天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。


第三十一話 愛染煙

「出来た、出来たぞ!」

自信が作った発明品に(くろつち)マユリは小躍(こおど)りした。マユリの手にはハート型の匂い袋が握られていた。

「これは愛染煙(あいぜんえん)!この匂い袋に火をつけて煙を吸うと最初に目に入った者を好きになってしまう()れ薬だ!!」

誰に嗅がせようか、と考えたマユリの動きが止まる。

「待てよ。このような今すぐ試してみたい物だからこそ実験は必要だな」

そう言った奇怪な顔の隊長は不気味な笑みを浮かべた。

 

 

 

「涅隊長?いないんですか?」

マユリにクズと呼ばれている男はマユリの部屋にいた。

『急いで私の部屋に来い!』と言われ、大急ぎでマユリの部屋に来たのだが当人がいない。

よほどのことがあるのだろう。そう思った男が部屋の中心まで歩いた時だ。

「ん?」

男は床にハート型の匂い袋があることに気がついた。その匂い袋に男は見覚えがあった。

「確か空知(そらち)○秋(ひであき)先生の『銀○(ぎんたま)』に匂いを嗅いで最初に見た者を好きになってしまうというお香があったよな。たしか『○染香(あいぜんこう)』って言ったっけ」

その時、そのハート型の匂い袋がいきなり燃え出した。たちまち桃色の煙が立ちのぼる。

「ま、まさか!」

男は気づいたが、遅かった。

 

ガシャッ!ガシャッ!ガシャッ!

 

扉や窓。外に出る通り道が全て閉ざされる。この時男は自分が罠にかかったことを悟った。

(しまった!涅隊長はこの愛○香に似た発明品が本当に効果を発揮するのか僕で実験する気なんだ!!)

そして男はあることを思い出す。

(確か『○魂』の主人公の坂田(さかた)○時(ぎんとき)は愛染○を嗅がされてゆりかごから墓場まで手当たり次第口説(くど)く好色・無節操・酒池肉林のすけこましになったっけ……!!)

「嫌だ!僕は清楚な同級生タイプか松本(まつもと)副隊長や虎徹(こてつ)副隊長みたいなむっちんぷりんの年上女性が好きなんだ!伊勢(いせ)副隊長みたいな厳しい系の年上女性も好きだけど!!」

そんなことを言いながら男はハンカチで口元を隠し、煙を吸わないようにして助けを求める。しかし呼べども助けが来る素振りはない。

「いやだ!ゆりかごから墓場まで全ての女性を口説く男になりたくない!!恩人である卯ノ花(うのはな)隊長を口説くなんてもってのほかだ!!そしてあの人のことだ!“ブリーフの両端を持ち上げながら宙に浮いて隠し切れない如意棒の迫力を見せつける完全なR指定の猿”みたいな怪しい物を見せるに違いない!!」

そうする間にも男の周りに怪しい煙が近づいてくる。

「お願い!誰か、誰か……助けてぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!…………――――」

 

 

 

「そろそろ時間かな?」

男がたっぷりと愛染煙の煙を吸っただろうと確信したマユリは男の想像通り『ブリーフの両端を持ち上げながら宙に浮いて隠し切れない如意棒の迫力を見せつける完全なR指定の猿』が入った(かご)を持って自室に入った。

「……え?」

部屋にいた人物を見た瞬間。……マユリは固まった。

「どうしたんですか、涅隊長?」

そう言ってマユリに尋ねたのは。真央地下大監獄最下層・第8監獄「無間」にて2万年の投獄刑に処されたはずの男、藍染(あいぜん)惣右介(そうすけ)だった。

「あ、藍染!何故貴様がここにいる!?」

「藍染?僕は葛原(くずはら)粕人(かすと)ですが」

この時、技術開発局局長は藍染惣右介がここにいる理由を理解した。愛染煙の力で自身がクズと呼ぶ男が藍染惣右介に変わったのだと。

「そうだ。涅隊長。隊長が留守の間、机に置かれた作成途中の資料、完成しておきました。後で確認してください。それと霊子実験で無駄なロスがあったのでこのようにすればより効果的な――――」

藍染化した男の手際の良さと的確な説明に、マユリは満足な笑みを浮かべた。

「そうだ、クズ。急で悪いんだがこの資料を五番隊の雛森(ひなもり)(もも)に渡してくれ」

そう言ってマユリは机の引き出しに入っていた資料を藍染惣右介そっくりになった葛原粕人に手渡す。

「分かりました。では行ってきます」

そう言って藍染惣右介そっくりになった葛原粕人は部屋を後にした。

 

 

 

……その日。五番隊に書類を届けに行った男が帰ってくることはなかった。

 

 

 

 




今回登場した愛染煙の元ネタは空知英秋先生の『銀魂』の愛染香です。
”ブリーフの両端を持ち上げながら宙に浮いて隠し切れない如意棒の迫力を見せつける完全なR指定の猿”の元ネタは古賀亮一先生の『ニニンがシノブ伝』です。

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