天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

見えざる帝国との戦いが終わった10年後のif要素のある物語です。


新章第二話 粕人達の反乱。そして鎮圧

昼頃。技術開発局。

「何ですか、涅隊長。これ?」

何かの作業をして背を向けている上司に、マユリにクズと呼ばれている男、葛原(くずはら)粕人(かすと)は布が被せられた立ち鏡を指差した。

「それは写した者をコピーする鏡だ。まだ実験段階だから本当にコピーできるか分からんから、触るなヨ」

その時だった。

「チュー」

どこからか入ってきたネズミが布を引っ張った。

「あ」

粕人は見てしまった。鏡に写る自分の姿を。

(「うわああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」)

小声で慌てながら小柄な男は地面に落ちた布を被せ、前後左右と色々な角度から鏡を見る。

(「前ヨシ!右ヨシ!左ヨシ!後ろヨシ!」)

小声で指を指しながら異常がないか確認する。

「ヨシッ!」

異常がないことを確認した粕人はゆっくりと布を被せた立ち鏡から離れた。

その後立ち鏡は保管庫に移された。

そして夕方。布を被せられた立ち鏡がカタカタと動き出した。

 

ポトッ

 

鏡から卵が転がり落ちる。鏡から生み出された卵は細かく震えるとピキピキッ!とひび割れパカッ!と割れる。

現れたのは手のひらサイズの葛原粕人だった。手のひらに乗りそうなほどの大きさだった粕人を模した何かは見る見るうちに大きくなっていく。そして数秒で本物の葛原粕人と変わらない大きさに成長した。

「さて、もっと仲間を作らないとな」

邪悪な笑みを浮かべながら卵から生まれた粕人は立ち鏡に被せてあった布を取り外し、自身の姿を写した。

普段から誰も来ない保管室。異変に気づく者は誰もいなかった。

 

 

 

夜。葛原粕人の自室。

「――こうしてシンデレラは王子様と無事結婚し幸せに暮らしました。……お終い。ん?」

「すーすー」

シンデレラを持った粕人の膝の上では可愛い寝息を立てる少女、眠八號(ネムリはちごう)の姿があった。

「ふふっ、疲れて寝てしまいましたか」

微笑を浮かべながら粕人は膝の上で寝る少女の黒髪を優しく撫でる。自分の頭を撫でられたのが気持ちよかったのか、眠八號は小さな笑みをこぼした。

「……!」

その時小柄な男は異変に気づいた。十数人の何者か分からない者が静かにこちらに近づいてくる気配。

「……」

粕人は懐から何かを取り出した。

 

 

 

十数人の何者か分からない者、鏡から生まれた葛原粕人の集団はゆっくりと物音一つ立てず隊舎を移動していた。

(「いいか、これから俺達は俺達のオリジナルにあたる本物の葛原粕人を殺害する」)

最初に生まれた粕人一号が後ろに続くコピーたちに言い聞かせる。

(「葛原粕人殺害後、他の隊員達も殺害し技術開発局を乗っ取る。他の隊が動き出す前に技術開発局を掌握する。その後破面と手を組めば俺達がこの瀞霊廷の支配者だ!!」)

後ろに続くコピー達が力強く頷いた。

そうする内に目的の部屋にたどり着く。そこは自分達の創造主となった男、葛原粕人の部屋だった。

粕人一号がゆっくり音を立てずに扉を開ける。そこには布団に包まる姿があった。

粕人一号はゆっくり音を立てずに布団に近づき、保管庫に収められていた刀を抜いた。数ある斬魄刀の中で一、二位の切れ味の悪さを誇る幽世閉門(かくりよへいもん)では殺せないと踏んだからだ。

(死ねぇ!)

粕人一号は凶悪な笑みを浮かべながら布団の中心めがけて刀を突き刺した。

 

ぱらっ

 

その拍子に布団がめくれる。そこには目を大きく見開く粕人の姿があった。それはまるで何が起きたのか分かっていない表情だった。

(「よし、本物の葛原粕人は殺した!次は他の隊員を殺す。俺達が天下を取れるかどうかは他の隊に気づかれる前に技術開発局を掌握するかにかかっている。行くぞ!!」)

廊下に戻った粕人一号が背後のコピー達にそう言った、その時だった。

 

パンッ!

