甘くない偽物の恋   作:鼻眼鏡26号

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この時期ってさテスト期間だよね?

仕方ないよね?




11話

桐崎side

 

 

捕まっていた私の前に現れたのは震える手で頭を撫でて無理した笑みを浮かべた大谷君だった。

 

 

その彼は今、ハットの男にマウントを取られ首を絞められている所だった。

咄嗟のことで動けずそして恐怖から見ているだけだった。

 

 

「ハァ……ハァ…」

 

 

恐怖からか息が早くなって頭の整理が追いつかなかった。

そこで目の端で捉えたのがハットの男の拳銃が地面に落ちているところであった。

 

 

「ハァ…ハァ……」

 

 

それを見て思った事は普通はしない事。

しては行けない事だと頭でわかっているはずなのに考えるより先に体が動いた。

 

 

思ったよりも体はスムーズに動いて落ちていた拳銃を拾い上げるとそのまま両手で握って銃口を向けた。

 

 

「そ…その人を離しなさい!」

 

 

彼をーー大谷君を救うためを思い大声が出た。

 

 

「………」

 

 

なのに、ハットの男はこちらを振り向きもせずに大谷君の首を締め付けている。

 

聞こえていないはずはない。

 

 

「そ…その人を離さないと…う…撃つわよ!!」

 

 

今度は聞こえるように大声を出すがハットの男はこちらを向かない。

 

 

「嬢ちゃんには撃てねえよ。」

 

 

「!?……」

 

 

「嬢ちゃんはこっちの血生臭い世界を知らない。それだけで引き金の重さが違うのさ。」

 

 

ハットの男の言う通り私は銃口を向ける事はできても引き金を引く事は出来ない。震える手がそれを表していた。

 

 

「……に…げろ。きり…さき」

 

 

「っ!?」

 

 

「この死に損ないが!まだくたばらねえか。」

 

 

「カハッ!」

 

 

こんな状況にまでなっても大谷君は自分よりも私を気にしていた。

その強さに触れて私の手の震えも止まっていた。

 

 

ダンッ!

 

 

気がつけば私は引き金を引いていた。

 

 

「…っ!?」

 

 

「次は…当てるわ。…もう一度言うわよ…その人を離さない。」

 

 

私は淡々と出てくる言葉に自分で驚いていた。

私は冷静だった。撃つことに対して躊躇いもなく引き金を引けた。

 

 

「……この…クソガ「力を緩めたな。」…なっ!?」

 

 

私の方へと振り向くハットの男はその手を離して向こうとするが、その腕を大谷君は掴んだ。

 

 

「フンッ!」

 

 

「がっ!」

 

 

大谷君は掴んだ腕を引いて顔面に頭突きを食らわせた。

顔面の衝撃で後ろによろけて大谷君の上から離れた。

 

すぐに大谷君は立ち上がり右足の蹴りでハットの男の頭にぶつけ地面に叩きつけた。

 

 

「はぁ…手荒いけど顎狙って脳震盪させた。多分死にはしないはずだ。」

 

 

息を切らしながらよろよろと歩く大谷君を見て私は安心した。

しかし、それと同時に急に体が震えだした。

 

 

「…っ!!!」

 

 

カランッ

 

 

そんな音を立てて私の手から拳銃を落とした。

私は大谷君を守るためと銃を手にした自分に恐怖していた。

自分ですら気づかなかった一面に人を殺す事に躊躇いのないあの自分に。

 

 

「っ!……」

 

 

地面に崩れ落ちて私は震えるだけだった。

 

 

「…ありがとう桐崎さん」

 

 

ギュッ

 

 

そう言って私の手を大谷君は握った。

 

 

「でも…私……大谷君を守ろうと思っていたのに…拳銃を手にするなんて。」

 

 

「ごめん…俺がしっかりしていれば桐崎さんにそんな思いをさせないで済んだのにね。」

 

 

「大谷君が謝る事じゃないよ。…私、あなたがが来てくれて嬉しかった。」

 

 

「…無事でよかった。…さぁ、こんなところからさっさと逃げよう。」

 

 

そう言って大谷君は私の手を取ったが

 

 

「あれ?…足が震えて立てそうにないんだけと。どうしよう。」

 

 

「じゃあ、背中に乗って…大丈夫だよ俺鍛えてるから。」

 

 

「…それって私が重いって聞こえるけど?」

 

 

「そう捉えますか。」

 

 

そんなことも言いつつ私は大谷君の背中に乗ると私を揺らさないように歩いてそのまま工場から出て行った。

大谷君の背中はとても安心してとても暖かかった。

そして自分の顔が熱く感じるのもそのせいだと思う。

 

 

しかし

 

 

「出てきだぞ!!確保しろ!!」

 

 

道路に出た途端沢山の車のライトに照らされそこから一斉に聞こえてくる聞いたことのある大声に囲まれていた。

 

 

「お嬢ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「な…なんだ!?」

 

 

沢山の男だとの中から1人すごいスピードで飛び出てきて。

 

 

「この腐れ外道がぁぁぁ!!」

 

 

大谷君のお腹にものすごい衝撃が来てそのまま大谷君は背負っている私を気遣ってか前に膝をつけてゆっくりと倒れて行った。

 

 

「お…大谷くん!!」

 

 

「お嬢!大丈夫ですか!?」

 

 

「その声…つぐみ!?」

 

 

「はい!お嬢!ご無事で何よりです!!!今すぐこの男を始末しますの「この…バカぁぁぁぁ!!」へぶっ!」

 

 

私は銃を突きつけたつぐみに全力でビンタをぶつけた。

 

 

 






「あの男、顔は覚えたからな。」



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