強欲のヒーローアカデミア   作:チーバ君

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つなぎの回です。


体育祭までの二週間

第7話 体育祭までの二週間

 

 

 

ヴィランによる襲撃から三日後、二週間後に迫る雄英体育祭に向けて、緑谷とグリードはトレーニングルームで筋トレしていた。

 

「それにしても、凄かったな、オールマイト!」

 

「うん、そうだ、ね!」

 

脳裏に浮かぶのは先日のUSJでの光景。

オールマイトは圧倒的だった。

並み居るヴィランをなぎ倒し、脳無と呼ばれた男も、さらに上からねじ伏せてみせた。

全てのヒーローの頂点にして、緑谷とグリードの目標。壁は高く、遠い。

 

だが、グリードにとっては悪いことばかりではなかった。

オールマイトと渡り合えるだけの実力者の存在を確認できたのだ。

オールマイトも決して届かない存在ではない。

今後の努力次第では、自分も同じ高みへ昇れるかもしれないーーー!

 

当面の目標とするのは、『脳無』だ。

ヴィランだろうが関係ない、参考にできるものは全て参考にする。

貪欲に強欲に力を追求するのがグリードのやり方だ。

 

また、グリードの目標はオールマイトだが、個性の詳細が不明なオールマイトより、自分と似通った戦闘スタイルを持つ脳無の方が参考にし易いというのもあった。

 

グリードの個性は『炭素人間』。主な使用法は硬化と再生、戦闘方法は接近戦のみ。

対して脳無は、どういうわけか『ショック吸収』と『超再生』の二つの個性を持っていた。脳無は『ショック吸収』でオールマイトの攻撃を防ぎ、轟等の攻撃からは『超再生』で逃れてみせた。そして素の身体能力でイレイザーヘッドを圧倒出来る実力。しかも戦闘方法は接近戦のみでだ。

グリードにとって、脳無はどこをとっても理想的だった。

 

(だが具体的にはどうする?)

 

脳無に近づくにはどうすればいい?

体育祭までの二週間で自分が出来ることは何か?

 

炭素は結合度を上げれば上げるほど硬度が増していく。

その結合度や個性の持続時間は、鍛錬によって向上させることが出来る。

だが、その鍛錬は幼少期からずっと続けてきたことだ。

あと二週間では、大きな成長は見込めないだろう。

 

(なら再生の方をどうにかするかーーー?)

 

体育祭はプロのスカウトに対してアピールする場でもある。

再生の有用性を示すには、なるべく大きな怪我を瞬時に治すことが出来れば良い。

再生能力には自信がある。四肢や臓器の再生も瞬時に行える性能は、脳無にだって負けはしない。

だが、体育祭はテレビで全国放送される。

大怪我をすれば一般の人々からのイメージダウンに繋がるだろうし、プロからも敬遠されるだろう。

だが細かい傷を再生したところでアピールになるとは思えないし、そもそも気づいてくれるか?

どっちにしろ再生は使いどきに注意が必要だろう。

 

なら、素の身体能力でイレイザーヘッドを圧倒してのけた近接戦闘能力は?

 

「いや、どれも二週間じゃ無理か………。やっぱ他の生徒の情報収集が最優先か……」

 

体育祭で目立つには、好成績を収めるのがもっとも手っ取り早い。

戦いは情報に左右される。それが実力が似通っている者同士なら、なおさらだ。

普段の戦闘訓練だけでは他の生徒の個性を詳しく知ることは難しく、この二週間で積極的に情報を集めていかなければならないだろう。

轟や爆豪など、特にマークしている相手の弱点だけでも把握しておきたい。

 

今隣にいる緑谷も、最もマークしている生徒の一人だ。

緑谷は自爆必至な個性だけあって、その超パワーは途轍もない威力だ。

まともに喰らえば命が危うい。だからこそ、緑谷も人に向けては使わないだろうがーーー

 

(だが再生能力のことは緑谷も知っている。俺に対しては手加減なしでぶちかましてくるか……)

 

思考実験として、緑谷との戦いをシュミレートしてみる。

取り敢えず真正面からの戦いならどうなるか。

個性を使わない緑谷など相手にもならないだろう。個性の反動を気にして出し惜しみするようなら、勝負はこっちのものだ。

 

個性を使ってきた場合は?

緑谷の超パワーは硬化を貫いてくるだろうが、そこは再生でカバー出来る。

俺が再生で何度も回復出来るのに対し、緑谷に回復手段は無い。

そのまま持久戦にもつれ込めば、俺に負ける要素は無い。

 

だが、体育祭の本戦では何かしらの勝利条件が決められるはずだ。去年はスポーツチャンバラだったか?

必ずしも正面から戦う必要はない。ルールを利用することで格上を下すことも出来る。

 

(それに、緑谷は個性が発現したのはつい最近だっつってたし、油断は禁物かーーー)

 

幼少の頃から個性と付き合ってきた自分とは違い、緑谷は短期間でも急成長する可能性がある。

もしかしたらこの二週間の間に個性のコントロールに成功し、反動を克服するなんてこともあり得る。

反動なしであの超パワーを使用できるなど、恐ろしいにも程がある。

いや、そこまではいかなくても、威力を抑えて反動も小さくするなんてこともある。

 

(緑谷だけじゃなく爆豪や轟のことも調べなきゃいけねえ。だが当然、情報収集は警戒してるだろう。そもそもあいつらが弱点を晒す真似なんてするはずもねーか)

 

「結局、やることはいつもと変わんねえな……」

 

二週間では劇的な変化は見込めない。ならばいつも通りのトレーニングを続けるだけだ。

特別なことなど要らない。自分にはこれまで積み上げてきたものがある。それを信じて突き進むだけだ。

 

 

 

 

そして雄英体育祭、当日。




そういえば青山に憑依する作品、いつのまにか消えちゃってたんですね。pdfに保存しとけば良かった……

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