この素晴らしい狩人に祝福を!   作:シンセイカツ

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最近FGOにハマってしまいました


デュラハン

ギルドから(カズマ達が無事に終わりそうな)依頼が消えてから1週間が経過した。

 

あれから俺とダクネスは極力休憩をとることを意識しながら狩りに行き続けた。ダクネスは終盤武器を持ち込むことすらしなくなったが、ネクロマンサーの討伐の時はしっかり防具を着込んできていた。アンデッドには厳しいんだな。

 

カズマに「危ないとか考えないのか?」と聞かれたことがあったが、他の冒険者が請ける気が無いクエストを消化してしまえば報酬もいいだろうし、何より愉しいと答えるとありえない物を見る目を向けられた。――アクアたちを見る目だったなアレは…。解せる。

 

そういえば問題のアクアだが、毎日きちんとアルバイトに励んでいた。この前冷やかしで店に行ってやったが、意外と客引きの才能があるようで気が付いたらコロッケを買わされた。話術が凄いってわけじゃないんだが……なんでだろうな。

 

最後に、『進化した爆裂魔法の威力を試したい』と言っていためぐみん(爆裂狂)は最近いい的を見つけたから毎日そこに爆裂魔法を撃ちこんでいると言っていた。めぐみんが倒れた後は一緒についてきていたカズマが運ぶというのが日課になっているようだった。

 

そんなこんなで日常を満喫していると、キャベツ収穫の時のように街中に緊急アナウンスが響き渡った。しかしキャベツの時のように喜びの声ではなく、どこか危機感のあるアナウンスだったのは杞憂ではないだろう。

 

なぜなら、正門前に到着した俺達を待ち構えるように漆黒の鎧を着た騎士が、左脇に自身の首を抱え、同じく首のない黒い馬に乗っていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

所謂デュラハンというものだろう。

 

首を切り落とされた騎士が怨念を抱きつつ死に、悪霊化した結果だったか?確か生前を凌駕する肉体と特殊能力を持っているとか。馬の方はよく分からんが、デュラハンが乗っているということそれなりには強いんだろう。

 

 

――あ、待て。動くなミコト。意識すんな。別にアンデッドだから何してもいい訳じゃないから。

 

俺がバーサーカーと化しつつあるミコトの身体を精神力で丸め込んでいると、デュラハンは口を開く。

 

「……俺は、つい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが…………ま、まままま毎日毎日毎日毎日っっ!!おお、俺の城に、毎日欠かさず爆裂魔法を撃ちこんでく頭のおかしい大馬鹿は、誰だああああああー!!」

 

Hey, hey, calm down.(おいおい、落ち着けよ)

 

この魔王軍幹部のデュラハンは相当お怒りのようだが、落ち着いてほしい。いくら先ほどまで立っているだけでも威圧感が滲み出る実力者でも、そんな理性を無くしたように叫ばなくてもいいではないか。ギャップが酷いぞギャップが。というか雷がいいところで落ちたな、こいつもしかして天候操作してんじゃね?ってくらいタイミングがよかったぞ。

 

いや、それはどうでもいいか。とにかく今の言葉で犯人が確定した。というか自分で言ってたしな。「城に撃ち込んでる」って言ってたもんな。ナイスゥ!これで襲い掛かってきたら正当防衛成り立つよな?

 

なにはともあれ俺達が朝早くに正門に呼び出されたのはこのデュラハン、というかめぐみんのせいか。

 

周りの冒険者たちもそれに気づいたようで、「……爆裂魔法?」「爆裂魔法って言ったら……」「爆裂魔法を使えるヤツって言ったら……」と自然とめぐみんの方へ視線が集まった。

 

「……」

 

周りの視線に耐えれなかったのか、めぐみんはフイッと自分の隣にいた魔法使いっぽい子を見る。それに釣られて他の冒険者がその子を見る。

 

「えぇっ!?あ、あたし!?なんであたしが見られてんのっ!?爆裂魔法なんて使えないよっ!」

 

あらぬ誤解をかけられ慌てる魔法使いの子。かわいそうに。

 

