この素晴らしい狩人に祝福を!   作:シンセイカツ

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問題児が一人とは言っていない


問題児

「何故たかがキャベツの野菜炒めがこんなにうまいんだ。納得いかねぇ、ほんとに納得いかねぇ」

 

緊急クエスト【キャベツの収穫】を終え、ギルド内ではキャベツを使った料理が振る舞われていた。

食卓の半分以上が緑というのもなかなか奇妙な光景だが、この時期のキャベツは本当にうまいので馬鹿にはできない。表現が下手なのが申し訳ないが、キャベツのシャキシャキとした食感と絶妙に含まれた水分は料理人の手によって絶品料理となっている。

 

キャベツの野菜炒め、もといキャベツ炒めを食べたカズマは納得できないような表情をしながらキャベツを口内に詰め込んでいる。

 

「しかし、やるわねダクネス!あなた、流石クルセイダーね!あの鉄壁の守りには流石のキャベツ達も攻めあぐねていたわ」

 

アクアが褒めているダクネスの鉄壁の守りというやつだが、実際はケガを負った冒険者を庇うことで自分の被虐趣味をカモフラージュしていたものだな。

 

確かにダクネスの謎の身体の硬さはキャベツも攻めあぐねるだろう。だって体当たりしたら自分が傷つくんだもん。

 

「いや、私など、ただ硬いだけの女だ。私は不器用で動きも速くは無い。だから剣を振るってもロクに当たらず、誰かの壁になって守ることしか取り柄が無い。……その点、めぐみんは凄まじかった。キャベツを追って街に近づいたモンスターを、爆裂魔法の一撃で吹き飛ばしていたではないか。他の冒険者のあの驚いた顔と言ったら無かったな」

 

あぁ、あのテロな。

 

キャベツの甘い香りというか、フェロモン的なものに惹きつけられたモンスターを爆裂魔法で吹き飛ばし、ついでにモンスターと交戦していた冒険者も余波で吹き飛ばされていたな。多分仲間がいる所で爆裂魔法使うような奴とは思わなかったんだろう。

 

「ふふ、我が必殺の爆裂魔法において、何者も抗う事など叶わず。……それよりも、カズマとミコトの活躍こそ目覚ましかったです。カズマは魔力を使い果たした私を素早く回収して背負って帰ってくれましたし、ミコトは爆裂魔法の後さらにやってきたモンスター達をたった一人で相手取っていましたし」

 

「……ん。私がキャベツに囲まれ、袋叩きにされている時も、カズマは颯爽と現れ、襲い来るキャベツたちを収穫していってくれた。助かった、礼を言う」

 

「確かに、潜伏スキルで気配を消して、敵感知で素早くキャベツの動きを補足し、背後からスティールで強襲するその姿は、まるで鮮やかな暗殺者のごとしです。ミコトは道具を駆使して多くのキャベツを収穫していましたね。その姿は職業名に恥じぬ狩人《ハンター》でした」

 

「……私の名において、カズマには【華麗なるキャベツ泥棒】、ミコトには【キャベツ・ハンター】の称号を授けてあげるわ」

 

「え、いらない」

「やかましいわ!そんな称号で俺を読んだら引っぱたくぞ!……ああもう、どうしてこうなった!」

 

カズマはアクアへの反対意見を一方的に述べると頭を抱え机に突っ伏した。

 

流石に不憫に思ったので軽く頭を撫でてやるが、よく考えたらこのぐらいの年って頭撫でられたりって嫌な感じかな?やばい、酒も大量に入ってるからよく考えれんぞ。

 

「では……。私はダクネス。職業はクルセイダーだ。一応両手剣を使ってはいるが、戦力としては期待しないでくれ。なにで、不器用すぎて攻撃がほとんど当たらん。だが、壁になるのは大得意だ。よろしく頼む」

 

会話の内容からすると、このドM騎士が仲間になったようだ。

 

本人も盾としてこき使えと言っているし、片方の手にランスを、もう片方の手にダクネスを担いでモンスターを狩るのも……いかん。何を言っているんだ俺は。

 

「……ふふん、うちのパーティーもなかなか、豪華な顔ぶれになってきたじゃない?アークプリーストの私にアークウィザードのめぐみん、防御特化の上級前衛職であるクルセイダーのダクネスと前衛後衛のどちらも完璧にこなせるオールラウンダーの狩人(ハンター)、ミコト。5人中4人が上級職なんてパーティー、そうそうないわよカズマ?あなた、凄くついてるわよ?感謝しなさいな」

 

半分以上外れじゃねえか駄女神……

 

カズマの小さな呟きを聞きながら軽く水をあおり酔いを醒まし、このパーティーについて軽く考えてみる。

 

 

まず全体のリーダーであるカズマ。

 

冒険者という職を生かし、様々なスキルを入手。オールラウンドな遊撃タイプではあるが、いまいち防具が貧弱なことと幸運値の割には巻き込まれ体質な面がある。

 

このままスキルの練度を伸ばしていけばこのパーティーに欠かせない人物になること間違いなしだろう。

 

 

 

次に女神アクア。

 

幸運値と知力値がかなり低いため適当で後先考えない行動が目立つ。

 

アークプリーストとしては優秀なのだろうが、いかんせん馬鹿だ。

この先のレベルアップで知力値が上昇することを祈っておこう。

 

 

 

めぐみん。

 

紅魔族というアークウィザードの素質を強く持つ種族でありながら他の魔法を取らず、爆裂魔法に執着しているように思える。

 

もうこいつは爆裂魔法以外のスキルを取ったら何の問題もないんじゃないか?

