あれから、3年経った。
え、唐突すぎないかって?
色々ありすぎて、説明しきれないのよ。
大きく変わった事と言うと、白騎士事件を発端にISを世界中が認めるようになった。
そう、兵器として。
従来の戦艦や戦闘機よりも遥かなオーバースペックを見せるIS。世界の軍事バランスが総崩れした日だった。
付け加えると、ISは女性しか乗れないものだから、女性の立場が飛躍的にのし上がった事はいいのだが、中には、IS=女性しか乗れない。私たち、女性は偉いんだ!と誤解した奴らのせいで、今の世界は女尊男卑になってしまった。
そのせいで、多くの男性が仕事を失ったり、誤認逮捕が多くなったりと問題だらけなんだが、あまり、その件については新聞やニュースではあまり触れられていない。
まぁ、恐らく女性権利団体の仕業なんだろうけど。
それまでは、女性の地位や権利の向上を求める慈善団体だったのにも関わらず、ISの登場をいい事に権利や権力を行使し、男を奴隷のように扱う、私利私欲に溺れた傲慢な団体になってしまった。
さらには、買い物中に、「あなた、これ買っておいて。」とよく声を掛けられることが多い。断ると、「私は女権団の一員よ?」と脅して、買わざるをえなくなるのだ。
俺も何回か体験した。
どうしたかって?
インパクトを食らわして動けんようにしたら、顔中に肉の文字を書き、私は屑ですと言う張り紙を背中に貼っておいて数時間放置しました。
いやー、面白かったよ。
まあ、可哀想だから、警察に連絡して引き取ってもらった。その時には、脅された時の音声が入った、ボイスレコーダーを渡しておいた。
今頃は、豚箱かな、これを機に反省して貰いたいものだ。
話しを戻そう。
まず、この世界で俺が最初にやった事は資金集めだ。財布は生前使ってたやつがポケットに入っていたのと、丁度バイト代を下ろした為、数万円はあった。
そんでもって、近くの安い旅館で寝泊まりし、家具家電センターでパソコンを買った。
あっちの世界で数十万した最新パソコンがこっちだと一万ちょっとで買えるとは驚いた。そんでもってこれがなんと、旧型扱い……恐るべき、ISの世界!
パソコンを買って何をするかと言うと、投資である。
今は、白騎士事件が起こったばかりで株価は大暴落。まぁ、仕方ないことだが。
でも、これからISの登場により飛躍的にのし上がる企業などは原作知識を知っていたために、篠ノ之束がISを発表すると同時に、フランス、日本、アメリカ、イタリアの様々な企業に投資をした。
そしたら、2倍3倍とバブル顔負けぐらいに上がるは上がる。
所持金ゼロから始まった俺の手には、腐る程の資金が集まった。そして、落ち着いた頃に、都内から電車で20分ぐらいの所にある家を買った。
だが、そこでまさかの事態が起きた。
なんと、すぐ隣が織斑家だった。
挨拶に行った時に、一夏君と千冬さんが出てきた時は興奮したよ。原作通り、一夏君はイケメンだったし千冬さんは目が鋭かったけど綺麗だったな。
この時には既に、箒ちゃんは保護プログラムのせいで引っ越していた。
もう少し、早くしてれば会えたかもしれない。少し残念だ。
でも、入れ替わる形で鈴音ちゃんが引っ越してきたんだっけ。まだ、見てないけど、家が中華屋さんらしいから行ってみる事にしよう。
家を買い、貯金が働かなくても死ぬまで遊べそうな俺が何をしているかと言うと
「この食材の再生方法は……」
特典のおまけとして貰った、再生屋の力を活かして再生屋をしていて、過去に人間の勝手な都合により絶滅した、動物や植物を蘇らせている。
ついでに、トリコの世界の食材を再現できないかと日夜努力している。つい先日、フグ鯨を再現に成功したばかりだ。
再現した食材は自分で食べたり、隣近所に分けたりもした。
「こんにちは、次狼さん!この間もらったカボチャはとても美味しかったです。ありがとうございます!」