なにやってんだお前とめぐみんに視線を戻すと、その額には汗が浮かんでいた。

やがてめぐみんはため息を吐き、嫌そうな顔をして前に出る。

 

俺を含めたパーティー全員も前に出る。以前は依頼の数を減らした相手がアンデッドなら見てろと息巻いていたアクアは、この怒り狂うアンデッドに興味津々のようで事の成り行きを見守っていた。

 

「お前が……!お前が、毎日毎日俺の城に爆裂魔法ぶち込んでいく大馬鹿者か!俺が魔王幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と城を攻めてくるがいい!その気がないのなら、街で震えているがいい!何故こんな陰湿な嫌がらせをする!?この街には低レベルの冒険者しかいないことは知っている!どうせ雑魚しかいない街だと放置しておれば、調子に乗って毎日毎日ポンポンポンポン撃ち込みにきおって……っ!頭おかしいんじゃないのか、貴様っ!」

 

……うん。怒るわそりゃ。俺だって苦情言いに来るわ。

 

デュラハンの怒りを正面から受け止めためぐみんは、若干怯んだようだが、肩のマントをひるがえし…

 

「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者……!」

 

「……めぐみんってなんだ。馬鹿にしてんのか?」

 

「ちっ、違わい!」

 

なんか、緊張感が無いよな。魔王軍幹部との会話ってよりは漫才見てるみたいだわ。

 

「我は紅魔族の者にして、この街随一の魔法使い。我が爆裂魔法を放ち続けていたのは、魔王軍幹部のあなたをおびき出すための作戦……!こうしてまんまとこの街に、1人で出てきたのが運の尽きです!」

 

「――おい、あいつあんな事言ってるぞ。毎日爆裂魔法撃たなきゃ死ぬとか駄々こねるから、仕方なくあの城の近くまで連れて行ってやったのに、いつの間に作戦になったんだ」

 

「――うむ。しかもさらっと、この街随一の魔法使いとか言い張ってるな」

 

「しー!そこは黙ってあげなさいよ!今日はまだ爆裂魔法撃ってないし、後ろにたくさんの冒険者が控えてるから強気なのよ。今いいところあんだから、このまま見守るのよ!」

 

「……どうでもいいけど、斬りかかっていいのか悪いのか教えてくれよ」

 

「行くなよ?」

「チッ」

 

俺達の、というかカズマ達のささやきを聞いてめぐみんは片手で杖を突きつけたポーズのまま顔が赤くなる。

 

肝心のデュラハンは勝手に納得したような雰囲気を出している。

 

「……ほう、紅魔の者か。なるほど、。そのいかれた名前は、別に俺を馬鹿にしていたわけではなかったのだな」

 

「おい、両親からもらった私の名に文句があるなら聞こうじゃないか」

 

あだ名にしか聞こえないめぐみんの名前に納得して頷いているデュラハンは、今も正門前で警戒心を最大にしている冒険者たちを一切気にしていないように見える。

まぁ、仮にも魔王軍の幹部だし、見た目からしても全線で戦うような奴だろうからな。この街の冒険者なんて警戒の対象のもならないんだろう。

 

……なんかこっちチラチラ見てきてるような気もするが、あれは何だ?警戒の印か?

 

「………ふん、まあいい。俺はお前らザコにちょっかいかけにこの地に来たわけではない。この地には、ある調査に来たのだ。しばらくはあの城に滞在することになるだろうが、これからは爆裂魔法を使うな。いいな?」

 

「それは、私に死ねと言っているも同然なのですが。紅魔族は日に1度、爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」

 

「お、おい、聞いたことないぞそんな事!適当な嘘をつくな!」

 

おいおい、今の「ハイ分かりましたすいませーん」で済んでただろ。なんで火に油注ぐようなこと言うかねこの子は。(歓喜)

 

「どうあっても、爆裂魔法を撃つのを止める気は無いと?俺は魔に身を落としたものではあるが、元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味は無い。だが、これ以上城の周辺であの迷惑行為をするのなら、こちらにも考えがあるぞ?」