 

 

 

新メンバー、ダクネス。

 

このメンバーでも薄まることのない個性の【不器用】と【ドM】。

 

キャベツ収穫の時に少し見てみたが、あれはスキルがどうこうという話ではなく素質的にやばいと思う。なぜすばしっこく小回りの利くキャベツに大振りの攻撃で挑む。

 

そしてすばしっこく小回りの利くキャベツってなんだよ。舐めてんのか。

 

 

最後に(ミコト)

 

自覚している欠点は強そうなモンスターを見ると狩りたくなることか。俺の意思ではなくミコトの身体が勝手に反応するだけだから自制は効くが、たまに意味が無いこともある。パーティー内ではまだやらかしたことは無いが、今後確実にやらかす。どこかでやらかす。

 

 

 

 

○○○○○○○○○○

 

 

 

 

朝、気が付いたら例の荷車で寝ていた。

 

どうやら考え事をしている間に酒をチビチビと飲んでいたらいつの間にか酔いが回って寝ていたらしい。

 

起きた時、目の前にカズマの顔があったからびっくりしたが、運んでくれたのだろうか。重かったろうに。

カズマが俺の荷車で寝ているのはおそらくあの絨毯と毛布にやられたな。すごく分かるぞ。うむ。

 

…さて、とりあえず酒を飲んでいても朝起きる時間は変わらない。今日はガンナーとしてつもりなので弾を先に用意しておく。まだ朝とはいえ、こういった準備が大切なのだと昔実感させられたからな。弾薬を作ったり、使う武器を決めたりしておこう。

 

 

 

 

 

 

結果的に、相手にするモンスターが分からなければどうしようもないと悟ったため、『ダイヤモンドクレスト』を使うことにした。

 

赤と青の銃身と氷牙竜の甲殻をイメージした白いカバー?が特徴的なライトボウガンだ。

 

通常弾。つまり当たったらめっちゃ痛い程度の銃弾が速射できるのが強みだな。

 

装備はセイラー一式にでもしようかな。適当に装飾品付けて発動スキルを増やせばいけるだろ。

 

セイラーはタンジアの港で働く受付嬢の衣装だな。まぁ、詳しい容姿は各々確認してもらった方が速いが、何となく全体が白い。……いや、説明少ないのは分かってんだよ。ただ、この帽子の名前とか一切知らないから説明できないんだよ。こちとら元男だぞ、女性のファッションなんかわからんわ!

 

「……ぅ…ここは…」

 

おっとそんなことを言っていたらカズマが起きたな。俺はアイテムボックスの中から元気ドリンコを2本取って片方をカズマに渡す。

 

「おはようカズマ。飲むか?」

 

「あぁもらう……よ」

 

……?俺に手を伸ばしたカズマが急に固まってしまった。俺の鎧を凝視しているようなので何か付いているのかと見下ろすと、そこには装備などない。肌色の山脈とそれをギリギリ隠しているタンクトップが見えるだけだ。

 

そこまで考えた俺は反射的に胸の部分を隠そうと毛布を引き寄せようとするが、別に裸を見られているわけでもないしいいかと思いとどまり自然体に戻る。

まったく、ミコト(無意識)さんは恥ずかしがり屋だな全く。

 

そういえばなんで鎧を着ていると勘違いしたのかというと、起きた時に半分以上寝ている状態で脱いでたからだな。その後カズマの顔が目の前にあったこととか、意識がはっきりし始めてから驚いたから脱いでたことは忘れてたわ。

 

「…どうかしたか?…カズマ?」

 

カズマの前で手を振ってみたりネコだましをしたりするが、かなり反応が薄い。

 

……そういえば昔こんな感じで硬直してた奴がいたな。で、女友達がそいつをからかうためにやってたことがあるな。しばらくたったら復活したしあれをやろう。

 

俺はカズマの後ろに回り、左手で両方の目を隠し顎をカズマの右肩に載せる。そして身体、特に胸が密着するような体勢を取り――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仏説・摩訶般若波羅蜜多心経……」

 

 

――般若心経を唱える。

 

声のが男の時と違ってあまり念仏に似せれないが、まぁいいだろう。

 

 

この行為は、3分後、カズマの意識が復活するまで続いた。




最後の奴は多少盛ってるところもありますが、大体が実際にあった話です。裏山

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