この素晴らしい狩人に祝福を!   作:シンセイカツ

16 / 16
緊急

「あぁ、カズマ。悪いが先に行っておいてくれ」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「いや、服が体に張り付いて気持ち悪いのでな。着替えてくる」

 

ギルドに向かう道で俺達が寝泊まりしている馬小屋の近くを通りかかったので、カズマに言って馬車に戻る。流石に濡れたままっていうのは周りの目とかも気になるし、なにより着ていて気持ち悪いからな。どのくらい気持ち悪いのかって言うと、カズマが「最後に目に焼き付けておこう」みたいな目線で見てくることくらいには気持ち悪い。

 

馬車に敷いてある絨毯とかを濡らすとあとでめんどくさいので、外で乾かすことにする。偶然にも持ってる武器が『コウリュウノツガイ』だからな。火を起こすのはかなり楽だ。適当な場所に突き刺せば炎が上がる謎仕様だからな。とはいえ、防具を着たまま乾かすのは意味がないのでちゃっちゃと脱いでいく。胸部外すときに毎回緊張するのはしょうがないと思うんだが、下を見ないようにすれば何とか耐えれる。最初の方は鼻血とか出してたなぁ。

 

他に人もいないみたいなのでさっさとインナーになって地面に『コウリュウノツガイ』を突き刺す。めっちゃ熱いけど水気は何回かやれば飛んだ。もし『コウリュウノツガイ』を持ってなかったとしたらアイテムボックスから火に関係する素材か水を吸収する素材を出せばよかったしな。つくづくモンハン世界って便利。

 

3回くらい突き刺して水気がほとんど飛んだので、さっさと着替えることにする。もう依頼もないだろうし、適当な服に着替えて、武器を『天雷斬破刀・真打』にしてギルドに向かう。

…え?武器は持つ必要無いだろって?俺もそう思うけど、ミコト(身体)が武器を一つは携行してないと落ち着かないんだよ。剥ぎ取りナイフだけで充分だと俺も思うけどな。

 

そういえば、最近分かったことなんだけどこの世界ではモンハンの武器とか素材ってとんでもない物らしいな。そりゃまぁ、ファンタジーでは最強とか言われる竜の素材を使ってるんだから当たり前なんだけど、原因はモンハンの武器とか素材に付けられたフレーバーテキストがある程度までは現実に現れるからだ。どこの記録の地平線かって見つけた時は笑ったけど、これが意外とシャレにならない。例えば、グラン・ミリオスの素材である《不死の心臓》を見てみたけど普通に鼓動してたし、《火竜の延髄》とかはアイテムボックスから出した瞬間に自然発火をし始めやがった。いわゆる中二要素がふんだんに盛り込まれたモンハンのテキストが現実になるとしたらやばいのが何種類かアイテムボックスの中に入っている。アルバトリオンの素材とかな。助けてSCP財団。俺以外の手に渡ったら大変だから。

 

そんなことを考えつつ歩きギルドに到着すると、先ほどカズマに惨敗したミツルギが泣きながら飛び出すのとすれ違った。何があったのかは知らんが、なんか可哀そうに思えた。

 

「今の、さっき会ったミツルギとかいう子だろ?何かあったのか?」

 

「あ、ミコト。おかえりなさい。今のは魔剣の代わりに欲しいものをなんでも出すから魔剣を返してくれって言ってきたんですけど、カズマが既に魔剣を売ってしまっていることを言ったら走り去っていきました」

 

「なるほど」

 

カズマは魔剣を売ったのか。まぁ、魔剣は特典だったらしいからな。カズマが使っても意味がないなら売るしかないだろう。あっても邪魔になるし。

 

それにしても、ミツルギの状態は俺にも当てはまるのかもな。特典の強さに振り回されて実力が伴わないのは典型的な踏み台だ。少しは剣の練習でもしようかな?…でもモンハンのキャラクターっていう特典の内容だし、練習とかが意味を成すか分からないんだよな。

 

少しは武器を使う練習をしよう、そう決意したときだった。

 

『緊急!緊急!冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で目値の正門にあつまってくださいっ!』

 

おいおいまたかよ。この世界に来て3回は聞いた気がするぞ。

 

『緊急!緊急!冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で目値の正門にあつまってください!……特に、冒険者サトウカズマさんとその一行は、大至急でお願いします!』

 

「「…………えっ」」

 

カズマと俺の声が重なる。まさかの名指しかよ。

 

はぁ、さっき着替えたばっかりだっていうのに…カズマ、不本意だが私はもう一度馬車に戻る。武装して集まれとのことなのでな」

 

「お、おう、分かった」

 

