八神コウを攻略するために、俺は遠山りんも攻略する 作:グリーンやまこう
「青葉の次の仕事はこのソフィアちゃんの3Dモデルの製作ね」
涼風さんがモデルとなったキャラであるソフィアちゃんが完成し、次なるコウの指示は3Dモデルの製作だった。
昔はキャラ班に所属してたから、俺もキャラデザが完了するたびによくやったものである。今でもたまにやるんだけどね。
「ソフィアちゃんはイベントにも登場するから少し豪華に作ること!」
「豪華?」
豪華という言葉に涼風さんが首を傾げる。
そんな涼風さんに重要度に合わせてキャラの密度を調整しているんだよとコウが説明すると、
「でも……死んじゃうんですよね、ソフィアちゃん」
「そ、そこはどうしようもない……」
ソフィアちゃんが死ぬという事実に悲しげな声を出す涼風さん。気持ちは分からなくもない。自分が苦労して作ったキャラだけに、死ぬのはやっぱり嫌なのだろう。もしかすると、自分の好きだったゲーム・アニメのキャラが死ぬ感覚と同じかもしれない。そんなの俺だって悲しくなる。
一方コウは困惑気味。こればっかりは仕方がないという感じだ。仕様書を作ったのはコウだしね。
「コウちゃん、そろそろ会議よ。後タケルも」
ある意味丁度良いタイミングで、りんから会議だと声がかかる。このまま話を続けていたら空気が重くなったかもしれないのでナイスタイミングである。
しかし、俺のついで感が否めない。まぁいつも通りなので気にしないことにしよう。
「あっ、了解!」「了解~」
返事をして俺とコウは会議に必要な物を持って立ち上がる。
いつも通りファイルと筆箱をわきに抱えると、涼風さんがこちらをじっと見ていることに気付く。
「…………」
こちらをというよりは、俺たち三人の持っているものを見ている感じだ。
つられて俺も視線をコウとりんに移す。りんは相変わらずきっちりしており、逆にコウは紙を一枚とペンだけ。りんほどきっちりしろとも言わないが、もう少しちゃんとしてほしいものである。
ちなみに俺は二人の中間といえば何となくわかるだろう。
(私が目指すべきは誰なんだろう……)
涼風さんの視線がそう言っている気がした。そこで涼風さんと視線が合う。なぜかホッとされた。まるで『タケルさんは普通で安心しました』といわれているみたいである。
俺を参考にするのは自由だけど、出来たらりんを参考にしてほしかった。
「青葉? どうしてそんなホッとした表情でタケルを見てるの?」
「それはコウの気のせいだよ。ほら、会議に遅れるから行くぞ」
不思議がるコウとりんと共に会議室へ向かう。
「今日の会議はどんなことを話し合うんだっけ?」
「もうゲームの製作も終盤でしょ? だから完成までの日数とか、その他もろもろに問題がないのかを話し合うわ。……前回の会議終わりでちゃんと言ったはずだけど?」
「そ、そうだったっけ~?」
視線を彷徨わせるコウに「全くもうっ!」とご立腹のりん。
「でもここまで順調にこれてるわけだし、今更問題も出てこないと思うから大丈夫だろ?」
「今のタケルの言葉って、なんだかフラグっぽくない?」
「フラグはへし折るために存在するんだ。というか、フラグフラグ言うと本当に問題が出てきそうだからやめてくれ」
「まっ、流石に大丈夫だと思うけどね~。なんてったって、りんが計画を立ててるわけだし!」
「もう、コウちゃんったら」
なーんて話してたのがいけなかったらしい。
「キャラ班の残りのキャラ数と残り日数があってないね~」
あちゃ~。葉月さんからの指摘に俺たち三人、特にりんの顔が青くなる。
「…………」
「ああ、ほんとだ。こりゃ忙しくなるな~」
