この素晴らしい狩人に祝福を!   作:シンセイカツ

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モンハンプレイ中にBボタンとレバーが逝きました。
回避と移動が困難になりましたが何とか……なるでしょう…


ダクネス

「アクア様、もう一度!金なら払うので、どうかもう一度《花鳥風月》を!」

「ばっか野郎、アクアさんは金より食い物だ!ですよね!?アクアさん!奢りますから、ぜひもう一度《花鳥風月》を!」

 

カズマがクリスに授業料(クリムゾンビア)を支払い金髪騎士とギルドの裏路地に言って早10分。

 

ギルド内では奇妙な騒ぎが起きていた。

 

冒険者同士の喧嘩や腕相撲などの賭け事ではなく、彼らの前で芸を披露したアクアにアンコールを求める冒険者の声で大騒ぎになるなどなかなか見れたものではないだろう。

 

俺はアクアの芸は一通り見れていたのでこの騒ぎには参加する気はないが、それにしたって凄かった。

 

布を翻したら数十匹のハトが元気よく飛び出したり、コップに入れた種が成長しすぎて樹になりかけてたし。

 

「芸って物はね?請われたからって何度もやる物ではないの!良いジョークは一度きりに限るって、偉い人が言ってたわ。ウケたからって同じ芸を何度もやるのは三流の芸人よ!そして私は芸人じゃないから、芸でお金を受け取る訳にはいかないの!これは芸を嗜む者の最低限の覚悟よ。それに花鳥風月は元々あなた達に披露するつもりだった芸でもなく――あっ!ちょっとカズマ、やっと戻ってきたわね、あんたのおかげでえらい事に……。ってその人どうしたの?」

 

暇だったので芸を嗜む女神の民衆に向けた話を聞いていると、カズマ達3人組がギルド内に入ってきた。

 

しかしクリスからの教えを受けたカズマはどこか申し訳なさそうな顔をし、金髪女性は顔を赤らめながらもどこか満足そうな顔をしており、カズマにスキルを教えていたはずのクリスは涙目で落ち込んでいる。

 

何かあったのだろうか。

 

「うむ、クリスは、カズマに盗賊スキルを教える際にパンツを剥がれた上に有り金むしられて落ち込んでいるだけだ」

 

「おいあんた何口走ってんだ!待てよ、おい待て。間違ってないけどほんと待て」

 

何かあったようだ。

 

淑女の下着を剥ぎ取とるとは…とカズマに蔑みの目線を向ける。

いくら俺でもそこまでせんわ。理性が消し飛んでなければ。

 

「財布返すだけじゃダメだって、じゃぁいくらでも払うからパンツ返してって頼んだら…『自分のパンツの値段は自分で決めろ』って!」

 

うっわぁ………。

 

「『さもないとこのパンツは、我が家の家宝として奉られることになる』って!」

 

「おい待てよ!なんかすでに周りの女性冒険者の視線まで冷たいものになってるから、ほんと待て!」

 

カズマの言う通り、ギルドのウェイトレスもそこらの女性冒険者もカズマに向けて蔑みの目線を向けている。

一方で男性冒険者たちはほぼ全員がカズマに向けてグッドサインを向けていた。

 

いや、正直俺も元男としては高らかにグッドサインを送りたいが、女性の身体になったからか、ミコトに若干影響されたのかは知らないがカズマには冷たい目線しか向けられない。

 

カズマの慌てぶりを見て小さく舌を出したクリスを見てそれが嘘泣きであったことを悟るが、確実にこの前の時間。具体的にはカズマにパンツを盗られたときにはマジ泣きしてたよな。目の色からして。

 

「そ、それカズマは無事にスキルを覚えられたのですか?」

 

この空気を少しでも変えるためにとめぐみんが口を開く。

 

ナイス、俺でもこの空気の変え方は分からなかったんだ。特技を教えに言ったらその特技を利用してパンツ盗られた奴の慰め方なんか知らんわ。

 

「ふふ、まぁ見てろよ?いくぜ、『スティール』!」

 

めぐみんに手を向けカズマがスキルを発動させるとカズマの手の中が発光する。

 

次にカズマが手を開いて中の物を確認すると、白い生地の布がでてきた。形状は逆三角。中央には小さなリボンが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンツだこれ!?