アナウンスの声の感じからして、キャベツのような平和な呼び出しではなくもっと危機感に溢れた物だろう。最近だとデュラハンか。……デュラハンか!!思えば呼び出される理由としては普通だな。デュラハンと直接関係があるの俺達くらいだし。あー、すっきり。

 

相手があのデュラハンなら武器とかも変えた方がいいな。何のために出てきたんだ天雷斬破刀・真打。まぁそれは置いておこう。もし戦闘をするとして、あいつにふさわしい武器ってのを考えないといかん。

 

デュラハン。つまり死体だし焼却するか。んで、確かあいつが持ってたのはハンターが持つ物よりは数段小さい大剣だったな。双剣とかの速さ重視の武器で攻撃か、ガンランスで火力と防御を固めるってのもありだし、弓とかで遠距離攻撃もできるしな。

 

まぁいいや。片手剣で嫌がらせをしまくろう。ということで、アイテムボックスから片手剣の『ゴールドラディウス』を取り出す。同じ火属性片手剣だと『其ノ刃ハ曙光ノ如シ』のほうが属性値は高いけど、見た目がこっちの方が好きだからな。んで、装備はさっきまで付けてた銀レウス一式。俺、基本的に金銀夫妻の装備が好きなんだよな。見た目的に。

 

おっと、早くいかないといけないんだった。アイテムボックスから強走薬グレートをいくつか取り出し、1つを一息に呑み切る。すると身体の奥から活力が湧いてくる。

 

良し、全力疾走だ!

 

 

 

○○○○○○○○○○○○

 

 

途中でダクネスと合流し、正門に到着した。と言うか先に行ってた筈のダクネスが俺と合流できること自体がおかしいと思う。

 

さて、正門の先には1週間前と同じようにデュラハンが馬に乗った状態で立っている。あの時と違う点は周囲に大量にゾンビのようなモンスターがいることだな。デュラハンがこちらと戦闘する気でここに来ていると理解した瞬間から攻撃を加えたくてたまらない衝動に駆られるが、ここは我慢だ。デュラハンが何事か騒ぎ立ててるからな。

 

「――のは何も爆裂魔法の件だけではない!貴様らには仲間を助けようという気はないのか?不当な理由で処刑され、怨念によりこうしてモンスター化する前は、これでも真っ当な騎士のつもりだった。その俺から言わせれば、仲間を庇って呪いを受けた、あの銀髪の少女など騎士の鑑として称賛されるべき逸材だ、それを易々と見捨てるなど……!」

 

あっれこいつもしかしていい奴なのか?話の途中から聞き始めたからよく分からんが、あの呪いを受けた俺の治療条件として自分のもとに来いって言ってたのを無視したから怒ってるんだよな?ま、まぁ、このまま勘違いさせたままっていうのも悪いし、さっさと種明かしするか。

 

というわけで、頭部の装備を脱いで列の一番前、カズマ達の横に並ぶ。今自分がどんな顔をしているのかは分からないが、とりあえず……

 

「あー……生きてるんだ。その、すまない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………あ、あれぇーーーーーーっ!?」

 

 

 

デュラハンの素っ頓狂な声が正門前に響いた。

 

 

 

そういえば、デュラハンにかけられた死の宣告ってハンターに通用すんのかね?武器防具素材と曰く付きのものを大量所持、全身に装備とかしてるハンターに1週間後に死ぬとか、耐性ついてて意味ないと思うんだけど。

 

「なになに?ミコトに呪いを掛けて1週間が経ったのにピンピンしてるから驚いてるの?このデュラハン、私たちが呪いを解くために城に来るはずだと思って、ずっと私たちを待ち続けてたの?呪いをほとんど無力化する体質なミコトに呪いを掛けて、帰った後に追撃気味に解呪されちゃってるとも知らずに?プークスクス!うけるんですけど!ちょーうけるんですけど!」

 

おい待て。なんか今サラッと物凄いこと言ったよな。呪いをほとんど無力化?え?アルバトリオンの装備とかの呪いを無効化してる時点で大概は無力化できるよな?ほとんど?待てよ、あれ以外の呪いを掛けてきそうな奴とか禁忌とされてるあのモンスターしかいないだろ。あいつらが呪いを掛けてくるのかはともかくとして。うわー、あいつらこの世界にいなくてよかったー。ゲームみたいに1か所に留まってなかったら終末レベルの被害だろうしなー。

 

今の状況とまったく関係のないところで1人安心していると、肩を怒りかなにかで震わせたデュラハンが話し始める。

 

「……おい貴様。俺がその気になれば、この街の冒険者を1人残らず斬り捨てて、街の住人を皆殺しにする事だって出来るのだ。いつまでも見逃して貰えると思うなよ?疲れを知らぬこの俺の不死の身体。お前たちひよっ子冒険者どのでは傷もつけられぬわ!」

