと走り飛び上がり木々を飛び越える。

 

 

「ナ○トか奴は……」

 

 

集はその姿を見てそうツッコむと周りもうんうんと頷いた。

 

 

 

 

桐崎side

 

 

おはげの代役を断る間もなく引き受けてしまい、私は現在絶賛真っ暗な森の中で1人です。

受け取った懐中電灯は電池切れ、場所を伝える為の無線機も使い方わからないしボタン押しても反応しないから多分充電切れ。

だから、()()()()を呼び起こすには十分だった。

 

 

「……ふぅ…はっ…はっ」

 

 

呼吸が速くなる。赤い血に縛られた手首に麻袋で隠された視界。

これら全てがこの暗闇の中で私の記憶が呼び起こす。

実際、私はあの後も家で寝るときは電気を付けるか鶫と一緒に寝てもらっている。

だから、最近寝不足が多いのだ。

だから、さっきからずっと周りに居ないはずの幻覚や幻聴が私を呼んでいるのだ。

目や耳を塞いでも聞こえてくる人の声に私は必死に我慢した。

 

 

「……ぅぅ…もう…いや……。」

 

 

私の頬にゆっくりと雫が滴る。

 

 

「…誰でもいいから……誰かたすけて」

 

 

その時だった。

 

 

「……あー、助けに来たぞ?」

 

 

ふわりと頭に触れるその手に私は覚えがあった。

死を覚悟したその時に震えていたけど優しく包み込むように、私に触れてくれた。

 

 

大谷優はまた私の元に来てくれた。

 

 





「なぁ黒子…声援って元気出るな」

「火神くん…作品が違いますよ。」

割とマジで待ってたって声が嬉しかったです。

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