配られた紙を持ったままりんはぷるぷる震え、コウもどこか遠い目をして呟いている。俺は計画表を見て色々と割り切った。仕事に予想外の事態は付き物だし、人生割り切りも大事である。
それにしても葉月さん、落ち着いてるなぁ~。やっぱり修羅場をくぐってきた人? はわけが違う。
そんなこんなで会議が終わり、
「……というわけでごめんなさい! 私の計算ミスなの。キャラ班のみんなにはお泊りか、土日どちらかに来てもらうことになると思うけど……」
アートディレクターであるりんが顔の前で手を合わせ、みんなに頭を下げる。
「ちなみに会社命令の休日出勤は有給が増えるのでちょっとお得です」
コウさんや。確かに大事なことかもしれないけど、今はそんな事を言ってる場合じゃないだろ……。
「んな悠長な……」
心の声が通じたのか、ゆんが呆れたような声を上げる。ナイスツッコミだゆん。もっと言ってやれ。
「ほんならうちは休日に来ます」
「私も……」
「俺は残業します」
「タケルさんって別にキャラ班じゃないですよね?」
「まぁ半分キャラ班みたいなものだし、気にすんなって」
というわけで俺とゆん、そしてひふみが答え、残りは涼風さんだけ。
この流れだとはじめも休日出勤かお泊りと思うかもしれないが、彼女はモーション班なので関係なし。同じブースにいて勘違いされがちなので一応言っておきます。
「青葉は?」
「……有給って何ですか?」
「そこからかよっ!」
そこにいた全員が吉〇新喜劇ばりにずっこけそうになった。ま、まぁ確かに涼風さんは高卒だし知らなくても無理はないか。俺も就職当時は何となくでしか知らなかったし。
取り敢えず涼風さんに有給の説明をした後、改めて尋ねる。
「それじゃあ有給の意味も分かったところで涼風さんはどうする?」
「そうですね……えっとじゃあ私は――」
☆ ★ ☆
「買ってきました、寝袋!」
通販で買ったらしい寝袋を嬉しそうに掲げる涼風さん。その姿は年相応でちょっと可愛い。
「早速やる気だなぁ。泊まりも休日出勤もなんて……」
「ほんとだよ。俺だったらどっちもなんて絶対に無理だ」
珍しくコウが少し呆れている通り、涼風さんは泊まりか休日出勤かの二択を、二択であるにも拘らずどちらも選択したのだ。彼女は新人ながら社員の鏡である。
俺だったら絶対にそんな選択はできない。その事を示す通り、俺は泊まりのみを選んでいた。休日に出勤なんてどうしようもないとき以外、もってのほかである。撮りためてるアニメも見れないし、積み上げたゲームもできないからな。
「最初だけですよ。ソフィアちゃんには時間かけたいので!」
涼風さんが良い子すぎて涙が溢れてくる。きっとご両親の育て方が良かったんだろうな~。
すると涼風さんが何やら紙袋を持って振り返る。
「ついでに着がえもあります!」
「楽しそうだけどこれ残業だからな?」
「あ、あはは……」
元気な涼風さんに俺は乾いた笑いしか出てこない。最近、残業が辛くなってきたのでその元気を少しでも分けてほしいものである。やっぱり若さって大事だな。
その後、コウが涼風さんに泊まる時の注意点を指示すると言ったので俺も同行する。
「夜中は自分の席の天井以外は電気を消すこと」
「はい」
涼風さんの返事を聞いて試しにコウが部屋の電気を消すと、部屋の中が真っ暗になった。
夜中の会社は人が少ないため、なかなか雰囲気がある。実はあまり暗いところが得意ではないため、夜の会社は少し苦手だったりする。静かで暗いのは本当に良くない。
「…………」
涼風さんも昼間との雰囲気の違いを感じているのか、真っ暗になったブースを見つめている。