 

随分と沸点の低い魔王軍幹部様は不穏な空気を滲ませ始めるが、その空気に当てられてミコトの身体が疼き始める。あ゛ーー!ミコトが戦闘狂なの忘れてた!!ステイ!ステイ!ステイっつってんだろ!!……よし。

 

「見逃してあげる理由が無いのはこっちの方よ!今回は逃がさないわよ。アンデッドの癖にこんなに注目集めて生意気よ!消えてなくなりなさいっ!『ターンアンデッド』!」

 

アクアが魔法でデュラハンに対して攻撃を仕掛けるが、対するデュラハンはそれがどうしたと言わんばかりに仁王立ちで攻撃を受け止める。

 

「魔王の幹部が、プリースト対策もなしに戦場に立つとでも思っているのか?残念だったな。この俺を筆頭に、俺様率いる、このアンデッドナイトの軍団は魔王様の加護により神聖魔法に対して強い抵抗力をぎゃああああああああー!!」

 

魔王様の加護を受けて神聖魔法に対して強い抵抗力を誇る魔王軍の幹部はアクアの魔法によって身体から黒い煙を噴き上げさせ、自信たっぷりだったデュラハンはふらふらになりながらも持ちこたえた。

 

「ね、ねぇカズマ!変よ!効いてないわ!」

 

「いや、効いてるんじゃないか?ぎゃーって叫んでたし」

 

「むしろアレに耐えてるだけ凄いんじゃないか?加護とやらの効果かも」

 

ふらふらになっているデュラハンは、よろめきながら何とか口を開く。

 

「ク、ククク……。話は最後まで聞くものだ。この俺はベルディア。魔王軍幹部が1人。デュラハンのベルディアだ!魔王様からの特別な加護を受けたこの鎧と、そして俺の力により、そこら辺のプリーストのターンアンデッドなど全く効かぬわ!……全く効かぬのだが………。な、なぁお前。お前は今何レベルなのだ?本当に駆け出しか?駆け出し冒険者が集まる街だろう、この街は?」

 

あ、すいませんそいつ女神です。宴会芸とあとなんか不思議な力を司るお笑いの神です。すいません。

 

「……まぁいい。本来は、この街周辺に強い光と禍々しい物体が落ちてきたのだのと、うちの占い師が騒ぐから調査に来たのだが……。面倒だ、いっそこの街ごと無くしてしまえばいいか」

 

おっと、どこぞのガキ大将みたいな理不尽を見た。そんなんだから人類の敵認定されるんだよ。同じアンデッドのウィズとは大違いだな。

 

「フン、わざわざこの俺が相手をしてやるまでもない。……さぁ、お前たち!この俺をコケにしたこの連中に、地獄というものを見せてやるがいい!」

 

「あっ!あいつ、アクアの魔法が意外に聞いてビビったんだぜきっと!自分だけ安全な所に逃げて、部下を使って襲うつもりだ!」

 

「ちちち違うわ!最初からそのつもりだったのだ!魔王の幹部がそんなヘタレなわけが無かろう!いきなりボスが戦ってどうする、まずは雑魚を片付けてからボスの前に立つ。これが昔からの伝統と「『セイクリッド・ターンアンデッド』ー!」ひああああああ!」

 

デュラハン……ベルディアは話している途中にアクアの魔法攻撃を受けまたも気の抜けた悲鳴を上げる。

おいおい、せっかくこっちが戦えるってことでヘルムをかぶりなおして突撃準備整えたのに、これじゃまるでギャグじゃないか。シリアスはどこに行った。宇宙の彼方か。

 

「ど、どうしようカズマ!やっぱりおかしいわ!あいつ、私の魔法がちっとも効かないの!」

 

「ひあーって言ってたし効いてる気がするんだけどな」

 

まぁ確実に効いてはいるんだろうな。魔王の加護とベルディアの抵抗力で何とか消えずに済んでる感じか?

 

「こ、この……っ!台詞はちゃんと言わせるものだ!ええい、もういい!おい、お前ら……!」

 

ベルディアは身体のあちこちから黒い煙を上げながら立ち上がり、ゆっくりと右手を掲げ……。

 

「街の連中を。……皆殺しにせよ!」

 

振り下ろした。

 

それと同時に俺はベルディアに向けて走り出した。

 

今まで溜め込んだ分まで暴れるぞ……!




お久しぶりです。
気が向いたので書いてみましたが、いつも通りグダグダでよく分からないシンセイカツクオリティとなっております。

これが今の精一杯ですほんとすいませんorz

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。