天才・涅マユリの秘密道具   作:筆先文十郎

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この小説はBLEACHの二次創作です。
本編とは違うところが多々あります。
本編と矛盾するところがあるかと思います。
他にもおかしいところはあると思います。
以上のことを了解した上で読んで下さると助かります。


第二十八話 どろぼうキャッチハウス

 

「う~む」

(くろつち)マユリは考えていた。

科学者が、自らの研究室を造る時、他のどこよりも堅牢強固に作る場所。それは高価な実験機器の部屋でもなければ、夜通し書いた論文の書庫でもない。

科学者にとって最も壊されたくないのは、世界の縁まで這いまわって集めた、研究材料の保管庫。

ゆえに保管庫の防御システムには自分が持てる全ての技術をつぎ込んである。

ただ高価な実験機器も大事だし、夜通し書いた論文も失いたくない。

そこで技術開発局局長は考えた。それならばもっと安価でかつ取替えが出来て効果のあるものでそれらを守ろう、と。

そうして出来たのは一見家に見える小屋だった。

「これはどろぼうキャッチハウス。思わず誘いこまれそうになるような組み立て式の家で、中に入った人は室内の粘着物によって出られなくなる。 中に入るだけでなく、近くで 『取る』 などという言葉を口にしてもフラフラ~と家に誘い込まれてしまいどろぼうキャッチハウスの餌食になる。 まさに隙のない発明品だ」

マユリは自分の発明品に満足の笑みを浮かべると楽しそうに部屋を後にした。

 

 

数分後。

「涅隊長。いらっしゃいますか?」

マユリにクズと呼ばれている男がマユリの部屋を訪れた。ノックをしても返答がなく、扉に鍵が掛けられていなかったので、男は「失礼します」と扉を開けて用件を伝える。

「涅隊長。九番隊の檜佐木(ひさぎ)副隊長が瀞霊廷(せいれいてい)通信(つうしん)で十二番隊特集をするので何枚か写真を“()らせて”ほしいと……え?」

男は異変に気づく。身体が勝手に家の中に向かっていくのだ。

「あぁ、ああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

抵抗しようにも抵抗らしい抵抗も出来ず、男は部屋の中へと吸い込まれていった。

「な、何だ。この粘着物は!?まるでドラ○もんのド○ボウホイホイのような……うぅ、クソッ、離れない!!だ、誰か……誰か助けて下さいぃぃぃ!!!」

 

 

 

数分後。

「う~ん?何してるんだ、葛原(くずはら)?」

偶然マユリの部屋を通りかかったフグのような顔をした人物が、トリモチのような粘着物で身動きが取れずもがく男を見つけた。

「あ、鵯州(ひよす)さん!お願いです、助けてください!!」

「あぁ、分かった。今“()って”やる……え?」

数分後。

別の隊員がマユリの部屋の近くを歩いていた。

「あぁ。この頃仕事が忙しくて食事が充分に取れてないから栄養が(かたよ)っているなぁ。ちゃんと必要な栄養は“()る”必要があるな……え?」

数分後。

「猛獣ハンター面白いよな。そう言えばオリハルゴンの甲羅ってどうやって“()る”んだっけ?……え?」

そんなことが何度も繰り返された後。一仕事終えて自室に戻ってきたマユリは

 

「……なんだね、これは?」

 

部屋の前で固まった。

「「「涅隊長、助けて下さい!!」」」

自らの発明品、どろぼうキャッチハウスに捕まる十二番隊の面々の姿だった。

 

 

 


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