「……わっ!!」
「ひゃう!?」「どわぁっ!?」
コウがいきなり大声をあげたため、悲鳴を上げる俺たち二人。多分コウとしては涼風さんを驚かせたんだろうけど、油断していたため俺まで驚いてしまった。
「あはははっ! 二人とも驚きすぎ! 特にタケル! どわぁって何、どわぁって? あははっ、はーお腹痛い」
『…………』
ゲラゲラと笑い声をあげるコウを、俺と涼風さんは顔を赤くして彼女を睨みつける。しかし、二人揃って涙目なので迫力は全くないだろう。なんか分からんけどめちゃくちゃ恥ずかしい。
そんな視線を知ってか知らずか、コウはひぃひぃ言いながらお腹を押さえている。コウの笑いが何とか収まったところで、
「取り敢えず青葉は着がえを持ってきてるんなら、トイレで着替えて着たらどう? いつまでもスーツじゃ落ち着かないでしょ。あっ、それとも先にシャワー浴びとく?」
「うーん、シャワーは後にして先に着がえてきます」
紙袋を持って涼風さんがオフィスを出ていく。
「コウ、あんまり涼風さんをからかっちゃだめだぞ?」
「えー、あんなの軽いスキンシップだって~。それにタケルの面白い反応も見れて一石二鳥だったし」
「頼むからさっきのは忘れてくれ。あれはいきなりだったから仕方ないんだよ」
暗いのはいいんだけど、いきなりびっくりさせられるのに弱いんです。きっと共感できる人も多いはずだ。
「あのタケルの反応は脳内に永久保存しておきたい位だったから、簡単には忘れられないな~」
「マジかよ……」
「ふふっ! あっ、私もトイレ行ってくるね」
そう言ってコウもトイレへ。残された俺は取り敢えず企画の仕事を進めていると、顔を少し赤くした涼風さんが戻ってきた。
「どうかしたの涼風さん?」
「八神さんって、サラッとカッコいいこと言いますよね」
「……本当にどうかしたの?」
どうやらトイレで『ラフな格好も可愛いじゃん』といわれたらしい。なにそれ、漫画の主人公かよ。
「ま、まぁ、意外と子供っぽいところもサラッとカッコいいこと言うのも、コウのいいところだから」
「……興梠さんも大変ですね。八神さんのことですから、結構とんでもないことを平然と言いそうですし」
「それは言うな涼風さん。俺……だけじゃなくてりんも一番よくわかってるから」
サラッと『タケルのこと、信頼してるよ』とか、『頼りにしてる』とか言うんだもんな。りん相手でも大差はない。キュンっとしてしまうのも無理はないだろう。
ほんと、どんな主人公よりもコウのほうがよっぽど主人公っぽく見えるから勘弁してほしい。
「あれ? 二人とも何話してるの?」
そこでタイミングよく? コウがトイレから戻ってくる。
「……別に世間話をしてただけだよ。八神コウは漫画とかラノベの主人公みたいだなって。だよな、涼風さん?」
「そうですね。八神さんは鈍感ラノベ主人公みたいですねって話してたんです」
「あれっ? ほとんど同じことを言っているはずなのに青葉のほうが酷い事を言っているような……」
「まぁまぁ、話してた内容は本当にどうでもいいことだから仕事に戻ろうぜ。早く終わらせないと遅れを取り戻せないからな」
「そうですね。私も頑張りますっ!」
涼風さんが自分の席へと戻り、俺とコウも遅れている分の仕事に取り掛かり始める。次の企画の仕事もようやく終わりが見え始めたので、ここが踏ん張りどころだ。
そこから2~3時間ほど作業をし、
「んん~~~」
何とかキリがいいところまで終わらすことができた。固まった身体をほぐすために大きく伸びをすると、腰や肩からぽきぽきと小気味よい音が聞こえてくる。
(……さて、涼風さんの様子はどうかな?)
