この力、この世界で役立つのか?   作:zaurusu

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第9話

最近、再生屋の仕事依頼がどんどん増えてきた気がする。この1ヶ月で飛行機を何回も乗り降りし、マイルも結構溜まっている気がする。距離的にも地球一周分は移動した気がする。

 

そんな事もあって、再生屋の仕事を一時休業している。

 

少なくとも2ヶ月は休む予定だ。

 

贅沢だって? 個人経営だから問題無いのだよ。

 

ただ、千冬にそのことを言ったら、すごい恨めしそうな目で見られたのは余談だ。

 

そして今、俺が何をしているかと言うと……

 

「自分の仕事についてどう思いますか?」

 

自宅にて、織斑君に取材をうけています。

 

どうにも、学校で職業体験の課題が出たらしく、自分が気になる職業を取材し、実際に体験してレポートを提出しろとの事。

 

何故、この仕事を選んだのか聞いてみた所、千冬が勧めてきたからだと。

 

その中に、「あいつならいつも暇そうだから大丈夫だろ」と千冬からの一言に若干、心が揺らされかけたのは内緒だ。

 

千冬め、俺が2ヶ月間休業を取ったのを理由に俺を利用したな?

 

でもまぁ、せっかく来てくれたし、何より一夏君には結構お世話になってるからいいけど。

 

なので、一週間だけ営業することにした。

 

とはいえ、客なんて頻繁に来るわけでもなくわりかし暇なのである。いつもは、昼寝したり、その辺をぶらついたりして時間を潰すのだが、今回は一夏君がいるからそんなぐうたらしたとこなんか見せれない。

 

時間が勿体無いので、アンケートを行うことになった。

 

「基本的に何をしてるんですか?」

 

との質問に対して

 

「うーん、今は再生屋としての仕事が多いけど、昔は便利屋みたいな事をやっていたよ。開かずの金庫を開けたり、害虫駆除、掃除、修理なんかもやってるよ。変わった所で、犬の散歩や自宅警備員なんかの依頼もあったよ」

 

「成る程……」

 

再生屋の仕事が来なかった最初の頃は、こんなことばかりやっていた。なので、便利屋とよく誤解されていた。

 

最近は再生屋の仕事が忙しくなって、あまりそう言った依頼は来ないけど近所の住人からちょくちょく依頼はくる。まぁ、断るわけにもいかないから受ける事は受ける。

 

「えっと、仕事をやっている時に困った事はありましたか?」

 

困る事ね……仕事とは関係ないけど千冬と束が着々遊びに来ては俺の秘蔵の酒や食材を漁るからなんとかしてくれ……なんて、言えるわけがない。

 

仕方なく別のことを言うことにした。

 

「そうだね……下積み時代にあった依頼なんだけど、清掃会社から人材不足を理由に雇われたことがあってね……トイレ掃除かなにかと思ったらまさかのゴミ屋敷清掃でね……あれは、本当に凄かった……」

 

「あー、その大変さは分かりますよ……俺も修学旅行で一週間だけ家を空けた時期があって千冬姉に任せたんですが……」

 

言わずともわかる。織斑君も苦労しているんだ。

 

でも、それはまだ一週間だけだ。

 

こっちは、6年間も溜まっていたのゴミを片付けたんだ。

 

激臭で目も開けれない状態の中、ハエは出るわ、Gが出るわ、変な液体が溢れるわ、雪崩が起きるわ、会社の従業員の人が排泄物を踏んづけたりと色々と大変だった。

 

踏んだり蹴ったりとはこの事である。

 

「でも、全てが終わった時の快感は凄かったかな」

 

「あ、俺もそれは分かります!」

 

全てが終わった時は、終始喜んだ。従業員の人と仲良くなって朝まで飲み会したな。

 

ただ、俺は慣れてないのか、あの光景がフラッシュバックして殆ど食べ物には手がつけれず飲んでばかりだったが。

 

大変だったけど、いい経験が出来たと思っている。

 

