デジモンクロスウォーズ 叛逆のラグナロク   作:ちんみぃ

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今日は物珍しい化け物を見つけた


もしかすれば何か正解への糸口を見つけられるかと期待したが


残念ながら今回も失敗だ


ああ、酷い失敗作だ

腕と足がダメになってる。××なんて目も当てられん。


今宵もまた、実験は続く

【とある男の日記より】



第5話 開戦

 

「 こいつが、仲間だった!?」

 

 

突如としてもたらされた驚くべき事実に、文字通りタギルとガムドラモンは呆気に取られた。

誇り高い英雄が闇に落ちてしまうなど信じられなかったのだ。

何故なら彼らにとって英雄とはシャウトモンとタイキであり、最終決戦で共に死力を尽くした歴代の少年たちだからである。

つまり大輝やこのデーモンは言わばタイキたちと同格の存在。

自分たちが憧れた存在がこのような姿に成り果てるなど、想像だにしなかった。

 

 

「 そんなら尚更わかんないぜ!なんで世界を滅ぼすんだ!?お前選ばれたんじゃないのかよ!」

 

ガムドラモンが悲鳴のような声をあげた。

だがそんなものはどこ吹く風、デーモンは特に表情を変える事なくガムドラモンへ視線を下ろす。

 

「 そうだ、選ばれたからこそ世界を殺すんだ。何故ならこの世界を愛しているであろう神々へ復讐するにはそれが最も効率がいい。」

 

あいも変わらず、その理論はめちゃくちゃだった。会話でわかり合うのはもはや不可能なのだろう。無意識にタギルは拳を握りしめた。

 

「 お前達だって何れは俺たちと同じ場所へたどり着く。所詮お前たちは運が良かっただけなのだからな!」

 

そう叫ぶと突如デーモンはその大きな腕を真下に振り下ろす。その下には背中を向けた大輝がいる。

 

「 !?タイラ!危ない!」

 

慌ててタギルが警告をした。しかし予め予想できていたのか、その腕が大輝の脳天に落ちることはなかった。軽いステップで、必要最低限の動きで大輝は横に重心をズラす。ドンっと土埃をあげながら重たい腕が地面に落ちた。

あれをまともに喰らえばひとたまりも無いだろう。

 

「ほう、やはり避けるか」

 

「 攻撃を仕掛けて来ることくらいわかりきっていた。行動さえわかって入れば背中を向けようと不利ではない。」

 

一定の距離を保ちながら2人は互いに睨み合う。

どうやらお喋りはここまで、ということらしい。

 

「 ではそろそろ始めるとしよう。世界への復讐を」

 

その言葉を合図にデーモンは空高く飛び上がる。

 

「 そうはさせねぇぜ!タギル超進化だ!」

 

「おう!『ガムドラモン!超進化!』」

 

タギルがクロスローダーに力を込めると、ガムドラモンの周りを電子の光が覆い、彼のデータを進化させていく。

そして姿を現したのは、群青色の立派な羽を持ち、鋭く長い尻尾を携えた一体のドラゴン。

 

 

『超進化 アレスタードラモン!』

 

 

高速で空を飛ぶことのできる翼を手に入れたアレスタードラモンは、デーモンを追って力強く羽ばたいた。

どうやらこのまま空中戦に持ち込む腹づもりらしい。

 

「 超進化か!やれるものならやってみろ!」

 

上空より彼方からアレスタードラモンめがけて滑空してくるデーモンと、負けじと速度を上げながら空を駆け上がっていくアレスタードラモン。

2つの拳が激しい音を立ててぶつかり合った。そのあとは一糸乱れぬ撃ち合いの嵐だ。拳、足、頭、尻尾。体の至る箇所を駆使しながら相手の体に互いに叩き込んでいく。どちらも受けたり避けたりしつつ隙を見て相手に攻撃を仕掛けているが、どうやら力比べでは互角らしい。

 

「 けっ!やるじゃねぇか!だがまだまだこんなもんじゃねぇだろ?」

 