彼女は初めての残業だし、もしかすると疲れてうとうとしているかもしれない。そう思い彼女の座るデスクに視線を移すと、机に突っ伏してガッツリ眠っている涼風さんの姿が目に入った。すやすやと、気持ちよさそうな寝息を立てている。
(気持ちよさそうに寝てて申し訳ないんだけど、あの姿勢だと身体痛めちゃうよな。取り敢えず起こさないと)
以前、残業をした時机に突っ伏す形で寝落ちしたのだが、次の日身体が痛くなり尚且つ疲れもあまりとれていなかった。
そんなわけで涼風さんの机まで歩いていくと、同じく様子を見に来たらしいコウと鉢合わせる。どうやら考えていることは同じだったらしい。
二人視線を合わせて苦笑いを浮かべた後、コウが涼風さんの肩を掴んで優しく揺らす。
「青葉、青葉っ!」
「……? ……はっ! ここどこっ!?」
どうやら寝ぼけてるみたいだ。辺りを確認するために、きょろきょろと首を動かしている。
「会社だよ」
コウの言葉に「あっ……」と声をもらす。どうやら自分が残業していたことを思い出したらしい。
「寝袋あるんならそっちで寝な。身体痛めちゃうよ?」
「そ、そうでした……」
「私もシャワー浴びたら寝るから。ふわぁ……」
大あくびをしながらコウがシャワー室へ。涼風さんもそれに倣ってシャワー室へ向かう。
残された俺は机の中からカロリーメイトを取り出して一口かじる。これがあれば残業も無事乗り切っていけそうだ。
カロリーメイトを食べ終え、再び仕事へと戻る。しばらくするとコウと涼風さんがシャワー室から戻ってきた。
「興梠さんはシャワー浴びないんですか?」
「俺はもう少し仕事を進めてから浴びることにするよ」
「タケルもほどほどにね~」
「分かってる、分かってる」
コウに向かって手をひらひらと振った後、程ほどに仕事を進めていく。
ちなみにシャワーを浴び終えた涼風さんはなかなか個性的な寝袋にくるまって眠っていた。しかしどうにもうまく眠れなかったらしい。
その証拠に「八神さ~ん、寝れませ~~ん……」という涼風さんの声とコウの悲鳴らしき声が聞こえてきたからな。何かを話した後、涼風さんはブースから出ていったので恐らく会議室に向かったのだろう。
(それにしても、今やってる部分はなかなか面倒だ――――)
「まーだ仕事やってる」
「うおっ!? びっくりした。というか起きてたのか」
いつの間にかコウが自分の肩越しに画面を覗き込んでいた。仕事に集中しすぎて全く気付いていなかったので、少し驚いてしまう。
「本当は寝ようと思ったんだけどね。どっかの誰かさんがいつまでたっても仕事を終わらせないから眠れなかったの」
左肩に顎をのせ、ジトっとした視線を向けてくる。
「休日に来ないのはいいけど、夜中にずっと仕事をやってたら休日に出勤するのとあんまり変わらないんじゃない?」
「そ、それはそうだけど……今回はキリのいいところまで進めたら終わるつもりだったんだ」
「……タケルのことだから、キリのいいところまでやったら朝になってたんじゃない?」
「…………」
「図星でしょ?」
何も言わない俺に、コウはやっぱりという表情で少しだけ微笑む。
「全く。タケルは昔から変わらないよね。一生懸命って言うか、一生懸命すぎるって言うか」
「別に、あと少しで終わる予定だったし」
心の中まで見透かされたのが悔しかったので子供のような嘘をつく。だけどそんな子供じみた嘘もコウは見抜いていたようで、
「……無理だけはしないでね。タケルのことは信頼してるけど、それだけがすごく心配」
コウの言葉に心当たりのあった俺は何も言い返せなかった。
悲し気な彼女の頬笑みが脳裏に残る。
「じゃ、今度こそ私は寝るから。もし仕事を進めるにしても30分以内ね」
「分かってるよ。心配してくれてありがとう」
再び自分の机に戻っていったコウを見送り、俺は視線をパソコンに戻す。
「さて……ん?」
俺が再び残った仕事を30分以内で片付けようとしたところで、スマホがブーブーと振動する。
画面を確認して「うげっ……」と思わず声をもらす。なぜならスマホの画面には、
【遠山りん】
無視しようと思ったが、無視したらしたで後々うるさいので仕方なく電話にでる。
「……はい」
『あっ、やっと出た。全く、電話が来たらすぐに出なさいよね。社会人として常識じゃない』
「お前からの着信じゃなかったらすぐに出てたよ。それで何の用だ? こんな時間に」
『コウちゃんに変なことしてないかと思って』
「するわけねぇだろ……涼風さんだっているのに」
そんな事を聞くために電話をしてきたのかよ……。俺が呆れていると電話越しで『それよりも』という声が聞こえ、
『こんな時間にはこっちのセリフよ。まさか今も仕事をやってるの?』
「いや、さっきコウに止められた。無理すんなって」
『止められたって言ってるけど、どうせまたやろうとしてるんじゃない?』
「…………そんなことはな――」
『図星みたいね』
言い訳も最後まで言わせてくれなかった。どうして俺の同期二人はこうも鋭いのだろう?