特に、織斑家には沢山おすそ分けしていた。原作通り、織斑家は一夏と千冬の二人暮らし、でもお姉さんはISの日本代表で滅多に帰ってこないため、実質一人暮らしに近い。
生前で一人暮らしの大変さを知っていたので、少しでも楽になればいいかなの気持ちなんだけど、欠かさずお礼をいいにくるのだ。律儀だな〜といつも思うけど、そこが一夏君のいい所なんだよね。唐変木な所さえなければもっといいのに。
そのせいで、苦労する事になるなんて本人はこれっぽっちも思ってないのだから世も末である。
「おー、一夏君か? 好きでやってる事だからお礼なんていいよ。お節介だと思ってくれれば」
「そう言うわけには行けませんよ、次狼さんのおかげで、家計は助かってますし」
「嬉しいこと言うね……あ、そうだ!大根が出来たんだけど、いるかい?」
「ほんとうですか!?ありがとうございます!!」
大根数本を渡す、ペコペコと頭を下げて、嬉しそうに帰って行った。
途中、「今日はブリ大根だぜー!」と一夏君の興奮した声が聞こえて、主婦か!思ってしまった。
ちなみに、その後、一夏君がブリ大根を持って来てくれました。
とても、美味かったです。
「ただいま」
今日は珍しく、早めに仕事を終えることができた。たく、いつもこれくらいに終わらせる様にしてもらいたいものだ。毎度毎度、くだらん揉め事に付き合わせるこっちの身にもなってもらいたい。
「おかえり、千冬姉!ご飯できたけど、先にお風呂はいる?」
「いや、腹が減ってるから先に頂くとしよう」
「分かった!」
弟の声を聞いて安心する。
日本代表の千冬は立場上、家をあけることが多い。一夏には一人きりにさせて、申し訳ないと思っている。本来なら、姉として弟を守らなければいけないのだが、一夏は「千冬姉が頑張ってるのに、俺だけ甘えることなんて出来ない!」といって、少しでも私への負担を減らすためかバイトをする様になった。
姉として、弟が逞しくなったのを嬉しいことだが、もう少し、家族として甘えて欲しいと思っているため複雑である。
そんな一夏も千冬にそろそろゆっくりしてもらいたいと思っており、結果的にはどっこいどっこいなのであるが。
「ほう、今日は大根づくしだな」
テーブルに並んだ夕食を見て、そう思った。
ブリ大根、大根サラダ、味噌汁、卵焼き(大根おろし付き)、大根餅、
大根の酢味噌和え、その他もろもろ
「実は、次狼さんから大根を沢山貰ったんだ」
「ほう、次狼さんからか……」
次狼さんは、最近隣に引っ越して来た青年だ。よく、一夏に野菜なんかをおすそ分けしてくれる人で、近所でも評判のいい人だ。仕事は……何をしてるかはよくわからない。
前に、回覧板を届けた時に突然、後ろから声をかけられた時には驚いた。
この私でも、全く気配を掴めなかった。
警戒を怠らず、臨戦態勢に入っていたが、「ごめん、驚かしてしまいましたか?あ、回覧板ですか?どうもありがとうございます。」と言って、回覧板を受け取ると、「良かったら、これを」と沢山のジャガイモをくれた。
私は、予想外なことに呆気を取られ、すぐにお礼を言って立ち去ってしまったが、今思い返せば、あの人には隙が全くなかった。
一夏はいい人だという。私もそうは思うが……何か怪しい。こんど、政府に頼んで調査してみる事にしよう。
「千冬姉、どうしたの?」
「ああ、なんでもない。それより、頂くとするか」
「うん、頂きます!」
久しぶりの家族水入らずの食事。二人は何よりこの時間が好きであった。
ちなみに、この大根、名を万能大根といい、煮込めば甘みが出て優しい味になり、摩り下ろせば辛味が出て大人な味、焼けばホクホクの食感でやみつきに、細かく刻めばシャキシャキの食感と清涼感がたまらない爽やかな味になったりと、物凄い大根である。
ちなみに、食物繊維が通常の大根の数千倍はあり、お通じに良いとされ、女性には嬉しい食材である。
万能大根はオリジナルです。