天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。


東空座町編第二話 粕人は織姫に伝えるようです

「ん……ここは?」

粕人は目を覚ます。目の前に飛び込んできたのは見慣れない天井だった。鼻に届く薬品の匂いが、ここが病院だと粕人に気づかせた。自分の身体に目を移すと、死神の着る黒い衣服、死覇装(しはくしょう)ではなく義骸が着ていた普通の衣服だった。

「目が覚めたか?」

粕人が目を覚ますのを見計らったかのようにオレンジの髪をした部屋に男が入ってきた。そしてそのまま粕人が寝るベッドに歩く。

粕人はその男を知っていた。身体を起こしてその男の名を呟く。

「あ、貴方は黒崎(くろさき)一護(いちご)さん!?」

直接会ったことはなかったものの、黒崎一護は尸魂界(ソウルソサエティ)を幾度も救ってきた英雄とも言える存在。また遠くからではあったが粕人は一護の姿を何度も見ていた。知らないわけがなかった。

見知らぬ相手が自分を知っていることに慣れているのだろう。一護は粕人が何故自分の名前を知っているかは聞かなかった。

「ところで東空座町で行われた勉強会の帰りにアンタとアンタの義骸を見つけて今に至るわけだが。アンタは誰だ?」

「し、失礼しました。僕は本日東空座町に赴任しました十二番隊第ニ十席、葛原(くずはら)粕人(かすと)と申します!」

そう言って頭を下げる粕人はあることに気づく。

(あれ、確か僕はブラットヴァイブとの戦いで激しく消耗したはず。にも関わらず来た時と同じ状態まで回復している……どういうことだ?)

「あ、あの……僕、すごい怪我をしていたはずですが……。黒崎さんが治してくださったのですか?」

「いや、治したのは俺じゃない。お~い、織姫(おりひめ)!」

「は~い!」

奥から明るい声の女性が返事をする。そしてトタトタトタッ!と走ってくる音が聞こえた。

「呼んだ?」

部屋に入ってきたのは暖かさを感じられる腰近くまである髪を首の後ろで留めた、胸の大きな女性だった。

「こいつは女房の織姫。知っているかもしれねぇが、こいつには破壊を受ける前の状態に戻す力があるんだ。アンタの傷はこいつの力で治したんだ」

「はじめまして、黒崎(くろさき)織姫(おりひめ)です」

暖かさを感じられる女性が頭を下げる。

「あ、葛原粕人です。こちらこそよろしくお願いします」

そう言って頭を下げながら、粕人は頭の中でひっかかっていたあることを目の前の女性に尋ねる。

「あの、失礼ですが。貴女は井上(いのうえ)織姫(おりひめ)さんで、間違いないでしょうか?」

「はい、確かに黒崎一護(このひと)と結婚する前は井上でしたけど」

キョトンとした顔で答える女性に、粕人は間を取り、真剣な表情で口を開く。

「黒崎織姫さん。……実は、貴方の兄……井上(いのうえ)(そら)より言伝(ことづて)を預かっております」

気を使ってか一護は「一勇(かずい)の様子を見てくる」と言って部屋を後にした。

「…………」

「…………」

残された二人の間に、永遠とも思える無の時間が過ぎていく。

「あ、あの……兄は、井上昊は元気ですか?」

「はい」

粕人は織姫に自分が知る限りの情報を伝えた。兄の昊が西流魂街にいること、東雲夕姫という織姫のような暖かい髪をした少女を妹として一緒に暮らしていることを。

「そうですか。……兄は、葛原さんに何を伝えてほしいと言ったのですか?」

「……『井上昊は幸せに暮らしている』と」

「……ッ!」

その言葉に織姫は顔を覆った。顔を下に向けたまま。

「どうぞ」

粕人はポケットに入れていたハンカチを目の前の女性に渡した。

数分が経ち、織姫はゆっくりと顔を上げる。瞳は赤くなっていた。「お借りしたハンカチは洗って返します。今日はゆっくり休んで下さい」と言って出口へ向かう。

「あ、あの……葛原さん」

ドアノブに手を掛けそうになった時、織姫は振り返る。

「兄に。井上昊に伝えて下さい。『私も幸せに暮らしている』と」

「はい」

 

 

 

一点の曇りもない笑みで言伝を頼む女性に、粕人は同じような笑みで返した。

 

 




現世で誰が出て欲しいか要望があれば感想にお願いします。

新章 涅マユリの秘密道具登場人物
葛原粕人人物データ追加。

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