 

 

 

 

「…何ですか?レベルが上がってステータスが上がったから、冒険者から変態んジョブチェンジしたんですか?……あの、スースーするのでパンツ返してください…」

 

「あ、あれ?お、おかしーな、こんなはずじゃ……。ランダムで何かを奪い取るってスキルのはずなのに……」

 

「……確かカズマの幸運値はかなり高かったらしいな。もしかして狙ったとか?」

 

「ミコトまで!?いや、もし狙ってたとしても窃盗スキルは取れるものが完全ランダムで、本来は取れる確率の方が少ないんだよ」

 

俺の素朴な疑問をカズマは大慌てで否定する。

 

そんな俺達の会話を見ていた金髪女性は突然椅子を蹴って立ち上がった。

 

「やはり。やはり私の目には狂いはなかった!こんな幼げな少女の下着を公衆の面前で剥ぎ取るなんて、なんという鬼畜……!是非とも……!是非とも私を、このパーティーに入れてほしい!」

「いらない」

 

「んんっ……!?く……」

 

カズマの即答に頬を赤くしてもだえる金髪女性。……ん?

 

「ねぇカズマ、この人だれ?昨日言ってた、私達がお風呂に言ってる間に面接に来たって人?」

 

「ちょっと、この人クルセイダーじゃないですか。断る理由なんてないのではないですか?」

 

「いや、クルセイダーって仲間を守る聖騎士のことだろ?俺達にはミコトがいるだろ?」

 

「私は基本的に同じ装備を連続で使いたくないから毎回カズマ達を守るように動けるとは思わないほうがいいと思うぞ?今回なんて太刀だ。防御なんてほとんど捨ててる」

 

俺の反論を聞いたカズマはしばらく何かを思案するような顔になったあと、俺達にこんなことを言いだした。

 

「実はなダクネス。俺とアクアはガチで魔王を倒したいと思っている」

 

 

「丁度いい機会だし2人も聞いてくれ。俺とアクアは、どうあっても魔王を倒したい。そう、俺達はそのために冒険者になったんだ。というわけで、俺達の冒険は過酷な物になる事だろう。特にダクネス、女騎士のお前なんて、魔王に捕まったりしたらそれはもうとんでもない目に遭わされる役どころだ」

 

「ああ、全くその通りだ!昔から、魔王にエロい目に遭わされるのは女騎士の仕事と相場は決まっているからな!それだけでも行く価値がある!」

 

「えっ!?……あれ!?」

 

「えっ?……なんだ?私は何かおかしなことを言ったか?」

 

おそらく「自分たちと冒険することで大きなデメリットを被ることになる」ということを伝えて金髪女性…ダクネスか、を追い返そうとしていたのだろうが、このダクネスという女性は聞いた感じ特殊な性癖がある。なんとなく被虐系の。

 

多少のデメリットじゃ引かないだろな。

 

「…めぐみんも聞いてくれ。相手は魔王。この世で最強の存在に喧嘩を売ろうってんだよ、俺とアクアは。そんなパーティーに無理して残る必要は……」

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操りし者!我を差し置いて最強を名乗る魔王!そんな存在は我が最強魔法で消し飛ばしてみせましょう!」

 

カズマは次なる標的としてめぐみんを選んだが、説得の仕方を間違ったようだ。椅子を蹴り飛ばして立ち上がり恥ずかしい宣言を公衆の面前でやらかした。

 

「…ミコトも一応聞いてくれ」

 

あ、俺も?

 

「魔王と戦うってことは強大な敵と連戦したりしないといけないってことだ。いくら強いと言っても体力には限界が来る。最悪物量に押しつぶされて終わりだ。そんな危険があるパーティーに「カズマ」……」

 

(ミコト)の故郷は強力な竜の蔓延る絶海の孤島。その中でハンターとして活動をするうちに(ミコト)は『災害』や『神』とされる竜を何度か(制限時間付きで)討伐している。魔王という頭脳があり、知能のある配下が大量に存在するのに、いまだに世界征服を成し遂げられないような奴だ。平和のための障害があるならば打ち壊すまで。むしろ戦ってみたいとすら思うぞ」