りんはまだしも、コウに至っては普段の鈍感さが嘘のようだ。
「何でお前らは俺の考えてることが分かるんだ?」
『私たちが鋭いんじゃなくて、タケルが分かりやすすぎるのよ。分かったのなら早く寝なさい。コウちゃんは30分くらいならいいって言うかもしれないけど、私は許さないわ』
「どうしてコウの言ったことまで分かるんだよ……ほんと、りんはコウの事大好きだよな」
思ったことをそのまま口に出すと、電話越しでガタガタという音が聞こえる。恐らく顔を真っ赤にして動揺していることだろう。
『い、いい、今はそんな事どうだっていいじゃない! それに、そのセリフはそっくりそのままタケルに返すわよ!!』
「分かったから、電話越しに大声出すなって。耳が痛い」
『誰が原因だと思ってるのよ! 全く、これだからタケルは……』
しかし俺への悪態はそこまでで、りんのトーンが次第に下がっていく。
『……別にタケルが無理する必要はないのに。今回だって私のミスなんだから、あなたは手伝う必要なんてないのよ?』
「好きでやってるんだから気にすんなって。それにミスに気付けなかった俺たちにも原因はあるわけだし」
『そういうことじゃないの。フェアリーズストーリー2の時だって、今だって……』
一度言葉を止め、改めてりんが口を開く。
『心配してるってわかりなさいよ』
彼女の言葉に普段の刺々しさは全く感じられなかった。
本当に心配しているようなりんの声色。始めて言われた心配しているという言葉。
どんな言葉を返していいのか分からず俺は逡巡する。
その間りんは何も言わなかった。まるで俺の返事を待っているかのように。
「…………悪い」
結局、考えたわりにはこんな言葉しか出てこなかった。
『ほんとよ。なにが楽しくてタケルの心配なんか……はぁ、慣れないことは言うもんじゃないわね。そもそもタケルの心配なんて普通ならありえないわよ。電話の相手がコウちゃんなら良かったのに』
「いつも通りのりんで安心したよ……」
怒涛の言葉に俺は苦笑いを浮かべるしかない。まぁ、こっちの方がりんっぽいし安心するっちゃ安心する。
『それじゃあ言いたいことも言ったし、私は寝るわね。間違ってもこれ以上仕事をしないこと』
「それはフリと受け取っていいのかな?」
『出社したら朝一でぶっ飛ばすわよ?』
りんさん迫真のガチトーン。俺は慌てて言葉を訂正する。
「嘘です、冗談です」
『全く……じゃあおやすみ』
「おやすみ」
りんとの通話が終了し、俺はスマホを耳から離して机の上に置く。目の前にはつけっぱなしにしていたパソコンの画面。
(よしっ)
俺はパソコンの電源を落とすとそのままシャワー室へ。
シャワーを浴び終えた後、自分のデスクの下から寝袋を取り出す。最後に天井の電気を消した俺は、寝袋にくるまり目を閉じたのだった。
ちなみに次の日、涼風さんが会議室からなかなか出てこなかったのはまた別のお話。