 

「迷惑なのは私たちの方です!あなたがあの城に居座ってるせいで、私たちは仕事もろくにできないんですよ!……フッ、余裕ぶっていられるのも今の内です。こちらには、対アンデッドのスペシャリストとモンスター絶対殺すウーマンがいるのですから!先生方、お願いします!」

 

「そのあだ名苦手だからやめてくれない?」

 

こいつ、煽るだけ煽ってこっちに丸投げしやがった。まぁ、今の武器は片手剣だから、こいつがどんだけ強くてもどうにかなるかもしれないけど…。

 

「しょうがないわね!魔王の幹部だか知らないけど、この街に私がいるときに来るとは運が悪かったわね。アンデッドのくせに、力が弱まるこんな明るい内に外に出てきちゃうなんて、浄化してくださいって言ってるようなものだわ!あんたのせいでまともなクエストが請けられないのよ!さぁ、覚悟はいいかしらっ!?」

 

「どうでもいいけどこっちに来るってことは敵だな?その首置いてけよ、なぁ首置いてけよ」

 

腰に装備していた『デストルクジオ』を抜き放ちながらアクアと一緒にデュラハンの前に出る。アクアは浄化魔法を放つためか片手を前に突き出す。

 

「ほう、これはこれは、プリースト……いや、アークプリーストと……職業はわからんが相当の実力者とお見受けする。この俺は仮にも魔王軍の幹部の一人。こんな街にいる低レベルのアークプリーストに浄化されるほど落ちぶれてはいないが……お前たちと戦っているほど暇でもないのだ。……そうだな、ここは1つ、紅魔族の娘を苦しませてやろうかっ!」

 

デュラハンはアクアが魔法を唱えるよりも早く、左手の人差し指をめぐみんへと突き出した。

 

「汝に死の宣告を!お前は1週間後に死ぬだろう!!」

 

デュラハンが呪いを掛けるのと、俺がめぐみんの襟首を掴んで前に出たのは同時だった。

 

「なっ!?ミコト!?」

 

後ろでめぐみんが叫んでいるが、俺の身体に特に不調は無い。……まさか、ハンターの身体がこういう悪影響を受け付けなくなっているのか…?何そのチート。

 

「その呪いは今は何ともない。若干予定が狂ったが、仲間同士の結束が固い貴様ら冒険者には、むしろこちらの方が応えそうだな。……よいか、紅魔族の娘よ。このままではその小娘は1週間後に死ぬ。ククッ、お前の大切な仲間は、それまで死の恐怖に怯え、苦しむことになるのだ…。そう、貴様の行いのせいでな!これより1週間、仲間の苦しむ様を見て、自らの行いを悔いるがいい。クハハハッ、素直に俺の言うことを聞いておけばよかったのだ!」

 

デュラハンは高笑いをしながら馬に乗り城に帰って行った。

 

さて、このデュラハンのかけてきた死の宣告というのは1週間後に対象を殺す呪いだそうだが……。『所有者は人としての生を絶ち、龍としての生を選ばねばならない』とかテキストに書いてあるアルバ武器を持ってる(ハンター)に意味があるんだろうか。

 

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

唐突に俺の身体をアクアの魔法が覆う。

 

「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ!どう、どう?私だって偶にはプリーストっぽいでしょう?」

 

……?

 

要するに俺にかけられた呪いを解いたってことでいいのか?何だこのダイジェスト。作者のやる気のなさが丸わかr―――ん?なんか思考が飛んだな。何を考えてたんだったか。

 

そうそう、呪いが解けたんだったな。こっちも秘薬系を飲めば何とかなるかもとは思っていたが、魔力消費だけで呪いが解けるならありがたいな。

 

……そういえばこの世界で倒れたらどうなるんだろうな。この世界にはアイルーがいないし、ネコタクは期待しないほうがいいかもな。

 

あのデュラハン、今回は不意打ちで動揺したが、今度会うことがあったら問答無用で斬りかかろう。火属性武器とか効きそうな見た目してるしな。塵も残してやらねぇぞ…




最後適当ですいません

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