「 そちらも少しはできるようだな。これは潰し甲斐がありそうだ。」

不敵な笑みで互いに顔を見合せる。だが次の瞬間、ほぼ同時に再び相手の懐に攻撃を畳み掛けた。

しかし一向にどちらも引く気配はなく、このまま打ち合うのは効率的ではないことは重々承知している。

先に先手を打ち相手の不意をつけた方の勝ち。

 

動いたのはデーモンの方だった。

突如凶悪なツノがついた頭をアレスタードラモンめがけて突進させてくる。当然それを避けるアレスタードラモンだが、その隙に今度はその腹に蹴りを1つ入れると一気に距離をとられてしまった。

流石にその連続攻撃を避けることは叶わなかったため、一瞬ひるんだことが仇となったのだ。

再び空高く飛び上がったデーモンは手のひらから何かを生み出した。

それはまるでマグマの塊のようなドロリとした色をしており、凄まじまい熱気が湧き上がってきている。

 

「 あいつ、何するつもりだ!?」

 

突然現れた高濃度のエネルギーにアレスタードラモンが戸惑っていると、その間にもさらに力は高まっていく。

そこではっと、何かに気がついた大輝は慌てて呆然と空を仰ぐタギルの腕を力一杯引っ張り走りだした。

「 まずい!タギル逃げるぞ!」

 

「 うぇ!?うぉああああ!?」

タギルを引っ張る大輝のその力の強さにも驚いたが、何よりその力強い走りに呆気にとられてしまった。タギルはどうにか振り落とされないように気を張って見るが、どうもそんなことを気にしていられる余裕はない。

とにかく早いのだ。

まるで背中に羽でもついて飛んでいるんじゃないかと思うほどに早かった。

 

これも大輝のデジモンとしての力なのだとしたら、このデジモンはきっと風のように早いのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タギルと大輝が全力で遠ざかる中、アレスタードラモンは徐々に大きくなる力をひしひしと感じ取っていた。

これが解き放たれてしまったら、自分どころか里全てが燃やし尽くされてしまう。そんな確信があった。

 

「 かつての英雄よ、俺たちには別にお前1人を倒すことだけに固執する必要はない。なんならお前を葬るのは今でなくてもいいんだよ。この意味がわかるか?」

 

 

「 つまり何がいいてぇんだお前!」

 

どこか遠回しな物言いにアレスタードラモンが痺れを切らす。

その様を愉快そうに、楽しそうにデーモンは笑いながら見ていた。

 

「 わからないか?今までお前たちが相対して来たであろう敵は世界というものが必要であった。それを手に入れるために力を振るって居たのだ。だが俺たちは手に入れたいものなんて何1つない。むしろこの手に、この世界に何も残らなければいいとすら願っているんだよ。」

 

漸くデーモンが言わんとしていることに気がついたアレスタードラモンはゾッとした。

 

つまり彼らの破壊衝動には限界がない。何故なら彼らが満足した頃には、何も残っていないのだから。

奴は今まさに世界丸ごと自分を葬り去るつもりなのだ。

 

「 最大の力を持ってしてこの世界に復讐を。そのことに関して、俺たちは手を抜かない!」

 

 

「 ヤメロォオオオオ!!!!」

 

マグマの塊に、デーモンに向かってアレスタードラモンは超高速で突っ込んで行く。

 

「 バカ!そのまま行ったら!!」

 

そのやりとりを遠目から見ていた大輝はアレスタードラモンにそう叫ぶ。しかし距離ともはや冷静を保てていないアレスタードラモンには届かない。

 

 

「 『フレイム インフェルノ』」

 

 

ボソリと低い囁きを合図に力は放たれた。

やがて大きな爆発とともに空から炎の流星群が辺りに散り散りになって落ちる。

 

その中に一体の青い竜が混じって落ちていくのがタギルの目にハッキリと写っていた。

 

「 アレスタードラモン!!!!」

 

 




お久しぶりです。私生活が忙しくなってまいりましたので、更新スピードは遅くなってしまいますが月一で1話最低更新はしたいと思っております。
戦闘は難しいですね。表現が難しいです本当に


コメントとお気に入り登録ありがとうございます
暫く顔を出していない間にたくさんの方に見ていただけてとても光栄です。

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