強欲のヒーローアカデミア   作:チーバ君

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爆豪とグリード

第二種目の騎馬戦、その前段階としてチーム決めの時間が与えられた。

 

これも雄英の与えた試練のひとつ。

他者との協調性や交渉能力を試しているのだ。

 

ヒーローとは、自分のことだけを考えていては務まらない。

同じ地域に事務所を構える他のヒーローとの付き合いも求められるし、事件現場に居合わせたヒーローと即興で協力しなければならないことも多々ある。

このチーム決めの時間は、そんなヒーロー社会を反映した縮図なのだ。

 

そんなことはつゆ知らず、第二種目出場者たちは、仲が良い人、同じクラスの人、相性の良い個性を持つ人と、各々がそれぞれの理由でチームを決めていく。

 

そんな中、グリードはと言えばーーー

 

 

 

「さて、俺は緑谷とでも組むか」

 

「そこのお前、俺と騎馬組まないか?」

 

「あ?誰だお前ーーー」

 

グリードの意識は、そこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

普通科で唯一第一種目を突破した生徒、心操人使。

 

彼の個性は『洗脳』

彼の言葉に応えた者を意のままに操ることが出来る。

外部からの衝撃を加えれば洗脳は解けるが、自分から洗脳を脱け出すことは不可能だ。

障害物競走でも複数人を洗脳したが、誰一人彼の命令に背くことは出来なかった。

 

この騎馬戦、心操が狙うのは終盤からの逆転劇だ。

競技が終盤に差し掛かるまでは、自らのポイントを守りながら極力目立たないように立ち回る。

それと同時に他の騎馬とポイントの動きを観察し、獲物とすべき騎馬を見定める。

そして制限時間ギリギリ、獲物となる騎馬の全員を洗脳しポイントを根こそぎ奪う。

 

だが、本戦まではなるべく個性を隠しておきたい。

騎馬戦で目立たないように立ち回ることも考慮に入れて、騎馬のメンバーを選ぶ必要があるだろう。

轟や爆豪など第一種目で目立ち過ぎた生徒はダメだ。一位の緑谷も論外。初期の持ち点を下げるためにも、順位が一桁の生徒は避けた方がいいだろう。

 

そして騎馬の機動力を最大限高めるために、なるべく身体能力が高い生徒がいい。個性を多用せずに障害物競走を突破した生徒ーーーいた、あいつだ。

 

「そこのお前、俺と騎馬組まないか?」

 

緑谷や轟ほどは目立っておらず、尚且つほぼ素の身体能力のみで上位に食い込んだグリードは理想的だった。

 

 

 

 

 

 

第9話 爆豪とグリード

 

 

 

グリードはすこぶる機嫌が悪かった。

本戦出場者を決める騎馬戦、グリードは最後まで全く見せ場がなかった。

普通科の生徒の個性で洗脳され、まんまと利用されてしまったのだ。

気づいた時には騎馬戦は終了、結果として労せずして本戦出場を決めることが出来たが、そう割り切りれるものでもなかった。

 

「クソッタレ……己の不甲斐なさに泣けてくるぜ」

 

とても他の生徒たちとワイワイ一緒に昼食をとれる気分ではなく、行く当てもなく人気のない場所を彷徨っていた。するとーーー

 

「あ、爆豪?」

 

「ッ!グリード!?」

 

「お前、こんなとこで何してーーー」

 

(静かにしろボケ!気づかれたらどうすんだ!)

 

(気づかれるって、誰にーーーあん?ありゃ、緑谷と轟か?)

 

 

 

 

 

 

「なんつーか、これ、俺たちが聞いてよかったのか?ちょっと罪悪感が湧くんだが……」

 

「うるせえ!盗み聞きされる方が悪いんだよ!」

 

そう言う爆豪も、脂汗を垂らしていた。

少しは罪悪感を感じていたらしい。

 

「それにしてもエンデヴァーねえ……確かにあんま良い噂は聞かねえが」

 

轟とその父親であるNo. 2ヒーローエンデヴァーの因縁、母親との確執。

決して部外者が軽い気持ちで聞いて良い話では無かった。

 

「……ところで、お前はなんでヒーロー目指してんの?言動とか完璧にヴィランじゃねえか?」

 

「テメえが言うんじゃねえよ……!」

 

どっちもどっちだ。

将来『ヴィランっぽいヒーローランキング』でギャングオルカらと共に不動の五強として君臨することを、彼らはまだ知らない。

 

「冗談抜きにして、本当のところはどうなんだ?お前が俺を捕まえたりしなきゃ、俺が轟の話を聞くこともなかったんだし、埋め合わせぐらいしろよ」

 

「チッ」

 

 

 

 

 

爆豪の語った内容を要約すると、『オールマイトを超えてNo. 1になり、高額納税者ランキングに名を刻む』ということらしい。

爆発的なみみっちさだった。

 

「ククク……ダーッハッハッハ!爆豪ォ、思った以上に欲にまみれてんなぁお前!」

 

「ああ!喧嘩売ってんのか!

