天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。

注意。この話に登場する卯ノ花烈の考えはあくまで筆先文十郎版のものです。読者の皆様の卯ノ花隊長像が崩れる可能性はあるかもしれません。そうなった場合は先にお詫びの言葉を述べさせていただきます。


葛原粕人と卯ノ花烈の出会い

 卯ノ花(うのはな)(れつ)が後にマユリにクズと呼ばれる男を意識する出会いをしたのは、まだ外の空気が冷たい朝のことだった。

 四番隊隊長はまだ眠い自分を起こすため外気に当たろうと廊下に出た時だった。

 サッ、サッ、サッ

 まだ肌寒い季節。日が完全に昇っていないこの時間は好き好んで外に出る時間ではない。にも関わらず庭を掃く音。

 音のする方へ足を運ぶと、そこには小柄で華奢な男が竹ぼうきを持って落ち葉を集めていた。

「おはようございます、随分早いのですね」

 そう笑顔で語りかけると背を向けていた男はあたふたしながら頭を下げる。

「あ、いや……お、おはようございます、卯ノ花隊長!」

 着任式で目の前の男が自分の隊に入ってきたのは知っていた。しかし事務的なこと以外で声をかける機会はなかった。

 

 これが卯ノ花烈と葛原粕人の本当の意味での最初の出会いだった。

 

 その後も彼女は日が昇るか昇らないかの時間帯から庭や隊舎の掃除を進んで行っている姿を目撃した。

 彼女は気になっていた。多くの者がまだ休んでいる時間に男がなぜ進んで掃除を行っているのかを。

 その答えはこうだった。

 

「だって綺麗な方が皆さんの心がスッキリするじゃないですか」

 

 その言葉に卯ノ花烈は少々驚いた。

 仕事があるにも関わらず、自らの時間を削ってまで他人のためにと自ら掃除をする男の姿に。

 男に興味を覚えた彼女はそれとなく男の動向に気にかけた。

 ……仕事は良いとは言えなかった。

 男は率先して仕事に取り組む。しかし何かしらのミスを犯していた。何をするにも詰めが甘いのだ。その詰めの甘さがミスを起こし周囲の足を引っ張る。

 もちろん他の者がそのことを指摘するが直ることはなかった。

 本人も自覚はある。やることメモなどを作って詰めを誤らないようにする努力は見せている。しかしそのメモ以外のことが起きるとその内容を忘れてしまう。

 これは本人の変えられない資質と割り切るしかなかった。

 仕事でミスをし、周囲に怒鳴られ自信を失う。

 そんな状態でも男は朝早くから掃除をすることを忘れなかった。

 

 

 

 ある日のこと。

 庭の雑草取りをする男にあいさつをした卯ノ花烈は作業を止めてついてくるように言った。

 男を連れて行った場所。それは四番隊の道場だった。

「え、っと……卯ノ花隊長?」

 どうしてここに連れて来られたか分からない男に、彼女は質問する。

「葛原隊士。人を助けるというのはどれだけ大変なことか分かりますか?」

「え?」

「そして。人を助けるということは自分もそれ相応の力を持っていなければならない」

「……」

 何が言いたいのか男は理解できていない。しかし男は上司の言葉に一言も聞き漏らさぬよう耳を傾ける。

「ですので。これから私は貴方にあったそれ相応の力(・・・・・・)をみせてあげます」

 そう言って卯ノ花烈は刀を鞘に収めた状態で柄に手を置く。

「よく見ていて下さいね」

「!?」

 一瞬の出来事だった。

 男が見たのはいつの間にか刀を抜き、いつの間にか抜いた刀をゆっくりと鞘に戻す姿だった。

「居合、ですか?」

「その通りです。居合は突然の敵の攻撃にも反応できるように生み出された護身の術。特に貴方のように小柄な男性にはとてもあっている力だと思います。そして居合の極致は“相手を制し刀を抜かずに戦いに勝つ”。それは即ち不用意に血を流すことを避けるということ。自分の時間を犠牲にしてでも人の事を考え行動する貴方にはピッタリと思いますが」

「……あ、ありがとうございます!」

 雲の上の人から直々に自分に合った力を教わった男は掃除や勉強の時間と平行しつつ居合の練習に取り組んだ。

 

 

 

 そして。卯ノ花烈に教えてもらった居合は男を守り、卯ノ花烈から『剣八』の名を譲り受けた更木剣八を助ける時間稼ぎのため使われることになった。

 




男が何故更木剣八やジゼル・ジュエルを斬ろうとしたとき居合をしていたか気になったので、こんな話を作ってみました。(流派によって『立合』など違いますが)

あと前回殺された男と卯ノ花烈との結びつきを書きたかったのもあります。

お楽しみいただけたのであれば幸いです。

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