 

粕人一号が振り返る。そこには破裂した風船のようにペチャンコになった粕人の姿が。

「ど、どうなっている!?」

「どうしたんだい、小さい坊や(ニーニョ)?」

「!?」

突然声をかけられた粕人一号が汗を噴き出しながら振り返る。

そこには顔に手術後のような線をつけたラテン系ダンサーのような男が立っていた。

「き、貴様は!ドルドーニ!!」

ドルドーニ・アレッサンドロ・デル・ソカッチオ。

十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)の一人で、葬討部隊に討たれて消息不明になった後、(くろつち)(むくろ)部隊として復活した男。ゾンビとして復活させられた実力は衰えるどころか生前よりもさらに増し、その証拠にドルドーニの足元にはすでに息絶えた粕人コピーが数人倒れている。

「ちょっとドルドーニ。私の獲物とらないでよ」

ボトボト、と粕人コピー達の残骸が天井から落ちる。

チャクラムに似た投擲武器を持った、ゴスロリを思わせる妙な服を着ている女が降り立つ。

「チルッチ・サンダーウィッチ!!」

「ア・ごめーん。驚いているところ悪いんだけど残りのクズくんのコピーは僕が殺しちゃったから」

人を馬鹿にした笑い声と共に、背中に八本の足を生やして棘の餌食になったコピー達をドタドタッ!と地面に落としていく。

「ルピ・アンテノール!!」

そこには帰刃(レスレクシオン)で姿を変えたルピが、驚く粕人一号を楽しそうに見ていた。

「ば、バカな……あの一瞬で!?」

廊下にいた十数人のコピーは自分を除いて自分を囲むようにして立つ破面(アランカル)に殺されていた。

「どうした小さい坊や(ニーニョ)?さっきまで瀞霊廷を支配すると言っていたのは嘘だったのかな?」

「……ふふっ、フハハハハハハッッッ!!」

追い詰められているのにも関わらず高笑いする小柄な男の姿に三人が(いぶか)しむ。

「これで終わりと思うなよ、破面ども!例え俺を殺したとしても保管庫には俺達のコピーを作る鏡がある。それが無事なら俺達は何度でも作られるのだ!!思い知ったか、破面ッ!!!」

「だ、そうだ。クールホーン」

どこからか以前マユリが作った紙コップのような物、無線電話を取り出し通信相手に伝える。

『はぁ~~~~~~い、皆のアイドル。シャルロッテ・クールホーンちゃんで~~~~~~す♪私は現在カスなんとかの嫁さん達と一緒に保管庫に来ていま~~~~~~す♥』

『『『『誰がカスなんとかよ!!私の夫には葛原粕人って名前があるのよ、って誰がアンタ達の夫よ!!!!』』』』

電話の向こうではマッチョのオカマでナルシスト、シャルロッテ・クールホーンと言い争いをしている竹馬棒(ちくばぼう)千寿(せんじゅ)護国(みくに)万耶(まや)の声が響いた。

『何かカスなんとかちゃんがいっぱい出てきたけど私とカスなんとかの嫁さんの四人で倒しちゃいました。彼女達強かったわ。まあぁ、私の方が美しくて強いからより多くのカスなんとかのコピーを殺したわけだけど』

『『『『誰がお前よりブスで弱いだぁぁぁっ!!』』』』

電話の向こうでは無意味な戦いが始まっていた。

「クールホーン!そんなのは後にして我輩たちの目的を達成するぞ。我輩たちの故郷、虚園に帰るために……そうだよな、小さい坊や(ニーニョ)?」

「ええ、ここでこの一騒動が終わった暁には、涅隊長に貴方方の虚園の帰還を伺う。絶対に守りましょう」

そう言って廊下の向こうから一人の男が現れる。

コピー達の元になった男、葛原粕人だった。

「クールホーンさん。今すぐその鏡を破壊してください」

『わかったぁじゃあ、いくわよぉ。必殺!ビューティフル・シャルロッテ・クールホーン's・ミラクル・スウィート・ウルトラ・ファンキー・ファンタスティック・ドラマティック・ロマンティック・サディスティック・エロティック・エキゾチック・アスレチック・ギロチン・アタックッ!!』