 

……ってついペラペラと口の動くままに喋ったが、中身()は戦闘とかは初心者なんだけど。ミコトの鍛えた技でゴリ押してるだけなんだけど…。

 

こうして全員の説得に失敗したカズマの袖をアクアがクイクイを引いているのが見えた。

 

「私、カズマの話を聞いていたらなんだか腰が引けてきたんですけど。何かこう、もっと楽しく魔王討伐できる方法はない?」

 

 

……全く、この駄女神は。お前この話で一番の関係者だろ。何を言ってるんだ。

 

そんな感じで再びパーティーの意思が嫌な方向に固まったところで街中にアナウンスが響いた。

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者各員は至急冒険者ギルドに集まってください。繰り返します。街の中にいる冒険者各員は至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

緊急クエスト…?もしかして強大なモンスターが来たとかか?それなら準備したいんだが……。

 

「おい、緊急クエストってなんだ? モンスターが街に襲撃に来たのか?」

 

カズマも俺と同じことを考えているようだった。やっぱり緊急クエストって聞くとそう考えるよな。俺だけじゃないみたいで安心した。

 

「……ん、多分キャベツの収穫だろう。もうそろそろ収穫の時期だしな」

 

 

…………あぁ、なるほどね、キャベツか。

 

 

 

「は?キャベツ?その、キャベツって名前のモンスターかなんかか?」

 

この世界の常識をまだ理解しきれていないカズマをめぐみんとダクネスがかわいそうなものを見る目で見ている。

 

「キャベツとは緑色の丸いやつです。食べられる物です」

「噛むとシャキシャキする歯応えのあるおいしい野菜の事だ」

 

「そんな事は知っとるわ!じゃあ何か?緊急クエストだの騒いで、冒険者に農家の手伝いさせようってのか、このギルドの連中は」

 

そういえばつい最近まで土木工事のアルバイトで忙しくてこの世界の常識とかを知る機会とかなかったのか、それならしょうがないかもしれない。

 

「あー……カズマは知らないんでしょうけどね?えぇっと、この世界のキャベツは………」

 

アクアが申し訳なさそうにカズマに説明をしようとするのをギルドの諸金が大声で遮って説明を始めた。

 

「皆さん、突然のお呼び出しすいません!もう既に気付いている方もいるとは思いますがキャベツです!今年もキャベツの収穫時期がやってまいりました!キャベツ1玉の収穫につき10000エリスです!既に街中の住民は家に避難して頂いております。では皆さん、出来るだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに収めてください!くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしない様お願い致します!なお、人数が人数、額が額なので、報酬の支払いは後日まとめてとなります!」

 

その時、冒険者ギルドの外で歓声が起こった。

 

それを聞いて移動を始める冒険者たちに合わせて全員で正門に向かう。

 

正門の外では大量の空飛ぶキャベツと戦闘を開始する冒険者の姿。

 

アクアは真っ先に走って行ってしまったので代わりに俺がカズマに説明しようと近づくと、ちょうど腹にキャベツがそれなりの勢いで飛び込んできたので片手で捕まえておく。

 

「おっと……。…カズマ。キャベツというのはこんな感じで空を飛ぶ。味が濃縮してきて収穫の時期になるとどういうわけか自我を得て、感情を持ち、食べられたくない一心でな。街や草原を疾走するキャベツは大陸を渡り海を越え、最後には人知れぬ秘境の奥で誰にも食べられずひっそりと息を引き取るとされている。……そんなもったいないことをさせるくらいなら私たちで捕まえて食べてしまおうということだ。味も栄養も濃縮されて旨いし、経験値なんかも大量に手に入る」

 

「……俺、もう馬小屋に帰って寝ててもいいかな?」

 

「別にいいが、軍資金を手に入れるいいチャンスだぞ?ここらで金を稼いで装備を買うのをおススメする」

 

 

まぁ、俺も正直に言うとキャベツの捕獲が他のモンスターの捕獲よりも難しいことは不満なんだが……まぁ、稼ぎ時だ。ちょっと本気出して回収しよう。




ミコトへのスティールを期待した方ごめんなさい!
500字ほど書いたあたりで頭がこんがらがってしまったので書けませんでした!

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