 

「いや、ワリイワリイ。そんなつもりはねーよ。むしろ見直したね」

 

「……はあ?」

 

 

 

「誰かを救いたいも、カッコいいヒーローになりたいも、金が欲しいも、名誉が欲しいも、全部欲っする心。すなわち、願いだ。俺に言わせりゃ、欲にいいも悪いもねえ。偉そうに格付けしたりなんかしねえよ」

 

「オールマイトを超えてNo. 1になる?俺も同じだ、No. 1の座が欲しい!地位が欲しい、名誉が欲しい、金が欲しい、何もかもが欲しい!」

 

「俺の中にある渇きを満たすために、俺は求め続ける!欲を満たし続ける!これまでもそうだったし、これからもそれだけは変わらねえ……!」

 

「この体育祭も俺が貰う。だが、ただ優勝するだけじゃ足りねえ」

 

「生憎底無しの強欲なんでねえ……お前からの勝利も欲しいんだよ、爆豪ォ」

 

爆豪はグリードが何を言わんとしているかを察し、凶悪な笑みを浮かべた。

 

「爆豪、お前は俺がぶっ潰す!それまで負けんじゃねえぞ!」

 

「ハッ、上等ォ……!」

 

緑谷出久、轟焦凍、爆豪勝己、そしてグリード。

いずれ確実に一つの時代を背負うことになるであろう四人が激突する。

勝者となるのはただ1人。

勝利の栄冠を手にするのは、果たして誰か。

 

 

 

 

 

 

 

「これから本戦出場者のトーナメント、その抽選を行うわ!」

 

本戦の内容は、トーナメント形式の一対一のガチバトル。

年度によって差はあるが、本戦はこれに近い形式が選ばれる可能性が高い。

 

そしてその組み合わせはーーー

 

 

 

第1試合

緑谷VS心操

 

「1回戦、普通科の人だ……。ッ!?轟君とは2回戦……!」

 

「…………(人が良さそうな面しやがって。こいつもチョロそうだな)」

 

 

第2試合

瀬呂VS轟

 

「マジかよ!1回戦から轟とか、ついてねぇー!」

 

「…………(緑谷とは準決勝か)」

 

 

第3試合

飯田VS庄田

 

「よろしく頼む!」

 

「あ、ああ!(いいのかな、俺が本戦出場なんて……)」

 

 

第4試合

発目VS上鳴

 

「あなたが私の対戦相手ですね!少しお願いがあるんですけどーーー」

 

「おう、いいぜ!何でも言ってくれ!それより体育祭終わったら一緒にメシ行かね?」

 

 

第5試合

八百万VS常闇

 

「負けませんわ!」

 

「世は儚く、諸行無常……」

 

 

第6試合

青山VS芦戸

 

「メルシィーーー!運がなかったね、芦戸ちゃん!」

 

「へっへーん!運がないのはそっちじゃないのー?」

 

 

第7試合

爆豪VS麗日

 

「あぁ?麗日、誰だソイツ?」

 

「ヒィーーー!?(殺されるー!)」

 

 

第8試合

切島VSグリード

 

「まただだ被りかよ!?」

 

「あ?どうしたよお前」

 

「いや、なんでもねえ……まあ、1回戦はよろしくな!」

 

「おう!(爆豪とは二回戦、轟か緑谷とは決勝か……いいね、燃えてきたぜ!)」

 

轟のレベルは雄英の中でも頭一人抜けている。

緑谷の超パワーも、対抗できる生徒はそういないだろう。

才能とセンスの塊である爆豪が、麗日に負けるとも思えない。

 

 

 

(そして当然、俺も負けるつもりは無え……!)

 

 

 

雄英体育祭一年ステージ、本戦開幕ーーー!




尾白君の代わりにグリードが入ったので尾白君の棄権イベントは起こらず、庄田も棄権を申し出ることはなくなりました。結果、塩崎と鉄哲も予選敗退となり、B組の命運は庄田に託されました。頑張れ庄田。

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