電話の向こうで鏡が飛び散る音が紙コップから響く。

その音に、コピー粕人は言葉を失った。

「クソ、クソクソクソッ!!卑怯だぞ、てめぇ!仲間を使いやがって!!俺の方が、俺の方がはるかに上だ!!一対一だったら俺はお前に勝っていた!!」

「そうか。だったら試してみよう」

「何ッ!?」

「僕と貴方、僕が強いかを。一対一で」

「……」

粕人一号は周囲を見る。

「大丈夫。ドルドーニさん達には手出しはさせませんから。そして貴方が僕に勝ったら貴方の命は保障します」

「小さい坊や(ニーニョ)。君が死ぬのは構わないが、ここまで我輩たちをこき使ったんだ。約束だけは死んでも守ってもらうぞ」

「安心してください。負けることなんてありえないですから」

「そうか」

その言葉に安心したドルドーニ達は二人の邪魔にならずにかつ二人が見える距離まで離れた。

「『負けることなんてありえない』、だと!!」

その言葉に粕人のコピーが怒りを露わにした。

「俺はお前のコピーだぞ!つまり能力も同じ。それがどうして勝てるというんだ!!」

「やってみればわかります」

そう言って粕人は幽世閉門に手を置く。

「フン、死ねや!!」

コピーが幽世閉門とは別の刀を掲げながら突進しながら懐から何かを取り出すと

「うりゃあっ!」

何かを地面に叩きつけた。その瞬間、周囲が黒煙に包まれる。

「ど、どこに行った!?」

うろたえる男を背後に回ったコピーが刀を振り下ろす。

粕人は微動だにしない。

 

勝った。

 

コピーは勝利を確信した。その時だった。

 

シャキンッ!

 

粕人は背後に迫る敵を振り向きざまの遠心力を利用して刀を抜いた。

「ウギャアアアァァァッッッ!!」

絶叫が廊下に響く。刀を持つ両手首が切断されて地面に転がる。血しぶきを上げながら、コピーは狂ったように地べたを転がる。

コピーは忘れていた。居合いの真意は不意打ちなどに対応するための護身の技であることを。そして自分達コピーの元になった男が恩人である卯ノ花(うのはな)(れつ)から教わった居合いを徹底的に磨き上げたことを。

激痛と恐怖に、コピーは脂汗を流し、粕人を見上げた。

「た、頼む!た、助けてくれ!俺は死にたくないぃ!」

「十二番隊隊花は(あざみ)

「はっ?」

「薊の花言葉は復讐。かつて(たいらの)清盛(きよもり)平治(へいじ)の乱で敵であった(みなもとの)義朝(よしとも)の息子、(みなもとの)頼朝(よりとも)を伊豆に流しただけで命まではとらなかった。その後頼朝は平氏討伐のため兵を挙げ、結果平氏は大敗してかつての栄光は地に落ちた。もし清盛が頼朝を殺していれば。平氏の世はもっと長かったかもしれない」

「ま、まさか!ヒ、ヒィッ!?」

男が何を言いたいのか悟ったコピーは手首の痛みを忘れ、背を向けて逃げ出した。

「僕は平氏のようになりたくない。ゆえに!」

粕人は刀を鞘に戻し、逃げるコピーを追った。

いつの間にか抜かれた刀が再び鞘に戻った時、コピーの首が体から離れゴトンッ!地面についた瞬間、コピー達は砂のような細かな粒子になって消えていった。

「見事だったよ、小さい坊や(ニーニョ)。じつに素晴らしい剣技だったよ」

「ありがとうございます。ドルドーニさん」

「それじゃあ我輩達はこれにて――――」

「待ってください」

小柄な男の声に、この場を立ち去ろうとした三人が振り返る。

「休むのはこれらを直してからにして下さい」

三人が暴れた結果、隊舎の天井や床、壁は穴だらけになっていた。

「やって……くださいますよね?」

そう言いながら粕人は脳に直接苦痛を与える電撃状刺激を与えるスイッチを持ちながら三人に尋ねた。

「「「……」」」

三人に拒否権はなかった。

 

 

 

後日。

「涅隊長」

「なんだネ?」

「破面の人達を虚園に戻すわけにはいかないですか?」

「ダメに決まっているだろう」

「ですよね~」

 

 

 

「というわけでダメだったよ」

「「「「この役立たず!!!!」」」」

ダメだったという報告をする粕人に、破面の四人は突っ込みを入れた。

 




涅骸部隊(破面)はマユリの元にいると仮定してこの話を作りました。
ドルトーニ達がどうなっているか詳細を知っている方がいましたら、情報お願いします。

あと10年後の男性死神協会のメンバーは誰がいるか、と言う情報もあればお願いします。

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