強欲のヒーローアカデミア   作:チーバ君

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たくさんのお気に入りと感想と評価、ありがとうございます。
今回は日常回です。


束の間の日常

第5話 束の間の日常

 

 

 

雄英高校ヒーロー科といっても、基本となる部分は普通の高校と変わらない。

午後はヒーロー基礎学などのヒーロー科特有の講義を設けているが、午前中はプレゼントマイクによる英語やミッドナイトによる保健体育等、ごく普通の授業が行われている。

そしてこの日、1-Aではホームルームで学級委員長を決めることになった。

だがここは雄英高校ヒーロー科、一部の例外を除いて大多数の生徒が前に立ちたいと、委員長をやりたがった。

ごたごたがあった結果、投票形式で委員長を決めることになったのだがーーー

 

 

 

「まさか僕が委員長になるなんて……」

 

委員長になったのは、飯田と麗日と共に昼食を食べている緑谷だった。

ほぼ全ての生徒が自分に投票するという流れの中、なんと緑谷は4票を獲得したのだ。

 

「緑谷君なら大丈夫さ」

 

「でもデクくん4票だったよね?ここにいる三人以外、あと1票は誰がーーーー」

 

 

 

 

 

 

「その1票は俺んだぜ」

 

 

 

 

 

 

「あっ、グリード君!」

 

「よっ!緑谷、委員長就任おめでとさん。ここの席空いてるか?」

 

「ああ、うん!麗日さんと飯田くんも、グリード君も一緒に食べていいよね?」

 

「別に構わないが……君たち知り合いだったのか」

 

「意外な二人や……」

 

片や雄英生徒の中では珍しいほどに、大人めで普通な緑谷、片や初日から爆豪と喧嘩していた不良ルビグリード。決して交わりそうにない二人だった。

 

「でもなんでみんな、僕なんかに投票してくれたの?」

 

「デクくん、昨日の訓練で作戦たてたり、すごかったもん!絶対私より委員長に向いとるよ!」

 

「そ、そんなことないよ……まだ個性だって上手く扱えてないし」

 

「いや、君は現時点でも十分立派にヒーローをやっている。だから俺も、まだまだ未熟な自身より君の方が相応しいと思った」

 

麗日と飯田の2人から褒められ、なんだかむず痒くなった緑谷は誤魔化すようにグリードに話を振った。

 

「そ、そうだ!グリード君はどうして僕に?」

 

「あ、俺か?……なんつーかお前、人の前に立つことに慣れてねえだろ?だからだよ」

 

「え……嫌がらせってことなん?」

 

「違えよ。お前の中の俺のイメージどうなってんだよ。ほらアレだ……お前、オールマイトに憧れてんだろ?だったらどんな状況でも笑っていられるようにならねえとな。カメラを向けられただけでどもってたら、とてもじゃないがやってけねえぞ?」

「どっちみちプロヒーローになったら、いやでもメディアなんかとは関わっていかなきゃならねえんだ。だからここいらで少しずつ、人の前に立つことを学んどけ」

 

「「「…………」」」

 

「あ?どうしたよお前ら」

 

「いや、そんなことまで考えてくれてたなんて、なんか意外だなって。……てっきり、面白がって僕に投票したんだと思ってた」

 

「面白がってって……お前ら、俺をなんだと思ってんだ?」

 

「一言で言うと、不良?」

 

「うんうん」

 

「おい」

 

「ああ、正直僕もそう思っていた。すまないグリード君、僕は君を誤解していたようだ」

 

「「「僕?」」」

 

「あっ……しまった、忘れてくれ」

 

「はっはーん、飯田。さてはオメェさん……」

 

グリードは不良扱いされた仕返しとでも言うように、ニヤニヤしながら飯田の失言を弄りだした。

 

「……金持ちのボンボンだな?」

 

「ボンボンとはなんだ!?失礼だな君は!」

 

「確かにそんな雰囲気はしてたんだよな〜。今時眼鏡で七三とか、漫画のなかにしかいねえよ」

 

「これはベストジーニストを意識した、規律を重んじる節度ある髪型だ!だいたい君は初日からーーー」

 

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、結局委員長を飯田に譲っちまってよ。なんのためにお前に投票したか分かってんのか?」

 

「ご、ごめん……」

 

「……まあ、お前のそういうとこも美点だと思うぜ?」

 

放課後、帰る方向が同じということもあり、緑谷と麗日と飯田の三人組に今日はグリードが加わっていた。

昼休みにマスコミが敷地内に侵入してくるなどの事件があり、そのごたごたの結果、緑谷は飯田に委員長を譲ることにしたのだ。

 

「任せてくれ。緑谷君に託された委員長の責務、命に代えてでも果たしてみせる!」

 

「命!?ほ、ほどほどでいいよ、ほどほどで……」

 

などと他愛ない話をしながら家路につく。だがそこはヒーロー科の生徒、会話の内容は昨日の戦闘訓練へとシフトしていった。

 

 

 

「昨日みたいに浮かせられる物がない状況だと、相手に触れないとどうしようもないし。やっぱり私も格闘技とかやった方がいいのかなあ?」

 

「うーん、どうだろう。本格的な格闘技となると、やっぱり実戦で使えるようになるまでに結構かかるだろうし……」

 

「そういえば、かつて兄に聞いたことがある。ヒーロー考案の格闘術があると。今度話を聞いてこよう」

 

「さすが非常口、物知りだな」

 

「非常口は関係ないだろう!?……ところで話は変わるが、俺の兄も実はヒーローをやっていてなーーー」

 

 

 

だが、彼らはまだ知らない。世界には人の想像の範疇を超えた、途轍もない悪意があることを。




マスコミのくだりもそうですが、原作をただなぞるだけになりそうな部分はとばす方向でいきます。

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