「えー、次は……なんでこの仕事をしようと思ったのですか?」

 

「あー、なんて言うか……」

 

再生屋をしようとしたら理由か。神さまからもらった特典だからという理由があるけど今はそんなことよりも思う事がある。

 

「一夏君、もしもだけど、君の思い出の場所や大切な場所が何もかもなくなってたらどう思う?」

 

「うーん、寂しい……というか悲しくなると思います」

 

「そうだよね。その場所が唯一自分らしくなれて、帰る場所だったりすると尚更ね……」

 

その場所ではいろんなことがあった。、友達ができたりと嬉しいこともあれば喧嘩したりと悲しい事もあった。

 

そして、喧嘩した場所も仲直りした場所はいつも一緒だった。

 

それは、そこで育った証であり、帰る場所だった。

 

そんな場所が無くなったとしたら、どう思うだろうか。

 

出来るだけ、そう言った事から守りたい。そして、壊れたものは再生させたい。その思いからだらうか。

 

「僕のやってる事はただのお節介かもしれないけど、それで喜んでくれる人もいるならどこまでもやるつもりだよ」

 

「………」

 

「暗い話になったけど、理由はこんなのかな」

 

「そうなんですか……」

 

一夏は次狼の話をまじまじと聞いていた。それ程までに理由が意外だったのか、それとも一夏君には思う事があったのかはわからないが……間違いなく言えることは、一夏の中で次狼に対する思いが変わった事だ。

 

「ありがとうございます。えっと、次の質問なんですが……この仕事に誇りを持っていますか?」

 

しばらくして、一夏君が何かを書き終えると再び質問してきた。

 

その答えは勿論

 

「そうだね、持ってるよ」

 

「成る程……次の質問なんですが……」

 

ふふ、時間はまだあるから、どんどん聞くといい、若人よ

 

 

 

 

 

アンケートが終わった後、特にやることはないのだが、職業体験で何も経験させずに帰らすのはあれなので、書類の整理を手伝ってもらった。

 

丁度昼食を食べていると、仕事の依頼が来たので、軽トラに一通りの道具を乗せ、助手席に一夏君を乗せ現場に向かった。

 

因みに、依頼は害獣駆除。

 

依頼主曰く、屋根裏から物音がするから確認したところ、仕掛けたカメラにひかる目の様なものを確認したんだとか。それを調べて、害獣なら追い出して欲しいとのこと。

 

調べたところ、ムササビが屋根裏で子育てをしていた。

 

この家の近くには森があり、恐らくだが暖かい場所を求めた結果この家に住み着いたのだと思う。

 

天敵に襲われることもないし、こいつらにとっては天国に近い。

 

害獣あるあるだ。

 

でも、ムササビは日本固有種だから駆除する事は出来ない。なので、ノッキングで捕獲し、近くの木に専用の巣箱を織斑君に作ってもらい、効果が切れた後、親子共々巣箱と一緒に自然に返した。

 

仕事が終わると一夏君に「手慣れてるんですね、いつもこんな事をしてるんですか?」と聞かれ、次狼は「まぁ、そんなところかな……」と少し笑いながら答えていた。

 

それを聞いた一夏はやっぱ便利屋なんじゃないかと疑い始めていたのだった。

 

 

 

その後

 

職業体験が終わり、一夏がどうレポートに纏めたのかは分からないが、それを境に、便利屋と勘違いした依頼が後をたたなくなった。

 

何故だ!!!

 

と叫んだのは余談だ。

 

 

 

 

 

 

 

 




職業体験の話です。

懐かしいですね、私も本屋でやったのですが、おかずになる本を沢山ラッピングした思い出があります。

あれ、結構新刊が続々出版されるみたいで予想以上に競争が激戦なんだそうで、その年によって***系が流行ったり、打って変わって来月には****系が流行りだすなど流行みたいなものがあるそうです(店長曰く)

需要と供給について学ぶ事ができたな……遠目

次回もお楽しみ!

それと、誤字脱字や報告、感想などありがとうございます











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