繋想(けいそう)   作:彩加

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第8話

17-4

4-3

3-16

15-3

リズミカルに打たれていく。

盤面全体で広がっていた石はすぐに右下から左下、左中央へと戦いが広がっていく。

13-15黒

11-13白

13-13黒

13-12白

12-14黒

行洋が打ち白石を取った所でヒカルが考え込む。

100手を少し越えた頃で時間が来てしまった。

 

「ヒカル君、時間だ」

「え? もうそんな時間?!」

 

神様は驚くヒカルの肩をポンと触りヒカルを現世に戻した。

 

「ここまで白の14目ほど優勢だね。このまま負けるつもりはないのだろう? 続きが楽しみだ」

「えぇ。とても楽しい碁になりますよ」

 

ヒカルが帰った後、神様と行洋は笑顔で話す。

 

「私もそろそろ戻ります」

「それが良い」

 

神様は行洋に笑顔を向ける。

誰もいなくなった無音の世界に神様がただ1人たたずむ。賑わいを待つ碁盤と共にーー

 

 

 

「だーっ!! あっと言う間に時間かよー」

 

戻ってきたヒカルは自分の部屋にいた。

 

「何騒いでるの? そろそろご飯にするからキリが良くなったらこっち来て」

「分かった」

 

台所で食事の支度をしていたあかりが声を掛ける。

 

ーー今は14目ほど俺が優勢……でも塔矢先生なら必ず逆転してくるはず。気を引き締めて臨まないと!!

 

食事を食べに部屋を出る。

 

「お! 秀輝、大人しくしてたか?」

 

ヒカルが秀輝に声を掛けると、秀輝は視線を移し微笑み返す。

 

「あかり。俺見てるから先に食べちまえよ」

「え? ヒカル良いの?」

 

首も据わっていない赤ん坊を抱き上げるのは怖さがあるが、単に横にいて見てるだけなら自分にも出来る。

 

「うん。あかりが食べてる間くらいは面倒みるよ」

 

いつも碁のことばかりで気遣ってやれない分たまには家族サービスが必要だろう。

 

ーーあんまりあかりを放ってばかりなのも恋愛の神様からバチが当たりそうだしな

 

と不謹慎な理由は心の中に閉まっておいて…。

 

 

 

2~3回アプリを起動したが行洋には会えず、その間はたまたま会った緒方や神様と打ったのだった。

行洋との再会は結局2週間後になってしまった。

待ちわびたこの日。ヒカルから打ち始める

14-11白

3-6黒

4-5白

7-5黒

と続きが打たれていく。

112手目、12-16を黒が打つとコウが出来上がる。

 

ーーくそっ、まだ2目俺が優勢とは言えかなり苦しい

 

ヒカルの額に汗が伝う。

 

ーー逆転を許すもんか!

 

行洋が仕掛けるも何とか踏みとどまろうとするヒカル。

形勢が逆転するかと思われた時、終局を迎えた。

 

「白の1目半勝ち……勝てた」

 

ヒカルはフゥッと肩を撫で下ろす。

 

「進藤君、君との対局は途中全く気が抜けなかったよ。結局負けてしまったが、実に面白かった。けれど君とは初めての対局だね。新初段シリーズのあれはやっぱりsaiだ」

「え?!」

 

思わぬ発言にヒカルは絶句する。まさかこんな所で言い当てられるとは思ってなかった。

 

「saiから何も聞いてはいないが、あれは君ではないことだけは分かる。あの時、リスクを侵してまで何故saiに打たせた?」

 

行洋は興味本位の質問だったが、ヒカルには嫌な汗が頬を伝う。

 

「あ、あれは……その……」

「まぁ、良い」

 

しどろもどろになるヒカルを見て神様が首を横に振る。

それを見た行洋は深く追求するのを止めた。きっとあれは神様の意向も含まれた触れてはならない部分なのだろうと悟った。


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